第一部 連結ベースのディスクロージャーの充実等について


                                                                          

    1.基本的考え方                                                      

                                                                          

        証券取引法に基づくディスクロージャー制度においては、これまで、個別情

      報を中心としたディスクロージャーが行われてきており、連結情報は個別情報

      に対して副次的なものとして位置づけられてきた。しかし、多角化・国際化し

      た企業に対する投資判断を的確に行ううえで、企業集団の状況等に係る情報が

      一層重視されてきており、また、投資情報としての企業間の比較可能性を高め

      ていくためには、連結情報の位置づけを見直し、連結情報を中心とするディス

      クロージャー制度への転換を図ることが必要である。                      

        他方、連結情報を充実させることによってその有用性が乏しくなると考えら

      れる個別情報について、可能な範囲で簡素化するなど、ディスクロージャーの

      効率化を図ることが適当である。                                      

                                                                            

    2.連結情報の重視                                                  

                                                                        

      (1) 連結情報重視のディスクロージャーを進めるため、有価証券報告書及び有

        価証券届出書について、連結情報を中心とするディスクロージャーに改める

        ことが適当である。                                                      

          具体的には、次のような措置を講ずることが適当である。              

        ○  現在、個別ベースで記載されている「営業の状況」や「設備の状況」等

          について、連結ベースで記載する。                                  

        ○  セグメント情報を充実し、企業集団の概況・業績等について、事業の種

          類別等のセグメントごとにディスクローズする。                      

        ○  企業集団等の構成状況が分かるよう、現在記載されている「連結子会社

          の状況」のほか、連結子会社以外の主要な関係会社の状況についてディス

          クローズする。                                                    

          ただし、これまで個別情報を中心としたディスクロージャー及び企業分析

        が行われてきており、個別情報についても投資者にとって重要性があると考

        えられるため、投資対象としての個別ベースのディスクロージャーにも配慮

        することが適当である。なお、今後は、連結情報の充実に伴い、個別情報の

        一層の簡素化を検討していくことが適当と考えられる。                  

                                                                            

      (2) 上記(1)の主旨に照らし、有価証券報告書及び有価証券届出書における記載

        順序を、従来の個別・連結の順序から、連結・個別の順序とすることが適当

        である。                                                      

                                                                      

      (3) 企業のオフ・バランス情報、リスク情報等については、企業集団全体とし

        てのディスクロージャーが求められていることから、有価証券やデリバティ

        ブの時価情報及び偶発債務等、経営に重大な影響を及ぼすおそれのある情報

        について、連結ベースでディスクローズすることが適当である。          

                                                                        

      (4) 持株会社が解禁された場合には、連結ベースでのディスクロージャーが特

        に重要であり、持株会社を頂点とする企業集団の概況・業績等について、事

        業の種類別セグメントごとに情報提供するなど、明瞭にディスクローズする

        ことが適当である。                                                    

                                                                            

      (5) 連結子会社がない場合には、連結財務諸表が作成されないため、関連会社

        の損益が多額にのぼっていても、その状況に関する情報がディスクローズさ

        れない。このため、連結財務諸表を作成していない会社については、個別財

        務諸表上、関連会社に持分法を適用した場合の投資損益等を注記させるよう

        措置を講ずることが適当である。                                

                                                                            

    3.連結キャッシュ・フロー計算書の導入                              

                                                                          

        現在、資金収支の状況については、連結ベースのディスクロージャーが求め

      られていないが、連結情報重視の観点から、連結ベ-スでのキャッシュ・フロ

      -計算書を作成することが適当である。                                  

                                                                            

    4.中間連結財務諸表の導入                                          

                                                                            

        現在、連結財務諸表は決算日ごとに作成されているが、連結情報重視の観点

      から、その提供頻度を高め、半期報告書に中間連結財務諸表を導入することが

      適当である。                                                          

                                                                        

    5.連結ベースの臨時報告書の導入                                    

                                                                        

        現在、証券取引法に基づく臨時報告書は、有価証券報告書の提出会社に一定

      の重要な事象が発生した場合に提出することとされているが、その連結子会社

      等に重要な事象が発生した場合に、適時、適切なディスクロージャーを求める

      べく、連結ベースでの臨時報告書の提出事由を設定するよう措置を講ずること

      が適当である。                                                        

                                                                            

    6.ディスクロージャーの効率化                                          

                                                                        

      (1) 連結情報を充実させることに伴い、その有用性が乏しくなると考えられる

        個別情報等について、次のような簡素化を進め、ディスクロージャーの効率

        化を図ることが適当である。                                        

        ○  有用性が乏しいと判断される個別情報、例えば、製品別の生産能力や生

          産実績等について、記載を簡素化する。                              

        ○  附属明細表のうち、連結財務諸表の作成において相殺消去される事項に

          係る関係会社有価証券明細表、関係会社出資金明細表等を廃止する。    

            また、その他の附属明細表についても、商法上の附属明細書の記載内容

          との調整を行い、記載を簡素化する。                            

        ○  連結キャッシュ・フロー計算書の導入に伴い、個別ベースでの資金収支

          表を廃止する。                                                    

        ○  「関連当事者との取引」について、公認会計士又は監査法人による監査

          の対象とすることを前提として、重要性基準の見直し等を行う。        

                                                                          

      (2) 現行の連結財務諸表の表示科目は、国際的にみても、かなり細分化されて

        おり、投資情報として一覧性に欠けるとの指摘がある。また、連結子会社数

        の増加に伴い、現行の科目区分によって連結作業を行うことは、実務的にも

        困難になってきている。                                            

          これらの点を考慮し、投資情報としての有用性を損なわない範囲で、表示

        科目を統合することが適当である。                                    

                                                                        

    7.連結情報に係る公認会計士等の監査の充実                          

                                                                            

        連結キャッシュ・フロー計算書及び中間連結財務諸表のほか、「関連当事者

      との取引」など、投資判断に重要な影響を及ぼす連結情報については、公認会

      計士又は監査法人による監査の対象とすることが適当である。

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