【集中連載】
 
金融検査に関する基本指針(案)の概要について(第2回:「II 検査等の実施手続等」の概要について)

 金融検査に関する基本指針(案)(以下「本基本指針(案)」という。)は、昨年12月24日に公表された金融改革プログラム及びこれを受けた金融改革プログラム工程表(本年3月29日公表)を踏まえた「金融庁の行動規範(code of conduct)の確立」の一環として、検査等の実施に当たっての基本的な考え方及び検査の具体的な実施手続等を示すものであります。検査等に関連して発出される通達等の解釈及び運用に当たっては、今後、本基本指針(案)を基に行うこととなります。

 今回(第2回)は、前回(第1回)の『2.「本基本指針(案)の概要」I 基本的考え方』に引き続き、『II 検査の実施手続等』について紹介します。
 
II 検査等の実施手続等

 本基本指針(案)では、検査等の実施に際してその基本となる標準的な手続をあくまでも目安として示しています。
 本基本指針(案)の目的は、預金者等一般の利用者及び国民経済の立場に立ち、的確かつ効果的な検査等の実施に資することであり、この目的に沿った運用が行われる必要があります。
 このため、実施手続等の運用に当たり、機械的・画一的な運用に陥り、検査の実効性を低下させるなど上記目的に反することがないよう配慮することを明記しています。他方、本手続規定の趣旨を潜脱した取扱いがなされないよう歯止めをかける観点から、この規定外の取扱いを行う場合には、バックオフィスとの協議や金融機関に対する説明への配慮を明記しています。
 なお、本手続規定は、あくまでも被検査金融機関の理解と協力を前提とし、その前提がない場合には、別途の対応となります。

 以下、実施手続等を検査の各ステージ毎に分けて具体的な内容を紹介します。


.適用範囲
 本基本指針(案)の適用範囲は、検査マニュアルの適用範囲と重複したものとしています。具体的には、銀行法、保険業法等に基づき、金融庁及び金融庁長官から委任を受けて財務局が実施する検査等に対して適用することしています。本基本指針(案)の適用対象外となる先については、本基本指針(案)の趣旨を踏まえつつ、別途の対応を行うこととなります。


.検査の種類等
 総合検査のほか部分検査(ターゲット検査)を明示しています。


.実施手続
 
(1)  立入検査開始前
 
 予告・無予告
 原則として予告、ただし、実効性の確保の観点から必要と認める場合は無予告も可能であることを明示しました。

PDF金融検査の実施手続(基本的な流れ)


 事前に資料等を求める際の留意事項
 これは、検査の効率化を進め、金融機関の負担軽減に努めていく観点から、以下のように明確化しました。特に、以下iiは、検討過程で実施した金融機関からのヒアリングにおいて要望が強かったことを踏まえたものであります。
 
i  原則、金融機関の既存資料等を活用
ii  検査遂行に支障が生じない限り電子媒体による資料等の受渡しや提出の許容、等


 重要事項の事前説明等
 
i  検査のプロセスの予測可能性等の向上の観点から、検査当初において金融機関に対して説明すべき重要事項をリストとして明示しました。
ii  検査の円滑な実施の観点から、検査当初において庶務事項等を金融機関と協議することを明示しました。

(2)

 立入検査中
 
 検査命令書等
 検査命令書の提示の取扱い等を明示しました。


 内部監査との関係
 金融機関の自主的・持続的な経営改善に向けた取組みを促進する観点から、金融機関の内部監査強化の促進等のため、以下の点を明示しました。
 
i  金融機関の内部監査の有効性を確認する際の着眼点等
ii  内部監査の機能の程度により、実地調査、抽出範囲等について検査の効率化を図ること、等


 会計監査人との意見交換
 従来から、必要に応じ、外部監査人との意見交換を行ってきましたが、今回、会計監査人から要請があった場合には被検査金融機関の監査機能等の充実に資する観点から、極力意見交換に応じることを明確化しました。あわせて、意見交換の実施に当たっての留意事項を明確化しました。


 資料等を求めるに際しての留意事項
 検査の効率化、金融機関の負担軽減の観点から、以下のように留意事項を明確化しました。
 
i  原則、金融機関の既存資料等を活用。
ii  電子媒体の利用や資料備え置きを許容。
iii  提出期限の設定は、金融機関の対応能力や事務負担に配慮。


 検 証
 検査のプロセスの予測可能性等の向上、金融機関の自主的・持続的な経営改善に向けた取組み等を促進する観点から、指摘及びそれに至るまでの留意事項を以下のように明確化しました。
 
i  金融機関との双方向の議論の重視
ii  主任検査官の指摘や金融機関の認識の確認は書面を利用(書面主義)
iii  法令違反等重大な指摘を行う場合には検査局総務課に照会
iv  将来の融資判断等への関与がないよう留意


 実地調査
 実地調査を「検査官が、被検査金融機関の役職員が現に業務を行っている施設、資料保管場所等に直接赴き、原資料等を適宜抽出・閲覧等を行いつつ、業務運営について調査」と定義しました。同時に、効果的な検査の実施の観点等から、実地調査の実施要領を明示しました。


 立入検査終了手続(エグジット・ミーティング)
 立入終了日において、議論の状況及び検査で把握した事実関係の確認、問題点及びそれに対する金融機関の認識について書面を利用した確認を行うことを明確化しました。更に、検査終了後の手続等の説明を行うことを明確化しました。


 立入検査の中断
 効率的な検査の実施に資する場合(例えば金融機関サイドの作業を待つ必要がある場合)や検査の継続が自然災害等で困難な場合には、検査を中断することを明確化しました。


 その他の留意事項
 検査のプロセスの予測可能性等の向上の観点から、以下のように検査の実施に当たっての留意事項を明示しました。
 
i  立入中、検査の進捗状況等について金融機関と定期的な意見交換を実施。
ii  金融機関の役職員に対する質問等は原則として就業時間内。
iii  検査忌避等に該当するおそれがある行為が見出された場合の対応。
iv  立入中の保存文書の廃棄等の疑問を主任検査官に確認 等。


 検査モニター
 従来から活用してきた検査モニター制度(別途運用改善予定。詳細については次回以降掲載)を本基本指針(案)に明示しました。

(3)

 立入検査終了後
 
 意見申出制度
 従来から活用してきた意見申出制度(別途運用改善予定。詳細については次回以降掲載)を本基本指針(案)に明示しました。


 検査結果通知書の交付等
 検査のプロセスの予測可能性の向上の観点から、検査結果通知書の交付を、原則として、立入終了後、概ね3ヶ月以内を目途に行うこと(審査標準処理期間(3ヶ月))を明確化しました。


 検査結果通知に関する監督部局との連携
 検査結果通知書の内容の確認を行うという目的のため、検査結果通知書を踏まえた監督上のフォローアップへの同席、等を明確化しました。


.情報管理
 検査官等職員及び金融機関の検査関係情報(注)等の管理に関する留意事項を以下のように明確化しました。
 
(注 )ここでいう「検査関係情報」とは、検査中の、検査官からの質問、指摘、要請その他検査官と被検査金融機関の役職員等との間のやりとりの内容をいう。
 

(1)

 検査等情報管理上の留意点
 検査官等職員は、検査等に関する情報を、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の法令等に即して、適切に管理することを明確化しました。その際、検査等に関する情報を検査・監督の目的以外の使用(法令上の正当行為に該当する際の使用を除く。)の禁止等も明確化しました。

(2)

 検査関係情報及び検査結果通知の内容の取扱い
 検査関係情報及び検査結果通知の内容は、「検査部局の判断」等を含むものであり、検査の実効性の確保等から守秘義務の対象となる情報として、検査部局の責任でこれらの管理を行う必要があることを明記しました。
 このため、被検査金融機関に対して、これらの情報を当局の事前の承諾なく、第三者に開示してはならない旨を説明し、承諾を得ることを明記しました。


.その他
 金融コングロマリットについて、同時検査を含め証券取引等監視委員会との間で、必要な連携を行うことを明確化しました。また、日本銀行との連携も図ることを明確化しました。


.施行日
 平成17年7月1日以降に予告する(無予告の場合は、立入を開始する)検査について適用します。
 次回は、『III 17事務年度より実施する検査上の運用改善』についてです。




 平成17年4月28日に公表した「金融検査に関する基本指針(案)」の全文をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「金融検査に関する基本指針(案)について」(平成17年4月28日)にアクセスしてください。

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