アクセスFSA 第34号 (2005年9月)
審判廷での模擬審判 生島ヒロシ先生の講話
8月24日(水)と25日(木)の2日間、金融庁において「子ども霞が関見学デー」が開催されました。
(左:審判廷での模擬審判 右:生島ヒロシ先生の講話)
目 次
【トピックス】
 ○  利用者の満足度を重視した金融機関経営の確立について
 ○  「平成16年度実績評価書」、「平成17年度事業評価書」、「平成16年度総合評価書」及び要旨の公表について
 ○  平成18年度税制改正要望について
 ○  平成18年度概算要求の概要について
 ○  「人材ネットワーク」の構築について
 ○  経営健全化計画の見直しについて
 ○  経営健全化計画の履行状況報告について
 ○  17年5月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について
 ○  「主要行等向けの総合的な監督指針」(案)について
 ○  子ども霞が関見学デーについて
【金融ここが聞きたい!】
【金融便利帳】
 ○  「グリーンシート」について
【お知らせ】
 ○  大臣・副大臣・政務官への質問募集中
 ○  新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内
【8月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
利用者の満足度を重視した金融機関経営の確立について


.金融改革プログラム
 昨年12月24日に公表した「金融改革プログラム」においては、利用者の満足度の高い活力ある金融システムを創造するため、利用者が理解し納得して取引ができる枠組みを整備するための施策の1つとして、「利用者の満足度を重視した金融機関経営の確立」を掲げています。
 わが国の金融システムを巡る局面(フェーズ)は、「金融再生プログラム」の実施等により不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面に転換しつつあります。こうした環境変化の中で、各金融機関においても、不良債権問題を正常化させていくことに経営の大きな課題があった局面から、経営の自由度が広がる局面へと転換しつつあり、多様化する利用者のニーズに応じた金融商品・サービスが開発され提供されることが望まれています。
 その中で、金融庁としては、利用者側に立っての金融サービスの向上、そして競争力の強化といった質の向上を目指した改革を推進しています。こうした改革の推進にあたっては、各金融機関において、多様化する利用者ニーズを積極的に把握することに努め、的確に、利用者ニーズに対応した経営改善を行うことで利用者からの信頼を獲得すること、すなわち利用者側に立った金融機関の経営を実現することが重要と考えています。


.利用者満足度向上に向けた取組みの実態調査
 平成17年3月31日から4月28日にかけて、現状の利用者満足度アンケートや苦情・相談に対する取組みの実態調査を行い、各業界団体を通じて、各金融機関宛に調査を依頼し、預貯金取扱金融機関744、保険会社81、証券会社等453、貸金業者44、合計1,322の有効回答を得ました。
(注.証券会社等は証券会社及び投資顧問業者を指します。以下同様。)
 利用者満足度アンケート調査実施率は、預貯金取扱金融機関で約38%、保険会社で約69%、証券会社等で約9%、貸金業者で約34%でした。

 実施していない理由は、業態毎に以下の通りです。

○ 預貯金取扱金融機関

 

・ご意見箱等で苦情・相談を把握
・渉外担当の苦情等聞き取り

○ 保険会社

・コールセンター等で苦情等を把握
・再保険会社である等利用者が機関投資家中心

○ 証券会社等

利用者との対面営業時に苦情等を把握

顧客が少数又は機関投資家中心

自己売買業務(注.自己売買業務:証券会社等が、自分の勘定を使って株や債券、為替などに投資すること)

○ 貸金業者

・コールセンター等で苦情等を把握
・特定顧客向けの貸金業に特化


 アンケート実施金融機関については、専門部署で改善策を検討する、定期的に役員会に報告し改善策を検討するなど、ほぼ全てが、調査結果の活用を行っていました。一方で、調査結果の公表、及び調査結果に基づく改善事項の公表については、いずれも定着していない状況にあります。
 

○ 調査結果の活用

 :預貯金取扱金融機関95.7%  保険会社100%
  証券会社等97.6%      貸金業者100%

○ 調査結果公表

 :預貯金取扱金融機関14.6%  保険会社26.8%
  証券会社等17.1%      貸金業者13.3%

○ 経営改善内容公表

 :預貯金取扱金融機関 8.5%   保険会社 3.6%
  証券会社等17.1%      貸金業者13.3%

(注.いずれもアンケート実施金融機関における実施率)


 苦情・相談については、お客様相談室、コールセンターといった部署を設置しての対応が多く見られ、多数の金融機関が、利用者から寄せられた苦情・相談を業務運営へ反映させる対応を行っています。


.「利用者満足度向上に向けた懇談会」の開催
 当該施策の実施にあたり、金融機関が広く利用者の声を把握する一助とする観点から、平成17年5月〜7月にかけて、有識者、利用者、業界団体から参加を得て、業態毎(預貯金取扱金融機関、保険会社、証券会社等、貸金業者)に、各2〜3回の「利用者満足度向上に向けた懇談会」を開催しました。
 懇談会では、各業態の特性も踏まえ様々な意見が寄せられたが、以下の基本的考え方については、ほぼ共通に示されました。

 
 各金融機関が、組織的に利用者からの意見・苦情等を把握する仕組みを構築することが必要である。
 利用者の声を十分に把握し、経営改善に反映する取組みについては、各金融機関の自主性を尊重すべきである。
 利用者に対する情報提供を充実させるという観点から、こうした取組みは、各金融機関等が積極的に公表すべきである。

 業態毎の懇談会の概要については、別添のPDF「利用者満足度向上の懇談会」概要(ポイント)を参照願います。


.利用者満足度向上に向けた取組みの金融機関への要請
 平成17年8月10日に、業態毎の業界団体を通じて、傘下金融機関等において、利用者満足度アンケート等の各金融機関の選択するさまざまな手法にて、利用者の意見・苦情等を把握する取組みを実施すること、また、そこで寄せられた利用者からの意見・苦情等を踏まえて平成17年度に経営改善を行った項目等について、平成18年6月末日までに公表されるよう、要請を行いました。平成18年度についても、同様の要請を行うことを予定しています。
 当該要請は、各金融機関の自主的な取組みを促すものであるため、仮に要請に基づく取組みを実施しない金融機関があったとしても、当該金融機関に対し、特段の行政措置をとることは考えていません。しかしながら、利用者満足度の向上にむけ、各金融機関において、積極的に取組まれることを期待しています。


.終わりに
 利用者の声を把握し、それを踏まえた経営を行うことが重要であることは言うまでもないことと考えられますが、「民間金融機関が自主的に行うことではないか」という意見も、懇談会等で寄せられたところであります。金融庁としても、こうした意見や各金融機関で実際に行われている自主的な取組みを尊重するところではありますが、将来の望ましい金融システムを目指すうえで、各金融機関に、これまで以上に、利用者満足度向上に向けた自主的な特色ある取組みを行い、その業務や金融商品・サービスの改善を行うことが望ましい、また、行った取組みについてはできる限り公表し、広く利用者に情報提供することが望ましいと考えています。
 具体的には、各金融機関が、利用者の声を生かして業務改善を行い、さらにその改善内容を公表することによって、利用者保護の更なる充実が図られることが期待されます。また、マーケティングの一環として利用者のニーズを掘り起こすことによって、各金融機関が特色ある金融商品・サービスを開発する等の改善を行い、その内容を、各金融機関の経営判断のもと、できる限り公表することによって、利用者にとって手軽に分かりやすく自分の望む金融商品・サービスを受けることができるようになることが期待されます。
 金融庁としては、各金融機関に対し、こうした取組みをなお一層推進するよう促すこと等によって、金融改革プログラムの目標とする、利用者の満足度の高い金融システムの実現に向けた環境整備を図って参ります。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「利用者満足度向上に向けた懇談会の概要」(平成17年8月9日)にアクセスしてください。

(別添)PDF「利用者満足度向上に向けた懇談会」概要(ポイント)

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