投資家との意見交換会概要 (5月30日(木)13時30分~15時30分 於東北財務局)
意見交換会の冒頭、証券取引等監視委員会野田委員より、監視委員会のこれまでの活動状況及び活動方針等について、具体的な事例を交えながら、概要以下のとおり説明(1.、2.については、当委員会ホームページに掲載の証券取引等監視委員会パンフレット参照本文・付録[PDF])。 1. 監視委員会の組織 監視委員会の設置の経緯・趣旨及び組織の構成、定員などについて説明。 2. 活動内容 犯則事件の調査、告発、検査等の結果に基づく勧告、取引審査、一般からの情報受付について、概要、件数などを説明。 3. 最近の活動事例 (1)最近の主な指摘事例 取引一任勘定取引契約を締結する行為、投資信託の乗換、EB(他社株償還特約付社債券)等の新たな金融商品の販売にかかる問題、断定的判断を提供して勧誘する行為等について、具体的な事例を挙げて、投資家に対して注意を呼び掛けた。 (2)最近の告発事例 有価証券報告書の虚偽記載、相場操縦、インサイダー取引について、具体的な事例を紹介した。 4. 監視委員会の活動方針 個人投資家の証券市場に対する不信感を解消するために、個人投資家の保護に全力を尽くすこと。そのために、悪質な証券会社等の徹底摘発、市場の公正性を損ねる証券犯罪の一掃、抑止力を高めるための監視委員会のプレゼンス向上を活動目標としている旨を説明。 5. その他 空売りに対する取り組みについて説明。 参加者から出された主な意見・要望等は以下のとおり。 主に監視委員会に関するもの ○ 投資商品の多様化、インターネットで行われる株式取引により、証券会社の営業姿勢、投資家教育、両面から改善していかなければならない点が多くなるが、それに伴い監視委員会の責任もより一層強まると思う。 ○ インターネット取引をしていると、知らないうちに売買のサイクルが短くなっていく。株式ではなく情報を買っているような感じになる。 ○ インターネットを利用することにより、有価証券取引を行う際の判断材料をスピーディーに入手できるような投資環境になっている。しかし、意図的に情報を流して不正行為を行おうとする者もいるだろうから、このようなものをどのように取り締まっていくかがより一層重要な問題になっていくと思う。 ○ 監視委員会には、手取り足取りの保護ではなく、高齢の投資家でも安心して参加できるような市場の環境整備をしてほしい。 ○ 不正行為には委員会が目を光らせているということを一般の人にも認識させることが重要なので、監視委員会の活動内容が分かるようなPR活動をもっと行った方がいいと思う。 ○ 個人投資家は自己責任に対して、怖い、面倒だと感じている。自分が情報を集めて、自分が判断して、その成果を期待するときに、想定しない不正な行為の影響を受けるとなれば怖いのは当然である。監視委員会の人員が増えたことは非常に喜ばしく思う。 ○ 国レベルで、有価証券取引を投資家に手取り足取り教えるというのは奇異に感じる。自分の資産を守るためなのでお金を払ってでも勉強会に参加するべきものではないか。 ○ 不正行為を事後的に指摘していくのみでなく、不正行為を未然に防ぐような監視の在り方を考える必要があるのではないか。 ○ インターネットを利用した証券取引は、今後増加していくと思うが、インターネットには個人情報の流出という問題があり、監視委員会だけでなく日本全体としてインターネットに関わる法整備をしていく必要がある。 ○ 委員会のプレゼンス向上についてだが、子供を利用して教室を開いたりすれば、絵的にもいいのでマスコミが取り上げる機会が増えるのではないか。 ○ 十分な抑止効果を得るためにはマスコミの力が必要であり、PRも必要だろう。 主に証券会社等に関するもの ○ 証券会社の営業担当者自身が勉強不足なのが問題である。自分が勧誘する商品のアウトラインだけ覚えて顧客に勧めた結果、説明不足な点があり、後にトラブルとなるケースがある。 ○ リターンが大きな活字で、リスクに関することは虫眼鏡で見ないとわからない証券会社のパンフレットには問題がある。目論見書にしても、私が講師をした講演会で意見を聞いたところ、約7割のものが読んでいないということであった。 ○ 15年位前までは、手数料収入を上げるのが優秀な営業マンという考えがあったが、現在では、そのような考えは通用しなくなっている。どれだけ手数料収入を上げてもお客に迷惑をかける営業マンは人事評価においてマイナスの評価を受けるよう改善されている。 ○ 目論見書を読まないのが問題という話があったが、どの目論見書にも共通に記載されている内容の部分がほとんどであり、それを何度も読む必要があるのかと疑問を感じる。逆に、証券会社がどういう部分で差別化を図っているのか疑問を感じる。 その他 ○ 現在の全国的な産学連携の動きの中で、大学の研究成果が事業に生かされたりするケースがある。研究者が、どこかで自分の研究途中の成果(未公表)を話してしまい、それが風説の流布の題材にされたり、株取引に利用されることも考えられるが、大学の研究者は、企業と株式市場のあり方に対して全く無防備な状態である。研究者に対してもっと証券取引の認識を高めさせる必要性を痛感している。 ○ 最近、障害者福祉施設の前理事長が、入居者の基礎年金で株式投資をして失敗したという新聞記事を読んだ。高齢化社会の中、福祉施設は増えていくことが見込まれるので、このような資金が一部の会社の運用者に任せられて、その者に対する投資教育が足りなかったことから年金契約者が被害を受けるというのは問題であると思う。 ○ インターネットで情報収集を行うことが当たり前になり、IT技術を持つ者、持たない者の格差が新たなバリアとなるのではと危惧している。 ○ 現在の日本の証券市場は市場参加者の層が薄くある特定のプレーヤーによりマーケットが形成されているため、限られた情報や一部の投資家、外人投資家の動向で市場が大きな影響を受けたりする。より公正・透明なマーケットにするには、個人投資家を市場に呼び込み参加者の層を厚くする必要がある。 ○ 欧米においては高校生や大学生のレベルで投資教育を行っているが、日本では、株はヤクザがするものというイメージが強い。自己原則を言う前に行政が率先してこのようなイメージを払拭させるよう勉強会や各種学習の場を投資家に提供していく必要がある。 ○ 大学卒であれば22歳までで10年間も学校教育を受けているのに、金融関係の教育があまりにもなされていない。社会人になってお金を持ったから投資をしようかと首を突っ込んだら知識不足から損をしたということになる前に、証券を含めた金融に関する教育の場を今後、国として作っていかなければならないと思う。 ○ 単に自分の財産を増やすという見方だけではなく、地域の産業をどうしていくかなど、企業を育てるということを投資の要素として考えると、証券投資に対する見方も変わってきて、底辺の拡大につながるだろう。 ○ 株はどうしても、儲ける、という感じがするが、株を通しながら社会や企業のこと、企業がどういう努力をして新しい商品を生み出しているかといった新しい経済の見方を提供してくれるツールにもなる。 ○ いくつかの大学では、証券会社による授業があるようだが、法学部であるとか政治経済学部であるとか、一部の学部のみに教育の機会が与えられており、全ての学生に教育の機会が与えられるとよいと思う。 ○ 米国の制度に倣い改正した空売り規制のおかげで、3月決算を乗り越えられたという評価も聞かれるが、市場関係者からは、市場の流動性や日本市場の使い勝手の悪化、正しい価格形成の阻害等を懸念する声もある。 (以上) |