【集中掲載:「事務ガイドライン」及び「監督指針」の改正について】
 
 平成17年3月に、法令改正等を踏まえ、多数の事務ガイドライン及び監督指針の改正を行いました。主なものについて、その改正の概要を解説します。


.17年3月9日、包括根保証の禁止等を内容とする「民法の一部を改正する法律」(平成16年法律第147号)が17年4月1日から施行されることに伴い、監督指針の一部改正を行いました(17年4月1日より実施)。
 

(1)

 改正を行った監督指針
 
 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針

(2)

 改正内容
 「与信取引(貸付契約及びこれに伴う担保・保証契約)に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能」について、「民法の一部を改正する法律」の内容及びその趣旨に照らし、以下のとおり留意点の追加、削除又は変更を行いました。
 
(a)  包括根保証契約を前提とする記載を削除
(b)  「商品又は取引の内容及びリスク等に係る説明」の項目に、連帯保証契約を締結しようとする場合の留意点を追加
(c)  「契約締結の客観的合理的理由の説明」の項目に、根保証契約を締結しようとする場合の留意点を追加
(d)  「契約締結後の金利の見直し、返済条件の変更、担保追加設定・解除等の場合」の項目に、既存の包括根保証契約の見直しとあわせて主債務者との取引関係を見直す場合の留意点を追加
(e)  その他、留意点の趣旨の明確化、時期経過に伴う記載の削除


.17年3月31日、金融改革プログラム(16年12月24日公表)において、金融行政の透明性・予測可能性の向上に関する取組みの一つとして、「外部からの照会に対する一般的な法令解釈についての考え方の公表」が掲げられていることを踏まえ、ノーアクションレター制度を補完する手続を事務ガイドライン等において整備する改正を行いました(17年4月1日より実施)。
 

(1)

 改正を行った事務ガイドライン等
 
 事務ガイドライン 第二分冊:保険会社関係、第三分冊:金融会社関係
 証券会社、投資信託委託業者及び投資法人等並びに証券投資顧問業者等の監督等にあたっての留意事項について
 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針
 信託会社等に関する総合的な監督指針

(2)

 改正内容
 現行の事務ガイドライン等における「法令解釈等に係る一般的な照会を受けた場合の対応」のうち、当庁が書面による回答を行い、照会及び回答内容を公表する場合の手続等について、以下の点((a) 照会者の範囲、(b) 照会の対象、(c) 照会の方法、(d) 回答の方法、(e) 公表の方法)について明確化するとともに、ノーアクションレター制度との棲み分け及び運用上の留意点をあわせて明示しました。


.17年3月31日、金融審議会金融分科会特別部会(16年12月20日開催)における個人情報の保護に関する法律の全面施行(17年4月1日)に向けた取りまとめ及び関連府省令の改正に基づき、事務ガイドライン等の一部改正を行いました(17年4月1日より実施)。
 

(1)

 改正を行った事務ガイドライン等
 
 事務ガイドライン 第一分冊 :預金取扱い金融機関関係、第二分冊:保険会社関係、
第三分冊 :金融会社関係
 証券会社、投資信託委託業者及び投資法人等並びに証券投資顧問業者等の監督等にあたっての留意事項について
 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針
 信託会社等に関する総合的な監督指針

(2)

 改正内容
 
(a)  安全管理措置について
 業法(施行規則)等で求められている「必要かつ適切な措置」の内容が、個人情報保護法等に基づく安全管理措置であることを明確化しました。
(b)  センシティブ情報について
 業法(施行規則)等に掲げる「人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報非公開情報」の範囲が、個人情報保護法ガイドラインに規定する機微(センシティブ)情報と同一であること、同じく「適切な業務の運営の確保その他必要と認められる目的」が、保護法ガイドライン第6条第1項各号に列挙する場合であることを明確化しました。


 「事務ガイドライン」及び「監督指針」の全文については、金融庁ホームページの「所管の法令・ガイドライン等」から「事務ガイドライン・監督ハンドブック」にアクセスしてください。

【特集:平成17年度税制改正における金融庁関連の措置について】
 
.はじめに
 平成17年度税制改正に当り、金融庁は、多様な投資家の市場参加の促進、金融と企業の再生の推進といった観点から、金融・証券税制に関する要望を行ったところです。こうした要望事項は、今般公布された所得税法等の一部を改正する法律及び関係政省令に反映され、金融・証券税制について種々の措置が講じられることとなりました。


.税制改正の概要
 
(1)  タンス株の特定口座への持込期限の延長
 特定口座へのいわゆるタンス株の持込については、平成16年12月までの措置として、これまでも認められてきましたが、今般、上場株式の株券ペーパーレス化に資する措置として、平成17年4月1日から平成21年5月31日までの間、新たなタンス株の預入れ制度が開始されました。
 その際の取得日および取得価額は、次のいずれかとなり、みなし取得価額(平成13年10月1日の終値の80%の金額)は利用できません。
 
 (a)  実際の取得日及び取得価額
 (b)  名義書換日及びその日の終値
 また、特定口座の利便性を更に向上させる観点から、一定の株券貸借取引に係る返還株券についても、特定口座への預託の対象とすることが認められました。

(2)

 一定の上場株式の滅失損を譲渡損とみなす措置
 特定口座で管理されていた上場株式が、発行会社の清算結了等によって無価値化した場合に生じた滅失損を、一定の要件のもとで譲渡損とみなす特例が創設されました。
 なお措置の適用に当っては、上場廃止から清算結了等の時まで引き続き、継続して証券会社に開設する「特定管理口座」において保管されること等が要件となっています。また、損失が生じた場合として認められる事実は、(a)清算結了、(b)破産手続開始の決定、(c)会社更生計画又は民事再生計画に基づく100%減資、(d)特別危機管理開始決定(いわゆる銀行の国有化)とされています。

(3)

 企業再生関連税制
 民事再生法等の法的整理及び一定の私的整理が行われる場合に、債務者である法人について、(a) 資産の評価損益を計上する措置と、(b) (a)の適用を受ける場合に、債務免除益等の範囲内で期限切れ欠損金を青色欠損金に優先して控除する措置が、講じられました。
 なお、上記措置の適用対象となる一定の私的整理とは、民事再生法等の法的整理に準ずるもののうち、適正な資産評定に基づく貸借対照表を基礎として債務免除額が定められていること等一定の要件を満たしたものとなります。

 平成17年度税制改正においては、上記の他にも、金融庁の要望項目に関し以下のとおりの措置が講じられました。
 
 一定の金融先物・オプション取引の課税方式の整理(総合課税⇒分離課税)
 上場会社等による自己株式の公開買付けによる場合の、みなし配当課税の特例措置の適用期限の延長(19年3月まで)
 特定中小会社の株式の譲渡益に対する2分の1課税の特例措置の適用期限の延長(19年3月まで)
 大幅な株式分割・単元のくくり直し等による新株券等に係る印紙税の非課税措置の適用期限の延長(19年3月まで)
 SPC及び投資法人による不動産取得に係る不動産取得税の軽減措置の適用期限の延長(19年3月まで)


 非居住者等の国債保有に係る税制優遇措置の要件の緩和
 租税条約の適用の際に提出すべき居住者証明書提出の提出省略の特例の創設


 協同組織金融機関(信用金庫・信用組合)等に対する貸倒引当金に係る特例措置(116/100割増)の延長(19年3月まで)
 火災保険等に係る異常危険準備金の特例積立率の引上げ(現行3%⇒4%)(19年3月まで)
 破綻保険会社等から承継保険会社が不動産を取得した場合の不動産取得税・特別土地保有税の非課税措置の恒久化
 破綻金融機関等から協定銀行が不動産を取得した場合の不動産取得税の非課税措置の適用期限の延長(19年3月まで)


 退職年金等積立金に係る特別法人税の課税停止措置の適用期限の延長(20年3月まで)
 外国子会社合算税制における課税済留保金額の損金算入可能期間の延長(現行5年⇒10年)
 「産業活力再生特別措置法」に係る特例措置(事業革新設備の特別償却、繰戻還付の適用特例、不動産取得税の軽減)の適用期限の延長(19年3月まで)

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