市場へのメッセージ(令和元年10月10日)

<目次>

1. すてきナイスグループ株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について
2. 最近の取引調査に基づく勧告について
セーラー万年筆株式会社社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
日本調剤株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について
株式会社ヨータイの役員から伝達を受けた者による内部者取引及び当該役員による重要事実に係る伝達行為に対する課徴金納付命令の勧告について

1. すてきナイスグループ株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和元年8月13日、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者2名を横浜地方検察庁に告発いたしました。

【事案の概要】 
 犯則嫌疑法人すてきナイスグループ株式会社は、横浜市に本店を置き、建築用資材等の加工・売買等、不動産の管理・売買・賃貸借等の業務を営む会社の事業活動を支配・管理すること等を目的とする会社であって、その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第一部に上場していたもの、犯則嫌疑者Aは、平成27年6月26日までは犯則嫌疑法人の実質的経営者であり、同日以降は犯則嫌疑法人の代表取締役会長であったもの、犯則嫌疑者Bは、平成22年6月から犯則嫌疑法人の代表取締役社長であったものです。そして、犯則嫌疑者両名は、犯則嫌疑法人の取締役であったCと共謀の上、犯則嫌疑法人の業務に関し、平成27年6月26日、関東財務局長に対し、犯則嫌疑法人の平成26年4月1日から平成27年3月31日までの連結会計年度につき、営業利益が約4億9,800万円、経常損失が約1,800万円、当期純利益が約1億3,500万円であったにもかかわらず、架空売上を計上する方法により、営業利益を10億1,200万円、経常利益を4億9,600万円、当期純利益を4億8,800万円と記載した虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出したものです。
 
【本件の意義】
 本件は、東証1部上場の老舗企業である犯則嫌疑法人による粉飾事案であって、経常損益が赤字(経常損失)であったにもかかわらず黒字であったなどと虚偽記載したものであり、また、告発対象者は、犯則嫌疑法人のほか、当時の実質的経営者や代表取締役であって、悪質性が高い事案です。
 
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違反行為に対し、厳正に対応していきます。

2.  最近の取引調査に基づく勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・R1.9.6   セーラー万年筆株式会社社員による内部者取引違反行為
・R1.9.13 日本調剤株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為
・R1.9.13 株式会社ヨータイの役員から伝達を受けた者による内部者取引違反及び当該役員による重要事実に係る伝達行為違反
 


セーラー万年筆株式会社社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 
【事案の概要】
 本件は、セーラー万年筆株式会社(以下「セーラー」といいます。)が平成30年4月27日に公表した、プラス株式会社(以下「プラス」といいます。)との業務提携及び新株発行に関するインサイダー取引です。
 本件の課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)はセーラーの社員でしたが、同人はセーラーの業務執行機関が、プラスと業務上の提携を行うこと及びセーラーが新株発行を行うことについて決定をした旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)を、職務に関して知りながら、本件事実の公表前に、知人名義の証券口座を用いてセーラー株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反)。
 
【事案の特色等】
 本件は、対象者が職務に関して公表前に知った重要事実を利用しインサイダー取引を行ったものですが、その際、知人名義の口座を借名口座として使用しています。対象者が他人名義の口座を用いて違反行為を行った過去の状況については、令和元年6月20日公表の課徴金事例集15ページをご覧ください。   
 証券監視委は、重要事実の公表前にタイミングよく売買している者を対象に調査を行っており、その口座名義人のみならず、勤務先等の関係者に対しても幅広く調査を実施していることから、他人名義を用いたとしても容易に把握することが可能です。
 また、本件は、「業務上の提携」を知った者によるインサイダー取引事案です。これまでの市場へのメッセージでも記載してきましたが、業務上の提携を重要事実とするインサイダー取引の勧告件数は毎年上位となっており、その原因として、業務上の提携については、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要し、社内のみならず社外においても重要事実を知り得る関係者が多くなることから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。本件を契機として業務上の提携に関わる者全ての方に対して、情報管理の徹底に努めていただければと期待します。
 
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。


日本調剤株式会社役員による重要事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について

 
【事案の概要】
 本件は、日本調剤株式会社(以下「日本調剤」といいます。)が平成30年7月31日に公表した、日本調剤の業務執行機関が、自己株式の取得を行うことについて決定した旨の重要事実に関し、取引推奨行為が行われた事案です。
 課徴金納付命令対象者は、日本調剤の役員であった者ですが、同人は上記重要事実を職務に関して知りながら、知人に対し、重要事実の公表前に、利益を得させる目的をもって日本調剤株式の買付けを勧めたものです(取引推奨行為違反)。
 
【事案の特色等】
 本件は、平成26年4月から導入されている「情報伝達・取引推奨規制」(金融商品取引法第167条の2)に関して、取引推奨行為のみを行った者を対象とした5件目の課徴金納付命令勧告事案です。
 「情報伝達」と「取引推奨」の違いは、重要事実を伝えたか否かであり、「情報伝達」は重要事実を伝えたことが要件とされている一方、「取引推奨」は重要事実を伝えたことが要件とされていません。本件では、被推奨者は、重要事実の公表前に買い付けたものの、重要事実の伝達を受けていないため、インサイダー取引規制の対象とはなりません。
 未公表の重要事実を伝達してはいけない「情報伝達規制」、知って売買してはいけない「インサイダー取引規制」については、上場会社における規程の整備や社内研修における周知が相当程度されていると思いますが、「取引推奨規制」については周知が十分でないケースも少なくないかと思います。
※「情報伝達・取引推奨規制」について、令和元年6月20日公表の課徴金事例集61ページのコラムで採り上げていますので併せてご覧ください。
 
 本件が広く周知されることにより、「取引推奨」が違反行為になるということを認識していただき、違反行為の抑止効果が発揮されることを期待しています。


株式会社ヨータイの役員から伝達を受けた者による内部者取引及び当該役員による重要事実に係る伝達行為に対する課徴金納付命令の勧告について

 
【事案の概要】
 本件は、株式会社ヨータイ(以下「ヨータイ」といいます。)が平成30年2月8日に公表した、ヨータイの経常利益などの業績修正に関するインサイダー取引及び当該重要事実に係る伝達行為違反です。
本件は、課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)が2名の事案です。
・対象者(1)について
 対象者(1)は、対象者(2)から、ヨータイの平成30年3月期の売上高、経常利益及び当期純利益について、平成29年5月公表の予想値に比較して、同社が新たに算出した予想値が、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす差異が生じた旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実の公表前にヨータイ株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反)。
・対象者(2)について
 対象者(2)は、ヨータイの役員でしたが、同人は本件事実を職務に関して知りながら、知人である対象者(1)に対し、本件事実の公表前に、利益を得させる目的をもって伝達したものです(伝達行為違反)。

【事案の特色等】
 本件において課徴金納付命令勧告の対象となっている情報伝達行為違反については、これまでの市場へのメッセージでも何度か記載させていただきましたが、平成26年4月から導入されている「情報伝達・取引推奨行為規制」(金融商品取引法第167条の2)に基づくものです。利益を得させる等の目的をもって、未公表の重要事実等を伝達した場合、伝達者は利益を得ていない場合であっても、伝達された者が行った取引金額に応じて課徴金が課せられることになり得ます。自身のインサイダー取引だけではなく、情報伝達行為も課徴金納付命令の対象となることを十分ご理解いただきたいと思います。
 また、本件では上場会社の役員による伝達行為違反でした。本来、上場会社の役員であれば情報管理態勢を整備し、役職員へ教育する立場にあるはずにもかかわらず、上場会社役員が重要事実を自ら伝達し,当該重要事実がインサイダー取引に利用されたことは非常に残念なことです。
 
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。


<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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