I.改革の背景と目的


                                                                            

       情報・通信技術や金融技術革新が急速に進展しており、金融・証券市場の

     グローバル化が進んでいる。こうした環境の変化は、取引を物理的・地理的

     制約から解放するとともに、市場の利便性を飛躍的に拡大させている。この

     結果、先進諸国において、個人レベルにまで多様かつ有利な資産運用の機会

     が広がり、ベンチャーなどに代表される新規産業への資金供給も進み、経済

     のダイナミズムの回復に大きな役割を果たしている。                    

                                                                            

       我が国においては、高齢化社会を目前に控え、1200兆円の個人金融資

     産のより有利な運用が求められている。また、次代を担う新規産業への資金

     供給が重要になってきている。さらに、世界の貯蓄の大きな部分を生み出す

     国として、開発途上国を含む世界への円滑な資金供給という、国際的な役割

     を果たすことも必要である。こうした要請にこたえていくためには、金融シ

     ステムの機能が適切に発揮されねばならない。中でもリスク・テイクとリス

     ク分散に優れた証券市場の役割への期待は大きい。                      

                                                                            

       過去において、諸外国では大きな改革の動きがあった。それに対して、我

     が国にあってはバブルの生成と崩壊の過程の中で、革新の動きが鈍り、この

     結果、証券市場の機能が十全に発揮されず、また、空洞化の懸念も生じてき

     ている。今こそ、早急に国際的水準にまで我が国市場の魅力と競争力を高め、

     活力ある証券市場を構築し、我が国の投資家や資金調達者が新たな市場の持

     つ可能性を存分に享受できるようにする必要がある。抜本的・総合的な改革

     なくしては、来るべき21世紀において、我が国市場が利便性と魅力に富む

     国際的な市場とはなり得ず、ひいては我が国の経済の発展や円の国際化の進

     展に対しても悪しき影響を及ぼすおそれがある。                        

                                                                            

       本年5月に成立を見た外国為替及び外国貿易管理法の全面的改正は、金融

     システム改革のフロント・ランナーとしての役割を担っており、我が国投資

     家、企業等が世界の市場を自由に利用することを可能とするものである。証

     券市場の改革は、外国為替制度の自由化により、我が国の市場がグローバル

     市場の一角に一層明確に位置付けられることを踏まえ、我が国市場を海外と

     比べて遜色がないものとし、新たな取引や商品が海外で次々と生み出されて

     いるのと同様に、国内においても、こうした取引や商品が活発に開発・利用

     されるようにするものである。同時に、一般投資家や海外の利用者が、信頼

     感を持って我が国市場や仲介者を利用できるよう、公正性、透明性の確保に

     全力を挙げる必要がある。さらに、そうして活性化した我が国市場を含むグ

     ローバルな市場の中で、利用者に対し魅力ある商品・サービスの提供を担う

     我が国の仲介者も、その能力を十二分に発揮できるよう業務面の自由化を進

     めるものである。                                                    

                                                                      

                                                                      


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