アクセスFSA 第37号 (2005年12月)
お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウムにおいて基調講演を行う後藤田政務官(12月17日) 中小企業金融円滑化会議において挨拶する与謝野大臣(12月13日)
お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウムにおいて基調講演を行う後藤田政務官 中小企業金融円滑化会議において挨拶する与謝野大臣
→内容は次号(第38号)掲載予定 (12月17日) (12月13日)
目 次
【トピックス】
 ○  銀行窓販に関する保険法令解釈事例集の公表について
 ○  損害保険会社の付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果について
 ○  半期報告書の作成・提出に際しての留意事項について
 ○  平成17年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について
 ○  主要行の平成17年度中間決算について≪速報ベース≫
 ○  バーゼルII第二の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)の実施方針について
【法令解説】
 ○  証券取引法等の一部を改正する法律の12月施行に伴う政府令の概要
【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「課徴金制度」、「審判手続」
【金融ここが聞きたい!】
【お知らせ】
 ○  未公開株購入の勧誘に対する注意喚起文のホームページの掲載について
 ○  お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウムin千葉の開催について
 ○  大臣・副大臣・政務官への質問募集中
 ○  新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内
【11月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
銀行窓販に関する保険法令解釈事例集の公表について

 銀行等による保険販売(銀行窓販)については、平成9年6月の金融審議会報告「保険業法の在り方の見直しについて」を踏まえ、平成13年4月から段階的に見直し(販売できる保険商品の拡大等)が行われてきており、この度、平成19年12月の全面解禁を展望しつつ、保険業法施行規則等の改正(平成17年7月8日公布、同年12月22日施行)が行われました。
 当該施行規則等の改正の概要については、「アクセスFSA」第32号に掲載されていますので、こちらもアクセスしてください。

 当該施行規則等の改正を受けて、銀行等において保険募集の体制・整備が進められるなか、法令等の解釈が必要な事例が生じてきており、その中から特に関係者に周知する必要性が高いと認められた事例について、今般、「銀行窓販に関する法令解釈事例集」として公表することとしました。
 まずは4つの事例を取り上げましたが、今後も公表の必要があると認められた事例については、随時追加していくことを考えています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「銀行窓販に関する保険法令解釈事例集の公表について」(平成17年11月28日)にアクセスしてください。

 


損害保険会社の付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果について
 
1.報告徴求の概要

 適切な保険金支払を行っていくことは、保険会社として損害保険事業を運営していく上で必要不可欠なものです。しかしながら、先般、損害保険各社において、臨時費用保険金等を中心とする付随的な保険金の支払漏れが多数判明し、損害保険事業の信頼を損なう事象が発生しました。


(注)


付随的な保険金の支払漏れとは、保険事故が発生し、主たる保険金の支払いは行われているにもかかわらず、臨時費用保険金等の付随的な保険金(見舞金、香典、代車費用等)について、契約者から請求が無かったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかった場合を言います。


 このような事態を踏まえ、9月30日に、全ての損害保険会社(48社)に対し、
 過去3年間(平成14年4月から17年6月)において、保険金支払事由が発生した事案における付随的な保険金の支払漏れの件数及びその支払完了状況
 保険金等支払管理態勢のあり方も含め、付随的な保険金の支払漏れが発生した原因分析
 発生原因分析を踏まえた再発防止策
について、保険業法に基づき10月14日を期限として、その結果について報告を求めたところです。
 
2.付随的な保険金の支払漏れに係る調査の結果

(1)  付随的な保険金の支払漏れ件数・金額及び支払状況
 全ての損害保険会社48社のうち26社において、付随的な保険金について支払漏れが発生しており、支払漏れ件数は総計で18万614件、金額は約84億3百万円にのぼります。また、一件当たりの平均金額は4万6千円でした。
 なお、付随的な保険金の支払漏れがないとの報告を受けた22社は、付随的な保険金をそもそも取扱ってない、あるいは取扱っている場合でも取扱件数が少数にとどまっている会社です。
 支払漏れ発生件数で見ると、グラフ1のとおり、約9割が自動車保険の臨時費用保険金等に関するものとなっています。
 

【グラフ1:保険種類別の発生件数の状況】
【グラフ1:保険種類別の発生件数の状況】
【グラフ2:自動車の内訳】 自動車の内訳
【グラフ2:自動車の内訳】

 

【参考】

◆ 相手への賠償 ◆

 「対物賠償臨時費用」:

他人の財物に損害を与えた場合、相手方へのお詫びの際の菓子折り代等の為に支払われる保険金。

 「対人賠償臨時費用」:

他人を死傷させた場合に、相手方への見舞金等の為に支払われる保険金。

◆ 契約者の補償 ◆

 「搭乗者傷害保険金」:

乗員(運転者及び同乗者)が死傷した場合に、死傷の程度に応じて定額又は定率で支払われる保険金。

 「車両保険代車費用」:

車の修理時等に、代替の車両を使用した費用や他の交通手段の利用等に要した費用の為に支払われる保険金。

 「車両保険修理時諸費用」:

主契約の復旧修理分でカバーされていない、例えば、事故にともなう現場清掃や近隣へのお詫び等の為に支払われる保険金。


(2)

 付随的な保険金の支払漏れが発生した態勢面の問題
 付随的な保険金の支払漏れが判明した損害保険会社においては、以下のような問題点が認められました。
 
 商品開発時の社内連携の問題
 
 商品開発部門と関連部門が商品発売・改定前に協議する際、商品内容の理解の徹底、システム対応等、支払体制の事前準備が不十分。
 関連部門間の商品開発に係る協議事項や新商品の開発・販売に係るスケジュール等についてルール化がされていない。
 顧客に対する周知の徹底の不足
 
 主たる保険金に加えてどのような保険金が付随しているのかについて、商品の説明・案内を十分に行っていない。
 主たる保険金に加えて、付随的な保険金支払の事由が生じた時に、保険金請求についての説明・案内が明確でない。
 支払部門における問題
 
 損害額の認定や示談交渉等主たる保険金の支払に関連する事務に担当者の注意が集中し、保険契約の内容や契約者からの保険金請求の確認及び案内が不十分。
 付随的な保険金の支払漏れ防止の観点から支払部門における管理者等が行う二次的なチェック体制が不十分。
 査定マニュアル等の内容が体系的・網羅的でない。
 事故が発生すれば、実際に費用が生じているか否かに拘らず、一定額の臨時費用保険金が支払われる約款内容となっていたが、典型的な損害保険金の支払と同様に、実際に臨時費用が生じていなければ、支払要件を満たさない、という誤解があった。
 同一事故においても人身傷害、搭乗者傷害、自損事故の各保険金項目を異なる職員が担当する場合において、職員間の相互連携がなかった。また一方で、一人の担当者が付保されている全保険金項目を担当する場合であっても、示談等の事務が発生する対人賠償等を含む保険金の事故登録だけ行って、搭乗者傷害の事故登録を失念していた。
 システムの問題
 
 保険内容と事故内容が照合できるシステム、支払漏れ時にはアラームが作動するシステムなど支払漏れをチェック・防止したり、支払を促すようなシステム対応が不十分。
 保険金の項目によっては、システム上のチェックが行われる体制となっておらず、専ら人的なチェックに頼っている。
 点検・内部監査等の問題
 
 付随的な保険金の支払漏れ防止の観点からの点検・監査項目が欠如。
 点検・監査結果の経営陣への報告が不十分。
 一部の項目の保険金で支払漏れ等が判明しても、他の項目の保険金も同様の支払漏れがないかどうかの点検を十分に行っていない。

(3)

 各社が講じようとしている再発防止策
 各社においては、上記のような発生原因分析を踏まえ、各社とも以下のような再発防止策を講じようとしております。
 
 商品開発時の担当横断的な体制の構築
 
 商品開発時における支払漏れを防止する為の検討項目や関連部門との連携等を図る為の商品開発の進捗管理ルール等を規定。
 支払事務にかかる手続き・書式等の見直し
 
 支払管理者及び担当者が使う査定マニュアルや支払内容確認のチェックシートに付随的な保険金項目を新たに追加し、注意を喚起する等の見直し。
 研修等の実施
 
 付随的な保険金の支払漏れ防止に関する研修を、支払部門を中心とした職員に対して実施。
 システム対応
 
 付随的な保険金の支払漏れに対する警告表示機能を追加。
 事後点検の項目追加・定期化
 
 業務点検・内部監査を実施する際の検証項目に付随的な保険金の支払態勢を追加。

 以上のような再発防止策に加え、次のような防止策を講じようとしている会社もみられます。
 商品開発時の担当横断的な体制の構築については、商品開発にあたり、保険金支払実務や品質管理の観点から検討を行う為に、損害サービス部門、商品開発部門、システム部門等の役員等からなる専門組織を設置。
 顧客に対する周知徹底を図るため、顧客と保険会社間で支払保険金の内容がチェックできるようにするため、保険金請求書の記載内容の見直し。
 知識の定着を検証する確認テストを支払部門を中心とした職員に対して実施。
 システム対応については、付随的な保険金の支払要否等の確認無しには支払業務が終わらない機能を導入。
 支払漏れの可能性がある案件をリストアップし、支払漏れがないか定期的な業務点検・内部監査を実施。
 
3.金融庁の対応

 金融庁としては、今回の支払漏れの発生原因は、個別事案の処理に関するものに留まらず、付随的な保険金にかかる商品開発から支払管理に至る態勢の不備に基づくものであり、経営管理(ガバナンス)態勢や内部管理態勢の欠陥といった構造的な問題に起因するものと認められることから、11月25日に支払漏れが発生した26社に対して、保険業法第132条第1項等の規定に基づき以下の点について業務改善命令を発出しました。
(1) 経営管理(ガバナンス)態勢の改善・強化
(2) 顧客に対する説明態勢の見直し・整備
(3) 商品開発態勢の見直し・整備
(4) 支払管理態勢の検証・見直し  等
 また、付随的な保険金の支払漏れがないとの報告を受けた22社に対しても、保険金の支払に関して、同様の態勢面の見直し・整備について、要請を行いました。
 
4.金融庁における今後の対応

 金融庁としては、これまでの生命保険会社、損害保険会社に対する報告徴求により把握した保険金支払に係る問題点を踏まえ、今後とも、検査・監督を通じて各社における保険金等支払管理態勢の改善・整備を促していくとともに、保険金等の不適切な不払い、付随的な保険金の支払漏れという重大な問題を招いた原因の分析結果を踏まえ、保険会社向けの総合的な監督指針の改訂を含めた方策を検討していきます。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「損害保険会社の付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果について(平成17年11月25日)」にアクセスしてください。

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