アクセスFSA 第27号 (2005年2月)
財務局長会議において挨拶する伊藤大臣(1月25日) 企業会計審議会総会を開催(1月28日)
財務局長会議において挨拶する伊藤大臣(1月25日) 企業会計審議会総会を開催(1月28日)

目 次
【トピックス】
 ○  バーゼルII(新しい自己資本比率規制)の実施に向けた金融庁の体制整備について
 ○  評定制度研究会の設置について
 ○  預金口座の不正利用に係る情報提供件数等について
 ○  企業会計審議会総会の開催について
 ○  第120回、第121回自動車損害賠償責任保険審議会について
 ○  「品質管理レビューの一層の機能向上に向けて―日本公認会計士協会の品質管理レビューの実態把握及び提言―」について
【ピックアップ:中小企業金融】
 ○  「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況ついて
【集中連載】
 ○  ペイオフ解禁拡大 (第4回:送金や振込中のお金はどうなるの?)
【集中連載】
 ○  金融改革プログラム −金融サービス立国への挑戦−(第2回:活力ある金融システムの創造に向けて)
【金融ここが聞きたい!】
【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「信託」
【お知らせ】
【1月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
バーゼルII(新しい自己資本比率規制)の実施に向けた金融庁の体制整備について

 平成19年3月末から実施予定のバーゼルII(新しい自己資本比率規制)の下では、金融機関が自己資本比率を算出するに当たって、複数の計算手法の中から自らのリスク管理の実態に合った適切な手法を選択することが求められています。
 このうち、先進的な計算手法(信用リスクの内部格付手法とオペレーショナル・リスクの先進的計測手法)を選択する金融機関は、リスク管理の一層の高度化に取り組むとともに金融庁の承認を得る必要があります(別添参照)。
 他方、金融庁においても、本年春頃を目途に監督局に「バーゼルII推進室(仮称)」を設置し、総務企画局国際課および検査局と適切に連携して、バーゼルIIの円滑な実施に向けた体制の整備を進めていくこととします。
 金融庁においては、バーゼルIIの実施に向けて、現在、新しい自己資本比率規制のための告示、解釈集、監督指針等の整備のための作業を行っているところです。
 「バーゼルII推進室(仮称)」においては、この作業を引き続き行うとともに、バーゼルIIの円滑な実施を確保し、金融機関のリスク管理の高度化に着実につなげるよう、以下の取組みを行います。
 
新しい自己資本比率規制の担当窓口として情報提供や問合せへの対応を行い、特に、先進的な計算手法を採用予定の金融機関と早い段階から積極的に対話し、リスク管理の一層の高度化を促していきます。
新しい自己資本比率規制の第2の柱(監督上の検証)および第3の柱(市場規律)の実施についても担当します。
先進的な計算手法の承認プロセスにおいて、国際的な金融グループを対象とするものについては、海外監督当局と適切な連携を図っていきます。


 「新しい自己資本比率規制の素案」をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から、「新しい自己資本比率規制の素案に対する意見募集の実施について」(平成16年10月28日)にアクセスしてください(なおこちらは、パブリック・コメントの募集についてですが、既に募集は締め切っています)。
 また、昨年6月26日にバーゼル銀行監督委員会から公表された「自己資本の測定と基準に関する国際的統一化:改訂された枠組」(バーゼルII)をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「インフォメーション」から、「国際関連情報」に入り、「バーゼル銀行監督委員会」の「自己資本の測定と基準に関する国際的統一化:改訂された枠組」(平成16年6月26日)にアクセスしてください。

(別添)

PDF信用リスクの内部格付手法、オペレーショナル・リスクの先進的計測手法の承認プロセス

評定制度研究会の設置について

 先般公表しました、「金融改革プログラム」においては、これからの金融行政は、「安定」から「活力」へというフェーズの転換を踏まえつつ、望ましい金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力で実現することを目指していくことが必要であるとされたところです。
 こうしたことを踏まえ、我が国や諸外国の実態等を勘案し、評定制度のあり方について、専門的・技術的観点からの議論を深めるために、検査局内に「評定制度研究会」を設置しました。去る平成17年1月26日(水)に第1回会合を開催し、今後も月3回程度のペースで実施する予定です。
 「評定制度」とは、検査結果について、各リスク管理態勢等に係る評定項目ごとに、被検査金融機関を段階評価することをいいます。これは、これまでの金融検査と異なる別個の制度ではなく、金融検査マニュアルに基づいて検証した検査結果を段階評価によりデジタル的に表そうとするものです。
 評定制度の趣旨は、金融検査の結果を段階的に評価することにより、検査の濃淡や検査と監督の連携など、メリハリの効いた効果的・選択的な行政対応を行えるようにするとともに、各金融機関においても高度なリスク管理や内部管理を目指そうとする動機付けとなるようにすることです。更に、評価がルール化されることにより検査の透明性が高まるとともに、より高い評価を受けた金融機関の検査負担が軽減される等の効果が期待されます。
 評定制度研究会の結論のとりまとめについては、今後の議論次第であり、特定のタイムリミット等は考えていませんが、本事務年度末(17年6月末)までになるべく具体的な結論を得られればと考えています。


 評定制度研究会の資料等については、金融庁ホームページの「審議会など」から「評定制度研究会」にアクセスしてください。

預金口座の不正利用に係る情報提供件数等について

 平成15年9月12日、金融庁は、預金口座を利用した悪質な事例が大きな社会問題となっていることを踏まえ、当局が預金口座の不正利用に関する情報提供を受けた場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局への情報提供を速やかに実施する旨事務ガイドラインを改正したところであり、その情報提供件数等について、四半期毎に公表しています。

 これによると、調査を開始した平成15年9月以降、昨年12月31日までに、金融庁及び全国の財務局等において、7,756件の預金口座の不正利用に係る情報提供を行いました。
 また、金融機関としても、預金口座の不正利用と思われる情報があった場合には、直ちに調査を行い、本人確認の徹底や、必要に応じて預金取引停止、預金口座解約といった対応を迅速にとっていくことが肝要であり、昨年12月31日までに、当局が情報提供を行ったものに対し、金融機関において、4,192件の利用停止、2,758件の強制解約等を行っています。


 預金口座の不正利用に係る情報提供件数等について、詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表など」から「預金口座の不正利用に係る情報提供件数等について」(平成17年1月28日)にアクセスしてください。

企業会計審議会総会の開催について

 平成17年1月28日(金)、企業会計審議会総会が開催されました。本会合においては、企業会計審議会の今後の運営について御審議いただきました。
 審議の結果、企業会計審議会においては、以下の審議事項を取り上げることとし、このため所要の部会を編成することとされました。

(1)

 企画調整部会 (部会長 加古 宜士 早稲田大学教授)
 EUにおける同等性評価や会社法現代化の動向等を踏まえ、審議事項の企画調整を行うとともに、必要な審議・検討を行う。

(2)

 監査部会 (部会長 山浦 久司 明治大学教授)
 監査法人の内部統制や品質管理の向上及び監査基準をめぐる国際的な動向等を踏まえ、継続的に監査基準の改訂作業を進める。
 また、金融審議会における四半期開示をめぐる議論の動向を踏まえ、必要に応じ、四半期レビュー基準の策定を行う。

(3)

 内部統制部会 (部会長 八田 進二 青山学院大学教授)
 財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価の基準及び公認会計士等による検証の基準について策定を行う。


 本会合の議事内容等について、詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表など」から「企業会計審議会 総会の開催について」(平成17年1月28日)、または、「審議会など」から「企業会計審議会」、「議事録等」に入り、PDF<企業会計審議会総会> 平成17年1月28日開催 議事録 にアクセスしてください。

第120回、第121回自動車損害賠償責任保険審議会について

 第120回、第121回の自動車損害賠償責任保険審議会(以下「自賠審」という。)は、平成17年1月20日、21日に開催し、料率検証の結果等の審議が行われ、平成17年4月1日からの自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の基準料率を平均で6.3%引下げることが了承されました。この結果、平成17年4月1日からの自賠責保険に係る契約者負担額は、保険料等充当交付金の減額による負担増加分を加えたトータルで平均5.4%の増加となります。


.最近の自賠責保険料改定に関する動きについて
 
(1)  自賠責保険について
 自賠責保険は、自動車事故被害者の保護等を目的とする自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)が昭和30年に制定され、自賠責保険又は自賠責共済の契約が締結されているものでなければ自動車等を運行してはならないこととされました(自賠法第5条)。これを受けて、自賠責保険の基準料率(注1)は、自賠法第25条(注2)により利潤や不足が生じないよう算出することとされています(いわゆるノーロス・ノープロフィットの原則)。
 
(注 1)基準料率とは?
 基準料率とは、損害保険料率算出団体が算出する保険料率の一つで、損害保険料率算出団体の会員保険会社は、損害保険料率算出団体が算出した基準料率を自社の保険料率として使用するという届出の手続きをすれば、保険業法に基づいた認可を取得したものとみなされます。現在は、損害保険料率算出機構が自賠責保険の基準料率を算出しており、自賠責保険を取り扱っている全ての保険会社がこれを使用しています。
(注 2)自賠法第25条
 第25条 責任保険の保険料率及び責任共済の共済掛金率は、能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内でできる限り低いものでなければならない。

(2)

 自賠責保険制度変更の内容(平成13年6月自賠法改正)
 自賠責保険制度については、規制緩和要望等を踏まえ、制度自体や運用を見直した結果、平成14年4月に政府再保険の廃止等を内容とする改正自賠法が施行されることに伴い、過去の政府再保険の滞留資金の運用により生じた累積運用益の還元方法が制定されました。具体的には、平成13年度末における自賠責再保険特別会計の累積運用益の20分の9を自動車事故対策等に充て、20分の11をユーザーに還元することとされました。これを受けて政府は、平成14年度から平成19年度までの間に効力を生じる自賠責保険又は共済契約について、特別会計より保険料等充当交付金を交付することとしました。

(3)

 従来(平成14年4月改定)の自賠責保険料の基本的考え方
 自賠責保険の基準料率については、政府再保険制度が平成13年度末に廃止されるまでは、過去の累積運用益及び将来の運用益を先取りする形で料率が設定されていたため、赤字料率となっていました。これでは制度として持続可能なものとは言えないため、収支が均衡するように料率を設定する方式に変更し、基準料率を算定しました。契約者は現在本来の保険料(基準料率)から保険料等充当交付金を控除した金額を負担する形になっています。
 また、自賠法附則第7項により、保険料等充当交付金の交付対象期間は平成19年度までの6年間とされ、当初3年間は厚めに還元を行い、後半3年間で残額を還元することにより、6年後に急激な契約者負担額の増加が生じることを防ぐこととされました。なお、平成9年5月の保険料改定では平成16年度まで保険料を維持することを予定していたことを踏まえ、当初3年間の交付金充当後の契約者負担額は、従来の水準と変わらないように設定されました。


.今回の自賠責保険料(契約者負担額)の改定について(平成17年4月〜)
 

(1)

 保険料等充当交付金
 保険料等充当交付金については、国土交通省が予算を所掌しており、平成13年度末の政府の自賠責再保険特別会計の累積運用益の20分の11(約1兆700億円)を財源として、平成14年度から平成19年度までに効力を生じる自賠責保険契約に対して交付されることとなっています。
 このうち、平成16年度末までの当初3年間は従前の負担額と同じ水準になるように厚めに交付され、平成17年度以降の残りの3年間は、再計算しつつ残額を交付することになっています。平成16年度末までに約6,900億円が保険料等充当交付金として契約者に還元される見込みとなっていますが、平成17年度以降の3年間で交付可能な金額は約1,200億円となる見込みです。
 保険料等充当交付金は、政府の特別会計から交付されますので、平成17年度の交付額は、17年度予算の成立により正式に決定されますが、交付額の減額により、基準料率が現行の水準に据え置かれた場合、契約者負担額の上昇率は平均で11.7%上昇するものと見込まれていました。

(2)

 自賠責保険基準料率の収支状況と引下げ
 一方、自賠責保険の基準料率の収支状況は、今回の料率検証結果による平成17契約年度の損害率は100.4%となっており、平成14年4月1日の保険料率改定における予定損害率103.3%と比較すると小幅な乖離(2.9%)に止まっていました。しかしながら、平成16年度末の保険会社の累積運用益等が当初見込みを上回る状況にあったことから、自賠審において、この保険会社の累積運用益等を平成17年度から平成20年度までの4年間で契約者に更に還元する形で自賠責保険の基準料率を引下げ、契約者の負担増を緩和することとされました。
 具体的には、基準料率を平均で6.3%引下げることとしました。

(3)

 平成17年度の契約者負担額
 基準料率の改定を行わない場合には、保険料等充当交付金の減額により契約者負担額は平均で11.7%の増加となりますが、基準料率を平均で6.3%引下げることにより、契約者負担額は平均で5.4%の増加となります。
 この負担増は、改定後の基準料率から保険料等充当交付金を控除した金額で、実際に契約者が負担する金額であり、平成17年4月1日に保険始期が始まるものから適用されることになります。
 なお、保険料等充当交付金は平成17年度予算の成立により正式に決定されますので、それまでは見込み額ということになります。

・自家用乗用車24か月契約の契約者負担額の例
基準料率
A
保険料等充当交付金
B
契約者負担額
C=A−B
現行 33,470円 5,840円 27,630円
改定 31,730円 1,950円 29,780円
改定額 △ 1,740円 △ 3,890円 + 2,150円
改定率 △ 5.2% △ 66.6% + 7.8%

(4)

 平成18年度以降の契約者負担額
 平成18年度及び19年度の具体的な契約者負担額については、保険料等充当交付金の水準が、今後の再保険金及び交付金の支出状況に基づいて、予算を所管する国土交通省と財政当局との間で再度計算が行われたうえで確定されることとなること等から、現在のところ確定していません。また、平成20年度以降に効力を生じる自賠責保険に係る契約者負担額については、平成19年度中に効力を生じる保険契約分までで保険料等充当交付金の交付が完了することに伴い、基準料率がそのまま契約者負担額となる見込みです。


 自賠審の資料等については、金融庁ホームページの「審議会など」から「自動車損害賠償責任保険審議会」にアクセスしてください。

(別添1)

PDF民間累積運用益
(別添2) PDF保険期間別改定基準料率表

「品質管理レビューの一層の機能向上に向けて―日本公認会計士協会の品質管理レビューの実態把握及び提言―」について

 公認会計士・監査審査会は、監査の質の確保と実効性の向上を図るため、日本公認会計士協会が実施する品質管理レビューの報告に対して、これを審査し必要に応じて検査すること(モニタリング)を主たる業務の一つとしますが、昨年6月にその審査基本方針等を策定・公表しました。
 この方針等では、審査会の発足初年度(平成16年度)においては、これまでの品質管理レビューについて、その一層の機能向上を図る見地から、深度ある実態把握を行うとされましたが、今般、その結果を報告書「品質管理レビューの一層の機能向上に向けて−日本公認会計士協会の品質管理レビューの実態把握及び提言―」としてとりまとめ、公表したところです。

 本報告書は第一部及び第二部により構成されていますが、その概要は以下のとおりです。

 第一

部 日本公認会計士協会が実施している品質管理レビュー制度
 第一部では、品質管理レビュー制度の発足の経緯、実施体制等の品質管理レビュー制度の概略について記述しています。

 第二

部 品質管理レビューの実態分析と提言
 第二部では、品質管理レビューの実態分析における基本的な視点、品質管理レビューの現況及び成果、品質管理レビューの機能向上のための課題及び提言について記述しています。
 特に、「3.品質管理レビューの機能向上のための課題」においては、品質管理レビューが法的に位置づけられたことを勘案し、その一層の機能向上を図るために改善が必要と考えられる事項について、下記のような具体的提言を行い、協会による適切な対応を要請しています。
 

(1)

 品質管理レビューに係る制度・組織
 
 レビューチームの人員の増員強化
 品質管理レビューの結果に対する品質管理委員会の判断形成過程の明確化等
 監査意見形成のための監査証拠に関する品質管理レビューにおける適切な確認
 品質管理レビューの結果等の対外的な公表方法の見直し

(2)

 品質管理レビューに係る基準・手続
 
 レビュー報告書等における判断基準の明確化
 監査意見の審査の体制整備に係る品質管理レビューの適切な実施と是正措置

(3)

 品質管理レビューの運用・実施
 
 監査会計規範に対する準拠性の問題に係る適切な判断
 リスク・アプローチに基づく監査に関し、監査計画書のほか適用監査手続等も品質管理レビューで検証する等の厳正な運用
 個々の監査業務のレビューに係る被監査会社の適切な選定
 監査意見の形成過程が明瞭でない場合等のレビュープロセスの記録の明確化
 監査意見の事後審査に対する適切な対応についての関係諸機関との検討
 改善勧告事項に対するフォローアップ機能の強化のための組織的な取組み

(4)

 監査人の独立性に関する事項
 
 改正公認会計士法等を踏まえた監査人の身分的独立性の確保のためのレビュー手続等の見直し
 監査報酬に係る監査人の外観的独立性の確保のためのレビュー手続等の見直し

(5)

 品質管理レビューに関連する体制整備
 監査業務審査会から品質管理委員会への適切な情報提供など連携のあり方の検討


 本報告書について、詳しくは公認会計士・監査審査会ホームページの「公認会計士・監査審査会について」から「品質管理レビューの実態把握及び提言の公表について」(平成17年2月9日)にアクセスしてください。

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