IV.改革の具体的な事項

 

i.商品・業務・組織形態の自由化・多様化


                                                                              

1.持株会社制度の活用                                                      

                                                                              

 (1)  基本的考え方                                                      

                                                                        

  (a)  我が国では、戦後50年以上にわたり「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する

    法律」(以下「独占禁止法」という。)により持株会社の設立・転化が禁止されてき

    たが、持株会社の解禁等を内容とする独占禁止法改正法案が第 140回国会において成

    立したところである。                                                      

      持株会社の解禁は、その活用を通じて事業者の活動の活発化に資するものとして期

    待されている。金融分野における持株会社の活用については、利用者利便の向上等金

    融システム改革の趣旨、預金者、投資者、保険契約者の保護等の観点からの検討が必

    要であることから、調査会では、銀行を保有する持株会社の活用を中心とした検討を

    行い、証券会社及び保険会社の持株会社の活用については、それぞれ証券取引審議会

    及び保険審議会が中心となって検討が行われた。                              

                                                                              

  (b)  金融システム改革における銀行の持株会社活用の意義・役割を整理すれば以下のと

    おりである。                                                              

                                                                        

    ア)持株会社の解禁は、銀行の経営形態の選択肢の拡大をもたらすものである。持株

      会社の活用により、分社化を通じた専門化・高度化した金融サービスの提供が可能

      となるとともに、銀行による金融関連の新規分野への参入や銀行以外の業態からの

      銀行分野への参入、特定の部門からの撤退を円滑化すると考えられる。さらに、持

      株会社の傘下で金融業務を営む子会社間における相乗効果(シナジー効果)の発揮  

      も期待できる。                                                          

        したがって、このような持株会社の活用により、金融分野での競争の促進と銀行

      経営の効率化が期待されるとともに、利便性や資産運用の効率性を高めるような金

      融サービスの開発・提供が促進され、利用者利便の向上に資すると考えられる。  

                                                                              

    イ)また、同一持株会社の傘下の子会社(以下「兄弟会社」という。)間は親子会社

      間に比して直接の出資関係が希薄であり、持株会社の経営管理のあり方にもよるが、

      基本的にはそれぞれの経営の状況が相互に直接的な影響を与えにくい仕組みである。

      したがって、兄弟会社の経営悪化によるリスクも親子会社の場合に比べ及びにくい

      と考えられ、リスク遮断等の面では相対的に優れていると考えられる。        

        さらに、持株会社を通じた兄弟会社化による合併代替、業務提携の強化も可能と

      なるため、銀行経営の基盤の強化にも資すると考えられ、銀行経営の効率化と相ま

      って、金融システムの安定化にも資することが期待される。                  

                                                                        

    ウ)このように持株会社の活用は、金融の効率化、金融システムの安定化及び利用者

      利便の向上に資することが期待され、金融システム改革の中で重要な役割を担うも

      のと考えられる。                                                        

        なお、諸外国では、持株会社は銀行の経営形態として活用されているところであ

      る。                                                                    

                                                                        

 (2)  銀行を保有する持株会社の子会社の業務範囲                          

                                                                        

  (a)  持株会社の積極的な活用を可能とするため、銀行を保有する持株会社の子会社の業

    務範囲については、金融関連の新規分野への参入等に配慮した自由度の高いものとす

    る必要がある。兄弟会社間は親子会社間に比べ相互に経営に与える影響がより少ない

    仕組みであることを踏まえれば、金融関連分野の業務を行う会社については、新規設

    立に限らず幅広く柔軟に銀行を保有する持株会社の子会社化を可能とすることが適当

    である。                                                            

                                                                              

  (b)  具体的には、銀行本体の分社化の場合や、証券会社、信託銀行のように既に業態別

    子会社方式により相互参入が図られているものについては、銀行を保有する持株会社

    の子会社化を可能とすることが必要である。                                  

      また、業態別子会社方式による相互参入が図られていない保険会社や免許業種であ

    る投資信託委託会社についても、銀行を保有する持株会社の子会社化を可能とするこ

    とが必要である。                                                          

      さらに、金融分野におけるシナジー効果が期待できる業務等金融の効率化や利用者

    利便の向上に資する業務(例えば、投資顧問業務、銀行の営業用不動産の管理業務)

    を営む会社についても、銀行を保有する持株会社の傘下で広く子会社化しうるような

    柔軟な制度とすることが適当である。                                        

      上記の業務を行う会社については、持株会社の金融システム改革における意義・役

    割に鑑みれば、利用者利便の向上に資する業務を広く行うことを可能とし、銀行を保

    有する持株会社の解禁と同時に制度的整備を完了し可及的速やかに銀行との兄弟会社

    化を可能とすることが適当である。                                    

                                                                              

  (c)  同一持株会社の経営管理の下で銀行といわゆる一般事業会社の経営が行われること

    については、銀行経営の健全性確保の観点から銀行に他業禁止が課せられている趣旨

    (銀行業務に専念することによる効率性の発揮、利益相反取引の防止、他業の有する

    リスク回避等)、銀行についてはその公共的な性格からセーフティーネットが存在す

    ること等からすれば、基本的には銀行を保有する持株会社が一般事業会社を保有する

    ことは必ずしも適当ではないと考えられる。                                  

      ただし、銀行を保有する持株会社の一般事業会社保有を制限する場合であっても、

    情報通信分野等の技術革新等を背景に金融サービスの高度化・多様化が進展しており、

    金融関連分野と一般事業の境界が必ずしも明確に区分できなくなってきている面もあ

    ることから、そのような実態の変化も踏まえつつ、金融の効率化や利用者利便の向上

    等の視点に立って、弾力的に対応していくことが必要と考えられる。            

                                                                        

  (d)  証券会社又は保険会社を保有する持株会社の子会社については、基本的にはそれぞ

    れ証券取引審議会及び保険審議会の場で別途検討された業務範囲の考え方によること

    となる。                                                                  

      証券会社又は保険会社を保有する持株会社が銀行を保有することは、銀行を保有す

    る持株会社が証券会社又は保険会社を保有する場合と同様、金融システム改革におい

    て重要な意義を有するものと考えられる。                                    

      ただし、上記(c)の考え方は銀行を保有する持株会社全てに共通する考え方であり、

    銀行、証券会社、保険会社又は一般事業会社のいずれが中心となって設立した持株会

    社の場合であっても銀行を保有すれば上記(c)の考え方によることとなる。        

                                                                        

  (e)  また、一般事業会社が銀行の兄弟会社となることを制限する場合に、持株会社によ

    る一般事業会社の株式保有について、銀行経営の健全性確保等の観点から何らかの制

    限が必要と考えられる。                                                    

                                                                        

 (3)  持株会社、兄弟会社及び持株会社グループに対する規制等              

                                                                        

  (a)  弊害防止措置                                                      

      持株会社の経営管理の下で、銀行と持株会社又は兄弟会社との利益相反取引を通じ

    て銀行経営の健全性が損なわれること等の弊害が生じることを防止するため、アーム

    ズ・レングス・ルール等公正な取引を確保するための措置を講ずることが必要である。  

      また、顧客の側の誤認防止、適正な市場価格形成機能の確保等の弊害防止措置を講

    ずることも適当と考えられる。ただし、弊害防止のための諸措置は、持株会社活用の

    効果を減殺することとならないように必要最小限のものとすることが重要である。  

      なお、米国においては顧客の利便性向上等の観点から、同一持株会社傘下の銀行・

    証券会社間の弊害防止措置を緩和する動きがあることにも留意する必要がある。  

                                                                        

  (b)  持株会社、兄弟会社及び持株会社グループ                            

      銀行の経営方針及び財務・業務に関する情報開示については、経営健全化及び利用

    者等が取引相手を判断するための情報の入手等の観点からその重要性が指摘され、拡

    充が図られてきたところである。                                            

      持株会社は銀行の経営管理部門としての機能とともにグループ全体を統括する機能

    を果たしうることから、銀行経営の健全性確保の観点からは、持株会社が銀行を含む

    グループ全体の経営方針及び財務・業務にかかる情報について開示することが重要と

    なる。このような情報開示は、持株会社の自己規律を高め持株会社による傘下の銀行

    の健全経営を促すことにつながるとともに、利用者等も銀行経営の健全性を判断する

    ための重要な情報が得られることとなる。さらには監督当局の効果的なモニタリング

    にも資すると考えられる。したがって、持株会社による連結ベースのディスクロージ

    ャーは必要である。                                                        

      また、持株会社の銀行に対する経営管理等の機能、個別の兄弟会社等及び持株会社

    グループ全体の経営状況及び業務・財務内容が銀行経営に影響を及ぼす可能性等に鑑

    みれば、銀行の健全経営を確保するために、連結ベースでの自己資本比率規制・大口

    信用供与規制及び持株会社の適格性審査を行うことが必要である。              

      さらに、これらの規制及び上記の弊害防止措置の実効性を担保するため、報告徴求、

    立入検査、法令違反の場合の処分等を可能とする措置を講ずることも必要である。  

      なお、このようなグループに対する監督は欧米においても行われているところであ

    り、我が国において適切なグループ監督が行われていることが、我が国銀行の国際的

    な評価の要素となることにも留意すべきである。                              

                                                                              

 (4)  その他                                                            

                                                                        

  (a)  設立に関する手続等の問題                                          

      金融システム改革における持株会社の意義・役割を勘案すれば、持株会社を活用し

    やすいものとする必要があり、銀行等が活用する持株会社の設立等のための諸手続の

    整備や設立の際生ずる税などの負担の軽減等についても、検討されることが必要と考

    えられる。                                                                

                                                                        

  (b)  銀行による株式保有のあり方                                        

      銀行による株式保有の制限については、大量の株式保有が銀行経営の健全性及び株

    式市場に与える影響が指摘されているほか、独占禁止法の5%ルールとの関係等の問

    題が含まれており、重要な検討課題である。                                  

                                                                        

  (c)  銀行株式の大口保有                                                

      銀行株式の大口保有について、銀行経営の健全性確保の観点から、欧米の例も参考

    にしつつ、何らかの措置が必要との考え方もある。                            

                                                                              

 (5)  金融システム改革における持株会社活用の重要性に鑑み、改正独占禁止法の施行を

    にらんで所要の法的整備を可及的速やかに行うことが望ましい。                

                                                                              

2.ABS(資産担保証券)など債権等の流動化                            

                                                                              

 (1)  基本的考え方                                                        

                                                                          

  (a)  ABS(Asset Backed Securities 「資産担保証券」)とは、原債権者からSPC

    (Special Purpose Company 「特別目的会社」)等の媒体が多数の債権等を譲り受け、

    それらを担保として発行される証券のことである。こうしたABSを活用した債権等

    の流動化(債権等の証券化)は、金融の自由化、国際化の一層の進展に伴い、金融機

    関や一般企業をとりまくリスクが多様化・複雑化するなか、信用リスクの分散やAL

    M管理(Asset Liability Management「資産・負債の総合管理」)を行うに当たって

    の有力な手法の一つであると考えられる。                                    

      また、企業の資金調達手段の多様化や魅力ある投資商品の提供といった観点からも、

    ABSによる債権等の流動化が積極的に活用されることが期待される。          

      さらに、ABSによる債権等の流動化によって、金融仲介機能が事前審査機能、信

    用供与機能、債権管理機能、リスク管理機能等に分解されたうえ、それぞれの機能に

    優位性を持った者による機能分担が行われることになる。この結果、全体としてより

    効率的な金融サービスの実現につながることが期待される。                    

      このように、ABSによる債権等の流動化は新しい金融仲介手法として、今後発展

    が期待される分野であり、そのための環境整備を図る必要がある。              

                                                                          

 (2)  債権譲渡に関する第三者対抗要件の具備方法の簡素化                    

                                                                          

  (a)  ABSを活用した債権等の流動化を行うに当たって、債権譲渡に係る第三者対抗要

    件が具備されていないと、仮に原債権者が倒産した時などSPCが破産管財人等に当

    該譲渡の有効性を主張できないことになり、投資者保護上問題が生じうることになる。  

      しかしながら、債務者が多数存在するような場合には、現行の民法の手続に従い第

    三者対抗要件を具備することは困難であり、ABSによって多数の債権等をまとめて

    流動化することは実務上難しいとの指摘がある。                              

                                                                              

  (b)  この点については、97年4月、法務省民事局長の私的研究会「債権譲渡法制研究  

    会」の報告書が発表され、第三者対抗要件の具備方法の簡素化のために登録制度の採

    用が提言されたところであるが、この検討結果を踏まえ、98年度中に所要の法的な措

    置が講ぜられることが望ましい。                                            

                                                                          

 (3)  投資者保護措置                                                      

                                                                          

  (a)  ABSの投資者に対する保護措置としては、証券取引法により発行スキームの仕組

    みや譲渡資産の内容等について適切な開示が行われているが、これに加えて、譲渡さ

    れた債権等のみを担保として発行されるというABSの特性に鑑み、仕組み段階にお

    ける投資者保護のあり方等について検討する必要がある。                      

                                                                              

  (b)  例えば、SPCは債権等を譲り受け、証券を発行することのみを目的として設立さ

    れる存在であり、SPCがそれ以外の業務を行うことは、それだけSPCの倒産リス

    クを高めることになり、ABSの投資者保護の観点からは問題がある。また、ABS

    の裏付け資産が当該ABSの償還等以外の目的に流用されるような場合には、投資資

    金の回収に支障が生ずる可能性がある。                                      

      こうした観点からの最小限の手当てについては法的な措置も含め検討していくこと

    が必要である。                                                            

                                                                          

 (4)  SPCの設立等に係る負担の軽減等                                    

                                                                          

  (a)  ABSでは、まとめて流動化しようとする債権等のパッケージごとにSPCを設立

    する場合、現行の商法における、最低資本金(1000万円)、取締役数(3人以上)等

    の規定はSPCを設立・維持するためのコスト要因となっており、ひいてはABSの

    商品性の魅力を低下させる原因にもなりうる。                                

      このため、SPCのあり方を含めその設立手続の簡素化等について何らかの法的な

    措置について検討していくことが必要である。                                

                                                                              

  (b)  また、SPCは、会社設立(法人格の取得)により、原債権の譲受け、ABSの発

    行等に関する権利義務の主体となるので、現行の法人税等の課税では、このような私

    法上の位置づけと同様に、一個の法人として取り扱われることになるが、SPCが導

    管的な機能を果たすことに鑑み、所定の要件を満たすSPCについて、課税上特別な

    取扱いとすることについて検討されることが必要と考えられる。                

                                                                          

 (5)  金銭債権信託受益権の流通性の改善                                    

                                                                          

      信託受益権のうち、証券投資信託及び貸付信託を除いては、権利の譲渡は指名債権

    譲渡方式によって行われていることから、流通性に制約がある。こうした問題点に鑑

    み、金銭債権信託受益権について有価証券を発行し、それをもって流通させることを

    選択することが可能となるよう所要の法的措置を検討していくことが必要である。  

                                                                            

    以上、(3)~(5)の諸施策に関し、必要な法的措置については、次期通常国会に法案提

  出されることが望ましい。                                                      

                                                                          

 (6)  ABSの銀行等による取扱い                                          

                                                                          

  (a)  銀行等はこれまでもABSを活用した債権等の流動化に係る業務を行ってきており、

    例えば、CPの発行による証券化(ABCP)について積極的な取組みを始めている。

    また、信託方式によるABSについても、政府の担保不動産等関係連絡協議会におい

    て97年3月末に取りまとめられた「担保不動産等流動化総合対策」を受け、証券取引

    法上の有価証券とみなされる信託受益権の対象となる債権の範囲が、住宅ローン債権

    から金融機関等の貸付債権に拡大されるとともに、その取扱いは、銀行等及び証券会

    社が共に行うことができることとされたところであり、これにより債権等の流動化が

    一段と促進されることが期待される。                                        

                                                                              

  (b)  ABSなどの資産金融型証券は、発行体が保有する特定の資産の価値を基礎として

    発行されるものであり、発行企業全体の信用力を背景に発行される企業金融型証券と

    はその経済的性質を異にしている。営業の担い手の適格性を考える場合は、当該有価

    証券の経済的性質に応じた考え方をとることが適当であると考えられることから、資

    産金融型証券の取扱いを行う者は、必ずしも企業金融型証券の場合と同じである必要

    はないと考えられる。                                                      

                                                                              

  (c)  また、ABSなどを活用した債権等の流動化は従来の直接金融・間接金融の枠を超

    えて発展していくことが期待されている分野であり、また、流動化スキームを構築す

    るに当たって、これまで以上に創意工夫が要求される分野である。よって、債権流動

    化の発展のためには業態にとらわれず、より多くの担い手がその能力を競い合うとい

    った枠組みを整備することが重要である。                                    

                                                                          

  (d)  ABSを活用した債権等の流動化においては、スキーム全体の構築(アレンジャ  

  ー)、資産管理や事務代行(サービサー)、ABSの商品性を高めるための信用補完、

    ABSの販売等といった役割があるが、銀行等はその情報生産・リスク管理能力を発

    揮することにより、流動化の各段階に関与していくことが想定される。          

                                                                              

  (e)  一方で、銀行等が有価証券を不特定多数の投資者に販売する場合には、融資を行う

    立場と有価証券の仲介を行う立場との間で利益相反の問題等も指摘されるところであ

    り、こうした弊害を防止するための措置等を講ずることも含めて、上記の法的措置の

    内容等を勘案しつつ、流動化に係る資産金融型証券(ABS)の銀行等による取扱い

    を広く認めることについて検討すべきである。                                

                                                                          

 (7)  担保不動産等の流動化                                                

                                                                          

  (a)  先に述べた「担保不動産等流動化総合対策」においては、貸付債権のみならず、担

    保不動産等といった資産の流動化策を実施することとされている。この対策は、担保

    不動産等の流動化を進め、金融機関等の不良債権問題の処理を促進し、市場の活性化

    を図るための総合的な対策であり、担保不動産の収益性の向上、担保不動産等の証券

    化・情報化などがその重要な柱となっている。                                

                                                                              

  (b)  そもそも、不良債権問題の背景には、従来の融資が不動産の担保価値に過度に依存

    し、また、個別のプロジェクト毎のリスク管理が不十分であったことがある。これら

    の点については、個々の不動産プロジェクトの収益力に着目したプロジェクト・ファ

    イナンスの推進により、収益性と市場原理に基づく収益還元価格による不動産の価格

    形成が期待でき、こうした手法が我が国の市場においても多用されることは、資産の

    流動化に向けた一つの基盤(インフラ)整備として重要であると考えられる。    

      こうしたことを踏まえ、97年2月の新総合土地政策推進要綱においても、「不動産

    証券化、プロジェクト・ファイナンス等の多様な資金調達手法についての検討を進め

    る」こととされたところである。                                            

                                                                              

  (c)  これを受け、「担保不動産等流動化総合対策」においては、担保不動産等の証券化

    について、将来的にはファンドの投資対象としての不動産に係る証券化を目指すとと

    もに、当面、規制緩和や制度の見直しを行うことにより、多様化、簡素・低コスト化

    を推進することとされている。                                              

                                                                              

  (d)  具体的には、前述の信託及びSPCの活用策等に加え、土地の信託受益権やSPC

    の不動産に係る課税の取扱いなどについて、不良資産の証券化を円滑に進める観点か

    ら、所要の措置について検討を行うことが求められる。                        

                                                                              

  (e)  我が国経済が活力を保持していくために、担保不動産等の流動化を進め不良債権問

    題の処理を促進することは、金融市場の改革とともに重要な課題となっており、以上

    に述べた施策をはじめとする諸措置の早急な実施が望まれる。                  

                                                                              

3.デリバティブの取扱い                                                  

                                                                          

 (1)  基本的考え方                                                        

                                                                          

  (a)  金融の自由化の進展、外為取引・資本取引に係る規制の緩和・撤廃等の流れの中で、

    金融機関を含め市場参加者が、金利や為替、金融商品の価格変動リスク(マーケット

    リスク)により晒されるようになってきており、こうしたリスクをいかに管理してい

    くかが経営上極めて重要となってきている。こうした中、リスクを適切にヘッジする

    ための手段としてデリバティブ取引に対するニーズはますます高まっている。    

      また、デリバティブ取引は、自らのリスクテイク能力に応じて積極的にリスクをと

    っていくことにより利益を得ようとしている投資者に対し、個々のニーズに合ったリ

    スクとリターンの組み合わせを提供する手段としても有用である。              

                                                                              

  (b)  このように、デリバティブ取引は、将来のリスクに対する評価を異にする経済主体

    の間で、現物取引だけでは十分にカバーできないリスクの再配分を可能にし、国民経

    済的により望ましいリスクシェアリングを実現しているといえ、デリバティブ取引の

    健全な発展は我が国金融市場の効率化に資するものであると考えられる。        

                                                                              

  (c)  我が国のデリバティブ市場を見ると、現在、証券取引法や商品取引所法において、

    取引所の相場を使った差金授受を取引所の外で行うことが禁止されていること等の法

    的制約があるが、上記のようなデリバティブ取引の重要性に鑑みれば、早急に所要の

    法的整備を行うことにより、デリバティブ取引の多様化を図り、我が国金融市場の国

    際競争力の確保に努めていくことが望まれる。                                

      また、金融先物取引法上の制約に関しても、その取扱いを速やかに検討していくこ

    とが望まれる。                                                            

                                                                              

  (d)  こうした状況を踏まえ、先般、証券取引審議会において、有価証券を原資産とする

    店頭デリバティブ取引を解禁するために必要となる施策についての報告書が取りまと

    められたところであり(97年5月20日「有価証券関連の店頭デリバティブ取引につい

    て」)、この報告書を踏まえ、所要の制度の整備が行われる見込みである。      

                                                                          

 (2)  有価証券関連の店頭デリバティブ取引の銀行等による取扱い              

                                                                          

  (a)  店頭デリバティブ取引に対する顧客ニーズは、金利、為替、有価証券等の価格の変

    動に基づくキャッシュフローを適切に組み合わせ、顧客にとって最適なキャッシュフ

    ローの提供を受けることにあると考えられることから、店頭デリバティブ取引の営業

    の担い手を原資産の種類によって制限することは、利用者利便の観点から適切ではな

    いと考えられる。また、店頭デリバティブ取引の発展のためには、より多くの担い手

    の参加により適切な競争原理が働くようにすることが望ましい。                

      こうしたことに鑑みれば、店頭デリバティブ取引の担い手を考えるに当たっては、

    原資産を扱えるか否かということではなく、リスクを管理する能力があるか否かとい

    った観点から検討すべきである。                                            

                                                                              

  (b)  また、有価証券関連の店頭デリバティブ取引のうち、特に、原資産の受渡しを伴わ

    ない取引については、実際に行われている取引は、顧客との間で単にキャッシュフロ

    ーの授受を行っているに過ぎない。また、有価証券価格の変動リスクを有効にヘッジ

    するなど適切に管理している限りにおいては、その経済実態は信用リスクを負担する

    伝統的な銀行業務と同質であると考えられる。                                

                                                                              

  (c)  こうした観点から、有価証券関連の店頭デリバティブ取引についても、原資産の受

    渡しを伴わない範囲であれば、有価証券価格の変動リスクを有効にヘッジするなど適

    切なリスク管理が行えることを前提に、銀行等が行える業務とすべきである。このた

    め、有価証券関連の店頭デリバティブ取引の解禁のための証券取引法の改正とあわせ

    て、銀行等が営業として行えるようにするための所要の措置を講ずる必要がある。  

                                                                              

  (d)  なお、有価証券関連の店頭デリバティブ取引を営業として行う銀行等は証券取引法

    の公正な取引のためのルールに服することとするとともに、銀行等が株式関連の店頭

    デリバティブ取引を営業として行う場合には、投資者としての立場と担い手としての

    立場の間での利益相反を防止するための所要の措置を講ずる必要がある。        

                                                                          

 (3)  リスク管理体制                                                      

                                                                          

  (a)  デリバティブ取引は、リスクが複雑に絡み合っている面もあることから、リスクに

    対する理解や管理が不十分な場合には不測の損失につながる可能性もある。よって、

    銀行等が有価証券関連の店頭デリバティブ取引を取り扱うに当たっては、銀行等の経

    営の健全性確保という観点から、適切なリスク管理体制を有していることが求められ

    る。                                                                      

                                                                              

  (b)  デリバティブ取引の健全な発展と銀行等の経営の健全性の確保をいかに両立させて

    いくのかという問題に関しては、95年5月の調査会基本問題検討委員会報告にもある

    ように、先進主要国の金融監督当局等の基本的考え方は、各銀行等に対して、その抱

    えるリスクに見合った自己資本の保持と適切なリスク管理体制の確立を求め、金融監

    督当局においては、これをサポートするための指針等を作成するというものである。  

                                                                              

  (c)  我が国においても、有価証券関連の店頭デリバティブ取引を銀行等が取り扱うに際

    しては、基本的には上記のような考え方に沿って、金融機関の経営の健全性の維持を

    図っていくべきであると考えられる。                                        

      ただし、銀行等によってデリバティブ取引の態様や取引量に違いがあることから、

    各銀行等に一律に同一のリスク管理体制等の確立を求めることは適切ではなく、むし

    ろ、銀行等の業務の内容や取引の態様等に即したリスク管理体制の構築が図られるべ

    きである。                                                                

                                                                          

 (4)  商品関連の店頭デリバティブ取引                                      

                                                                          

  (a)  前述の店頭デリバティブ取引の意義に鑑みると、顧客の多様なリスク管理ニーズに

    即した柔軟な商品設計を可能とする観点から、今後、商品関連デリバティブの分野に

    おいても、早急に多様な店頭取引が行えることが可能となるよう所要の措置が講じら

    れることが望まれる。                                                      

      また、商品関連の店頭デリバティブ取引の営業の担い手については、有価証券関連

    の店頭デリバティブ取引と同様、原資産を取得することになる取引を除き、銀行等に

    よる取扱いを広く認めるべきである。                                        

                                                                              

  (b)  なお、商品取引所における取引の資格について見直しが行われる場合には、幅広い

    市場参加の観点から、銀行等の先物取引への参加も認められるようになることが望ま

    しい。                                                                    

                                                                              

4.証券投資信託の販売                                                      

                                                                              

 (1)  基本的考え方                                                        

                                                                          

      証券投資信託(以下「投資信託」という。)は、証券市場に直接参加することが難

    しい投資者に対し、間接的な形で証券投資への道を開くという機能を有しており、12

    00兆円にものぼる個人金融資産の効率的な運用が求められる中で、個人投資者にとっ

    ての有力な運用手段の一つであると考えられる。このため、投資信託の販売チャネル

    の拡充を図ることが考えられる。                                            

                                                                          

 (2)  投資信託の銀行等による販売                                          

                                                                          

  (a)  投資信託受益権は、証券取引法上の有価証券であることから、その販売チャネルと

    しては、発行者である投資信託委託会社による直接販売のほかは、証券会社に限られ

    ている。銀行等による投資信託の販売を行えるようにすることにより投資信託の販売

    チャネルを拡充していくことは、顧客が投資信託にアクセスするルートが拡大される

    ため、利用者利便の向上に資することが期待される。また、投資信託の販売における

    競争も促進されよう。こうした中で、投資信託に対する潜在的な需要が掘り起こされ、

    個人の資産運用の効率性の向上等に資するものと期待される。                  

                                                                              

  (b)  このような観点から、新たな販売チャネルとして、銀行等の本体による投資信託の

    販売が可能となるよう証券取引法の改正等所要の措置を講ずることが望まれる。また、

    銀行等自身による販売に加え、投資信託委託会社が銀行等の店舗を活用して直接販売

    を行うことも考えられる。                                                  

                                                                          

 (3)  投資者・預金者保護のための諸措置                                        

                                                                          

      銀行等による投資信託の販売が認められた場合、適正な販売を確保し、投資者の保

    護を図るため、その販売に当たっては、証券取引法上の規制が適用されるべきである。

      さらに、銀行等は元本保証されている預金を取り扱っていることから、顧客が銀行

    等の販売する投資信託に関して、そのリスクの所在を誤認する可能性は否定できない。

    このため、銀行等が投資信託を販売するに当たっては、証券取引法による投資者保護

    のための措置に加え、このような誤認を防止するための措置を講ずる必要がある。  

                                                                          

5.保険商品の販売                                                          

                                                                          

 (1)  基本的考え方                                                        

                                                                          

  (a)  近年、保険商品の有する貯蓄機能に対するニーズの高まりを受けて、保険商品は機

    能面で他の金融商品に接近してきており、両者の競合が高まっている。こうした中、

    利用者は、保険商品の利回り、流動性等について、他の金融商品と比較した上で、有

    利な商品を選択するようになってきており、銀行等による保険商品の販売を実現する

    ことによってこうした利用者の選択はより円滑に行えるようになると考えられる。ま

    た、銀行等は、預金等の商品と保険商品とを利用者のニーズに応じて最適な組み合わ

    せで提供することが可能となる。                                            

                                                                              

  (b)  さらに、銀行等の店舗網という販売ネットワークが新規に参入することにより、保

    険商品の販売における競争が促進され、販売段階での効率性が向上することが期待さ

    れるほか、保険業務へ参入しようとする者にとっての新規参入のコストを低下する効

    果があると考えられ、保険業における競争が促進されるものと考えられる。      

                                                                              

 (2)  保険商品の銀行等による販売                                              

                                                                              

  (a)  このように、銀行等による保険商品の販売は、利用者利便の向上、販売チャネルの

    多様化・効率化、保険業における競争促進を通じた保険商品の多様化・高度化等に資

    することから、基本的には認めることが適当である。                          

                                                                              

  (b)  ただし、保険商品を銀行等が販売する場合、ア)その影響力を行使した販売による

    弊害の可能性、イ)銀行等の固有業務(預金、貸付、為替等)を行うことを通じて得

    られた情報が保険販売に不当に利用される可能性、ウ)銀行等が保険商品を販売する

    ことにより、保険契約者が保険商品のリスクの所在を誤認する可能性、等の弊害の可

    能性が指摘されるところであり、これらに対し適切な防止措置を講ずることが適当で

    ある。                                                                    

      このような点を含め、本件については保険審議会においても検討が行われたところ

    であり、その結果も踏まえ、できるだけ前向きな対応を行うべきである。        

                                                                              

6.業態別子会社の業務範囲、弊害防止措置の見直し等                    

                                                                          

 (1)  基本的考え方                                                        

                                                                          

  (a)  93年より実施に移された金融制度改革においては、金融の自由化、国際化、証券化

    等の進展に対応して、従来のいわゆる縦割りの金融制度を見直し、有効かつ適正な競

    争を促進することにより、金融制度の効率化及び市場の健全な発展を図り、「利用者

    のための改革」と「国際性の確保」という改革の理念を実現することが目指されてい

    る。                                                                      

                                                                              

  (b)  こうした制度改革の理念に鑑み、それぞれの金融機関がその特性を活かしながら多

    様化・高度化する利用者ニーズに対応できるよう、各業態の金融機関が相互に他業態

    にも幅広く参入していくことが適当であるとされ、その方策の一つとして、業態別子

    会社による銀行業務、証券業務、信託業務間の相互参入が実施された。          

                                                                              

  (c)  その際、新しい制度の実施当初においては、金融機関間の競争条件の公平性の確保

    等に配慮する必要があることから、信託銀行子会社、証券子会社の各業態別子会社の

    業務の範囲に一定の制限が付されたところである。                            

                                                                              

  (d)  上記の金融制度改革及び今般の金融システム改革の趣旨に鑑みれば、幅広い業務分

    野において金融機関間の競争を促進するとともに、各金融機関が利用者の多様なニー

    ズに対応できるようにする必要があることから、証券子会社、信託銀行子会社の各業

    態別子会社の業務範囲は、できるだけ早期に全ての証券業務、信託業務とすべきであ

    る。また、不動産仲介業等のいわゆる信託の併営業務のうち、銀行業の付随業務とし

    て認められる以外のものについては、今後とも慎重な取扱いとすることが適当である。

      なお、信託業務を銀行等の本体で兼営することについては、引き続き検討を行って

    いくことが必要である。                                                    

                                                                              

 (2)  業態別子会社の業務範囲制限の撤廃等                                  

                                                                          

  (a)  既に、97年3月末に閣議決定された「規制緩和推進計画の再改定について」におい

    て、97年度下期には、証券子会社に現物株式に係る業務を除く全ての証券業務を解禁

    し、信託銀行子会社に年金信託・合同金銭信託を除く全ての金銭の信託業務を解禁す

    るとされたところであるが、残余の業務制限についても、99年度下期中に解禁するこ

    とが適当である。                                                      

                                                                              

  (b)  また、親子間の取引等について設けられている弊害防止措置についても、金融制度

    改革の実施後の状況や各国における金融制度の改革の動き等も勘案し、随時所要の見

    直しを行う必要がある。                                                    

                                                                          

 (3)  保険業務と銀行業務等その他の金融業務との相互参入                    

                                                                          

      さらに、幅広い業務分野において金融機関間の競争を促進するとともに、各金融機

    関が利用者の多様なニーズに対応できるようにするという観点からは、銀行業務、信

    託業務及び証券業務(以下「銀行業務等」という。)間のみならず、保険業務との間

    に関しても、幅広く参入を実現させていくことが望ましいと考えられる。保険会社に

    よる銀行業務等への業態別子会社による参入、銀行等、信託銀行及び証券会社からの

    保険業務への業態別子会社による参入については、これまでも調査会及び保険審議会

    においても検討が行われてきており、基本的には、こうした相互参入の実現が望まし

    いとされたところである。                                                  

      こうしたことから、相互参入に係る関係業態への影響等も考慮しつつ、今般の金融  

    システム改革の趣旨に鑑み、その実施時期については、遅くとも2001年までには実現

    を図るべきである。                                                        

                                                                              

7.普通銀行における長短分離制度に係る業務上の規制の撤廃              

                                                                              

  (a)  戦後の我が国の金融制度では、設備投資資金不足の中にあって安定的な資金供給を

    進める観点から、長短分離制度の下、普通銀行は、預金等により資金を調達し、資金

    運用面では、商業手形割引や短期手形貸付を中心に行い、他方、長期信用銀行は、預

    金の受入れに代えて長期信用銀行法に基づく債券(以下「金融債」という。)の発行

    により長期の資金調達を行い、長期資金を供給することとされてきた。          

      その後、我が国金融の基調が資金不足から資金余剰へと変化するにつれ、国民の金

    融商品・サービスの多様化に対するニーズが高まる一方、普通銀行の長期貸出が増加

    したため、銀行の資金調達面における長期短期の区分の見直しが求められるようにな

    った。                                                                    

      こうした状況の下、我が国においても、これまで各種預金の最長預入期間制限の撤

    廃等、長短分離制度に係る様々な規制の見直しが行われてきた。                

                                                                              

  (b)  今般の金融システム改革においては、個人貯蓄の最大限の活用や効率的な資金調達

    を図り、利便性・効率性が更に高い金融商品・サービスを利用者に提供するため、競

    争原理を一層活用した制度の構築が求められている。                          

      また、普通銀行の長期貸出の増加に対応する長期資金の調達手段の更なる多様化は、

    普通銀行の一層のリスク回避という面からも必要である。                      

      さらに、普通銀行の市場からの資金調達手段が多様化されることにより、普通銀行

    に対する市場による監視機能が一層充実することも期待できる。                

                                                                              

  (c)  現在、残された長短分離制度に関する業務上の規制として、普通銀行による普通社

    債等の発行の禁止等の措置が講ぜられている。しかしながら、上記の趣旨に鑑み、99

    年度下期中に普通銀行による普通社債等の発行等を解禁し、長短分離制度上の規制を

    撤廃することが適当である。                                                

                                                                              

  (d)  普通銀行が提供する商品の多様化ということを考えると、金融債発行を普通銀行に

    認めるべきではないかとの意見があるが、                                    

    ア)金融債は、長期金融に専念する観点から貸出業務等の業務範囲や預金等の受入先

      の制限などが課されている長期信用銀行に対し、預金に代えて大量かつ継続的な債

      券発行を行わしめるための制度であること、                                

    イ)このような長期信用銀行の特殊な役割に応えるための特殊な制度(商法の特例)

      である金融債の発行を普通銀行にまで拡大することは、商法の一般原則に服してい

      る一般企業との関係から見ても合理性が乏しいこと、                        

    ウ)現在、社債と金融債の発行手続面での違いは小さくなっていること、        

    等の理由から、普通銀行に金融債発行を認めることは適当でない。              

                                                                              

8.外国為替専門銀行制度                                                  

                                                                              

      外国為替専門銀行制度については、                                        

    (a)  我が国経済の国際化の進展をも背景として、「外国為替及び外国貿易管理法」の

      改正により外国為替業務が自由化され、外国為替専門銀行に加え、他の金融機関等

      においても、当然に外国為替業務が行えることとなること、                  

    (b)  また、同制度の下で認められた債券発行業務についても、普通銀行による普通社

      債等の発行等が認められることにより、大きな意味を持たないものとなること、  

    を考慮すれば、本制度に拠って業務を営む銀行が存在しない現在、新たに外国為替専

    門銀行として免許を受けて業務を開始する銀行を想定して本制度を存続させる意義は

    失われたと考えられる。                                                    

      したがって、本制度の根拠法である外国為替銀行法は速やかに廃止することが妥当

    である。                                                                  

                                                                              

9.地域金融機関の役割                                                      

                                                                              

 (1)  基本的考え方                                                            

                                                                              

      「地域金融のあり方について」(90年7月  調査会第一委員会中間報告)にもある

    ように、地域金融機関は、特定の地域において稠密な支店網や人的な繋がりによる、

    ハード・ソフト両面にわたる情報ネットワークを有しており、これを活用することに

    より、地域において重要な役割を果たしてきた。                              

      すなわち、地域金融機関は、地域経済の動向や地域住民・企業等に関する豊富な情

    報を活用し、都市銀行等では十分に応えることのできない地域住民・企業等の様々な

    ニーズにきめ細かく対応するという役割を有してきた。                        

      また、地域金融機関は、その地域に根ざした活動を行い、その地域の特性と実情に

    通じていることから、地域主導の地域開発等のプロジェクトに参画し、地域の活性化

    に貢献する役割を果たしてきた。                                            

      今般の金融システム改革においても、こうした地域金融機関の役割に鑑みれば、引

    き続き、地域金融機関は、その成果を全国に均霑するとともに、地域における金融サ

    ービスに対する新たなニーズに応える役割を果たしていくものと期待される。    

                                                                              

 (2)  地域金融機関の活性化のための措置                                       

                                                                              

  (a)  前回の金融制度改革においては、こうした地域金融機関の担う役割に鑑み、金融秩

    序の維持の観点から見て本体で行っても問題のない業務のうち、地域住民等の金融に

    対するニーズの充足及び地域開発支援のために必要な業務について、本体で行うこと

    ができることとされ、現在、地域金融機関は、土地信託、公益信託等の業務を本体で

    行っている。                                                              

      このような考え方は、引き続き妥当性を有すると考えられ、土地信託、公益信託に

    ついて利用者の利便性を向上させる観点から、地域金融機関本体で行える業務として、

    不動産管理信託等の業務を97年度中に追加するなどの措置を講ずることが適当である。  

                                                                              

  (b)  今般の金融システム改革を進めるに当たっては、金融機関の経営の健全性の確保も

    重要な課題である。このため、自己資本の充実の観点から、協同組織金融機関等が取

    り入れた劣後ローンも自己資本に算入する等、98年4月までに所要の措置を講ずると

    ともに、今後とも、協同組織金融機関の自己資本の充実のための方策について検討し

    ていくことが望まれる。                                                    

                                                                              

  (c)  協同組織金融機関については、その規模が小さく、高度かつ多様な金融商品を取り

    扱うことができないものもあることから、引き続き連合会組織の機能を活用すること

    により、そうした協同組織金融機関の業務の更なる活性化が図られることが望ましい。  

                                                                              

  (d)  協同組織金融機関の業務については、これまで協同組織の原則を損なわない範囲で、

    金融環境の変化や地域経済の実状に即し、その弾力的な運営が可能となるよう適切な

    対応を行うことが必要であるという考え方に基づき、業務範囲の拡大が逐次進められ

    てきたところである。                                                      

      このような考え方は、今般の金融システム改革においても妥当性を有すると考えら

    れることから、今後とも協同組織の原則を損なわない範囲において、引き続き業務の

    弾力的な運営についての検討が行われることが適当であると考えられる。        

                                                                              

10.電子マネー・電子決済                                                  

                                                                              

 (1)  基本的考え方-情報通信技術の進展と決済サービスの電子化                  

                                                                          

  (a)  近年の情報通信技術の進展を背景として、決済サービスの分野においても電子化が

    進展している。こうした動きは、従来、銀行等の間での決済や企業による大口決済の

    分野で顕著であったが、最近では消費者による小口・小売決済の分野でも支払手段や

    支払方法を電子化し、利用者利便の向上を図る様々な試みが世界各地で進展している。

    我が国でも従来より決済サービスの電子化は進められてきているが、小口・小売決済

    の分野で広範囲での利用を目指した取組みは最近になって本格化している。      

                                                                              

  (b)  このような電子化の進展の背景には、企業における事務処理の電子化の進展や消費

    者の生活時間・生活様式の多様化の中で、情報通信技術を取り入れたより効率的な決

    済サービスの提供を求める利用者側のニーズがあることも看過できない。        

                                                                              

  (c)  なお、電子マネーは、デジタルデータが貨幣価値を有するとされるものであり、こ

    れを通信回線等を通じて交換又は増減することにより決済が行われる。こうした電子

    マネーは、隔地者間の移動が困難、分割が困難で釣銭が必要、量が多くなると携帯に

    不便といった現金の難点、及び、移動の度に銀行等へのアクセス等が必要でコストが

    かかるといった預金の難点の克服を目指している。また、電子マネーは、従来のプリ

    ペイドカードに比べ、汎用性や換金性において優れたものを目指している。このよう

    に、電子マネーは、既存の決済手段に比べて、より効率的な決済手段となりうるもの

    であり、既存の決済手段を代替する可能性を有していると考えられる。          

                                                                              

  (d)  電子マネー・電子決済の健全な発展は、情報化社会における効率的な支払・決済の

    方法を提供し、利用者利便の向上に貢献するものである。特に、今後、情報通信技術

    の進展を背景として、電子商取引の一層の拡大が期待される中にあって、電子マネー

    ・電子決済の発展は、円滑な電子商取引の普及・発展の基盤となるものであり、情報

    化時代の我が国経済の発展にとって重要な課題といえる。また、電子マネー・電子決

    済の発展は、銀行等にとって、金融仲介機能と並んで重要な決済機能を情報通信技術

    の進展を取り入れて高度化させる動きであり、今後の金融業の発展のためにも極めて

    重要な課題である。こうした電子マネー・電子決済が健全かつ円滑に発展・普及して

    いくように、所要の環境整備を行うことが必要である。                    

                                                                          

 (2)  電子マネー・電子決済の発展に向けた環境整備                          

                                                                          

  (a)  電子マネー・電子決済は、暗号技術等の高度な情報通信技術によってその安全性が

    支えられている。急速な技術革新の進展の中で、未だ揺籃期にある電子マネー・電子

    決済については、民間部門が技術開発や創意工夫に基づく自由な開発を行い、多様な

    サービスの中から利用者がそのニーズに応じて適切なものを選択することを通じて、

    よりよい電子マネー・電子決済の発展を図ることが適当である。このための環境整備

    として、法律関係の明確化を図るとともに、新規参入の促進のための措置等を講ずる

    ことが必要である。                                                        

                                                                              

  (b)  他方、多くの個人利用者にとって電子マネー・電子決済の基礎となる高度な情報通

    信技術は容易には理解できないものとなっている。こうした電子マネー・電子決済が、

    特に小口・小売決済の分野においても円滑に発展していくためには、専門的知識や損

    失負担能力にも限界のある個人利用者でも安心して利用できるような環境の整備が必

    要であり、公正な取引ルールの形成やサービス提供者の適格性の確保等の個人利用者

    の保護の観点からの適切な措置を講ずることが必要である。                    

                                                                              

  (c)  電子マネー・電子決済は、国境を越えた資金取引に利用されうるものであり、また、

    事業展開も国際的な視野で進められている。こうした中にあって、我が国における電

    子マネー・電子決済の適切な発展を図る観点からは、技術開発や通信インフラの整備

    等に関してのみならず、個人利用者の保護や不正行為の防止等に関する検討に当たっ

    ても、国際的な整合性に留意していく必要がある。                            

                                                                              

  (d)  このような電子マネー・電子決済の発展・普及のための環境の整備は、21世紀に向

    けた金融システム改革の一環として取り組むべき課題であり、「電子マネー及び電子

    決済に関する懇談会」の報告書に示された提言や検討課題を踏まえ、速やかに具体的

    な施策に関する検討を進め、所要の措置を講じていくことが求められる。        

                                                                              

11.ノンバンクの資金調達の多様化                                          

                                                                              

 (1)  基本的考え方                                                            

                                                                              

  (a)  ノンバンクは、利用者ニーズが多様化する中で、その自由さと機動力を活かし、銀

    行等が積極的に取り扱ってこなかった小口の分野や専門性の高い分野、リスクは高い

    が将来性のある分野等に資金を提供することにより、国民経済において重要な役割を

    果してきた。                                                              

      他方、バブル期においては、事業者向けノンバンクを中心に、本来の専門分野から

    離れた不動産関連融資に過度に傾斜した業務を展開した結果、今日、多額の不良債権

    を抱えるに至っている。今後、ノンバンクは、こうした安易な融資姿勢を改め、リス

    ク管理を徹底するとともに、その専門性、独自性を発揮すること等により、利用者ニ

    ーズの多様化に応えた様々なサービスの提供及び次代を担う成長産業等への資金供給

    を行い、我が国経済において健全に発展していくことが期待される。            

                                                                              

  (b)  ノンバンクは、預金等を受け入れておらず、また、決済システムを中心とする信用

    秩序にも直接関わらないことから、銀行等とは異なり、経営の健全性維持の観点から

    の規制・監督を受けていない。このため、ノンバンクの経営の健全性は、基本的には、

    市場の規律に委ねられ、不健全な経営により破綻したノンバンクは、速やかに市場か

    らの退出を迫られることになる。従来、ノンバンクに対しては、こうした市場による

    監視が十分に機能してこなかったが、今後は、個々の銀行等が融資先のノンバンクに

    対する与信審査・与信管理を一層充実させ、そのモニタリング機能を高めていくこと

    を期待するとともに、市場による監視機能がより有効に働くような制度の整備が必要

    と考えられる。                                                            

                                                                              

 (2)  ノンバンクの資金調達の多様化                                            

                                                                              

  (a)  現在、ノンバンクは、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」

    (以下「出資法」という。)第2条第3項の規定により、貸付資金に充てることを目

    的として、社債の発行により不特定かつ多数の者から資金を調達することが禁止され

    ている。また、CPによる資金調達についても、同項の趣旨を踏まえ、通達により同

    様の制約がある。                                                          

                                                                              

  (b)  当該規定の当初の背景としては、大衆投資者の保護を図る必要性とともに、企業部

    門が資金不足状態にあり、限りある資金を国民経済の発展のために有用に配分するこ

    とが求められていた戦後の法制定当時において、不特定かつ多数から資金を集めて融

    資を行うという金融仲介業務は極めて公共性の高いものと認識され、その担い手を銀

    行等に限定する必要性があったものと考えられる。しかしながら、今日、商法、証券

    取引法等による市場ルールや投資者保護のための諸制度が格段に整備され、また、企

    業部門の資金不足が解消されたことに鑑みると、同項によりノンバンクの融資業務向

    け社債等の発行を禁止する意義は失われつつあると考えられる。                

                                                                              

  (c)  他方で、ノンバンクの社債等による資金調達を自由化することについては、金融仲

    介チャネルの多様化による経済全体の資金配分の効率化や市場による監視機能の導入

    による金融システムの透明化、安定化等のメリットがあると考えられ、以上を踏まえ

    ると、出資法第2条第3項に係る制約は基本的に廃止すべきと考えられ、次期通常国

    会に所要の法案を提出することが望ましい。                                  

                                                                              

  (d)  なお、このような金融仲介業務を含む様々な金融サービスについては、今後、投資

    者の自己責任を前提に横断的なルールを構築する方向で検討すべきと考えられるが、

    ノンバンクの融資業務向け社債等の発行の自由化に当たっては、こうした検討の方向

    をにらみつつ、投資者保護及び不公正取引の排除等の観点から、現状における対応と

    して、不良債権の状況等のディスクロージャーの強化や最低限の人的構成(リスク管

    理体制)、財産的基礎(自己資本等)を求める必要があると考えられる。

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