(仮訳)

バーゼル銀行監督委員会

1999年1月28日

プレス・リリース

 

銀行と、レバレッジの高い業務を行う機関との取引

 

 バーゼル銀行監督委員会は、最近における金融市場の動向に対応するとともに、銀行による慎重なリスク管理行動を促すために継続的に努力を行なってきている。同委員会は、本日、銀行が、レバレッジの高い業務を行う機関(highly leveraged institutions、以下HLIs)との間で行なう取引を分析したレポート、ならびに、そうした取引に係る健全な実務のガイダンスを発出した。

 バーゼル委員会の議長を務めるニューヨーク連邦準備銀行のウィリアム・J・マクドノー総裁は、「ロングターム・キャピタル・マネージメント社が破綻に瀕した事件をはじめとする最近の出来事は、銀行とHLIsとの取引から生じる特異なリスクを十分に把握し、かつ慎重に管理する必要性を明らかにした。これらのリスクは、直接の債権者のみならず、ある種の市場環境においては、金融システム全体に及び得る」と述べている。さらに、マクドノー氏は銀行ならびに監督当局に対して、こうした潜在的リスクに深く注意を払い、HLIsとの取引に係る銀行のリスク管理実務を評価し、これらのリスクに対処するために今後の政策対応を検討するうえで、本ペーパーが一助となることをバーゼル委員会として期待する旨述べている。

 本ペーパーは、オランダ中央銀行のヤン・ブロックマイヤー氏を議長とするバーゼル委員会のワーキンググループが作成したものである。ブロックマイヤー氏は、健全な実務のガイダンスを発出する目的が「HLIsに対するエクスポージャーの評価・測定・管理における慎重なアプローチの発展を促進すること」にあるとしている。勧奨されている健全な実務には以下のものが含まれる。

 本レポートにおいては、HLIsに対する一部の銀行のリスク管理実務に幾つかの問題点があることが強調されている。もっとも、同時に、HLIsに対してエクスポージャーを有する銀行の殆どは、昨秋の一連の出来事を受けて基準を厳格化しつつあるように窺われるとしている。ブロックマイヤー氏によれば、健全な実務のガイダンスを発出する主たる理由は、こうした改善を長きにわたって定着させることにある。

 当委員会はまた、透明性向上への努力、あるいはHLIsに対する直接的規制など、健全な実務のガイダンスを発出すること以外の幾つかの規制・監督措置についても、実施が望ましいか否か、また実施が可能であるか否かを検討した。本レポートは、直接的規制のコスト、利点、および有効性を評価するためには、そうした規制が金融市場および市場参加者に与え得る影響を総合的に検討する必要があるとしている。また、そうした規制は銀行監督当局だけで実施し得るものではなく、他の広範な関係者との協力も必要としている。当委員会はまた、HLIsの業務に係るシステミック・リスクの多くは取引相手レベルでリスク管理を改善することによって対処し得るものであることを強調している。銀行内部における慎重なリスク管理は、HLIsのレバレッジを限定・削減し、HLIs向けポートフォリオのリスク度合を限定するという副次効果をも発揮し得る。この結果、急激なレバレッジの解消やポジションの清算によって金融システムに混乱が生じる蓋然性が減少し、金融システム全体の安定性が増すことも期待し得る。

問い合わせ先 金融監督庁 長官官房国際室
石村 (内線3156)
木股 (内線3162)

 

バーゼル銀行監督委員会(The Basle Committee on Banking Supervision)

 バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国及び米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。現在の議長は、ニューヨーク連邦準備銀行のWilliam J. McDonough総裁である。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。

レバレッジの高い業務を行う機関についてのワーキンググループ(The Working Group on Highly Leveraged Institutions)

 レバレッジの高い業務を行なう機関(highly leveraged institutions、以下HLIs)についてのワーキンググループは、HLIsがもたらすリスクの性質を分析し、HLIsに対する銀行のリスク管理実務を評価し、それらのリスクに対処するための今後の政策対応を検討することを目的として、1998年10月にバーゼル委員会により設立された。本ワーキンググループは、バーゼル委員会メンバーの一部から選ばれた監督当局の専門家から成る。議長は、オランダ中央銀行のヤン・ブロックマイヤー次長である。

HLIとは何か(What is an HLI?)

 バーゼル委員会は、HLIsを正確に定義することが極めて難しいことを認めている。本レポートの分析は、直接的な規制・監督を殆どないし全く受けておらず、情報公開義務も限られており、かつ、レバレッジの高い大規模機関に焦点を当てたものとなっている。当委員会は、いわゆるヘッジ・ファンドの全てがこうした性質を備えているわけではなく、また、銀行・証券会社といった中核的な金融機関の中にもこれらの性質の一部を備えている例が多いことを認識している。従って、本レポートの提言は、業態の如何を問わず、これらの性質に起因する特殊なカウンターパーティー・リスクを伴う機関との間で銀行が行なう取引を対象としている。

総カウンターパーティー・エクスポージャーのモニタリング(Monitoring aggregate counterparty exposure)

 総カウンターパーティー・エクスポージャーのモニタリングは、適切な「与信相当額」エクスポージャー計測手法に基づいて行われるべきである。HLIsに対する総カウンターパーティー・エクスポージャーのかなりの部分はOTCデリバティブ契約から生じるが、本エクスポージャーを測定するためには、現在のエクスポージャーに係る情報のみならず、将来の潜在的エクスポージャーを測定するための首尾一貫した手法が必要となる。当委員会は、銀行業界に対し、将来の潜在的エクスポージャーを測定する手法を改善し、かつ標準化する努力を継続するよう勧奨する。

本レポートの全文をどこで入手できるか?(Where can I obtain the full report?)

 「銀行と、レバレッジの高い業務を行う機関との取引」および「銀行と、レバレッジの高い業務を行う機関との取引に関する健全な実務のあり方」のテキストは、1月28日の英国標準時の16時30分より、インターネット上のBIS Web Siteのhttp://www.bis.orgから入手することができる。また、バーゼル委員会の事務局やバーゼル委員会のメンバーである銀行監督当局や中央銀行からも入手可能である。

 

銀行と、レバレッジの高い業務を行う機関との取引

銀行と、レバレッジの高い業務を行う機関との取引に関する健全な実務のあり方


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