半期報告書の作成・提出に際しての留意事項について

 平成17年9月中間決算会社の半期報告書を念頭において、新たに開示する必要が生じた事項を中心に、半期報告書の作成に当たり留意すべき事項について集約・整理しました。
 該当企業にあっては、内容を十分理解のうえ半期報告書を作成し、各財務局及び福岡財務支局並びに沖縄総合事務局へ提出願います。


.固定資産の減損会計の適用について
 固定資産の減損会計の適用については、既に早期に適用している会社もありますが、平成17年4月1日以後に開始する事業年度から全ての提出会社に適用になりました。


.企業内容等の開示に関する内閣府令の改正について
 平成16年12月24日に金融庁が公表した「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応(第二弾)について」に盛り込まれた制度改正に関する事項に関して、企業内容等の開示に関する内閣府令の改正(平成17年3月31日内閣府令第34号)により、半期報告書の記載上の注意の明確化がされました。


.添付書類(代表者による適正性の確認)について
 代表者による適正性の確認については、平成14年12月16日の金融審議会第一部会報告において、「市場において、有価証券報告書等の適正性の一層の確保に向けた経営者の姿勢を自らの判断において明確に示すことにより、投資家などによる信認の向上が図られ、ひいては、市場への信頼を高めることとなるものと考えられる。この観点から、有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する代表者の確認を求めることが適切である。」とされたことを受け、制度の整備が図られたものです。
 この確認書の提出については任意のものとなっていますが、経営者自らが市場における信頼性の向上を積極的に図っていくためにも、この制度の一層の活用をお願いします。


 詳しくは、金融庁ホームページの「市場の信頼性確保」から「半期報告書の作成・提出に際しての留意事項」(平成17年11月25日) にアクセスしてください。

平成17年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について


.重点審査の概要
 重点審査については、各財務局及び福岡財務支局並びに沖縄総合事務局(以下、財務局等という。)にて、決算期が集中する3月期決算会社を対象とし、開示上重要と思われる事項について、有価証券報告書提出会社から有価証券報告書及び半期報告書の提出に合わせて「調査票」を提出して頂き、これを基に審査を実施してきています。
 今回は、平成17年3月期に係る有価証券報告書(平成17年6月末提出期限)を提出した全国3,335社を対象として、
 (1)「コーポレート・ガバナンスの状況」
 (2)「提出会社の親会社等の情報」
の2項目の開示状況について各開示企業を所管する財務局等にて重点審査を実施しました。


.審査結果の概要
 財務局等において審査を行った結果、記載内容が不適切と認められた事項がある先に対し、訂正を求め、167社から訂正報告書が提出されました。
 重点審査を行った結果認められた、記載内容が不適切な主な事例は以下のとおりです。
 

(1)

 コーポレート・ガバナンスの状況
項目 内容
(1) 内部監査や監査役監査の組織があるが、その記載がないもの
内部監査や監査役監査の組織は記載されているが、その人員が記載されていないものや、監査の手続が記載されていないもの
内部監査、監査役監査及び会計監査において、必要に応じ連携を行っているが、その相互連携について記載がないもの
(2) 人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係のある社外取締役及び社外監査役がいるにもかかわらず、その記載がないもの
(3) 業務を執行した公認会計士の氏名や所属する監査法人名について記載がないもの
監査証明を個人会計士が行っている場合で、審査体制について記載がないもの
監査業務に係る補助者がいるにもかかわらず、その記載がないもの
監査関連業務を連続して7年を超えて行っている会計監査人がいるにもかかわらず、その監査年数の記載がないもの

(2)

 提出会社の親会社等の情報について
(1) 「提出会社の親会社等の情報」そのものの記載がないもの
(5) 親会社等が上場している場合にはその取引所名を記載することとされているが、その記載がないもの


.おわりに
 今回の重点審査では、「コーポレート・ガバナンスの状況」及び「提出会社の親会社等の情報」の開示項目のうち、記載事項の一部が記載漏れとなっているなど不適切な事例が多数認められました。有価証券報告書の提出にあたっては、投資者保護の観点から、有用な投資判断材料として法令上開示が求められている趣旨を理解頂き、記載上の注意を十分確認の上、該当する事項について適切に開示を行うことをお願いします。


 詳しくは、金融庁ホームページの「市場の信頼性確保」から「平成17年3月期に係る有価証券報告書の重点審査結果について」(平成17年11月25日) にアクセスしてください。

主要行の平成17年度中間決算について≪速報ベース≫

 主要行の平成17年度中間決算発表を受けて、金融庁では、各行の発表した計数等を集計し、11月24日に公表しました。
 以下、主要行の平成17年度中間決算の概要について説明します。


.損益の状況
 実質業務純益は、全体で、16年9月期(1.8兆円)と同レベルの2.0兆円となりました。
 また、今中間決算においては、主要行全体の当期利益が1.6兆円となり、大幅な増益となると同時に、全ての主要行で黒字計上となりました。これは、不良債権処分損について、貸出金償却や貸倒引当金繰入れが減少する一方、貸倒引当金戻入れが増加し、16年9月期(▲1.1兆円)から益に転じて、0.2兆円となったという特殊要因が大きく寄与していると考えられます。


.自己資本比率の状況について
 主要行の自己資本比率(単体加重平均ベース)は、11.6%となり、17年3月期の11.6%から横ばいとなりました。


.不良債権の状況について
 不良債権(金融再生法開示債権)残高は、全体で6.1兆円となり、17年3月期(7.4兆円)と比べ1.3兆円減少しました。
 不良債権比率は、2.4%と17年3月期(2.9%)に比べ0.5%ポイント程度低下しました。また、全ての主要行で不良債権比率は低下しており、各行の資産の健全化が、引き続き着実に図られていると考えられます。


 主要行の平成17年度中間決算の計数等については、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表資料」から「「主要行の平成17年度中間決算について≪速報ベース≫」(平成17年11月24日) にアクセスしてください。

バーゼルII第二の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)の実施方針について

 金融庁は、2007年3月末から開始されるバーゼルII(新しい自己資本比率規制)の枠組みの一環として、「第二の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)」にかかる実施方針を公表しました。


.バーゼルII「第二の柱」とは
 バーゼルIIにおいては、「第一の柱(最低所要自己資本比率)」とは別に、「第二の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)」として、金融機関自らがリスクを適切に管理し、リスクに見合う適正な自己資本を維持するという「自己管理型」のリスク管理と自己資本の充実の取り組みを期待すること、また当局は、各金融機関が自発的に創意工夫をしたリスク管理の方法について検証・評価を行い、必要に応じて適切な監督上の措置を講ずること等が求められています。
 

(参考)

バーゼル銀行監督委員会の最終報告書『自己資本の測定と基準に関する国際的統一化〜改訂された枠組』(2004年6月)においては、バーゼルII第二の柱に関し、以下の四つの主要原則が定められています。

 
原則1: 銀行は、自行のリスク・プロファイルに照らした全体的な自己資本充実度を評価するプロセスと、自己資本水準の維持のための戦略を有するべきである。
原則2: 監督当局は、銀行が規制上の自己資本比率を満たしているかどうかを自らモニター・検証する能力があるかどうかを検証し評価することに加え、銀行の自己資本充実度についての内部的な評価や戦略を検証し評価すべきである。監督当局はこのプロセスの結果に満足できない場合、適切な監督上の措置を講ずるべきである。
原則3: 監督当局は、銀行が最低所要自己資本比率以上の水準で活動することを期待すべきであり、最低水準を超える自己資本を保有することを要求する能力を有しているべきである。
原則4: 監督当局は、銀行の自己資本がそのリスク・プロファイルに見合って必要とされる最低水準以下に低下することを防止するために早期に介入することを目指すべきであり、自己資本が維持されない、あるいは回復されない場合には早急な改善措置を求めるべきである。

 バーゼルII第二の柱に関する金融庁の対応は、
 
(1)  監督上の着眼点を示した上で金融機関による統合的なリスク管理に向けた取組みを促進(上記参考・原則1への対応)
(2)  統合的なリスク管理態勢を検証(原則2への対応)
(3)  個々のリスクについて早期警戒線を設定(原則3,4への対応)
という三段構えの監督の実施により実現することとしています。
 バーゼルII第二の柱を踏まえた金融行政の最終的な目標は、各金融機関がその規模やリスク・プロファイル等を考慮に入れつつ、自発的にリスク管理の高度化を図ることにより健全性を維持・向上することです。後述するバーゼルII第三の柱(市場規律)に向けた取組み等と併せてこうした取組みを促すことは、自己責任原則と市場規律を基軸とし、監督当局はこれらを補完するものとして機能するという我が国金融監督の原則にも整合的であると考えられます。


.第一の柱(最低所要自己資本比率)との関係
 バーゼルIIは、金融機関の健全性についての重要な指標である自己資本比率の計算方法の精緻化を求める第一の柱、金融機関の自己管理型のリスク管理の促進と当局による検証を求める第二の柱、及び市場規律の強化を求める第三の柱から構成され、それぞれが金融機関の健全性確保の目的に向け相互補完的な役割を果たすものです。
 このうち、第一の柱については、現行の自己資本比率規制(バーゼルI)の持つ限界や問題点を改善すべく、リスク計測の精緻化やリスク管理の高度化への対応を図るものです。
 

(注)

新しい自己資本比率規制に係る告示案は金融庁から二度(1)(平成16年10月28日)(2)(平成17年3月31日)にわたりパブリック・コメントに付されています。


 第二の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)は、金融機関自らその業務の規模やリスク・プロファイル等に応じて、第一の柱の算式に含まれないリスクも含めた、より幅広い多様なリスクを総体として把握・管理するという「自己管理型」のリスク管理と自己資本の充実の取り組みを期待し、当局の対応としても、こうした金融機関の自発的な取り組みを最大限尊重しつつ、検証・評価を行い、必要に応じてヒアリング・報告徴求等の適切な監督上の措置を求めることにより、第一の柱を補完し、金融機関により的確な自己管理型のリスク管理を促そうとするものです。


.統合的なリスク管理態勢の評価
 こうしたバーゼルII第二の柱についての認識に基づき、まずは金融庁における監督事務の基本的考え方等を整理し公表している「監督指針」の中に統合的なリスク管理態勢の検証に当たっての着眼点を盛り込み、各金融機関が当該着眼点等を踏まえて、自らの業務の規模やリスク・プロファイル等に応じて適切に統合的なリスク管理を行う態勢を構築し、リスクに応じた自己資本の充実度を評価するプロセスを構築することを促すこととします。
 当局の検証・評価の枠組みとしては、そうした各金融機関の自発的な取組みを最大限尊重しつつ、以下に示す『統合的なリスク管理態勢の評価』によって、各金融機関の統合的なリスク管理態勢の実効性等について、ヒアリング等を通じて把握・検証・評価することとします。
『統合的なリスク管理態勢の評価』
 金融仲介においてリスクテイクは不可欠な一要素であり、金融機関の業務が多様化する中、様々なリスクを総体として把握し、それに対する適切な管理態勢を自発的に整備することは、金融機関の経営にとって益々重要なものとなってきています。金融庁は、従来より金融機関のリスク管理態勢等の検証を行ってきたところでありますが、当局の役割としては、基本的に、金融機関の自己管理型のリスク管理を前提とし、それを補完するものとして位置付けています。バーゼルII第二の柱の実施に当たっても、金融庁は、そうした考え方に則って、金融機関が第一の柱の算式に含まれないリスクも含めて、リスクの総体を適切に把握・管理しているかどうかを検証することとします。
 

 (参考)

バーゼル銀行監督委員会最終報告書によるリスクの例示(リスクをこれに限る趣旨ではありません。)
 信用リスク、オペレーショナル・リスク、市場リスク、銀行勘定の金利リスク、流動性リスクその他のリスク(風評リスク、戦略リスク等)


 金融機関は、自らの業務の規模、特性、複雑さに応じ、明確なリスク管理方針の下、各事業部門等が内包する種々のリスクを総体的・計量的に把握した上で、こうした総体的なリスクに照らして質・量ともに十分な自己資本を維持していく必要があると考えられます。
 

(注)

ベスト・プラクティス(最先端の手法)としては、各事業部門等のリスク量を可能な限り計量的に把握した上で、各事業部門等に対してそのリスク量に応じた資本を自己資本の範囲内で配賦することによって経営体力の範囲内にリスクを制御するとともに、各事業部門等のリスク調整後の収益という量的指標等を用いて、業務計画や収益計画と関連付けた適切なリスク・リターン管理を行うことが求められます。


 こうしたことから、各金融機関が自らの統合的なリスク管理態勢の整備状況及び自己資本の充実度を評価するプロセスを検証するため、先般公表された「主要行等向けの総合的な監督指針」で明らかとなった着眼点等を基本としつつ、「中小・地域金融機関向けの監督指針」の改正を行うこととします。ただし、各金融機関の規模、リスク・プロファイル等に大きな差があることから、規定の画一的な適用とならないよう十分留意し、各金融機関のリスク管理の実態に応じた検証を行っていくことが重要です。その際、各金融機関が想定している内部管理や計量手法を実態に応じて出来るだけ尊重しつつ、必要に応じてリスク管理の高度化を求めていくことします。


.早期警戒制度の活用
 こうした金融機関の自己管理をベースとした監督を補完する観点から、個々のリスク等についても、例えば管理態勢の不備等により、結果としてリスクが顕在化し、金融機関の健全性に影響を与えることのないよう、リスクが顕在化する蓋然性が高いと認められる金融機関に対して重点的な把握を行うなどの、当局の関与を実施する枠組みを設定する必要があります。
 02年に導入された「早期警戒制度」は、最低所要自己資本比率を上回る(早期是正措置の対象とならない)金融機関に対し、収益性、信用リスク、市場リスク、流動性リスクに着目したモニタリングを行い、それぞれについて予め共通の目線で設定した基準に該当することとなった金融機関に対し、ヒアリングや、必要に応じ報告徴求等を実施し、早め早めの経営改善を促す枠組みです。
 こうした早期警戒制度の意義、監督手法を踏まえれば、バーゼルII第二の柱への対応として、金融機関による統合的なリスク管理態勢の構築に向けた自発的な取組みを促し、それを当局が検証する一方で、併せてこうした個々のリスク等に関する具体的指標に着目した既存の早期警戒線を活用し、監督を行っていくことが効果的かつ効率的であり、金融機関側の規制対応コストや行政の継続性の観点からも望ましいと考えられます。

 更に、バーゼルII第二の柱において特に重要な事項とされている「銀行勘定の金利リスク」及び「信用集中リスク」については、個別に管理する必要性が高いことを踏まえ、早期警戒制度の枠組みの中に組み込み、第二の柱の考え方を反映させることとします。
 

(注)

「銀行勘定の金利リスク」、「信用集中リスク」についての詳細は、「バーゼルII第2の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)の実施方針について」(平成17年11月22日)を参照してください。


 早期警戒制度の枠組みにおいては、予め設定した基準に該当した金融機関に対して、当局が原因分析、リスク管理の適切性及び改善策についてヒアリングを行い、必要な場合には銀行法第24条に基づく報告徴求を行うこととなり、また、改善計画を確実に実行する必要があると認められる場合には、銀行法第26条に基づく業務改善命令を実施することとなっています。
 こうした枠組みの下では、銀行勘定の金利リスクや信用集中リスクに関しても、上記の基準に該当する金融機関には、それぞれ「安定性改善措置」又は「信用リスク改善措置」としてヒアリング等の監督上の対応を実施していくこととなりますが、そうした場合であっても、当該金融機関の経営が不健全であると自動的にみなされるものではなく、当局としても、必ずしも直ちに経営改善を求めるものではありません。
 また、改善が必要とされる場合でも、金融市場への影響や中小企業金融の動向等に十分配慮し、改善計画における方法や時期等が適切に選択されるよう、特に留意して監督を行うものとします。
 なお、本制度の運用開始後、必要と認められる場合には、制度のあり方や運用方法等について、弾力的な見直しを行うこととします。


.中小・地域金融機関への対応
 前述したバーゼルII第二の柱の枠組みは、中小・地域金融機関も対象として含むものであり、金融庁の基本的な対応としては、こうした枠組みによって各金融機関における統合的なリスク管理態勢について検証・評価を行い、併せて「銀行勘定の金利リスク」及び「信用集中リスク」を含む早期警戒制度を活用することとします。
 ただし、統合的なリスク管理が本来、大規模かつ複雑なリスクを抱える金融機関において、多様なリスクを総体的に把握・管理することを念頭に置いたものであることを踏まえれば、中小・地域金融機関のうち、規模やリスク・プロファイル等に鑑みて直ちに高いレベルの統合的なリスク管理を求めることが適当でない機関もあると考えられます。そうした金融機関に対しては、原則として早期警戒制度に基づく対応を基本とし、同制度に基づくヒアリングや報告徴求等を実施する中で、その規模、抱えるリスクに応じ、経営改善のために必要と認められる場合に、望ましい適切なレベルの統合的なリスク管理態勢の構築に向けた取組みを促すこととします。


.「第三の柱」について
 バーゼルIIにおいては、開示の充実を通じて市場規律の実効性を高めることとされ、自己資本比率とその内訳、各リスクのリスク量とその計算手法等についての情報開示が求められています。
 こうした第三の柱にかかる新規制案(第一の柱の告示案と併せて、我が国における開示事項案を既にパブリック・コメントに付しています。詳しくは前出の金融庁ホームページを参照してください。)においては、バーゼルIIに準じた開示項目を示すとともに、銀行法等で定める金融機関の情報開示義務を踏まえ、少なくとも年一回(銀行は年二回)はこれらの項目の開示を求めている。更に金融機関の実情に応じて実施してもらうべく半期及び四半期開示についての努力規定を示しています。但し、内部格付手法(信用リスク)または先進的計測手法(オペレーショナル・リスク)を採用する銀行については、半期及び四半期開示も適切に実施する必要があり、各手法の承認要件に盛り込んでいるほか、国際統一基準行もその性格上、同様の取扱いを求めることを予定しています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「バーゼルII第2の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)の実施方針について」(平成17年11月22日)にアクセスしてください。

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