市場へのメッセージ

平成31年4月より、「証券監視委メールマガジン」は「市場へのメッセージ」へとリニューアルしました。
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市場へのメッセージ(平成31年4月~)
証券監視委メールマガジン(平成22年11月~平成31年3月)
 

最新号〔6月28日(金) 配信分〕

<目次>

最近の取引調査に基づく勧告について
・エルナー株式外2銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
・ルーデン・ホールディングス株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について
・株式会社UMNファーマとの契約締結交渉者の役員から伝達を受けた者による内部者取引違反行為及び当該役員による重要事実に係る伝達違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について

最近の取引調査に基づく勧告について

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

・H31.4.5 エルナー株式外2銘柄に係る相場操縦

・R1.5.10 ルーデン・ホールディングス株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為違反

・R1.5.31 株式会社UMNファーマとの契約締結交渉者の役員から伝達を受けた者による内部者取引違反行為及び当該役員による重要事実に係る伝達違反行為


エルナー株式外2銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について


【事案の概要】

 本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、エルナー株式、アサヒ衛陶株式及びNuts株式の売買を誘引する目的をもって、成行の買い注文を発注して株価を引き上げたり、下値に大口の買い注文を入れるなどの方法により、いずれも自己の計算において

[1] エルナー株式については、平成29年10月27日午前9時49分頃から同日午前10時35分頃までの間、同株式合計26,000株の買付けの委託を行うとともに、同株式合計41,000株を買い付ける一方、同株式合計146,000株を売り付け、

[2] アサヒ衛陶株式については、平成29年11月15日午前9時40分頃から同日午前9時47分頃までの間、同株式合計19,000株の買付けの委託を行うとともに、同株式合計19,000株を買い付ける一方、同株式合計52,000株を売り付け、

[3] Nuts株式については、平成29年10月18日午前9時3分頃から同日午前10時24分頃までの間、同株式合計28,000株の買付けの委託を行うとともに、同株式合計7,000株を買い付ける一方、同株式合計55,000株を売り付け、

約34万円の売買差益を得たという事案です。

【事案の特色等】

 課徴金納付命令対象者(以下本節において「対象者」といいます。)は、株式を買い付けた後、小口の成行買い注文を発注して株価を引き上げ、最良買い気配付近に大口買い注文などを見せ玉として発注し、買い優勢の板状況を作出したうえで、さらに小口の成行買い注文を発注して株価を引き上げ、見せ玉の発注による買い優勢の板状況や株価引上げに誘引されたと推認される他の投資家からの買い注文に対して、買い付けた価格より高値で売り抜けた後、自らが発注した見せ玉の株数を大幅に削減して見せ玉の大部分の約定を回避したうえで、残りの見せ玉を約定させるとその後すぐに買い付けた価格と同値で処分するといった手法による取引を行っていました。

 また、対象者は、本件違反行為開始時から遡り5年以内に課徴金納付命令を受けており、本件は2回目の課徴金勧告です。そのため、同人に対する今般の課徴金額は加算規定が適用され1.5倍となっています。なお、これまでに加算規定が適用され課徴金額が1.5倍となったケースは3件あり、本件が4件目となります。

 証券監視委は、これまでに相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

・インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑

・市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

 相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。

 本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。


ルーデン・ホールディングス株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について

【事案の概要】

 本件は、ルーデン・ホールディングス株式会社(以下「ルーデンHD」といいます。)の業務執行を決定する機関が、同社の発行する株式を引き受ける者の募集を行うことについての決定をした旨の重要事実に関し、取引推奨行為が行われた事案です。

 課徴金納付命令対象者は、ルーデンHDの役員でしたが、その職務に関し本件重要事実等を知りながら、被推奨者に対し、公表がされる前にルーデンHD株式の買付けをさせることにより、被推奨者に利益を得させる目的をもって、ルーデンHD株式の買付けをすることを勧めたものです(取引推奨行為違反)。

【事案の特色等】

 本件は、平成26年4月から導入されている「情報伝達・取引推奨規制」(金融商品取引法第167条の2)に関して、取引推奨行為のみを行った者を対象とする課徴金納付命令勧告事案です。取引推奨行為のみを行った者を対象とする課徴金納付命令勧告事案は、昨年8月31日に勧告した「ポケットカード株式会社社員による公開買付けの実施に関する事実に係る取引推奨行為違反」、昨年11月27日に勧告した「株式会社ノエビアホールディングスとの契約締結者の役員による重要事実に係る取引推奨行為違反」、昨年12月21日に勧告した「オイシックスドット大地株式会社社員による重要事実に係る取引推奨行為違反」に次いで4件目になります。

 これまでのメルマガ(平成22年11月~平成31年3月、平成31年4月から「市場へのメッセージ」へとリニューアル)でも「情報伝達」と「取引推奨」の違いについて記載していますが、もう一度「情報伝達」と「取引推奨」の違いを確認したいと思います。

 両者の違いは、重要事実を伝えたか否かであり、「情報伝達」は重要事実を伝えたことが要件とされている一方、「取引推奨」は重要事実を伝えたことが要件とされていません。本件では、被推奨者は、重要事実の公表前に買い付けたものの、重要事実の伝達を受けていないため、インサイダー取引規制の対象とはなりませんが、推奨者は、公表前の取引による売買益を得ていないにも関わらず、取引推奨規制違反により課徴金納付命令対象者となります。

 未公表の重要事実を伝達してはいけない「情報伝達規制」、知って売買してはいけない「インサイダー取引規制」については、上場会社における規程の整備や社内研修における周知が相当程度されていると思いますが、「取引推奨規制」については周知が十分でないケースも少なくありません。自社の役職員を法令違反から守るため、規程への追加や社内周知等に改めて取り組んでいただければと思います。

 本件が広く周知されることにより、「取引推奨」が違反行為になるということを認識していただき、違反行為の抑止効果が発揮されることを期待しています。


株式会社UMNファーマとの契約締結交渉者の役員から伝達を受けた者による内部者取引違反行為及び当該役員による重要事実に係る伝達違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について

【事案の概要】

 本件は、課徴金納付命令対象者(以下本節において「対象者」といいます。) が2名の事案です。

・対象者(1)について

 対象者(1)は、株式会社UMNファーマ(以下「UMNファーマ」といいます。)と、UMNファーマの資産等に関する契約の締結交渉をしていたA社の役員である対象者(2)から、同人がそれらの契約締結交渉に関し知った、UMNファーマの業務執行を決定する機関が、塩野義製薬株式会社との業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、UMNファーマ株式を買い付けています。

・対象者(2)について

 対象者(2)は、UMNファーマと、UMNファーマの資産等に関する契約の締結交渉をしていたA社の役員ですが、本件事実を、対象者(1)に対し、本件事実の公表前にUMNファーマ株式の買付けをさせることにより、対象者(1)に利益を得させる目的を持って伝達したものであり、上記のとおり対象者(1)は本件事実の公表前に、UMNファーマ株式を買い付けています。

【事案の特色等】

 本件は、「業務上の提携」を知った者によるインサイダー取引事案です。平成30年度(平成30年4月1日~平成31年3月31日)のインサイダー取引に関する勧告23件における重要事実等26件(複数の重要事実等を知った違反行為者がいるため、勧告件数と重要事実等数は一致しません)のうち業務上の提携は2件(7.7%)と例年に比べ少なかったものの、課徴金制度が導入された平成17年度からの累計では重要事実等333件のうち57件(17.1%)となり、公開買付け等事実に次いで2番目に多い重要事実となっています。業務上の提携については、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要し、社内のみならず社外においても重要事実を知り得る関係者が多くなることから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。繰り返しになりますが、業務上の提携に関わる者全てに厳正な情報管理に努めることが強く求められています(詳しくは、令和元年6月20日公表の課徴金事例集10ページ及び16ページをご覧ください)。

 また本件は、UMNファーマと契約の締結交渉をしていたA社役員による重要事実に係る伝達違反行為についての勧告事案でもあります。A社は非上場会社ではありますが、本来役員であれば社内の情報管理体制を整備し、役職員へ教育する立場にあるはずです。しかしながら、役員自ら、知人である対象者(1)に対して利益を得させる目的をもって伝達したものであり、役員の行動としては、非常に問題がある行為です。

 なお、利益を得させる等の目的をもって、未公表の重要事実等を伝達した場合、伝達者は取引により利益を得ていない場合であっても、伝達された者が行った取引金額に応じて課徴金が課せられることになり得ます。自身のインサイダー取引だけではなく、情報伝達行為も課徴金納付命令の対象となることを十分ご理解いただきたいと思います。

 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

 


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