中間論点整理〜適合性原則を踏まえた保険商品の販売・勧誘のあり方〜の公表について

 金融庁において開催している「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」(座長:野村 修也 中央大学法科大学院教授)は、先般(平成18年3月1日)、「中間論点整理〜適合性原則を踏まえた保険商品の販売・勧誘のあり方〜」を取りまとめ、公表しました。


.検討の経緯

  保険分野においては、販売勧誘に関する苦情が依然として多いこと、保険商品の多様化・複雑化により消費者に商品内容が理解しづらいものとなっていること等の指摘がなされていることを踏まえ、利用者保護及び利用者利便の向上の観点から、専門的・実務的に上記の指摘に対応するため、有識者・サービス利用者等をメンバーとする「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」を開催し、検討を進めています。
 平成17年9月から保険契約における適合性原則の遵守を中心に検討を進めてきたところですが、今般、以下のとおり中間論点整理として取りまとめを行いました。


.中間論点整理の概要
 
(1)  問題の所在〜保険商品の販売・勧誘時の募集人等と消費者との認識の格差(ギャップ)〜
 消費者が自らのニーズに合致した保険商品を適切に選択・購入することは重要ですが、実際にそれが出来るかどうかについては、以下のような指摘がなされました。
 
 (1)  保険商品の複雑性等により、消費者の商品内容に関する理解には限界がある。
 (2)  保険加入のニーズを直ちには感じない消費者は、自らのニーズの適切な把握が困難。
 (3)  他の保険商品や特約の付加等の、他の選択肢についても情報収集や内容の理解をしたうえでなければ、購入しようとする保険商品が自らのニーズに真に合致しているか否かの最終的な判断が困難。
   他方、保険販売の現状として、募集人等が顧客の属性やそのニーズを踏まえながら、顧客が求める保険商品の絞込みや商品設計を行い、オーダーメイド的な提案が行われています。
 この場合、顧客は募集人等に一定の情報を提供し、募集人等はそれをもとに顧客のニーズに合致する保険商品に絞り込んだうえで顧客に提案する等、募集人等と顧客との共同作業が行われているものと考えられます。
 しかしながら、上記共同作業に対する募集人等と顧客の認識には、以下のような格差(ギャップ)が存在しているとの指摘がなされました。
  【募集人等の認識】
 あくまで顧客に対するサービスとして行うものであり、顧客のニーズに最も合致した保険商品を提供することにも限界があるとの認識。
【顧客の認識】
 募集人等がその専門的知識を生かして助言を行い、顧客のニーズに合致した保険商品を推奨してくれることを期待。
 従って、そのような期待から、真に自らのニーズに合致するか否かの確認を行わず、推奨された商品をそのまま受動的に購入してしまうケースがある。
 顧客が自らのニーズに合致した保険商品を購入できるよう、このような認識の格差(ギャップ)を埋め、円滑な共同作業を確保するために有効な方策について検討が行われました。

(2)

 認識の格差(ギャップ)を埋めるための、募集人等と消費者の役割
 保険商品の勧誘から購入にいたるプロセスを、募集人等と消費者との共同作業と捉えると、両者にはそれぞれ以下のような役割が求められるとの考え方が示されています。
  【募集人等の役割】
 
 (1)  顧客のニーズに関して適切な情報収集を行ったうえで、それらの情報をもとに保険商品を推奨。
 (2)  勧誘の過程で、顧客が説明内容を誤解することがないように努め、顧客が理解していないことや誤解が明らかとなった場合には、より分かりやすい説明や、誤解の解消を行う。
  【消費者の役割】
 
 (1)  自らのニーズに関する情報を適切に募集人等に提供。
 (2)  募集人等が推奨した保険商品をそのまま購入するのではなく、推奨された商品内容が自らのニーズに合致しているかを確認したうえ、自己の責任で購入するか否か判断。
 このような考え方を具体化するために、いわゆる適合性原則や諸外国の法制度を参考にすれば、以下のような仕組みを設けることが有効であるとの提言がなされています。

(3)

 具体的仕組みの内容 〜「意向確認書面」について〜
 購入しようとする保険商品が顧客のニーズに合致しているものであるかどうかを顧客が契約締結前に最終的に確認する機会を確保するために、顧客のニーズに関して情報を収集し、保険商品が顧客のニーズに合致することを確認する書面(以下、「意向確認書面」という)を作成し、交付・保存することが有効であるとの考え方が示されています。
 「意向確認書面」には、以下のようなメリットがあると指摘されています。
 
 (1)  契約締結前に、顧客が自らのニーズや保険商品がそのニーズに合致するか否かを確認することができ、契約締結をなすか否かの再考が可能。
 (2)  募集人等が、「意向確認書面」作成の過程で、保険商品が顧客のニーズに合致したものであるか否かを確認することとなり、その推奨が適切か否かの再考が可能。
 (3)  購入経緯を双方が事後的に確認でき、事後に生じうる問題等の未然防止や解決に資する。


ア.


「意向確認書面」の具体的内容

 「意向確認書面」には、以下の内容を記載すべきとの考え方が示されています。
 
 (1)  募集人等が知り得た顧客のニーズに関する情報
 (2)  推奨する保険商品が顧客のニーズに合致すると考えた主な理由
 (3)  満たされない顧客のニーズがある場合にはその旨など、その他の特に記載すべき事項がある場合にはその旨
 
 募集人等は、顧客のニーズを特定するために、顧客からニーズに関する情報について提供を受ける必要がありますが、これについて以下のような指摘がなされています。
 
ニーズに関する情報については、例えば死亡保障等のどのような分野の保障を必要としているか、というようなものから、主契約や特約ごとの具体的な保険料等の詳細な内容に関するものまで、様々なレベルのものが考えられる。
「意向確認書面」において、最低限求められるニーズに関する情報は、例えば以下のようなレベルまでのものとすることが適当
 
 (1)  どのような保障を望むか(死亡した場合の遺族保障、がんや三大疾病の際の医療保障等)
 (2)  貯蓄的部分を必要とするか
 (3)  市場リスクを許容するか
 (4)  求める保障の期間、保険料や保険金額に関する希望がある場合や優先的に希望する項目がある場合には、その旨
 
上記以外の、詳細な内容に関するニーズ(例えば主契約や特約ごとの具体的な保険金額や保険料等)についても重要であることから、最終的な契約内容のうち重要なものについて、例えば設問等により顧客のニーズに合致しているかの再確認を求めることが適当。

 「意向確認書面」の内容のうち、顧客から提供を受けたニーズに関する情報については、顧客に確認のうえ、事実に反する記載があれば、顧客が修正を求められるようにすることが適当であるとされています。

 「意向確認書面」の作成・交付にあたり、その作成者・交付者を明らかにするために、募集人等の氏名・名称を明示することが適当であるとされています。

 「意向確認書面」を提供する媒体については、顧客が購入の経緯を事後的に確認するため保存の必要があることから、書面が適当であるとの考え方が示されています。なお、顧客の了解があった場合には、電子メール等の電子媒体による提供も可能と考えられるが、印刷を可能なものとする等、顧客が保存できるようにすることが適当であるとされています。


イ.


「意向確認書面」の適用範囲

 募集人等と顧客との間で情報等が相互に交換されていることにより共同作業が行われている募集形態であって、商品類型から顧客保護の要請が高いといえる下記の場合について、適用することが適当であるとの考え方が示されています。
 
 (1)  投資性商品
 (2)  保障性商品については、例えば保険期間が長期のもの等、顧客のニーズに合致しないことにより顧客の受ける不利益が大きい場合に適用
 (3)  乗換・転換

(4)

 「意向確認書面」が適用されない場合への対応

 「意向確認書面」の作成・交付を要しない場合であっても、顧客ニーズを慎重に確認しなければならない重大な事項をチェックした書面等を保存することが適当であるとされています。
 販売・勧誘のいかなる段階でどのような顧客の情報を収集するか、保険商品が顧客のニーズに合致しないことが判明した場合にどのような方法で顧客に説明するかについて、保険会社等に対して自主判断において適切な体制整備を求めることが適当であるとされています。
 体制整備は事後的に販売・勧誘の適切性を検証しうるものであることが必要であり、その内容は、保険期間の長短等、各商品特性に応じそれぞれ定められるべきですが、例えば、アンケートや交渉経緯の概要を記載した書面等の保存などが考えられるとの指摘がなされています。

(5)

 その他募集人等に求められる行為
 その他募集人等に求められる行為として、以下の考え方が示されています。
 
 (1)  顧客の理解に応じた説明や誤解の解消
 
顧客が説明内容を理解していないことや誤解していることが明らかとなった場合には、より分かりやすい説明を行うことや誤解を解消するよう努めること。
 (2)  募集人等の立場の明示
 
募集を行おうとする際には、取り扱える保険会社の範囲(専属か乗合か、乗合の場合には、取り扱える保険会社の数等の情報)の明示を行うことが適当。
顧客が告知を行おうとする際には、告知受領権の有無についての明示を行うことが適当。

(6)

 法令上の位置付け
 法令上の位置付けとしては、例えば、「意向確認書面」については、保険業法施行規則第53条の7による体制整備義務を具体化したものと位置づけ、監督指針においてそのルールを明確化することが考えられるとの指摘がなされています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「中間論点整理〜適合性原則を踏まえた保険商品の販売・勧誘のあり方の公表について」(平成18年3月1日)にアクセスしてください。

国際コンファレンス「アジア各国の金融利用者保護の支える法と経済」の開催について

 金融庁金融研究研修センターでは、去る3月3日、慶応義塾大学経済学研究科・商学研究科連携21世紀COEプログラムとの共催により、初めての国際コンファレンス「アジア各国の金融利用者保護を支える法と経済」を開催しました。本コンファレンスは、金融研究研修センターのセンター長である吉野直行慶応義塾大学経済学部教授の働きかけにより実現したもので、タイ、韓国、中国の金融監督機関や大学等から有識者を招聘し、各国における金融利用者保護にかかる取組みの現状及び課題について、各国の経済的な背景及び法制度整備等の観点から議論することを目的としたものです。
 コンファレンスは、神田秀樹東京大学大学院法学政治学研究科教授による基調講演の後、招聘各国及び日本からの報告、ラウンド・テーブル・ディスカッションの順に進められました。各国報告ではWoo Chull Chungアジア開発銀行駐日代表事務所長及び杉浦宣彦金融研究研修センター研究官がモデレーターを、ラウンド・テーブルでは吉野直行金融研究研修センター長がリードスピーカー兼司会を務め、各国報告者のほか、国内外の研究者、在京各国大使館関係者等、多様の参加により活発な議論が行われました。
 以下、コンファレンスの概要をご紹介します。


.基調講演
 神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授から、「Regulatory Differences in Bank and Capital Market Regulations」と題して講演が行われました。概要は以下のとおりです。
   金融市場には「銀行中心の制度」とする国と「資本市場中心の制度」とする国とがあるが、どのようなシステムであっても、適切な規制(Proper Regulation)と適切な監督とその執行(Enforcement)がなければ機能せず、規制を作るためのコストやそれを運用するために規制機関や監督当局を作って制度を維持していくためのコストはゼロではない。
銀行制度では規制・監督の対象が銀行に限定されるため、比較的規制しやすいと言える。これに対し、資本市場制度は、比較的資金調達コストが低く、一般的に銀行制度よりも望ましいといわれるが、規制・監督の対象は広く、規制・監督は難しい。いずれの制度にしても、エンフォースメントは重要であり、これにもコストがかかる。
 一般論としては、レギュレーションとエンフォースメントのコストがより直接的に効いてくることから、経済の規模が小さい国においては銀行制度の方が優れているように思う。
 これに対して、経済の規模が大きい国になると、資本市場制度によりもたらされる利益がこれらのコストを上回ることから、資本市場制度の方がよいと思われる。
 しかしながら、実際には両システムは混在しているため、両者のコストとベネフィットを足し合わせて判断しなければならない。
 国際化が進む中で各国がどのように銀行制度と資本市場制度とを組み合わせていくかは、法制度・規制を作り、維持し、それを執行するコストにも焦点を当て真剣に考慮したうえで、それぞれの国の事情に応じた適切な制度を選ぶ必要がある。


.各国報告
 
(1)  タイ:「Household Financial Services Products, Supervision & Consumer Protection
 Chodechai Suwanaporn 財務省財政政策局財政課長、及びNat Tapasanan タイ銀行金融機関政策グループ課長より、タイにおける家計の資産負債の状況、主要な金融商品の種類及び購入条件、消費者保護に対する考え方についての報告がありました。
(2)  韓国:「Legal Frameworks for Consumer Protection in Financial Services: Korea」
 初めに、Kon Sik Kim ソウル大学教授より、韓国において最近発表された、資本市場関連の複数の法律を一本化する計画について、金融市場の変化や現状と課題などと共に紹介がありました。その後、Sunseop Jung 仁川大学教授より、韓国における一般的な消費者保護体制についての報告がありました。
(3)  中国:「Legal Framework of Consumer Protection in Chinese Financial Service」
 Dong Ansheng 人民大学教授より、中国における業態別政策及び管理政策、新しい会社法と証券法、中国における金融法制度の発展の概要について報告があり、その後、Tong Shiping 松山大学教授より、中国における家計部門の金融資産についての報告がありました。
(4)  日本:「Investors Protection - Legal Aspects and New Movement-」
 初めに、小塚荘一郎 上智大学教授より、日本の金融取引に関する法制度について、投資家が引き受けるリスクにはどのようなルールがあるかという観点からの報告がありました。その後、杉浦宣彦 金融庁金融研究研修センター研究官より、わが国の金融商品取引法についての紹介がありました。


.ラウンド・テーブル・ディスカッション
 冒頭、リードスピーカーである吉野直行金融研究研修センター長(慶応義塾大学教授)がこれまでの講演及び報告の総括を行い、その後、参加者全員を対象として議論が行われました。主な発言の概要は以下のとおりです。
 


 投資家保護、消費者保護を適切に行っていくことは、金融システム或いは経済全体を発展させていく上で不可欠。最初は銀行を中心にして資金を回し、その後、金融市場を活発化させていくというパターンをとる国は多く、そもそも作り上げてきた銀行中心の預金者保護システムと投資家保護システムの整合性を保ちながら、どう作り上げていくかが課題。
 証券市場の大きな特徴は、匿名性と流通する商品の標準化、規格化であり、標準化された商品を流通させることで海外からの投資や資金提供、資金調達が比較的容易になる。証券化を含めた金融技術の発展により、世界的な資金の流れが促進されていくのではないか。
 資本市場は重要であるが、資本市場に対する需要を生み出すためには二つの条件を満たす必要がある。第1は、銀行の低い金利には満足できずにリスクをとることができるお金を持った人々の存在、そして第2は、ビジネスリスクの高まりにより、企業が銀行だけに依存できなくなっていることである。ビジネスリスクが高まると、銀行の貸出はより安全な借手に集中するため、金融市場における銀行のシェアは小さくなって、資本市場が伸びてくる。それによって、銀行部門と資本市場のバランスがとれてくる。
 資本市場の方が間違いなく効率性が高く、成長が早い経済にとっては極めて重要であるが、規制当局がすべてマーケットに任せるというアプローチをとった場合、中小企業や零細消費者のニーズが取りこぼされてしまうのではないか。
 金融システムを銀行中心とするか資本市場中心とするか考える際の一つのポイントは経済の規模であるとの話が(神田先生から)あったが、経済の規模というより、成熟度という方がよいのではないか。
 先進経済になったとしても、資本市場に加えて銀行制度は必要。資金の配分について政府自らの権限を放棄してもよいということであれば、資本市場に移行することができると思う。
 ジャマイカなど小さな経済国でも、資本市場が銀行市場よりもずっと発達している国もあり、小さな経済には銀行制度がよいという分類にも例外はある。
また、マイクロ・クレジット(Micro Credit)は、貧困層に対して小規模の信用や保険を与えるシステムであるが、中南米においては、これが非常に発達してきたので資金調達を資本市場で行っている。資本市場と銀行市場とは二者択一ではなく、互いに相乗効果を持つと思う。ただし、資本市場では(小口の)投資家の数が多く、銀行市場に比べ債権のリストラが難しいという危険性もある。
 金融当局は投資家と金融サービスの供給者とのバランスをとり、公平性を確保する存在でなければならない。そのサポートとしては、以下の点が考えられる。
 
(1)  業界の行動を監視している消費者団体の役割強化
(2)  効率的な与信格付制度を促進するための信用格付機関の存在
(3)  消費者を保護するための法律専門家の活用
(4)  消費者が抱える問題を軽減するための相談機関の設置
(5)  消費者が平等に扱われるための適切な法制度の確保
(6)  消費者が自分自身の信用情報にアクセスできること
(7)  消費者保護を専門に扱う機関の存在
(8)  消費者を公正かつ公平に扱うための独禁法的枠組み。
 信用格付においては、資本力をモニタリングすることも重要であるが、同時に与信の機会平等も考え、バランスをとって行かなければならない。また、独禁法に関しては、金融機関の間の競争は消費者にとって重要であるが、過剰な競争状態は金融システムの脆弱性につながる。競争と保護のバランスをとらなければならない。
 アジアには、高い貯蓄率、銀行支配型経済、自国内で主に貯蓄を運用する傾向(ホームカントリー・バイアス)などの共通点がある。この銀行指向型を資本市場型に変えなくてはならないが、移行するにはそれなりの準備も必要。グローバル化が進む中で調和をとらねばならず、それにより各国間の(クロスボーダー)資本の流れも促進され、最終的には地域全体の発展が安定化し、世界全体の発展が安定化するのだと思う。
 アジアの預金者及び投資家のリスク態度については、韓国はどちらかといえばリスク・テイカー(ある程度のリスクをとって運用する傾向)であるが、日本は多分にリスク回避型であると思う。韓国では、多くの消費者はリスクとリターンの比較など知らず、株式の持つ潜在的なリスクには構わずに株式を好んでいるようだ。だからこそ、アジアにおいて現在、株式市場がブームになっているのではないか。
 中小企業に関しては、日本では、政府機関などの公的機関による100%信用保証の提供や政府系金融機関による中小企業向け融資のほか、信用リスクデータベース(CRD)を作ったことにより、中小企業向け債権の証券化が進み始めている。
 日本では金融商品の多様化、複雑化により、個人の金融取引に様々な問題が起こっている。資本市場に一般の人たちが入っていくためには、よい商品を作ることも大事であるが、安心できる取引、自発的にリスクをとれるような状況が大事だと思う。
 韓国においては、資本市場関連の法律を統合することにより証券会社が自由に新しい商品を開発できるようになることから、新商品の開発・取扱いに許可が必要な銀行は、証券会社と比べて不利な立場に置かれることを懸念しているようだ。
 韓国の金融市場では銀行が圧倒的なシェアを占めており、資本市場の規模はまだまだ小さい。株式市場は活気を呈しているが、これは外国人投資家によるもの。
 中小企業は信用情報がなかなか入手できず、また、信用情報自体に信頼性がないことから資本市場から資金を調達することができないため、新しい法律を作る動きとなった。
 タイでは、これまでは、消費者は経済に関する教育をあまり受けておらず、知識も少なく、問題意識も低い状態であったが、現在では一般国民の問題意識が高まり自分の権利も理解するようになっている。クレジットカード、消費者ローンも増えており、政府はクレジットカード・ビジネス規制及び消費者ローン・ビジネス規制を設けて消費者保護を強化している。
 本日の議論を聞いて、西欧で資本市場を作るのがいかに困難だったかを書いたノーベル賞学者  のジョン・ヒックス氏の本を思い出した。西欧のエコノミストは、アジアで資本市場を作るのにどうしてこんなに時間がかかるのか理解できないでいるが、実は西欧でも、何百年もかかってここまできたのだ。


 本コンファレンスの議事録及び各報告者の配布資料等は、金融研究研修センターホームページ(http://www.fsa.go.jp/frtc/index.html)にて公開を予定しております。詳細につきましては、そちらをご覧ください。

【参 考】

金融庁金融研究研修センター 慶応義塾大学経済学研究科・商学研究科連携21世紀COEプログラム
国際コンファレンス「アジア各国の金融利用者保護を支える法と経済」
平成18年3月3日(金)於 三田共用会議所

議事次第
 【総合司会:杉浦宣彦 金融研究研修センター研究官】
10時00分〜 10時10分 開会挨拶 五味廣文 金融庁長官 
10時10分〜 10時40分 基調講演 神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授
10時40分〜
12時20分 各国報告I 【モデレーター:杉浦宣彦 金融研究研修センター研究官】
 
(10時40分〜11時10分) タイ: Chodechai Suwanaporn 財務省財政政策局財政課長
  Nat Tapasanan タイ銀行金融機関政策グループ課長
(11時10分〜11時30分) 質疑応答
(11時30分〜12時00分) 韓国: Kon Sik Kim ソウル大学教授
  Sunseop Jung 仁川大学教授
(12時00分〜12時20分) 質疑応答
12時20分〜 13時30分 昼食 〔三田ルーム〕
13時30分〜
15時10分 各国報告II 【モデレーター:Woo Chull Chung アジア開発銀行駐日代表事務所長】
 
(13時30分〜14時00分) 中国: Dong An Sheng 人民大学教授
  Tong, Shiping 松山大学教授
(14時00分〜14時20分) 質疑応答
(14時20分〜14時50分) 日本: 小塚 荘一郎 上智大学教授
  杉浦 宣彦 金融庁金融研究研修センター研究官
(14時50分〜15時10分) 質疑応答
15時10分〜 15時40分 コーヒー・ブレイク
15時40分〜 17時10分 ラウンド・テーブル・ディスカッション
【リードスピーカー:吉野直行 金融研究研修センター長、慶応大学経済学部教授】
17時10分     閉会

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