17年5月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について


.目的・経緯

   「中小企業金融モニタリング」は、中小企業金融円滑化に向けた取組みの一環として、全国47都道府県の財務局・財務事務所職員が、商工会議所等の協力を得て、中小企業から見た金融機関に関する具体的問題点について的確に把握するために四半期毎に実施しているものです。
 本年8月12日、平成17年3月29日公表の「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」において、「中小企業金融モニタリング」の更なる活用を図る一環として、当該モニタリングの公表が盛り込まれたことを踏まえ、平成17年5月に実施したモニタリングの結果について公表したものです。
 金融庁としては、今後とも本モニタリングを通じて中小企業金融の現場の声を積極的に把握するとともに、得られた情報について、金融機関の検査・監督の実施に当たり重要な情報として活用するなど、中小企業金融の円滑化に向けて引き続き努力していきます。
 なお、結果については今後も継続的に公表する予定です。
 
.モニタリング聴取先

   全国47都道府県の商工会議所、商工会連合会、商工会、中小企業団体中央会、商工会議所連合会、中小企業家同友会等171団体、390人からヒアリングを行いました。

モニタリング聴取先
 
.質問調査事項

   今回実施した中小企業金融モニタリングでの主な質問事項は以下のとおりです。
 
   中小企業金融に関する問題の最近3ヶ月間の動向
   中小企業が金融面で直面する問題点(最近3ヶ月間の相談事例に共通するもの)の概観
   中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例
 
金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編](改訂版)の中小企業への浸透状況
 
 (注1 )当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではないため、ヒアリング対象数、対象先が回毎に一致しない場合があります。
 (注2 )一つのヒアリング先から複数の意見が寄せられることもあるため、ヒアリング実施先件数と回答件数は一致しません。
 
.質問調査に対する回答

 
(1)  中小企業金融に関する問題の最近3ヶ月間の動向

 中小企業金融に関する最近3ヶ月間の中小企業に対する貸出態度の動向は以下のとおりです。

中小企業金融に関する問題の最近3ヶ月間の動向

 この表を見ると、北陸、近畿において、積極的、やや積極的との意見が過半数を超えています。
 また、各業態毎の最近3ヶ月の動向を整理すると以下のとおりとなります。

各業態毎の最近3ヶ月の動向

 そのうち、「最近の中小企業への貸出姿勢の傾向」で4・5を選択したものの内訳は以下のとおりです。

各業態毎の最近3ヶ月の動向

 
 (注1 )当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではないため、ヒアリング対象数、対象先が回毎に一致しない場合があります。
 (注2 )一つのヒアリング先から複数の意見が寄せられることもあるため、ヒアリング実施先件数と回答件数は一致しません。
 

(2)

 中小企業が金融面で直面する問題点(最近3ヶ月間の相談事例に共通するもの)の概観
 中小企業が金融面で直面する問題点を以下に掲げる8項目に整理した結果は、以下のとおりです。

中小企業が金融面で直面する問題点(最近3ヶ月間の相談事例に共通するもの)の概観

 
 (注1 )当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではないため、ヒアリング対象数、対象先が回毎に一致しない場合があります。
 (注2 )一つのヒアリング先から複数の意見が寄せられることもあるため、ヒアリング実施先件数と回答件数は一致しません。
 


.融資姿勢に関連して寄せられた意見
 
 貸し渋り・貸し剥がしといった声は聞かれない。(北海道、関東、近畿、北陸、東海)
 良い先には複数の金融機関が頻繁に訪問し、必ずしも必要でない資金まで借入要請がなされているようだ。一方、そうでない先には訪問も少なく、だんだん疎遠になってきており、そういった先の状況把握が薄らいできている。(関東、近畿、中国、四国、福岡、九州)
 金融機関は企業の選別を強めており、融資姿勢の二極化傾向がみられる。(北海道、東北、関東)


.担保・保証に関連して寄せられた意見
 
 民間信用保証会社を活用した保証融資にも取り組むなど積極的な取り組みもみられる。(近畿)
 無担保・無保証の新規開業融資を実行している。(関東、福岡、四国、九州)
 金融機関の担保や保証に依存する融資姿勢に変化がみられない。(北海道、近畿、中国、福岡、沖縄)
 地価下落による担保価値の下落や、保証能力が低下していることが問題となっている。(東北、九州)
 事業者は担保・保証に過度に依存しない融資への取組みを求めている。(九州)
 無担保・無保証の融資や制度融資は増えてきたものの融資審査はより厳しくなった。(福岡)


.経営指導・創業再生支援に関連して寄せられた意見
 
 今後期待ができる企業に対しては、融資を柔軟に行い、企業を指導し、育てているように思う。(四国、福岡、北陸)
 業績が悪い先についても、代表者の資質や、資産、負債を精査することによって、何とか融資しようとする姿勢は感じられる。(四国、九州、北陸)
 中小企業の支援を目的として、商工会議所と業務提携を結ぶ方向で具体的に動き出している金融機関があるなど、リレバンの取り組みが前進している。(北海道、東海、北陸)
 中小零細企業の経営者は長期的展望を描ける状況になく、金融機関は経営指導にもっと力を入れてほしい。(東北)
 経営指導や再生支援に関する金融機関の対応は依然不十分で、施策の営業店への浸透が図られていない。(北海道)


.融資の際の説明態勢に関連して寄せられた意見
 
 接客等について、以前より良くなった。(四国)
 借入れの際の企業に対する金融機関の説明責任はきちんと果たされている。(東海)
 改善すべき点についての説明・アドバイスが不十分である。(北海道、近畿、四国、九州)
 融資を断る際の金融機関の見方、立場等の説明に更なる改善が必要である。(九州)
 自動審査システムを活用する場合、融資条件で制約が課せられていることがあるが、その際の説明が十分でない。(中国)


.金融機関の資質・能力に関連して寄せられた意見
 
 経営計画の策定に弾力的かつ根気よく取り組んでいる。(東海、四国)
 企業の財務内容が悪化している中にあって、金融機関にとっても融資可否の判断が難しいのではないか。(東北)
 融資審査では過去の実績(決算書)や自己資金の有無が重視されており、将来性等をみていない。(北海道、九州、福岡)
 借入金が過大で返済不能により延滞が発生している事業者に対し、金融機関同士の連携がないことから有効な支援が講じられないケースがある。(関東)
 創業支援への融資について、事業計画に対する「目利き能力」が不足しているため、融資の実行が難しい。(中国)


.融資の際の審査期間に関連して寄せられた意見
 
 審査手続き関連は以前の提出書類の煩雑さが改善されてきている。(九州)
 金融機関と保証協会と提携して販売を始めたスコアリングローンが審査期間の短期化で好評である。(関東)
 金融機関が融資申し込み後の返答をなかなかせず、そのままの状態で引き伸ばすような傾向が最近よくみられる。(関東、四国、九州)
 個人情報保護法の施行に伴い、経営相談に必要な時間が伸びている。(北陸)


.金利に関連して寄せられた意見
 
 優良貸出先に対する金融機関同士の融資競争は激化しており、金利は低下の傾向。(東海)
 業況の悪化などにより、金利面で不利益を被ることがある。(福岡、沖縄)
 銀行での借入時の利率について、提示された利率に借り手側が何もクレームをつけなければ高い利率になってしまう。(関東、沖縄)
 中小企業への資金供給は円滑であるが、金融機関の貸出金利が高いため、中小企業は借入が難しい状況にある。(中国)


.その他地域に特徴が見られた意見
 
 佐渡は人口減、観光低迷による資金需要の減少、事業者の世代交代などの問題があるほか、行政合併による大口の経済需要の減少などから、財務内容が悪化しているところが多い。観光業者は、中越地震の風評被害があり、佐渡市の緊急融資を受けたところが多いが、一様に財務内容は厳しい。(関東)


.借り手側に関する問題として寄せられた意見
 
 企業側の借入抑制姿勢が強くなっている。(北海道)
 信憑性のない決算書、具体性のない事業計画、自己資金ゼロなど、事業者側に問題のある場合がみられる。(近畿、九州)
 金融機関が財務内容中心の審査・経営支援となっているが、財務内容を示すことができない中小企業者が多い。(北陸)
 銀行から求められる資料作成をいやがって、高金利の借入が増えている。(北陸、福岡)
 
.中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例

   中小企業金融モニタリングでは、中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例として、毎回、検査・監督に関する特定のテーマを設定し調査を行っています。今回の質問調査事項は、以下のとおりです。

 
金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編](改訂版)の中小企業への浸透状況について

 
寄せられた意見】
 
 金融検査マニュアル別冊の存在自体の周知は図られてきているものの、内容の理解にはまだ至っていない。
 リーフレット類を配布するよりも、新聞等のマスメディアを活用して周知する方がはるかに有効である。
 中小企業経営者に長大で難解な資料を読めというのは無理。1〜2分で理解できる漫画を使ったような簡単なリーフレット類が良い。
 広報用パンフレットをよく目にするなど、取組みは承知しており、各企業にも一定の浸透はしているのではないか。
 
.金融庁における活用状況

 
(1)  ヒアリングの実施
 中小企業金融モニタリングで得られた個別金融機関に関する情報を活用し、当該金融機関の対応方針、態勢面等についてヒアリングを行いました。

(2)

 意見交換会における要請
 金融庁幹部と業界団体代表者の意見交換会(毎月開催)等において、中小企業金融モニタリングで得られた事例について紹介し、事業からのキャッシュフローを重視し、過度に担保・保証に依存しない融資を含む健全な中小企業に対する資金供給の一層の円滑化や、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた、顧客の理解と納得を得るような十分な説明の実施、金融検査マニュアル別冊の周知等について要請を行っています。
 
.財務局における活用状況

 
(1)  ヒアリングの実施
 中小企業金融モニタリングで得られた個別金融機関に関する情報を活用し、当該金融機関の対応方針、態勢面等についてヒアリングを行いました。

(2)

 地域金融円滑化会議の活用等
 顧客への説明態勢の整備や相談・苦情処理機能の強化のために都道府県毎に設置(金融当局、中小・地域金融機関及び関係業界団体から構成)し、半期毎に開催している「地域金融円滑化会議」や、財務局幹部等と金融機関代表者との面談など諸々の機会を通じて、注意喚起を行うとともに、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの要請を行っています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「17年5月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について」(平成17年8月12日)にアクセスしてください。

主要行等向けの総合的な監督指針(案)について

 金融庁は去る8月19日、PDF主要行等向けの総合的な監督指針(案)を作成・公表し、パブリックコメントに付しました。
 わが国経済に大きな影響力を有し、国際的に業務展開を行っているケースも多い主要行等(注)には、世界最高水準の金融サービスを提供しわが国経済の発展と国民生活の向上に寄与することが期待されています。
 このためには、金融仲介において不可欠な要素である高度なリスク管理を行うとともに、利用者保護と国際競争力の向上を目指し、その業態に相応しい適切な経営管理(ガバナンス)を行うことが必要です。

 (注

)主要行等とは、主要11行(東京三菱銀行、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、三井住友銀行、UFJ銀行、りそな銀行、住友信託銀行、中央三井信託銀行、みずほ信託銀行、三菱信託銀行、UFJ信託銀行)並びに新生銀行及びあおぞら銀行を指します。

 PDF主要行等向けの総合的な監督指針(案)においては、このよう考え方に基づき、既に策定されているPDF「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の内容を踏まえつつ、世界のリーディングバンクに期待される水準を念頭に置き、主要行等の監督を担当する職員の事務の利便に資するよう、主要行等の監督事務に関し、その基本的考え方、事務処理上の留意点、監督上の評価項目について、明確化・体系化したものです。

 内容的には、主要行等の特性等を踏まえ、現行のPDF「中小・地域金融機関向け監督指針」等に比して、
(1)  経営管理(ガバナンス)、自己資本の充実、情報開示、システムリスク管理及び銀行業への新規参入の取扱い、等について記述を拡充するとともに、
(2)  収益性の改善、統合リスク管理、信用リスク管理(早期の不良債権の認知及び健全債権化等を含む。)システム統合リスク管理、インターネットバンキング、海外業務管理及び外国銀行支店の監督、等について新たに規定しています。

 本監督指針については、いただいたご意見を踏まえ、最終的なとりまとめを進め、公表する予定としております。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「「主要行等向けの総合的な監督指針」(案)に対する意見募集の実施について」(平成17年8月19日)にアクセスして下さい。(意見募集は、9月20日をもって〆切ました。)

(別添)PDF主要行等向けの総合的な監督指針(案)の概要

子ども霞が関見学デーについて

 去る8月24日(水)と25日(木)の2日間、金融庁において「子ども霞が関見学デー」が開催されました。
 「子ども霞が関見学デー」とは、主催の文部科学省をはじめとした各府省庁等が連携して、業務説明や省内見学などを行うことにより、親子のふれあいを深め、子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会とするとともに、あわせて各府省庁等の施策に対する理解の増進を図ることを目的としております。
 金融庁としても、昨年からこの見学デーに参加しており、この機会に暮らしの中の金融の動きや金融庁の仕事について理解を深めてもらうことを目的としております。
 今年の見学デーには、事前に参加者募集を行い、24日22名、25日は台風接近中のあいにくの天候でありましたが、20名の子どもたちに参加していただきました。
 両日とも、午前10時に9階特別会議室に集合いただき、オリエンテーション及び業務説明等の説明を行い、金融庁の組織について、広報室長から説明を行いました。
 その後、大臣室を見学し、参加者は大臣の椅子に着席し国会議事堂をバックに記念撮影をするなど思い思いのポーズで撮影され、室内を見学しておりました。
 大臣室見学終了後、会見室に場所を移動し、24日はキャスターの生島ヒロシ先生、25日は金融知力普及協会の有明三樹子先生による「金融経済教育」に関する講話をいただきました。
 24日の生島ヒロシ先生は、アントニオ猪木さんの入場テーマとともに登場し、まず手を使った体操で参加者の緊張を和らげ、身近な食べ物や商品、会社を例に金融経済の話をされました。
 25日の有明三樹子先生からは、「調べてみよう!キミとお金のかかわり方」と題し、クイズ形式(例:1万円札をつくるのにいくらかかるのか?など)でお金に関する話をいただきました。
 講話終了後、審判廷に会場を移動し、子どもたちが抽選により「審判官」や「指定職員」、「被審人・代理人」となりインサイダー取引などで課徴金を科すかどうかを決める「模擬審判」を行いました。この模様については、マスコミなどにも取材され、参加者からも好評を得て、見学デーの日程を終えました。
 また、8月24日25日の2日間、合同庁舎1階ロビーにて行いました各府省庁合同スタンプラリーについては、延べ51名のお子さんにお越しいただき、金融庁スタンプの押印をいただきました。

 子どもたちや引率者に記入いただいたアンケートからは、「全体として面白かった、参考になった」との評価が多く寄せられ、特に「模擬審判体験」や「講話」に関して、勉強になった、おもろしかった等の意見が寄せられました。
 他方、子どもたちは通学している学校において、「金融」についての話を聞いたことがほとんどない実情が明らかになりました。
 今回いただきました様々な参加者の声を次回に生かせるよう、また、子どもたちに金融の動きや金融庁の仕事について興味を持ってもらい、理解を深めてもらえるよう、次回もより良いものにしていきたいと思います。

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