市場へのメッセージ
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市場へのメッセージ(平成31年4月~)証券監視委メールマガジン(平成22年11月~平成31年3月)
最新号〔8月7日(水) 配信分〕
<目次>
- 株式会社ストリームメディアコーポレーションとの契約締結交渉者の社員から情報伝達を受けた者による内部者取引及び当該社員による重要事実に係る伝達行為に対する課徴金納付命令の勧告について
- 株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
- 株式会社エフ・ポートに対する検査結果に基づく勧告について
- 証券取引等監視委員会の活動状況の公表について
- THE WHY HOW DO COMPANY株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令及び訂正報告書等の提出命令勧告について
- 不公正取引に関する課徴金事例集の公表について
- 株式会社三ッ星株式に係る大量保有報告書等の不提出及び変更報告書の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和6年6月14日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました。
【事案の概要】
本件は、課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)2名が、株式会社ストリームメディアコーポレーション(以下「SMC」といいます。)株式について、インサイダー取引規制違反及び情報伝達規制違反を行ったものです。
・対象者(1)について
対象者(1)は、SMCと株式会社エスエム・エンタテインメント・ジャパン(以下「SMジャパン」といいます。)の子会社として設立される株式会社SMEJの合併にかかる契約締結の交渉をしていたSMジャパンに勤務していた対象者(2)から、同人が上記契約締結の交渉に関し知った、SMCの業務執行を決定する機関が合併を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受けながら、上記重要事実の公表前に、SMC株式を買い付けていました。
・対象者(2)について
対象者(2)は、上記契約締結の交渉に関し知った上記重要事実を、対象者(1)に対し、公表前にSMC株式の買付けをさせることにより同人に利益を得させる目的をもって、伝達していました。
【事案の特色】
本件は、大韓民国の金融委員会(Financial Services Commission)及び金融監督院(Financial Supervisory Service)から支援を受けて調査を進めたほか、日本取引所自主規制法人から提供された情報等も参考として、実態解明を行った事案です。
【証券監視委からのメッセージ】
証券監視委が令和6年6月27日に公表した令和5年度版の「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」の24ページでは、情報伝達者の属性別の状況(情報伝達規制違反と認定されなかった者も含む)について、平成17年度から令和5年度までの累計を掲載しているところ、「(図表11)情報伝達者の内訳」を見ますと、情報伝達者のうち契約締結者等の割合が49.3%と最も多くなっています。
改めて上場会社における重要事実等の情報管理の徹底が、契約締結者等にまで求められるものであることについて留意していただき、情報管理体制の構築や内部者取引防止に努めていただきたいと考えています。
2.株式会社三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和6年6月14日、金融庁に対して、株式会社三菱UFJ銀行(以下「三菱UFJ銀行」といいます。)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(以下「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」といいます。)及びモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社(以下「モルガン・スタンレーMUFG証券」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。【事案の概要等】
(1)銀証間における不適切な顧客情報の共有等
ア.三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びモルガン・スタンレーMUFG証券は、法人顧客にかかる非公開情報について、顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、銀証間で不適切な情報の授受を繰り返し行いました。
一部に関しては、三菱UFJ銀行の専務執行役員(当時)自らも三菱UFJモルガン・スタンレー証券の副社長(当時)に情報提供し、当該情報を受領した同副社長は、モルガン・スタンレーMUFG証券と共に当該情報を利用して顧客勧誘を行いました。なお、三菱UFJ銀行代表取締役(当時)は不適切な情報提供が行われている可能性があることを認識したにもかかわらず、銀行は適切な是正措置を講じていませんでした。
イ.上記のほか、各社において社内規程に基づく適切な管理を行わないなど、法人関係情報の不適切な管理も認められました。
三菱UFJ銀行においては、行員が配偶者名義で開設した証券口座を利用し、専ら投機的利益の追求を目的として、勤務時間中の発注を含め、主に信用取引により短期間での同一銘柄反対売買を行う手法により、自己の計算に基づく有価証券の売買を多数回にわたり行っており、このなかには、職務上知り得た法人関係情報に基づく不適切な有価証券の売買も含まれておりました。
三菱UFJ銀行における上記のような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められます。また、三菱UFJ銀行の行員における専ら投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第12号に該当するものと認められます。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びモルガン・スタンレーMUFG証券における上記のような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められます。また、上記アの行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められます。
(2)登録金融機関による有価証券関連業の禁止
三菱UFJ銀行は、銀行による有価証券関連業(引受業務)が禁止されているにもかかわらず、融資契約と抱き合わせるなどして、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の引受幹事シェアに関する交渉を繰り返し行いました。一部に関しては、三菱UFJ銀行取締役(当時)も不適切な引受勧誘が行われていることを認識している状況も認められました。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券においては、三菱UFU銀行が上記のとおり有価証券の引受けに係る交渉を行っていることを把握していたにもかかわらず、この状況を看過・助長したうえで金融商品取引契約を締結したほか、三菱UFJ銀行が本来行うことができない引受業務を行っていること、三菱UFJ銀行が所定の契約条件の融資を行う場合の最低条件として当社の引受シェアを引き上げてほしい旨の抱き合わせ勧誘を行っていること、及び、三菱UFJ銀行により所定の契約条件の融資が行われていることを知りながら、顧客との間で引受契約を締結しました。
三菱UFJ銀行における上記行為は、登録金融機関による有価証券関連業を禁止する金融商品取引法第33条第1項に違反するものと認められます。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券における上記のような状況は、金融商品取引法第51条の「公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められます。
また、上記のうち、三菱UFJ銀行による抱き合わせ勧誘が行われていることを知りながら、顧客との間で引受契約を締結したことは、金融商品取引法第44条の3第1項第2号で禁止されている行為に該当すると認められます。
【証券監視委からのメッセージ】
上記の行為は、銀証連携ビジネスの推進にあたり、各社において法令等遵守意識が希薄であること及び経営陣によるガバナンスが十分に発揮されていないことに起因するものであり、各社における法令等遵守態勢及び経営体制に不備があるものと認められます。
証券監視委は、このような法令違反行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
※三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びモルガン・スタンレーMUFG証券に対しては、令和6年6月24日に、金融庁長官から業務改善命令の行政処分が行われています。
3.株式会社エフ・ポートに対する検査結果に基づく勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和6年6月18日、金融庁に対して、株式会社エフ・ポート(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。【事案の概要等】
(1) 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為等
ア 顧客に対し虚偽のことを告げる行為
当社は、顧客に対し、当社助言者が億円単位での取引実績や1億円以上の利益を上げた事実はないにもかかわらず「現役億トレーダー」であること、実際に助言した事実がない銘柄にもかかわらず短期急騰株の的中実績銘柄であること、過去の助言どおりに取引した場合の最大損失率は46.2%であるにもかかわらず12%であることなどの虚偽の事実を告げて投資顧問契約の締結の勧誘を行っていました。
イ 重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
当社は、顧客に対し、投資助言・代理業の登録をもって当局が当社の安全性及び助言内容の品質を保証しているかのような説明、実質的な退会率が12.3%であるにもかかわらず退会率1%以下と説明、短期急騰株の的中実績とする3銘柄の急騰日が顧客に売り推奨を行った日付及び株価であるかのような資料の提示、実際の投資顧問契約締結者数が3,058名であるにもかかわらず投資顧問契約締結者数が1万名以上存在するかのような説明をして、投資顧問契約の締結の勧誘を行っていました。
上記アの行為は、金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為であり、金融商品取引法第38条第1号に違反するものと認められます。
上記イの行為は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められます。
(2) 投資助言・代理業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない状況及び投資助言・代理業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていない状況
当社は、当社発行済株式100%を保有する者により実質的に支配され、その者の指示に基づき当社資金が実質的支配者の運営する会社等に流出しているほか、見込顧客の紹介を委託していた外部委託先が見込顧客と当社との間の投資顧問契約を当社の関与なく締結していることを放置する等の不適切な業務運営を行っていました。
また、当社のコンプライアンス責任者は、当社の運営に積極的に関与せず、上記の不適切な業務運営を放置していることに加え、内部管理責任者を含む当社役職員は実質的支配者に言われるがまま業務を行っているなど、当社は、法令違反行為や不適切な業務運営をけん制・抑止する態勢となっておらず、金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成・必要な体制を有していない状況となっていました。
当社における上記の状況は、金融商品取引法第29条の4第1項第1号ホに定める「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」及び同号ヘに定める「金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者」に該当し、同法第52条第1項第1号に該当すると認められます。
【証券監視委からのメッセージ】
- 内部管理責任者を含む当社役職員は、当社発行済株式100%を保有する者に言われるがまま業務を行っているなど、法令違反行為や不適切な業務運営をけん制・抑止する態勢となっていないことに起因して発生したものであり、投資家保護上重大な問題が認められたものです。
- 証券監視委は、このような投資者保護上問題のある行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
4.証券取引等監視委員会の活動状況の公表について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、活動状況等を公表しています。今回は、その32回目として令和5年度(令和5年4月1日~令和6年3月31日)の「証券取引等監視委員会の活動状況」を令和6年6月21日に公表いたしました。5.THE WHY HOW DO COMPANY株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令及び訂正報告書等の提出命令勧告について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、THE WHY HOW DO COMPANY株式会社(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和6年6月25日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令及び訂正報告書等の提出命令勧告を行いました。【法令違反の内容】
当社は、ソフトウェア仮勘定の過大計上に伴う売上原価の過少計上の不適正な会計処理を行ったことにより、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を関東財務局長に提出しました。
また、当社は、当該「重要な事項につき虚偽の記載」がある開示書類の訂正報告書等を提出していませんでした。
(継続開示書類)
・令和元年5月第3四半期四半期報告書(令和元年7月16日提出)
※公衆縦覧期間を経過しているため訂正報告書提出命令の勧告対象からは除外
・令和元年8月期有価証券報告書(令和元年11月27日提出)
(発行開示書類)
・有価証券届出書(令和2年5月28日提出)
※届出書の主な内容
・新規発行:800,000株の株式及び37,000個の新株予約権証券
・払込金額:862,858,000円
・割 当 先:株式会社和円商事及び個人の2者
【不適正な会計処理等】
・ソフトウェア仮勘定の過大計上に伴う売上原価の過少計上
証券取引等監視委員会は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引 き続き厳正に対処してまいります。
6.不公正取引に関する課徴金事例集の公表について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和6年6月27日、「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」(以下、「事例集」といいます。)を公表しました。事例集は、証券監視委が、主に令和5年度に、インサイダー取引や相場操縦と言った金融商品取引法違反となる不公正取引に関し課徴金納付命令の勧告を行った事案について、分析を行うとともに概要を取りまとめ、事例として紹介するものです。
また、「監視委コラム」では、本年度の勧告事案も踏まえ、市場利用者の関心が高いと思われるテーマや、証券監視委から市場利用者に特に伝えたいテーマを選び、イラスト等も活用しつつ、記載内容を最新の情報に更新するなど、内容の充実を図りました。
以下は、監視委コラムの一例です。
● 高速取引行為による不公正取引に対する初の課徴金勧告
● インサイダー取引後に起こり得ること
~それでもやりますか?インサイダー取引~
● 情報管理の重要性①
~情報管理に一層のご注意を~
● 情報管理の重要性②
~職場編~
● 情報管理の重要性③
~プライベート編~
証券監視委としては、不公正取引の未然防止という観点から、事例集を、
(1)重要事実等の発生源となる上場会社等におけるインサイダー取引管理態勢の一層の充実
(2)公開買付け等企業再編の当事者からフィナンシャル・アドバイザリー業務等を受託する証券会社・投資銀行等における重要事実等の情報管理の徹底
(3)証券市場のゲートキーパーとしての役割を担う証券会社における適正な売買審査の実施
などのために活用していただくことを期待しております。
事例集が活用されることにより、すべての市場利用者による自己規律の強化、市場の公正性・透明性の確保及び投資者保護につながれば幸いです。
7.株式会社三ッ星株式に係る大量保有報告書等の不提出及び変更報告書の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
【法令違反の内容】
株式会社シンシア工務店、大量保有者A(個人)及び株式会社和円商事は、令和3年8月~令和4年12月までにかけて、法定提出期限(※)までに大量保有報告書又は変更報告書を提出せず、また、重要な事項につき虚偽の記載がある変更報告書を提出しました。
※大量保有報告書及び変更報告書の提出期限は、各提出事由の発生日の翌日から5日(土曜、日曜及び祝日等を除く。)である。
【主な不正行為の概要】
証券取引等監視委員会は、本事例のような大量保有報告書及び変更報告書における開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。