平成15年3月に公表した「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」においては、金融庁において同プログラムに記載されている施策の進捗状況及び金融機関の取組み実績を取りまとめ、公表することとされています。
去る16年12月27日、金融庁では、平成15年度から16年度上半期までの施策の進捗状況及び金融機関の取組み実績について取りまとめ、公表を行いました。
16年度上半期までの1年半の「集中改善期間」(平成15年度〜16年度)内における間柄重視の地域密着型金融(リレーションシップバンキング)の機能強化に向けた中小・地域金融機関による取組み実績とこれについての評価及び今後の課題の概要は、以下のとおりです。 |
 |
(参考)対象金融機関数
合計: 598金融機関 |
地方銀行: |
65 |
(埼玉りそな銀行を含む。) |
第二地方銀行: |
49 |
|
信用金庫: |
303 |
|
信用組合: |
181 |
|
|
(注)信用組合には、職域組合・業域組合が含まれており、地域組合では131組合。 |
|
1 |
.金融機関の取組み実績
各金融機関における中小企業金融の再生に向けた取組み等の16年度上半期までの実績を見ると、「集中改善期間」の1年半が経過した段階において、次のような進捗が見られます。 |
|
(1) |
創業・新事業支援機能等の強化
創業・新事業支援機能等の強化については、総じて、融資審査態勢をはじめとする態勢面の強化が進んできており、こうしたなか、産業クラスターサポートローンや創業支援融資商品による融資等についても成果が表れつつあります。 |
|
(参考)15年度以降16年度上半期までの実績(以下同じ) |
・産業クラスターサポートローン |
64件、 13億円 |
(31件、6億円) |
・創業支援融資商品による融資 |
3,574件、331億円 |
(2,274件、230億円) |
(注)( )書きは15年度の実績(以下同じ) |
|
(2) |
取引先企業の経営相談・支援機能の強化
経営情報やビジネスマッチング情報を提供する取組みの強化は、15年度に引き続き16年度上半期においても進んでいます。
また、各金融機関とも要注意先債権等の健全債権化等に向けた取組みの強化を図っており、その結果、銀行においては、16年度上半期までに経営改善支援を行った債務者のうち、約2割(約7,300先)において債務者区分が上昇しています。
(参考)
・ ビジネスマッチングの成約件数 12,519件(7,334件) |
(3) |
早期事業再生に向けた取組み
早期事業再生に向けた取組みについては、事業再生を行うためのノウハウの習得過程等にとどまっているなど成果に結びついていない金融機関もあるものの、中小企業再生支援協議会の活用等により着実に企業再生に向けた取組みが進んでいるほか、デット・エクイティ・スワップ等の手法を活用した企業再生についても、件数や融資額において着実に増えています。
(参考) |
|
・デット・エクイティ・スワップ |
39件、219億円 |
(29件、175億円) |
・デット・デット・スワップ |
19件、126億円 |
(6件、 55億円) |
|
|
・ |
企業再生ファンドの組成又はファンドへの出資実施金融機関数、当該ファンド゙への出資額 |
|
|
|
(4) |
新しい中小企業金融への取組みの強化
担保・保証に過度に依存しない融資への取組みについては、スコアリングモデルや財務制限条項を活用した融資の推進など、全体的に促進が図られてきています。また、私募債の引受けやCLOの取扱いなど中小企業の資金調達の多様化に向けた取組みについても着実に進んでいます。
(参考) |
|
・スコアリングモデルを活用した商品による融資 |
|
222,362件、 |
20,118億円 |
(132,067件、11,403億円) |
・財務制限条項を活用した商品による融資 |
|
3,383件、 |
1,089億円 |
( 2,264件、 482億円) |
・私募債 |
4,396件、 |
6,433億円 |
( 2,816件、 4,146億円) |
・CLO |
2,335件、 |
796億円 |
( 828件、 414億円) |
|
|
2 |
.金融機関の取組みについての評価及び今後の課題
「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」の取組みについては、平成16年9月末の時点で、「集中改善期間」のうち4分の3である1年半が経過したこととなります。
このような時期において、金融機関による取組みについて、これまでの進捗状況を踏まえた評価を公表することを通じて、計画終了時に向けた各金融機関による地域密着型金融の機能強化に向けた取組みを更に促していくことが適当であると考えられます。
こうした観点から、今回の進捗状況の取りまとめにおいて「金融機関の取組みについての評価及び今後の課題」についても、公表することとしたところです。
金融機関や利用者(借り手)の見方も踏まえた、金融機関の地域密着型金融の取組みに対する評価及び今後の課題については、以下のとおりです。 |
|
(1) |
地域密着型金融を推進するための基本的な態勢の整備について既に相当数の金融機関において取組みが行われ、定着が図られているほか、中小企業金融の円滑化に向けた取組み等の強化・拡充が図られてきているところであるなど、地域密着型金融の機能強化に向けた取組みは、総じて、着実に進捗していると考えられます。 |
(2) |
他方、地域金融機関は、地域密着型金融の中心的な担い手として、今後とも地域経済の活性化や地域の中小企業への金融の円滑化のために、このような取組みを推進していくことが求められるのではないかと考えられます。また、創業・新事業支援や早期事業再生などの分野をはじめ、その効果が顕在化するまでには一定の時間を要する取組みが少なくありません。したがって、今後ともこうした取組みを継続していく必要があると考えられます。 |
(3) |
今後の課題としては、 |
|
○ |
地域の特性等を踏まえた「選択と集中」による個性ある地域密着型金融の推進、 |
○ |
事業再生等における実効性ある取組みと具体的成果の早期実現、 |
○ |
収益性向上・健全性確保に結実させる取組みの推進、 |
|
|
が考えられ、これらの点を踏まえた地域密着型金融の更なる機能強化に向けた取組みが期待されます。 |
|
※ |
リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について(平成15年度〜16年度上半期)、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について(平成15年度〜16年度上半期)」(平成16年12月27日)にアクセスしてください。また、金融庁における中小企業金融の円滑化に向けた取組みについては、金融庁ホームページの「政策ピックアップ」にある「中小企業金融特集(リレーションシップバンキング等)」にアクセスしてください。 |