市場へのメッセージ

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市場へのメッセージ(平成31年4月~)
証券監視委メールマガジン(平成22年11月~平成31年3月)

最新号〔12月12日(金) 配信分〕

<目次>

  1. 岩崎通信機株式会社との契約締結者の役員による情報伝達行為及び同役員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
  2. オカムラ食品工業株式ほか5銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計に対する課徴金納付命令の勧告について
  3. 株式会社オルツに係る虚偽有価証券届出書等提出事件の告発について
  4. 住商リアルティ・マネジメント株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
  5. 第一プレミア証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.岩崎通信機株式会社との契約締結者の役員による情報伝達行為及び同役員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和7年10月10日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。
 
【事案の概要】
 岩崎通信機株式会社(以下「岩崎通信機」といいます。)と売買基本契約を締結していたA社の役員であった課徴金納付命令対象者(1)(以下「対象者(1)」といいます。)は、岩崎通信機の業務執行を決定する機関が、岩崎通信機の発行済み株式の全部をあいホールディングス株式会社に取得させる株式交換を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件重要事実」といいます。)を、同契約の履行に関し知りながら、A社と取引関係にあった課徴金納付命令対象者(2)(B社。以下「対象者(2)」といいます。)の役員甲に対し、本件重要事実の公表前に岩崎通信機株式を買い付けさせることによりB社に利益を得させる目的をもって、本件重要事実を伝達し、伝達を受けた役員甲が、B社の業務及び財産に関し、本件重要事実の公表前に岩崎通信機株式を買い付けたものです(情報伝達規制違反)。
 対象者(2)は、B社の役員甲において、同人の知人であった対象者(1)から本件重要事実の伝達を受けながら、対象者(2)(B社)の業務及び財産に関し、本件重要事実の公表前に岩崎通信機株式を買い付けたものです(インサイダー取引規制違反)。
 
【事案の特色】
 対象者(1)は、発行体と売買基本契約のある非上場企業の役員です。昨今、上場企業の役員、社員らのみならず、契約締結先も含め会社関係者である非上場企業の役員、社員による違反行為も散見されています。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 本件を勧告することにより、非上場企業の役員、社員に対しても改めて法令順守の徹底を促すことができ、違反行為を抑止する効果が期待できると考えています。
 
 なお、今年6月に公表した課徴金事例集のコラム ④ (P6「情報管理の重要性 ① ~情報管理に一層のご注意を~」)でも取り上げたとおり、インサイダー情報の内容によっては、公表までに時間を要するケースも考えられます。当然ながら、重要事実等の決定や発生から公表までの日数が長いほど、インサイダー取引の規制期間も長くなり、この間に関係者が増加することも考えられ、その結果、インサイダー取引のリスクが高まることになります。
 本件のように、上場企業と契約関係にある非上場企業の役職員のほか、過去には、重要事実等の情報管理に関して特に注意することが求められる税理士法人や監査法人、弁護士法人の職員等によるインサイダー情報の漏洩に端を発する事案の勧告も行っています。上場企業においては、社内の役職員にインサイダー取引をさせないよう、実効性のある社内規程の整備に加え、社内研修等を通じた役職員への周知を図るとともに、必要に応じて社外の関係者間でも情報管理を徹底する等、インサイダー取引の未然防止に努めていただきたいと考えています。

2.オカムラ食品工業株式ほか5銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和7年10月17日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。
 
【事案の概要】
 課徴金納付命令対象者は、オカムラ食品工業株式ほか5銘柄について、自己名義2口座を使用し、全てインターネット注文による信用取引で、自らが発注する引け条件付き成行(以下「引成」といいます。)売り注文(※1)を有利な価格で約定させるため、特殊見せ玉(※2)を用いた偽計(※3)により有価証券の価格に影響を与え、各銘柄を買い付けたものです。
※1 「引け条件付き成行注文」とは、前引け又は大引けに執行されることを条件とした成行注文です。
※2 通常の見せ玉は、約定させる意思のない大量の注文を発注・取消・訂正することで、あたかも取引が活発であるかのように他の投資者を誤認させ、取引を誘引する行為ですが、本件の見せ玉は、既に発注されている他の投資者の引けの買い注文に対して、約定意思のない引けの売り注文を発注することで、買い側と売り側の引けの注文が同程度である発注状況を作出するものであり、他の投資者の取引を誘引しようとするものではなく、他の投資者の取引を排除する目的で発注していた点で、通常の見せ玉とは異なることから「特殊見せ玉」としました。
※3 金融商品取引法第158条における偽計とは、「他人に錯誤を生じさせる詐欺的ないし不公正な策略、手段をいう」と解されており、その手段、態様には制約が付されておりません。本件 特殊見せ玉は、他の投資者に対して、買い側と売り側の発注株数が同程度の状態で引けを迎えるであろうとの錯誤を生じさせます。その結果、他の投資者は、引け値の上昇を予想できず、引けにおいて、高値で売り付けるために、引けの売り注文を発注するなどの投資判断ができなくなることから、本件特殊見せ玉は「他人に錯誤を生じさせる」「詐欺的」な手段であることから、偽計と認定しました。
 主な取引の流れは、
① 他の投資者による引けの注文が売り側より買い側に偏っており、引け値が上昇する可能性が高い銘柄を選定する。
② 買い側と売り側の発注株数が同程度である引けの発注状況を作出すべく、特殊見せ玉(約定させる意思のない信用新規の引成売り注文)を発注する。
③ 最後に利益を得るための仕込みとして、信用新規の買付けを行い約定させる。
④ 注文③で約定した買付け分の高値売抜けの準備として、③で買い付けた株式と同数の株式に係る引成売り注文を発注する。
⑤ 引け直前に②で発注した特殊見せ玉を約定見込みのない、相場より大幅に高い指値の引け条件付き注文に変更し、引けの注文が売り側より買い側に偏った状態に戻す。
⑥ 引けにおいて、⑤の特殊見せ玉が失効するとともに、再び引けでの注文のバランスが買い側に偏り、引け値が上昇するため、④の引成売り注文を高値で売り抜ける。
というものです。
 
【事案の特色】
 本件は、課徴金額が少額ではありますが、複数の銘柄で継続的に特殊見せ玉を発注している常習的かつ意図的な取引であり、看過しがたい悪質な事案であると考えています。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 証券監視委が指摘する相場操縦行為の多くはザラバ(日中の取引時間)での取引ですが、本件のような引けを利用した不公正な取引にも注視して市場監視を行っています。
 
 なお、今年6月に公表した課徴金事例集のコラム ③ (P5「違反行為は見逃さない~少額取引・他人名義取引でも発覚~」)でも取り上げたとおり、「100株くらいの取引なら当局に目を付けられないだろう」「利得額が少額の相場操縦なら発覚しないだろう」などといった認識から違反行為に及ぶ者が後を絶たない状況が見受けられます。証券監視委は、取引規模や課徴金額の大小にかかわらず幅広く取引を監視しており、引き続き違反行為に目を光らせていきます。

3.株式会社オルツに係る虚偽有価証券届出書等提出事件の告発について

 証券取引等監視委員会は、令和7年10月28日、金融商品取引法違反(虚偽有価証券届出書等提出)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者4名を東京地方検察庁に告発しました。
 
【事案の概要】
 犯則嫌疑法人株式会社オルツ(以下「犯則嫌疑法人」といいます。)は、東京都港区に本店を置き、人工知能及び人工知能関連技術の研究・開発及びこれに関するサービスの企画・開発・運営等を目的とする会社、犯則嫌疑者Aは犯則嫌疑法人の代表取締役社長としてその業務全般を統括管理していたもの、犯則嫌疑者Bは犯則嫌疑法人の取締役兼最高財務責任者として財務業務を統括管理していたもの、犯則嫌疑者Cは犯則嫌疑法人のAI Solutions事業部長等として営業業務を統括管理していたもの、犯則嫌疑者Dは犯則嫌疑法人の財務経理部長として経理業務を統括管理していたものです。
 そして、犯則嫌疑者4名は、共謀の上
第1 犯則嫌疑法人の業務に関し、グロース市場上場に伴う株券の募集及び売出しを実施するに際し、令和6年9月、関東財務局長に対し、架空売上高を計上する方法により、犯則嫌疑法人の ① 令和4年1月1日から同年12月31日までの事業年度、 ② 令和5年1月1日から同年12月31日までの事業年度、 ③ 令和6年1月1日から同年6月30日までの中間会計期間について、虚偽の損益計算書及び虚偽の中間損益計算書を各掲載した有価証券届出書を提出し
第2 グロース市場に上場していた犯則嫌疑法人の業務に関し、令和7年3月、関東財務局長に対し、架空売上高を計上する方法により、犯則嫌疑法人の ④ 令和6年1月1日から同年12月31日までの連結会計年度について、虚偽の連結損益計算書を記載した有価証券告書を提出し
 た事案です。
 
≪虚偽記載の金額(1万円未満切り捨て)≫
① 令和4年1月1日~同年12月31日までの事業年度
  売上高が2億4310万円であったところ26億6607万円と記載
② 令和5年1月1日~同年12月31日までの事業年度
  売上高が3億9461万円であったところ41億1199万円と記載
③ 令和6年1月1日~同年6月31日までの中間会計期間
  売上高が4億9777万円であったところ28億4400万円と記載
④ 令和6年1月1日~同年12月31日までの連結会計年度
  売上高が10億9000万円であったところ60億5728万円と記載
 
【本件の意義】
 本件は、犯則嫌疑法人の代表者等であった犯則嫌疑者4名が共謀の上、犯則嫌疑法人の業務に関し、グロース市場上場に伴う株券の募集等を実施するに際し、架空売上高を計上した虚偽の有価証券届出書を提出することにより、投資家から多額の資金を調達し、上場後においても、同様に架空売上高を計上した虚偽の有価証券報告書を提出したという粉飾事案であり、粉飾金額の大きさや粉飾率の高さ、有価証券発行市場及び流通市場の公正性に与えた影響等の諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券取引等監視委員会は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。 

4.住商リアルティ・マネジメント株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和7年11月11日、金融庁に対して、住商リアルティ・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告しました

【事案の概要等】
  ○  投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況
 当社は、SCリアルティプライベート投資法人(以下「本投資法人」といいます。)との間で本投資法人の資産の運用に係る委託契約を締結しているところ、当社が当社の親会社から本投資法人に取得させた不動産(以下「本物件」といいます。)について、その不動産鑑定評価を依頼するに際し、以下のとおり、利益相反管理の観点から不適切な行為が認められました。
 
⑴ 不適切な不動産鑑定業者選定プロセス
 当社は、利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護することを目的として、内規において、親会社等の利害関係者が保有する不動産を本投資法人に取得させる場合の価格は、投資信託及び投資法人に関する法律第201条第1項の規定に基づく不動産の鑑定評価の額を物件取得額の上限としています。また、不動産鑑定評価の取得に当たっては、その中立性・客観性を担保するため、業界内における不動産証券化に係る受注実績等の客観的な基準に基づき、社内稟議を経て不動産鑑定業者を選定した後、依頼した不動産鑑定業者へ物件資料を提供することによって不動産鑑定評価書を取得するとしています。
 こうした中、当社は、複数の不動産鑑定業者に「利回り感」や「更地価格」等のヒアリングを行い、当該ヒアリングを踏まえた本物件の価格水準(自己査定)が、親会社から提示された他社の取得希望価格とする価格(以下「親会社からの提示価格」といいます。)に満たないことを把握すると、上記内規が定める方法に反し、社内稟議により不動産鑑定業者を選定する前の段階から、これらとは別の不動産鑑定業者(以下「当該不動産鑑定業者」といいます。)に物件情報を提供して概算鑑定額を聴取しました。聴取の結果、当該概算鑑定額が上記自己査定額を上回ることを把握すると、当社は当該不動産鑑定業者へ依頼することを前提として、社内稟議の外形を整えたうえで当該不動産鑑定業者を選定しました。これは、親会社からの提示価格を満たす不動産鑑定評価額を得ることを目的とした不適切な不動産鑑定業者選定プロセスであると認められます。
 
⑵ 不動産鑑定業者への不適切な働きかけ
 当社は、当該不動産鑑定業者から聴取した概算鑑定額が上記自己査定額を上回りつつも親会社からの提示価格に満たないことを把握しました。
 そこで、当社は、現行の賃貸借契約が終了する将来の時点における使用方法について、現況と異なる用途の図面を作成のうえ当該不動産鑑定業者へ提供し、同図面に沿った物件利用を想定するよう働きかけを行い、その結果、上記⑴において聴取した概算鑑定額を更に上回る不動産鑑定評価額を取得しました。
 こうした行為は、一般的に許容される不動産鑑定業者への情報提供(現況図面、現行賃料及び物件管理費等)や意見交換(客観的な情報に基づいた将来の賃料上昇や空室率の見込み等)を逸脱した恣意的なものであり、不動産鑑定業者への不適切な働きかけであると認められます。
 
 上記のとおり、当社は、親会社からの提示価格を踏まえて、本物件の取得を目的として必要な不動産鑑定評価額の水準を満たすために、その目的に沿った対応が期待される不動産鑑定業者を探索し、これを選定したうえ、当該不動産鑑定業者に対して不適切な働きかけを行い、そのうえで算定された不動産鑑定評価額を基準に物件取得を行っていました。これは、利害関係者以外の者による不動産鑑定評価により利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護しようとする内規の趣旨を損ねるものであって、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況にあり、投資家保護上重大な問題があると認められます。
 上記行為は、利害関係者である親会社からの物件取得にあたり、恣意性の排除が特に重要な不動産鑑定業者の選定プロセスにおいて、コンプライアンス室のけん制機能が十分に発揮されていなかったこと、また、当社の役員が親会社からの出向者で占められている中、当社の役員が本物件の取得に必要以上に介入していたことに起因するものであり、当社の利益相反管理態勢は著しく不十分であると認められます。
 このように、当社は、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていないことから、金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められます。
 
【証券監視委からのメッセージ】
  •  本件事案は、投資法人から資産運用の委託を受けている当社が、親会社から投資法人に物件取得させるにあたり、親会社の提示価格を満たすため、適切な利益相反管理の観点から問題となる、恣意的な不動産鑑定業者の選定や不動産鑑定業者への不適切な働きかけを行っていたものであり、金融商品取引業者として、投資者保護上重大な問題が認められたものです。
  •  証券監視委は、このような法令違反行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
※ 当社に対しては、令和7年12月5日に、金融庁長官から業務改善命令の行政処分が行われています

5.第一プレミア証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和7年11月18日、金融庁に対して、第一プレミア証券株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告しました
 
【事案の概要等】
(1)経営陣の業務運営が著しく不適切であると認められる状況
  ア 業務改善命令に違反する状況
   a 業務改善命令に至る経緯
 当社は、平成27年の検査において、当時の100%株主の意向により招へいされた代表取締役らの主導のもとで展開された業務運営の問題点を指摘され、平成28年3月に関東財務局長(以下「当局」といいます。)から、問題を発生させた根本原因を究明し、経営管理態勢等の整備を求める業務改善命令(以下「改善命令」といいます。)を受けました。
b 改善命令に対する当社の対応等
 当社は、改善命令を受け、上記の問題が発生した根本原因は、創業以来の赤字体質であった中、収益を優先するあまり、役員等の法令等遵守等の意識が不十分であったことに起因し、適切な経営管理態勢等の構築を怠っていたことにあるとの結論に至りました。
 このため、当社は、再発防止策の一つとして、株主から当社へ経営に関する提案等があった場合には、外部有識者等で構成した検討委員会(以下「検討委員会」といいます。)を新たに立ち上げ、当該提案等について審議を行うこと等により、経営管理態勢の強化を図ることとして、平成28年8月、再発防止のための改善策を記載した報告書(以下「改善報告書」といいます。)を当局に提出しました。
 なお、当社の100%株主については、2回の変更を経て、令和5年12月末、A社となりました(A社への株主の変更を以下「本件株主変更」といいます。)。
c 改善報告書に記載した改善策を履行していない状況
 当社経営陣は、本件株主変更直前の令和5年12月中旬頃、当時、当社株式の買主候補であったA社の甲代表取締役やA社の関係者であった乙(過去に当局から金融商品仲介業の登録取消処分を受けたB社の実質的支配者であり、金商法第29条の4に規定する登録拒否要件(以下「登録拒否要件」といいます。)に該当中の者。)らと面談を行い、乙より、業容拡大策として、新たに金融商品仲介事業(以下「本件新規事業」といいます。)の展開を企図しているなどの説明等を受けました。
 また、当社経営陣は、本件株主変更直後に、新たに株主となったA社の代理と称するなどしていた乙より、本件新規事業の具体化のため、自身を当社の従業員としてほしい旨や当社取締役会に自身を参加させてほしい旨等の要請(以下「本件要請」といいます。)を受けました。
 当社経営陣は、乙について調査し、乙がB社の登録取消処分事由となった問題行為(無登録で金融商品取引業を行う行為。)の中心的人物であったこと(以下「本件不芳情報」といいます。)を認識したことから、乙を当社の経営に関与させることについて、問題意識を有するに至りました。
 しかしながら、当社経営陣は、当社の業績が連続赤字となっている中、収益の拡大のために本件新規事業を前に進めたいと考えたこと、乙からの本件要請を株主の意向であると認識していたことなどから、本件要請に応じることとし、令和6年1月に開催された当社取締役会に乙を参加させたほか、同年4月、乙を当社の従業員としました。
 当社は、本来であれば、株主の意向として当社の事業展開といった経営に関する事項について株主と協議の上進める場合には、あらかじめ検討委員会において、その妥当性を審議する必要がありましたが、本件新規事業の提案について検討委員会における審議は何ら行われないまま、本件新規事業の展開を企図する株主の本件要請に応じていました。
 上記のとおり、当社は、株主の代理と称するなどしていた乙の関与を株主の意向であると認識し、かつ、登録拒否要件に該当中である乙からの本件新規事業の提案について乙らと協議を重ね、本件要請を受け入れることでその具体化に動いていたにもかかわらず、自ら改善報告書に記載した検討委員会における審議を全く履行していなかったことは、改善命令に違反する状況と認められます。
 
イ 報告徴取命令に対する虚偽報告
 当社は、令和6年2月、本件株主変更に伴う業務運営等の確認のため、当局より報告徴取命令が発出され、新たに株主となったA社による経営参加等の見込みについて報告を求められました。
 その際、上記アのとおり、乙が当社の取締役会へ参加する等、当社経営に関与していたと認められる状況があったにもかかわらず、当社経営陣は、乙から自身の関与を社内外に伝えないよう要請されていたほか、当局から乙が当社の経営に参画している疑いを持たれることを懸念したことから、当局に対し、株主による経営への参画は予定していない旨を報告しました。
 上記の当社の行為は、金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴取命令に対し、実態と異なる虚偽の報告を行ったものと認められます。
 
 当社の上記アの状況及びイの行為は、金商法第52条第1項第7号に規定する「金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき」に該当するものと認められます。
 
(2)金融商品取引業に係る業務につき、その執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員を確保していないと認められる状況
 当社は、平成27年の検査で指摘された問題の根本原因について、役員等の法令等遵守等の意識が不十分であったと結論付けているにもかかわらず、当社において100%株主の交代が繰り返される中で、当社経営陣は、収益を優先するあまり、乙の関与を株主の意向であると認識していながら、法令等遵守態勢維持等の観点から検討委員会における審議を履行せずに、乙からの本件新規事業の提案について協議を重ね、本件要請を受け入れることでその具体化に動いていたことから、依然として適切な経営管理態勢等を構築しておらず、経営者として金融商品取引業を公正かつ的確に遂行することができる十分な資質を有しているとは認められません。
 また、上記(1)アの改善命令に違反する状況及び(1)イの報告徴取命令に対する虚偽報告といった法令違反行為を当社経営陣が主導して繰り返している状況が認められていることから、業務運営に当たり、当社経営陣の法令等遵守意識は著しく欠如しており、当社経営陣は金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンスに関する知識・経験を有していないものと認められます。
 
 当社におけるこのような状況は、金商法第29条の4第1項第1号の2に規定する「金融商品取引業に係る業務のそれぞれにつき、その執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員を確保していないと認められる者」に該当し、同法第52条第1項第1号に該当するものと認められます。
 
【証券監視委からのメッセージ】
  •  当社は、過去に行政処分を受け、経営管理態勢等の強化のために自ら改善策を策定したにもかかわらず、それを履行することなく、株主の意向として登録拒否要件に該当する人物の要請に従い、経営陣が主導して上記の法令違反行為を繰り返していました。このような当社経営陣は金商業の執行について必要となる十分な知識・経験を有していないと認められたものです。
  •  証券監視委は、金融商品取引業者等の主要株主等が変更されている場合にはガバナンス等の観点から内部管理態勢の機能についても検証を行い、このような法令違反行為が認められた場合には、厳正に対処してまいります。
※ 当社に対しては、令和7年12月3日に、関東財務局長から登録取消し及び業務改善命令が発出されています

 

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