市場へのメッセージ
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市場へのメッセージ(平成31年4月~)証券監視委メールマガジン(平成22年11月~平成31年3月)
最新号〔6月13日(金) 配信分〕
<目次>
- SIVEX株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
- 信託銀行社員による内部者取引事件の告発について
- 株式会社イメージワンにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
- 立花証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
- 株式会社G&Dアドヴァイザーズに対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和7年3月14日、金融庁に対して、SIVEX株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告しました。
【事案の概要等】
(1) 虚偽の届出等を行っている状況
当社は、令和5年10月末現在、34本の集団投資スキーム(以下「ファンド」という。)の運営を行っているところ、このうち10本のファンド(以下「本件ファンド」という。)に関し、実際には本件ファンド持分の私募や投資家が出資したとする資金の運用を行わないにもかかわらず、当局に対し、適格機関投資家を当社代表取締役である松村寬、出資対象事業の内容を「国内外の法人が発行する社債など有価証券への投資事業を行う日本の民法上の組合に対して出資を行う」などと虚偽の届出等を行いました。
上記の状況は、金融商品取引法(以下、「金商法」という。)第63条第2項及び第8項に違反するものと認められます。
(2) 適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)を適切に行っていないと認められる状況
ア 特例業務の制度を悪用している状況
当社は、本件ファンドを介して海外から送金された約250億円を海外法人であるSTERLING HOUSE GROUP LTD(以下「SHG社」という。)が組成する海外金融商品STERLING HOUSE TRUST Series7 Greenback Program(以下「スターリングハウストラスト」という。)を日本国内で紹介する業務を行っているGlobal Investment Lab株式会社(以下「GIL社」という。)の会員及びその関係者(以下「GIL会員等」という。)に移転させました。
当社が本件ファンドを組成した主な目的は、特例業務に係るファンド事業を行うためではなく、スターリングハウストラストの販売代理店であるGIL会員等にSHG社からの紹介業務の対価を安定的に供給することでした。
当社が虚偽の届出により特例業者になった当初の目的は、GIL会員等がスターリングハウストラストを紹介することで生じた役務提供の対価に係る送金であるにもかかわらず、当局監理の特例業者が運営する本件ファンドの配当金の送金であるかのように見せかけることで、金融機関からマネー・ローンダリング上の取引時確認を受ける海外から日本国内への送金を容易にすることでした。
イ ファンド持分の取得勧誘を無登録業者に委託している状況
当社は、34本のファンドのうち22本のファンドに関し、パチンコ遊技機等のオペレーティングリース事業を行うことを目的として、ファンド毎に特別目的会社であるアクティブリーシング合同会社を運営しており、各社の匿名組合出資持分(以下「本件匿名組合出資持分」という。)の取得勧誘を金商法第29条の登録を受けていない者であるGIL社及びGIL社以外の法人に委託し、GIL社から再委託を受けた無登録業者等(以下「GIL社等」という。)に投資家に対する同取得勧誘を行わせました。
これにより、当社は、令和元年12月から令和5年10月までの間、少なくとも40者のGIL社等に、本件匿名組合出資持分の取得勧誘を行わせ、それにより、本件匿名組合出資持分につき延べ148者の投資家に合計約60億円を出資させました。
上記の状況は、金商法第63条第11項に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第30号に該当するものと認められます。
【証券監視委からのメッセージ】
- 本件事案は、金商法で定められた特例業務の制度を悪用する極めて悪質な不正行為であると認められたものです。
- 証券監視委は、このような法令違反行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
2.信託銀行社員による内部者取引事件の告発について
証券取引等監視委員会は、令和7年3月24日、金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発しました。【事案の概要】
犯則嫌疑者は、三井住友信託銀行株式会社の証券代行部門管理職として、顧客等の上場会社等に係るインサイダー情報の管理業務等に従事していましたが、令和4年12月下旬頃から令和6年7月下旬頃までの間、その職務に関し、合計3銘柄の東京証券取引所上場株券に対する公開買付けの実施に関する事実を知り、いずれも、その公表前の令和4年12月下旬から令和6年8月上旬までの間、自己名義で、前記3銘柄の株券合計2万5900株を代金合計約3210万円で買い付けたものです。
【本件の意義】
本件は、信託銀行の証券代行部門において管理職を務め、顧客等の上場会社等に係るインサイダー情報の管理業務等に従事していた犯則嫌疑者が、その職務に関し、公開買付けの実施に関する事実を知り、その公表前に、自己名義で合計3銘柄の株券を買い付けたものです。金融市場に関するルールを率先して守るべき金融機関の職員が、職務上の立場を利用して複数銘柄の内部者取引を行った事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
証券取引等監視委員会は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
3.株式会社イメージワンにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、株式会社イメージワン(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和7年3月28日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。【法令違反の内容】
当社は、減損損失の不計上及び売上の過大計上等の不適正な会計処理を行ったことにより、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を関東財務局長に提出しました。
(継続開示書類)
- 令和2年9月期有価証券報告書(令和2年12月22日提出)等、合計2通
(発行開示書類)
- 有価証券届出書(令和3年2月18日提出)
【主な不適正な会計処理の概要】
・減損損失の不計上


・売上の過大計上


証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。
4.立花証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和7年3月28日、金融庁に対して、立花証券株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告しました。【事案の概要等】
○ 国内株式営業に係る不適切な業務運営の状況
(1) 国内株式取引の勧誘に関し、顧客に対し虚偽のことを告げる行為等
当社営業員は、31名の高齢顧客に対し、保有銘柄の売却や他の銘柄への乗換取引による手数料獲得を目的として、虚偽告知や誤解表示を繰り返し行っていました。
(2) 国内株式取引に係る不適切な投資勧誘行為
当社は、令和5年に行われた自主規制機関の検査において、国内株式取引の不適切な投資勧誘について指摘を受けていたにもかかわらず、引き続き、手数料獲得を優先して同様の不適切な投資勧誘を34名の高齢顧客に対し繰り返し行っていました。
(3) 過当な取引により顧客に過度な手数料を負担させている状況
上記(1)及び(2)の不適正な投資勧誘を受けた顧客の年次売買回転率、約定件数の平均値及び手数料割合の平均値は非常に高い状況となっていました。このように、当社営業員が顧客利益よりも手数料獲得を優先して不適正な投資勧誘を繰り返していることにより、顧客の過当な取引に繋がり、その結果としてこれら顧客に過度な手数料を負担させている状況となっていました。
(4) 内部管理態勢及び経営管理態勢が不十分な状況
当社の第1線から第3線において、営業部門へのけん制機能が不十分であるなど、それぞれに不備が認められ、実効性のある内部管理態勢が構築されておりませんでした。
また、当社の経営陣は、自主規制機関の検査における指摘事項などを重く受け止めることなく、適切な調査指示や改善策の策定を怠り、内部管理部門に任せきりにするなど、経営管理態勢は不十分な状況となっていました。
上記(1)から(4)の背景として、経営陣が手数料実績に大きく偏重した営業員のインセンティブ制度を継続する一方で、実効性ある法令等遵守態勢の整備を行わないまま、長年にわたって営業優先の企業風土を醸成してきたなどの状況が認められました。
上記⑴の行為のうち、虚偽告知は金融商品取引法第38条第1号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に該当するほか、誤解表示は同法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当すると認められます。また、上記⑴から⑷の状況は、金融商品取引法第51条に定める「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当すると認められます。
【証券監視委からのメッセージ】
- 本件事案は、金融商品取引業者が顧客利益よりも手数料獲得を優先して不適正な投資勧誘を行っていたものです。また、自主規制機関の検査で指摘を受けていたにもかかわらず、経営陣が態勢整備を行わなかったことにより、不適切な投資勧誘が長期的・継続的に行われました。
- 証券監視委は、このような法令違反行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
5.株式会社G&Dアドヴァイザーズに対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和7年4月11日、金融庁に対して、株式会社G&Dアドヴァイザーズ(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。【事案の概要等】
(1) 顧客のため忠実に投資助言業務が行われていない状況
当社の投資助言業務統括者である甲部長は、当社が買付推奨の助言(配信)を行った231銘柄のうち、少なくとも65銘柄について、第三者名義の証券口座を使い、当該第三者の計算において、銘柄の配信前に買い付け、配信後に売り付ける取引を行っていました。この取引により、計約228万円の売却益が生じており、甲部長は当該第三者から報酬を受け取っていました。
当社代表取締役及びコンプライアンス担当取締役(以下「代表取締役等」といいます。)は、投資助言業務を社員に任せきりにしていたほか、週1日程度しか当社に出社しておらず、社員に対するけん制機能が働かない状況であったこと等から、甲部長の行為を見過ごしていました。
甲部長の行為は、顧客の取引に関する情報を利用して第三者の利益を図るために行われた行為であり、利益相反の観点から問題がある行為と認められるほか、当社が甲部長の行為を見過ごし、かつ、これを防止する態勢を構築していない状況は、当社の顧客をないがしろにし、顧客の信認を裏切るものです。
このような当社の状況は、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第41条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められます。
(2) 金融商品取引契約の締結の勧誘に関して顧客に対し虚偽のことを告げる行為等
ア 顧客に対し虚偽のことを告げる行為
当社は、見込顧客に対して配信したメールマガジン(19件)において、複数の株価高騰銘柄を的中させた実績があるとする架空の情報提供者を創作し、他社より先行して情報を入手しているとするなどの虚偽の内容を告げ、投資顧問契約の締結の勧誘を行いました。
イ 重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
当社は、見込顧客に対して配信したメールマガジン(14件)において、確度の高い情報を入手したとして、買収等の株価に影響を与える事象が発生すると誤解を生ぜしめるべき表示をし、投資顧問契約の締結の勧誘を行いました。
これらは、売上のためにはメールマガジンに事実と異なる内容等を記載することはやむを得ないと代表取締役が認識していたなど、代表取締役等における法令等遵守意識が著しく欠如していること等に起因して発生したものと認められます。
上記アの行為は、金商法第38条第1号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に該当するものと認められます。また、上記イの行為は、金商法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「業府令」といいます。)第117条第1項第2号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められます。
(3) 金融商品取引契約につき顧客に対し特別の利益を提供する行為
当社は、期間を定めて複数銘柄に関する投資助言を行う業務を行っており、甲部長は94名の顧客を担当していました。
こうした中、甲部長は、上記の顧客のうち、当社の投資助言に関して苦情の申出のあった少なくとも27名の顧客に対し、投資顧問契約を継続してもらうことを意図して、投資顧問契約の契約期間を延長し、その間の報酬を無償として投資助言を継続することにより、合計888万円に相当する特別の利益を提供しました。
これは、代表取締役等が投資助言業務を甲部長に任せきりにしているなど、代表取締役等によるけん制機能が働かない状況にあったこと等に起因して発生したものと認められます。
当社のこの行為は、金商法第38条第9号に基づく業府令第117条第1項第3号に定める「金融商品取引契約につき、顧客に対し特別の利益を提供する行為」に該当するものと認められます。
【証券監視委からのメッセージ】
- 当社では忠実義務違反などの重大な法令違反が認められましたが、これは代表取締役等及び甲部長の法令等遵守意識が希薄であるほか、代表取締役等が投資助言業務を営業部門任せにしていたことにより発生したと認められます。
- 証券監視委は、このような投資者保護上問題のある行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。