目次 NEXT

3.証券会社の監督事務
 

3−1  認可申請書の審査に係る留意事項
−1−1 有価証券店頭デリバティブ取引業務に係る留意事項

 当該業務の認可にあたっては、次の点に留意するものとする。

(1)  当該業務を管理する責任者が証券業務の経験を原則として5年以上有する者であり、当該業務を行う部署が業務の遂行に必要な組織及び人員配置となっていること。
 
(2)  当該業務に係るリスク相当額の算定方法が、過去の一定期間におけるリスク相当額を算定した結果、その妥当性が検証されていること。
 
(3)  算定されたリスク相当額が申請する証券会社の自己資本規制比率に適切に反映されること。
 
(4)  当該業務に係るリスク相当額の限度枠の設定が、認可を申請する証券会社の純財産額及び自己資本規制比率の状況からみて過大なものとなっていないこと。
 
(5)  当該業務に係るリスク相当額の算定及び管理を行う部署が営業部門から独立した組織になっていること。
 
(6)  当該業務に係る顧客との取引開始基準、リスク相当額の限度枠の設定及び適用方法並びに取引の種類及び顧客の属性別の当該限度額の設定及び適用方法に関する社内規則が整備されていること。
 
(7)  原則として、日々、当該業務に係るリスク相当額の状況が代表権を有する取締役に対して報告が行われること。
 
(8)  当該業務の検査を行う部署が独立した組織になっており、1年に1回程度は検査が実施されること。
 
(9)  当該業務の認可に際しては、次に掲げる条件を付すものとする。
 
マル1  「有価証券店頭デリバティブ取引の業務を行うにあたっては、公益及び投資者保護に充分留意すること。」
 
マル2  「公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな条件を付すことがある。」
 
−1−2 元引受業務に係る留意事項

 当該業務の認可にあたっては、次の点に留意するものとする。

(1)  当該業務を管理する責任者が証券業務の経験を原則として5年以上有する者であり、当該業務を行う部署が業務の遂行に必要な組織及び人員配置となっていること。
 
(2)  当該業務に係るリスク相当額の限度枠の設定が、認可を申請する証券会社の純財産額及び自己資本規制比率の状況からみて過大なものとなっていないこと。
 
(3)  当該業務に係るリスク相当額の算定及び管理を行う部署が営業部門から独立した組織になっていること。
 
(4)  当該業務の検査を行う部署が独立した組織になっており、少なくとも1年に1回程度は検査が実施されること。
 
(5)  当該業務の認可に際しては、次に掲げる条件を付すものとする。
 
マル1  「公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな条件を付すことがある。」

 また、資本金30億円未満の証券会社の認可に際しては、次の条件を付すものとする。

マル2
 「有価証券の元引受業務を行うに当たっては、一の元引受契約に係る引受金額が100億円を超えない範囲に限ることとする。」
 
 「公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、この認可に付した条件を変更し、又は新たな条件を付すことがある。」

 なお、上記引受け制限を付した証券会社の資本金が30億円以上となった場合には、認可の条件はマル1の条件に変更するものとする。
 

−1−3 私設取引システム運営業務に係る留意事項

 当該業務の認可にあたっては、次の点に留意するものとする。

(1)  当該業務を管理する責任者が証券業務の経験を原則として5年以上有する者であり、当該業務を行う部署が業務の遂行に必要な組織及び人員配置となっていること。
 
(2)  当該業務において顧客の本人確認を行う方法が確立していること。
 
(3)  当該業務における売買価格の決定方法が、証券取引所と同程度の高い価格形成機能を持つ方法によって行われるものではないこと。
 また、顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法による場合には、有価証券の売出しに該当するような売買条件の提示を、法令上の義務を果たさずに行ってはならない旨を顧客に周知徹底する方法が確立していること。
 
(4)  当該業務においてインサイダー取引等の取引の公正を害する売買等を排除する方法が確立していること。
 
(5)  当該業務の認可に際しては、次に掲げる条件を付すものとする。
 
マル1  「私設取引システム運営業務を行うに当たっては、証券取引所と同程度の高い価格形成機能を持たないようにするものとする。」
 
マル2  「公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな条件を付すことがある。」

 

3−2  その他業務に係る留意事項
−2−1 その他業務に係る届出の受理にあたっての留意事項

 法第34条第2項に規定する業務の届出の受理にあたっては、当該業務を規制する法令上必要となる手続きがとられているか留意するほか、次の業務については、その内容及び方法等が次の内容に合致するものとなっているか留意するものとする。
 なお、合致しない業務については、法第34条第4項の規定による承認申請を行わせるものとする。

(1)  通貨の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務
 
マル1  業務の範囲
 通貨の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務は、次に掲げる業務をいう。
 
 外国為替取引等に関する契約の締結
 
 外国為替取引等に関する契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理
 
 イの契約に伴う担保設定契約の締結又は保証約定書等の受入れ
 
 その他上記に付随する事務
 
マル2  リスク管理
 当該業務に係るリスク管理の方法について、次の事項が整備されていること。
 
 市場リスクの管理
 
 市場リスクのポジション限度枠が設定されていること。
 
 日々のポジション限度枠の適用状況の管理方法が定められていること。
 
 他の部署によるポジション管理状況の点検方法が定められていること。
 
 信用リスクの管理
 
 顧客の属性別に合理的な与信限度枠が設定されていること。
 
 顧客と取引(信用リスクが軽微であるものとしてあらかじめ定められた取引を除く。)を行おうとするときの審査方法が定められていること。
 
 日々のポジション限度枠の適用状況の管理方法が定められていること。
 
 他の部署によるポジション管理状況の点検方法が定められていること。
 
マル3  対象顧客
 顧客の属性別に合理的な取引開始基準が作成されていること。
 
マル4  契約の締結
 契約の締結について、次の事項が整備されていること。
 
 当該取引(信用リスクが軽微であるものとしてあらかじめ定められた取引を除く。)を開始しようとするときは、当該取引に係る契約不履行が生じた場合等の措置、一括清算その他の必要な事項を規定した基本契約書の締結を行うこと。
 
 当該取引が成立した都度、顧客に取引内容を確認のうえ、個別取引契約書の締結を行うこと(又は個別取引報告書を交付すること)。
 
マル5  担保等
 担保又は保証等について、次の事項が整備されていること。
 
 営業部門から独立した部門において、あらかじめ定められた合理的な基準に基づき顧客からの担保の受入れ又は顧客に係る保証等の受入れの決定が行われること。
 
 担保の受入れに当たっては、顧客との間で「担保権設定契約書」を取り交わすこと。
 
 担保有価証券は保護預り有価証券と区別して管理すること。
 
 保証等の受入れに当たっては、保証人等から「保証約定書」等を受け入れること。
 
マル6  当該取引に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理
 自社が媒介、取次ぎ又は代理した契約の当事者には、上記マル4に規定する基本契約書その他の契約書を締結する旨社内取扱規程が整備されているか留意するものとする。
 なお、当該取引に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理のみを営む証券会社にあっては、上記マル2マル3マル4及びマル5について整備する必要はないものとする。
 
(2)  金地金の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務
 
マル1  取扱い対象
 取扱い対象が純度が高く世界的に市場の確立した流通性の高い金地金又は金貨となっていること。
 
マル2  仕入れ
 仕入先との契約に当たっては、マル1自社が原則として在庫を所有しないこと、マル2仕入れた現物については必ず仕入先が買取りに応じることの2点を当該契約に盛込むことにより、自社又は関連会社等が過大な在庫を所有することがないこと。
 なお、金地金の売付け及び買戻しに関する契約で、当該契約に定められた金額により当該金地金を買戻す旨の定めがあるもの(3−2において「延べ取引」という。)においては、先物予約の履行を担保する旨を仕入先との契約に盛り込んでいること。
 
マル3  対顧客業務
 
 販売方法
 
 現物取引に限るものとし、先物取引は行わないこと。
 
 累積投資の方法による販売は、顧客に対し、事前にその仕組みを明示した書面を交付し十分な説明を行うなど適正に行うこと。
 
 勧誘
 金投資は、投資者自身の判断と責任において行われるべきものであり、投資勧誘に際しては、以下の諸点が遵守されていること。
 
 金価格の動きに関し断定的判断を提供して行う勧誘は行わない。
 
 投資者の意向、金投資に関する知識及び経験並びに投資資金の量及び性格に応じた適切な投資勧誘を行うこと。
 
 損失補償を約したり、特別な利益を提供して行う投資勧誘は行わないこと。
 
 短期間に頻繁に売買(有価証券と金との乗換え売買を含む。)を行うことを勧誘しないこと。
 
 顧客から売買の別、数量及び価格の決定を一任されてその者の計算において行う売買取引は行わないこと。
 
 顧客への証書等の交付
 
 保護預り証等の交付
 保護預り取引又は現物引渡し取引のそれぞれの場合に応じ、保護預り証(保護預り取引の場合に限る。)、受渡計算書、買取請求書(現物引渡し取引の場合、現物に付して自社が買取りに応じる旨を明示した書類)等顧客との権利義務関係を明確にするため又は取引の円滑化を図るため必要な証書等を顧客に交付すること。
 ただし、延べ取引については、売買の内容及び寄託残高について受渡しの都度取引明細書を交付する場合にはその交付をもって保護預り証の交付に代えることができるものとする。また、あらかじめ契約で定められた方法により一定期間毎に一定額の金地金を顧客に売りつけるもの(以下「金地金累積投資」という。)については金地金の買付けの履歴及び保護預り残高を記載した通知書を6月に1回以上交付する場合には、保護預り証、受渡計算書の交付を省略できるものとする。
 
 金地金取引約款の交付
 保護預り取引又は現物引渡し取引のいずれの場合にも、金地金取引に係る事故防止並びに投資者保護の観点から、顧客との権利義務に関係する事項等を明示した金地金取引約款を取引開始時及び当該約款の内容の変更時に必ず顧客に交付すること。
 
 価格の決定等
 
 売買価格は、円建てとし、国内及び海外市場における取引価格、外国為替相場等を斟酌して適正に決定すること。また、延べ取引に係る仕入先に対する買付価格については実勢価格とし、売戻価格及び顧客との売買価格はそれを基準に算出すること。
 
 毎取引日において売買価格をすべての取扱店舗の店頭に明示し、その価格により約定するものとし、予約注文又は成行注文は行わないこと。
 
マル4  保管
 
 保護預り証、現物引換証及び現物受付票等、現物の寄託に基づき発行する預り証については、その譲渡・質入れは行わないこと。
 
 現物を取り扱う証券会社が保護預り取引を行うに当たっては、預り業務に見合う現物の手当てを行い、保管すること。
 
 保護預り残高については、1年に1回以上照合通知書によりその残高を顧客に通知すること。
 
マル5  買取り
 自社が販売した金地金(保護預り証による場合を含む。)については、顧客から買取り請求があった場合には、原則として店頭においてこれを買い取ること。
 
マル6  代理業務等
 金地金の売買取引の委託に係る代理業務若しくは媒介業務(3−2において「代理業務等」という。)は、次に定めるところにより行う延べ取引及び金地金累積投資に係るものに限ること。
 
 延べ取引の委託の代理業務等
 
 延べ取引に係る代理業務等の範囲は、顧客を募集証券会社又は金卸売業者(2−5において「募集証券会社等」という。)に取り次ぎ、顧客と募集証券会社等との間で行われる延べ取引に係る業務の全部又は一部を募集証券会社等に代わって行うこととし、延べ取引に係る代理業務等を行う証券会社は、募集証券会社等との間で代理業務等に係る契約を締結すること。
 
 当該業務を行う証券会社は、以下の点を遵守すること。
 
(a)  延べ取引に係る代理業務等を行う証券会社は、顧客に対し、申込みに係る延べ取引が募集証券会社等との間で行われる旨を十分説明し、あらかじめ顧客の承諾を受けること。
 
(b)  代理業務等を行う証券会社は、顧客の取引内容を募集証券会社等との間で定期的に照合すること。
 
 金地金累積投資の委託の代理業務等
 
 金地金累積投資に係る代理業務等の範囲は、顧客を募集証券会社等に取り次ぎ、顧客と募集証券会社等との間で行われるべき金地金累積投資に係る業務の一部又は全てを募集証券会社等に代わって行うこととし、金地金累積投資に係る代理業務等を行う証券会社は、募集証券会社等との間で代理業務等に係る契約を締結すること。
 
 当該業務を行う証券会社は、以下の点を遵守すること。
 
(a)  金地金累積投資に係る代理業務等を行う証券会社は、顧客に対し、申込みに係る金地金累積投資が募集証券会社等との間で行われる旨を十分説明し、あらかじめ顧客の承諾を受けること。
 
(b)  代理業務等を行う証券会社は、顧客の取引内容を募集証券会社等との間で定期的に照合すること。
 
(3)  譲渡性預金の預金証書の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務
 
マル1  取扱対象
 国内金融機関の発行する譲渡性預金とすること。
 
マル2  業務
 譲渡性預金の発行の媒介等は、「売買の媒介等」に該当しないので、法第34条第4項に基づいて承認申請を行わせることに留意するものとする。
 
(4)  民法第667条に規定する組合契約若しくは中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する中小企業等投資事業有限責任組合契約の締結若しくはその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務又は商法第535条に規定する匿名組合契約の締結の媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務
 証券会社又は証券会社の役員若しくは使用人は、顧客に対し組合契約の締結等の勧誘を行うに当たっては、契約内容につき十分な説明を行うとともに、顧客の意向当該組合に関する知識及び経験並びに資力及び資金の性質等に応じた適正な勧誘が行われること。また、契約の締結に当たっては、当該契約内容に関し、書面を作成し顧客に交付すること。
 
(5)  金銭債権の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務
 
マル1  取扱対象
 金銭債権のうち、他法令において取扱いについて認可制等がとられている債権を除いたもの。
 
マル2  業務の運営等
 
 業務遂行にあたっては、原債務者及び譲受者の保護に十分に配慮すること。
 
 取扱債権等の性格・内容等について譲受者に対し十分説明を行うこと。
 
 取扱債権等に対する評価体制を整え、適正な価格形成を行うこと。
 
 譲受者の意向、経験及び資力に照らして適切な勧誘を行うこと。
 
 契約の締結に当たっては、当該契約内容に関し、書面を作成し譲受者に交付すること。
 
(6)  貸出参加契約の締結又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務
 
マル1  取扱対象
 貸出参加契約とは、平成7年6月1日に日本公認会計士協会が公表した「ロ−ン・パ−ティシペ−ションの会計処理及び表示」において想定されるものをいう。
 
マル2  業務の運営等
 
 業務遂行にあたっては、原債務者及び譲受者の保護に十分に配慮すること。
 
 取扱債権等の性格・内容等について譲受者に対し十分な説明を行うこと。
 
 取扱債権等に対する評価体制を整え、適正な価格形成を行うこと。
 
 譲受者の意向、経験及び資力に照らして適切な勧誘を行うこと。
 
 契約の締結に当たっては、当該契約内容に関し、書面を作成し譲受者に交付すること。
 
−2−2 法第34条第4項の規定に基づくその他業務の承認にあたっての留意事項

 承認にあたっては、次の点に留意するものとする。

(1)  当該業務が関係する法令に抵触するものでないこと。
 
(2)  当該業務に係る損失の危険相当額の算定方法が妥当と認められるものであり、算定された損失の危険相当額が承認を申請する証券会社の自己資本規制比率に適切に反映されること。
 
(3)  当該業務の損失の危険相当額の算定及び管理を行う部署が営業部門から独立していること。
 
(4)  顧客との契約締結等を伴う業務については、当該契約締結等にあたって投資者保護に必要な方策等が具体的に整備されていること。
 
(5)  当該業務に係る社内規則が整備されていること。
 
(6)  申請する証券会社の自己資本規制比率が140%以上となっていること。
 

NEXT