【法令解説】

 このコーナーでは、「証券取引法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令、企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令、継続開示課徴金に関する内閣府令」について、その経緯や内容を詳細に説明します。
 
証券取引法等の一部を改正する法律の12月施行に伴う政府令の概要

 先の第162回通常国会において成立した「証券取引法の一部を改正する法律」(平成17年法律第76号)により、
 (1)  外国会社等の英文による企業情報の開示
 (2)  上場会社の親会社等に対する情報開示の義務付け
 (3)  継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入
 (4)  公開買付制度の見直し
について改正が行われ、17年12月1日の施行に合わせ、所要の政府令の改正を行いました((4)については、17年7月施行済)。
 主な政府令の改正点は次のとおりです。

(1)

 外国会社等の英文による企業情報の開示(英文開示制度の導入)
 
 外国会社報告書(外国の有価証券報告書に類似した書類で英文書類であって外国で開示されているもの)及びその補足書類(日本語による補足資料)の提出期限を、事業年後経過後4ヶ月以内とし、また、17年12月1日から適用される「外国会社報告書」の対象として、外国株価指数連動型上場投資信託(いわゆる外国ETF)に係る有価証券報告書等を定めることとしました(証券取引法施行令)。
 外国会社報告書を提出することができる要件として、有価証券報告書の提出に代えて外国会社報告書を提出することを、金融庁長官が公益又は投資者保護に欠けることがないものとして認める場合等を定めることとしました。また、当該英文開示制度の導入に伴い、証券会社等に対する有価証券の販売先の投資家への説明義務(英文開示が行われる旨の説明)を規定することとしました(特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令、証券会社の行為規制等に関する内閣府令等)。

(2)

 親会社情報の開示制度の導入
 
 親会社等状況報告書(上場会社等の親会社等の株式の所有者別状況等を開示するもの)の提出を義務付ける親会社等の範囲を、上場会社の議決権の過半数を直接又は間接に所有している者と定めるほか、外国会社等が親会社等である場合の提出期限を、親会社等の事業年度経過後3ヶ月以内とすることとしました(証券取引法施行令)。
 親会社等状況報告書の様式を定めるとともに、外国において有価証券報告書に類する書類を提出している場合であって、当該書類を本邦において閲覧することができる状態にある会社は、親会社等状況報告書の提出を要しない旨を定めることとしました(企業内容等の開示に関する内閣府令)。

(3)

 継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入
 
 継続開示課徴金(有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金)について、課徴金額の算定の基準となる株券に準ずる有価証券として投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託の受益証券等を定めるほか、上場又は店頭登録されている算定基準有価証券を発行していない時の課徴金算定基準として、貸借対照表の資産の合計額から負債の額の合計額を控除して得た額と定めることとしました(証券取引法施行令)。
 継続開示課徴金について、課徴金額の決定に係る審判手続、課徴金額の算定の基礎となる市場価額等の算定方法等を定めることとしました(証券取引法第六章の二第二節の規定による審判手続に関する内閣府令、証券取引法第百七十二条の二第一項第二号イに規定する市場価額の総額等を定める内閣府令)。


 平成17年10月に実施したパブリックコメントの結果については、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「証券取引法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(案)、企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)、継続開示課徴金に関する内閣府令(仮)に対するパブリックコメントの結果について」(平成17年11月29日)にアクセスしてください。


【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「課徴金制度」、「審判手続」です。

 証券市場への参加者の裾野を広げ、個人投資家を含め、誰もが安心して参加できるものとしていくためには、証券市場の公正性・透明性を確保し、投資家の信頼が得られる市場を確立することが重要です。このため、証券市場への信頼を害する違法行為の抑止を図り規制の実効性を確保するために平成17年4月から、行政上の措置として証券取引法上の違反者に対して金銭的負担を課す課徴金制度が導入されています。

 課徴金の対象となる違反行為は、(1)不公正取引(インサイダー取引、相場操縦、風説の流布又は偽計)、(2)有価証券届出書等の発行開示書類における虚偽記載、(3)有価証券報告書等の継続開示書類における虚偽記載((3)は平成17年12月1日から新たに課徴金の対象となりました。)です。

 課徴金納付命令までの流れは別紙のとおりです。
 証券取引等監視委員会が調査((1))を行い、その結果、課徴金の対象となる法令違反行為があると認める場合には、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し勧告((2))を行います。これを受け、金融庁長官は審判手続開始決定及び審判官の指定((3)・(4))を行い、審判官が審判手続((5))を経たうえで、審判事件についての決定案を作成、金融庁長官に提出((6))します。金融庁長官は、決定案に基づき、課徴金の納付を命ずる決定(課徴金納付命令)((7)・(8))を行います。

 課徴金納付命令は、課徴金制度という新たな制度の運用に慎重を期する観点から、行政審判(審判手続)を経た上で行うこととしています。
 この審判手続は、原則、3人の審判官からなる合議体により公開で行われ、事件の調査に関与したことのある者は審判官として当該事件を担当できないこととされているほか、意見聴取や証拠調べの決定等、審判手続上の種々の権限は審判官の固有権限と規定されているなど、審判手続の公正性・中立性を確保するようになっています。

 なお、審判手続では、課徴金納付を命じようとする者(被審人)またはその代理人が、審判期日に出頭し、意見の陳述および各種証拠調べの申立て(例えば、参考人(裁判でいう証人=jの審問、鑑定、証拠書類・物件の提出)を行うことができます(なお、被審人が第一回審判期日前に、審判手続開始決定書に記載された違反事実と課徴金額を認める旨の答弁書を提出したときは、審判期日は開かれません。)。
 他方、行政側からも、金融庁長官の指定した職員(指定職員)が手続に参加し、審判手続において、証拠の申出その他必要な行為をすることができます。
 審判官は、上記のような審判手続を経た後、審判事件についての決定案を作成し、金融庁長官に提出し、金融庁長官は、決定案に基づき、違反事実があると認めるときは課徴金納付命令を行います。

 また、これら審判期日において審判官を補佐するとともに、審判記録の作成・管理、被審人や参考人の出頭の確保といった裁判所書記官的な業務を総務企画局総務課審判手続室が行います(課徴金納付命令決定後の納付・徴収事務も担当)。

 金融庁では、これら課徴金制度の的確な運用を通じて個人投資家も含め、誰もが安心して参加できる証券市場の確立に向けて努めてまいりたいと考えます。


 詳しくは、金融庁ホームページの「金融庁の政策・市場の信頼性確保」から「課徴金制度」にアクセスしてください。

 


【別 紙】
 
課徴金納付命令までの流れ
 
課徴金納付命令までの流れ

 



【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、大臣の記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。
 もっとたくさんご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q:東京証券取引所が、上場企業による黄金株の発行を原則禁止する方向で上場規則の見直しを来年にも行うと聞いていますが、この方針に関して、大臣のお考えをお聞かせください。


:東証は全ての株が取引される場所であって、会社法で認められている幾つかの種類の株を持っている会社だけを上場させないという話は、会社法で認められていることを東証の上場基準で否定することは、理屈の問題としてはあり得ないのだろうと思っています。
 黄金株を急に創設するとか、そういうことで他の株主の権利を害することは、多分許されないだろうと思っています。これは株主のほぼ全ての人が合意した上で作るということであれば別ですけれども、企業の勝手で仮に創設するとすれば、それは他の株主たちの議決権という権利を著しく狭める、あるいは無効にするという効果があって、それは理屈の上では許されないことだと思っています。
 ただし、黄金株という会社法上許された企業防衛策を持った会社が新しく上場するときには、それは公知の事実であって、広く株主が知っている事実でありますから、そのことをもって上場基準に外れるということは、会社法で認められている株式の種類を上場基準によって狭めることですから、それは理屈の上ではおかしいことだろうと思っています。
 ただし、黄金株を作り出すことによって、株を所有することを通じて持っている株主の色々な権利を制限してはならないのは当然のことだと思っています。
【平成17年11月22日(火)閣議後記者会見】

 
Q:大手行の中間決算が出揃い、過去最高水準の好決算でした。今回の決算についての大臣の御所見と、大手行各行の今後の課題についてお聞かせください。


:1年とか半年とかとれば、確かに利益が出たことは喜ばしいことですし、それなりの経営努力、効率化、合理化ということを進めておられる証左であると思っています。
 ただし、まだ過去の借金、欠損金、これは繰越欠損として残っているわけです。その額が多分12〜3兆円あると思いますが、こういうものが本当に完全に消えるまでにはまだ若干時間がかかると思うわけです。従いまして、次なる段階は、銀行の経営とは別に、財務的、或いは税制の面から言えば、繰り越しされてきている欠損金を消す時期がいつになるのか、消されて本当に配当をいつからできるのか、法人税はいつから払えるのか、或いは注入された資本がどう返還されていくのか、まだ課題は幾つも残っていると思っています。
【平成17年11月25日(金)閣議後記者会見】

 
Q:みずほ証券が新規公開株式の売買で誤った注文を大量に出して、市場に混乱を起こしましたが、この問題についての大臣の所見と、金融庁として今後どう対応されるのかを伺います。


:人のやることの誤りであのような事態が起きたということは大変残念なことですし、損失を被ったみずほ証券自体の損益を著しくマイナスの方向に持っていったということは大変残念なことです。
 私としては、東京証券取引所の信頼性を維持するために、この問題が早期に決着されることを強く望んでいます。一方で、みずほ証券はみずほグループの一員ですから、決済資金について不足するということは全く心配をしていません。
 本日は、東証の規則によって異常な取引ということで売買は終日停止される予定ですが、多分13日が株の受け渡し日だと思いますので、それまでに色々な解決策が図られると思っています。売りに出した60万株余のうち、その大宗の買い戻しはもう既に済んでいると思いますが、残りどれだけかはまだ判然としませんけれども、それについての解決が急がれるべきだと思っています。
 なお、どの程度の経験を持った方が端末で操作したかは別にして、人的ミスを機械的に阻止できなかったのかということは、みずほ証券自体のシステム、また多分東証側にはミスはないと思いますけれども、東証のシステムも併せて検討が必要だろうと思っています。
 金融庁がまずやらなければならないのは、詳細な事実の把握で、その詳細を把握した上で、諸法令に照らしてどのようなことが必要かを判断するという手順でやっていきたいと思っています。
【平成17年12月9日(金)閣議後記者会見】

 
Q:みずほ証券による株式の誤発注問題ですが、他の証券会社の自己売買部門が、誤発注の後に当該株式をかなり買い付けていることが次第に明らかになっていますが、このことについて大臣はどうお考えでしょうか。


:法律上は、確かに場を通じての取引は成立していると私は認識しておりますけれども、誤発注と認識しながら、他の証券会社がその間隙を縫って、顧客の注文を取り次ぐのではなくて、自己売買部門で株を取得するということは、美しい話ではないと思っておりまして、やはり証券会社も、また経営者は行動の美学を持つべきだろうと思いますし、昔ちょっといい話という話がたくさん載った本が出たことがありましたけれども、そんな本には決して載らないような話だと思っています。
【平成17年12月13日(火)閣議後記者会見】

 

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