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〔1月30日(水) 配信分より〕

<目次>
市場へのメッセージ
1.クローバーアセットマネジメント株式会社及びジェイ・トラスト株式会社並びにその役員等2名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて
2. 日産自動車株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について
3. 株式会社ダルトン株券に係る内部者取引事件の告発について
4. 最近の取引調査に基づく勧告について
・トラスト株式に係る相場操縦
・ソフトフロント株式外1銘柄に係る相場操縦
・オイシックスドット大地株式会社社員による重要事実に係る取引推奨行為
・ワイエスフード株式会社との契約締結交渉者の役員から伝達を受けた者による内部者取引違反行為
 


市場へのメッセージ


1. クローバーアセットマネジメント株式会社及びジェイ・トラスト株式会社並びにその役員等2名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成30年11月16日、東京地方裁判所に対して、クローバーアセットマネジメント株式会社及びジェイ・トラスト株式会社並びにその役員等2名(以下、併せて「被申立人ら」といいます。)に金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)違反行為の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行いました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181116-1.htm

【事案の概要】

 被申立人らは、平成27年6月1日以降、一般投資家に対し、電話等により、「クローバー社員権」、「ジェイ・トラスト社員権」、「よつばMRF口座」、「ジェイ・トラストMRF口座」という名称の商品の取得勧誘を行っていました。

 被申立人らは、上記4商品の取得勧誘によって、少なくとも、クローバーアセットマネジメント株式会社は延べ220名の一般投資家から延べ約18億円を出資させ、ジェイ・トラスト株式会社は延べ181名の一般投資家から延べ約14億円を出資させていました。(顧客からの出資金は、他の顧客に対する償還原資や、従業員の給与等に充てられており、ほぼ費消されている状況にありました。)
 
 上記のような金融商品の取得勧誘を業として行う場合には、金商法上の登録(第二種金融商品取引業の登録)を受ける必要がありますが、被申立人らは、この登録を受けることなく、上記の取得勧誘を行っていました。

 被申立人らに対しては、平成31年1月11日に、東京地方裁判所から、金商法違反行為の禁止及び停止を命ずる決定が出されています。

 証券監視委においては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、無登録業者に対して厳正に対処してまいります。投資者の皆様におかれては、無登録業者と取引を行うことがないように、注意してください。


2. 日産自動車株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について

 証券監視委は、平成30年12月10日及び平成31年1月10日、金商法違反(虚偽有価証券報告書提出)の嫌疑で、犯則嫌疑法人1社及び犯則嫌疑者2名を東京地方検察庁に告発いたしました。

[1] 【事案の概要(平成30年12月10日告発)】
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181210-1.htm

 犯則嫌疑法人日産自動車株式会社(以下「犯則嫌疑法人」といいます。)は、横浜市に本店を置き、自動車の製造及び販売等を目的とする会社であって、その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第一部に上場しているもの、犯則嫌疑者Aは犯則嫌疑法人の代表取締役会長等であったもの、犯則嫌疑者Bは犯則嫌疑法人の代表取締役等であったものですが、犯則嫌疑者両名は、共謀の上、

第1 日産自動車株式会社の業務に関し、平成23年6月末、平成23年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約17億7700万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億8200万円と記載した有価証券報告書を提出し

第2 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成24年6月末、平成24年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約18億9400万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億8700万円と記載した有価証券報告書を提出し

第3 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成25年6月末、平成25年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約20億2500万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億8800万円と記載した有価証券報告書を提出し

第4 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成26年6月末、平成26年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約19億4600万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億9500万円と記載した有価証券報告書を提出し

第5 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成27年6月末、平成27年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約22億1300万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも10億3500万円と記載した有価証券報告書を提出し

 もって、それぞれ、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出しました。
(犯則嫌疑法人につき、第2ないし第5事実。犯則嫌疑者両名につき、第1ないし第5事実。)

[2] 【事案の概要(平成31年1月10日告発)】
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190110-1.htm

 犯則嫌疑者法人は、横浜市に本店を置き、自動車の製造及び販売等を目的とする会社であって、その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第一部に上場しているもの、犯則嫌疑者Aは犯則嫌疑法人代表取締役会長等であったもの、犯則嫌疑者Bは犯則嫌疑法人の代表取締役等であったものですが、犯則嫌疑者両名は、共謀の上、犯則嫌疑法人の業務に関し

第1 平成28年6月下旬、平成28年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として犯則嫌疑法人及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約22億8200万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも10億7100万円と記載した有価証券報告書を提出し

第2 平成29年6月下旬、平成29年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として犯則嫌疑法人及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約24億200万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも10億9800万円と記載した有価証券報告書を提出し

第3 平成30年6月下旬、平成30年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として犯則嫌疑法人及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約24億9100万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも7億3500万円と記載した有価証券報告書を提出し

 もって、それぞれ、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出しました。

【本件の意義】

 本件は、犯則嫌疑法人のコーポレート・ガバナンスの状況を判断する上で正確に開示されるべき役員報酬を偽って有価証券報告書に記載したものであること等の事情に照らし、極めて悪質性が高いと認められます。

 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違反行為に対し、厳正に対応していきます。 


3. 株式会社ダルトン株券に係る内部者取引事件の告発について

 証券監視委は、平成30年12月18日、金商法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、犯則嫌疑者2名を大阪地方検察庁に告発いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181218-3.htm

【事案の概要】

 犯則嫌疑者Aは、SMBC日興証券株式会社(以下「SMBC日興」といいます。)の従業員であったものですが、SMBC日興の従業員が、株式会社イトーキ(以下「イトーキ」といいます。)とのファイナンシャルアドバイザリー契約の締結に関し知った、イトーキの業務執行を決定する機関において東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場している株式会社ダルトン(以下「ダルトン」といいます。)株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を、平成28年7月下旬頃、その職務に関し知りました。

 その上で、

第1 犯則嫌疑者Bは、犯則嫌疑者Aから前記公開買付けの実施等に関する事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同事実の公表前である平成28年7月下旬頃から同年8月上旬頃までの間、証券会社を介し、東京証券取引所において、自己名義でダルトン株合計29万6000株を代金合計約5300万円で買い付けました。

第2 犯則嫌疑者Aは、あらかじめダルトン株券を買付けさせて利益を得させる目的で、前記公開買付けの実施等に関する事実の公表前である平成28年7月下旬頃、犯則嫌疑者Bに対し、同事実を伝達したものであり、これにより同人が、法定の除外事由がないのに、前記第1記載のとおり、同人名義でダルトン株券合計29万6000株を代金合計約5300万円で買い付けました。

【本件重要事実】

 本件重要事実は、イトーキが子会社であるダルトン株式の公開買付けを行うことについての決定をしたことであり、平成28年8月3日午後4時、イトーキが、「子会社である株式会社ダルトン普通株式(証券コード7432)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」として公表したものです。

【本件の意義】

 本件は、イトーキによるダルトン株券の公開買付けに関し、公開買付会社であるイトーキのFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を務めていたSMBC日興証券の従業員であった犯則嫌疑者Aが、株価上昇が確実な本件公開買付けの事実を職務上知り、その公表前に、犯則嫌疑者Bに伝達し、犯則嫌疑者Bにおいて大量のダルトン株券を買い付けて、多額の利益を得た事案であり、極めて悪質性が高いと認められます。

 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違反行為に対し、厳正に対応していきます。


4. 最近の取引調査に基づく勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

・H30.12.7 トラスト株式に係る相場操縦
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181207-1.htm

・H30.12.11 ソフトフロント株式外1銘柄に係る相場操縦
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181211-1.htm

・H30.12.21 オイシックスドット大地株式会社社員による重要事実に係る取引推奨行為違反
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181221-1.htm

・H30.12.21 ワイエスフード株式会社との契約締結交渉者の役員から伝達を受けた者による内部者取引違反行為
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181221-2.htm


・トラスト株式に係る相場操縦

【事案の概要】

 本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、トラスト株式の売買を誘引する目的をもって、平成29年5月29日午前9時5分頃から同年6月14日午後2時59分頃までの間、13取引日にわたり、成行又は直前の約定値より高指値の買い注文を発注して株価を繰り返し引き上げるなどの方法により、自己の計算において、同株式合計3万8300株を買い付ける一方、同株式合計3万6100株を売り付け、約40万円の売買差益を得たという事案です。

【事案の特色等】

 本件における課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)の相場操縦の特徴は次の2つの手法を用いたことです。1つは買い上がり買付け等という手法であり、もう1つは終値関与という手法です。本節では本件で用いられた買い上がり買付け等について少し詳しく紹介したいと思います。

 本件で用いられた買い上がり買付け等では2つのパターン(イ及びロ)が認められました。

イ 最良売り気配を買い浚ったうえ、それよりも上値の売り注文のうちの1単位のみを買い付けて当該売り注文の値段まで買い上がり買付けで株価を引き上げる

ロ 直前約定値と比べ、最良売り気配が高い場合には、その売り注文を1単位のみ買い付けて、当該売り注文の値段まで引き上げる

 上記イ及びロについて少し分かりにくいかも知れませんので、「○違反行為事実の概要について」の【違反行為の例】の図をご参照ください。
 
 本件では、買い上がり買付け等を違反行為期間中117回、終値関与を11回行いました。その結果、違反行為期間中の各日における出来高に対する対象者の売買株数の割合は最大でも約16%であるのに対して、株価上昇寄与率(※)は最大で89パーセントとなっていました。

(※)株価上昇寄与率とは、1日の株価上昇に対し、特定の者の買付けによる株価上昇が占める割合を示す指標であり、次の算式によって算定されます。

「特定の者の買付けのうち、株価を上昇させている値幅の合計」/
「市場参加者全体の買付けのうち、株価を上昇させている値幅の合計」

 証券監視委は、これまでに相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

・インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑

・市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

 相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。

 本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。


・ソフトフロント株式外1銘柄に係る相場操縦

【事案の概要】

 本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、ソフトフロント株式及びアジアゲートホールディングス株式の売買を誘引する目的をもって、最良買い気配又はその下値に買い注文を大量に発注した後、直前の約定値より高値の買い注文を発注して株価を引き上げるなどの方法により、いずれも自己の同族会社名義の証券口座を用いて

[1] ソフトフロント株式については平成28年6月13日午前9時34分頃から同日午前9時48分頃までの間及び同日午前10時2分頃から同日10時5分頃までの間において、同株式合計43000株の買付けの委託を行うとともに、同株式合計12000株を買い付ける一方、同株式合計54000株を売り付け、

[2] アジアゲートホールディングス株式については平成28年7月15日午前9時9分頃から同日午前9時46分頃までの間において、同株式合計20000株の買付けの委託を行うとともに、同株式合計40000株を買い付ける一方、同株式合計65000株を売り付け、

 約31万円の売買差益を得たという事案です。

【事案の特色等】

 課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、株式を買い付けた後、最良買い気配付近に大口買い注文などを見せ玉として発注し、買い優勢の板状況を作出したうえで、自らの買付けによって株価を引き上げ、見せ玉の発注による買い優勢の板状況や買い上がり買付けによる株価上昇に誘引されたと推認される他の投資家からの買い注文に対して、買い付けた価格より高値で売り抜け、自らが発注した見せ玉について、取消し、下値への変更等による約定回避を行っていました。
 また、対象者は、本件違反行為開始時から遡り5年以内に課徴金納付命令を受けており、本件は2回目の課徴金勧告です。そのため、同人に対する今般の課徴金額は加算規定が適用され1.5倍となっています。なお、これまでに加算規定が適用され課徴金額が1.5倍となったケースは2件あり、本件が3件目となります。

 


・オイシックスドット大地株式会社社員による重要事実に係る取引推奨行為違反

【事案の概要】

 本件は、オイシックスドット大地株式会社(平成30年7月1日、オイシックス・ラ・大地株式会社に商号変更。以下「オイシックス」といいます。)の業務執行を決定する機関が、株式会社NTTドコモとの業務上の提携を行うこと及び第三者割当による新株式の発行を行うこと並びにらでぃしゅぼーや株式会社の株式を取得して子会社化することについての決定をした旨の重要事実(平成30年1月30日公表、以下「本件重要事実等といいます。」)に関し、取引推奨行為が行われた事案です。
 課徴金納付命令対象者は、オイシックスの社員でしたが、同人がその職務に関し本件重要事実等を知りながら、被推奨者に対し、公表がされる前にオイシックス株式の買付けをさせることにより、被推奨者に利益を得させる目的をもって、オイシックス株式の買付けをすることを勧めたものです(取引推奨行為違反)。

【事案の特色等】

 本件は、平成26年4月から導入されている「情報伝達・取引推奨規制」(金商法第167条の2)に関して、取引推奨行為のみを行った者を対象とする課徴金納付命令勧告事案です。取引推奨行為のみを行った者を対象とする課徴金納付命令勧告事案は、昨年8月31日に勧告した「ポケットカード株式会社社員による公開買付けの実施に関する事実に係る取引推奨行為違反」、昨年11月27日に勧告した「株式会社ノエビアホールディングスとの契約締結者の役員による重要事実に係る取引推奨行為違反」に次いで3件目になります。

 これまでのメルマガでも「情報伝達」と「取引推奨」の違いについて記載していますが、再度「情報伝達」と「取引推奨」の違いを確認したいと思います。

 両者の違いは、重要事実を伝えたか否かであり、「情報伝達」は重要事実を伝えたことが要件とされている一方、「取引推奨」は重要事実を伝えたことが要件とされていません。本件では、被推奨者は、重要事実の公表前に買い付けたものの、重要事実の伝達を受けていないため、インサイダー取引規制の対象とはなりませんが、推奨者は、公表前の取引による売買益を得ていないにも関わらず、取引推奨規制違反により課徴金納付命令対象者となります。

 未公表の重要事実を伝達してはいけない「情報伝達規制」、知って売買してはいけない「インサイダー取引規制」については、上場会社における規程の整備や社内研修における周知が相当程度されていると思いますが、「取引推奨規制」については周知が十分でないケースも少なくありません。自社の役職員を法令違反から守るため、規程への追加や社内周知等に改めて取り組んでいただければと思います。

 本件が広く周知されることにより、「取引推奨」が違反行為になるということを認識していただき、違反行為の抑止効果が発揮されることを期待しています。


・ワイエスフード株式会社との契約締結交渉者の役員から伝達を受けた者による内部者取引違反行為

【事案の概要】

 本件は、ワイエスフード株式会社(以下「ワイエスフード」といいます。)が平成30年1月22日に公表した、ワイエスフードと株式会社餃子計画(以下「餃子計画」といいます。)の業務上の提携に関するインサイダー取引です。

 本件では、法人である課徴金納付命令対象者(以下、本節において「対象法人」といいます。) から株取引の委任を受けていた対象法人の社員が、餃子計画の役員から、ワイエスフードの業務執行を決定する機関が、ワイエスフードが餃子計画と業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、対象法人名義の証券口座を用いて、自己の計算において、ワイエスフード株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反行為)。

【事案の特色等】

 本件は、上記記載のとおり法人によるインサイダー取引です。本件事実の伝達を受けたのは対象法人の社員ですが、当該社員は対象法人から株取引に関する委任を受けており、対象法人の資金で対象法人の口座で取引を行っていることなどから、対象法人の業務として行った取引と認定したものです。

 また、本件は、「業務上の提携」を知った者によるインサイダー取引事案です。これまでのメルマガでも記載してきましたが、業務上の提携を重要事実とするインサイダー取引の勧告件数は毎年上位となっており、その原因として、業務上の提携については、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要し、社内のみならず社外においても重要事実を知り得る関係者が多くなることから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。本件を契機として業務上の提携に関わる者全ての方に対して、情報管理の徹底に努めていただければと期待します。

 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

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