令和7年4月11日
証券取引等監視委員会
株式会社G&Dアドヴァイザーズに対する検査結果に基づく勧告について
1.勧告の内容
関東財務局長が株式会社G&Dアドヴァイザーズ(東京都千代田区、法人番号2011001053827、代表取締役 中村 康之、資本金600万円、常勤役職員7名、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
2.事実関係
⑴ 顧客のため忠実に投資助言業務が行われていない状況
ア 単体スポット銘柄の投資助言前に当該銘柄を買い付け、投資助言後に売り付ける行為
株式会社G&Dアドヴァイザーズ(以下「当社」という。)は、毎週1回程度の頻度で、上場株式1銘柄の買付けを推奨する投資助言を行っており、所定の日時に銘柄名や買付推奨価格等を自社ウェブサイトにおいて顧客に配信(その際配信する銘柄を以下「単体スポット銘柄」という。)している。
こうした中、当社における投資助言業務統括者である甲部長は、令和4年3月から同6年2月までの間に投資助言を行った単体スポット銘柄231銘柄のうち、少なくとも65銘柄について、当社の顧客ではない第三者名義の証券口座を使い、当該第三者の計算において、単体スポット銘柄の配信前に同銘柄を買い付け、配信後に売り付ける取引を行っていた事実が認められた。なお、当該取引により、当該証券口座において計約228万円の売却益が生じており、甲部長は当該第三者から一定の報酬を受け取っていた。
イ 上記の行為を見過ごし、かつ、これを防止する態勢を構築していない状況
当社は、社内規程において、役職員の利益相反取引を防止するための社内研修の実施や、年1回以上の監査の実施を定めているものの、同規程整備以降、いずれも利益相反取引に係る事項を対象としていないなど、利益相反取引を防止するための態勢が不十分な状況であった。また、当社代表取締役及びコンプライアンス担当取締役(以下「代表取締役等」という。)は、当社社員に係る業務管理を行っておらず、投資助言業務を社員に任せきりにしていたほか、令和5年3月以降は、週1日程度しか当社に出社していなかった。このため、当社の社員管理態勢は不十分な状況となっていたほか、社員に対するけん制機能が働かない状況となっていたなど、上記アの行為を防止するための内部管理態勢を構築していない状況であった。
こうした中、当社は、甲部長が上記アの行為を、長期間にわたり、業務時間中に行っていたにもかかわらず、これを見過ごしていた。
上記⑴アのとおり、甲部長が単体スポット銘柄の投資助言前に同銘柄を買い付け、投資助言後に売り付ける行為は、顧客の取引に関する情報を利用して第三者の利益を図るために行われた行為であり、利益相反の観点から問題がある行為と認められるほか、当社が上記⑴イのとおり甲部長の行為を見過ごし、かつ、これを防止する態勢を構築していない状況は、当社の顧客をないがしろにし、顧客の信認を裏切るものである。
このような当社の状況は、顧客のため忠実に投資助言業務を行っていない状況と認められ、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第41条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められる。
⑵ 金融商品取引契約の締結の勧誘に関して顧客に対し虚偽のことを告げる行為等
当社は、自社ウェブサイトやインターネット広告を通じて無料で会員登録をした者(以下「見込顧客」という。)に対してメールマガジンを配信し、投資顧問契約の締結の勧誘を行っている。
今回検査において、令和3年12月から同6年2月までの間のメールマガジンによる投資顧問契約の締結の勧誘状況について検証したところ、以下の法令違反行為が認められた。
ア 顧客に対し虚偽のことを告げる行為
当社は、見込顧客に対して配信したメールマガジン(19件)において、以下の記載を行い、虚偽の内容を告げて投資顧問契約の締結の勧誘を行った(別紙参照)。
① 複数の株価高騰銘柄を的中させた実績があるとする架空の情報提供者を創作し、他社より先行して同人から銘柄情報を入手しているとする記載(10件、延べ91,266名に配信)
② 株価が上昇する銘柄情報が記載されているとする架空のレポートを創作し、同レポートに基づき投資助言を行うとする記載(4件、延べ31,293名に配信)
③ 過去に買い推奨の投資助言を行った銘柄について、株価が推奨時点以降に2倍となった実績が無いにもかかわらず、2倍を達成したなど、事実に反する投資助言の実績を記載(3件、延べ25,442名に配信)
④ 甲部長が知人から入手した企業の買収等の情報について、買収等が実現した実績が無いことを認識しながら、買収等が実現した実績があるとする記載(2件、延べ15,209名に配信)
イ 重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
当社は、見込顧客に対して配信したメールマガジン(14件)において、以下の記載を行い、誤解を生ぜしめるべき表示をして投資顧問契約の締結の勧誘を行った(別紙参照)。
・ 確度の高い情報を入手したとして、買収等の株価に影響を与える事象が発生すると記載(14件、延べ117,903名に配信)
上記⑵ア及びイの行為は、売上のためにはメールマガジンに事実と異なる内容等を記載することはやむを得ないと当社代表取締役が認識していたほか、メールマガジンに事実と異なる内容が記載されていることを当社コンプライアンス担当取締役が認識しながら見逃したうえ、事実と異なる記載内容にあわせて偽装を行うように指示するなど、当社代表取締役等における法令等遵守意識が著しく欠如していること及び内部管理部門によるけん制機能が機能していないこと等に起因して発生したものと認められる。
当社の上記⑵アの行為は、金商法第38条第1号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に該当するものと認められる。また、当社の上記(2)イの行為は、金商法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「業府令」という。)第117条第1項第2号に定める「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。
⑶ 金融商品取引契約につき顧客に対し特別の利益を提供する行為
当社は、所定の期間を定めて複数銘柄に関する投資助言を行う業務を行っており、令和3年9月から同6年2月までの間、当該投資助言に係る投資顧問契約を締結した顧客のうち、甲部長が担当した顧客は94名となっている。
こうした中、甲部長は、上記94名の顧客のうち、当社の投資助言に関して苦情の申出のあった少なくとも27名の顧客に対し、継続して投資顧問契約を締結してもらうことを意図して、上記投資顧問契約の終了後、契約期間を1か月以上、最大2年延長し、その間の投資顧問報酬を無償として投資助言を継続することにより、合計888万円に相当する特別の利益を当該顧客に提供した。
これは、当社代表取締役等が投資助言に係る業務を甲部長に任せきりにし、投資顧問契約の締結状況の管理態勢を構築していないなど、当社代表取締役等によるけん制機能が働かない状況にあったこと等に起因して発生したものと認められる。
当社のこの行為は、金商法第38条第9号に基づく業府令第117条第1項第3号に定める「金融商品取引契約につき、顧客に対し特別の利益を提供する行為」に該当するものと認められる。

(別紙)
○ 当社が行った虚偽の告知の例
① 複数の株価高騰銘柄を的中させた実績があるとする架空の情報提供者を創作し、他社より先行して同人から銘柄情報を入手しているとする記載
・ 先日<×××>を提供してくれたS氏
・ 最近では<×××>【1.6倍】や<×××>【1.5倍】の情報提供をしたと聞いた。先日、弊社にも【限定枠】での提供があり、1撃にして、125%を演じてくれた!
・ S氏の好意に甘え、【特別】に希望者全員への提供が決定
※ <×××>には個別銘柄名を記載。
② 株価が上昇する銘柄情報が記載されているとする架空のレポートを創作し、同レポートに基づき投資助言を行うとする記載
・ 天井予測が不可能?!(中略)まさしく「禁断」とも言えるレポートからの情報が!今回、禁断の黄金レポート銘柄として提供決定!!!
③ 過去に買い推奨の投資助言を行った銘柄について、株価が推奨時点以降に2倍となった実績が無いにもかかわらず、2倍を達成したなど、事実に反する投資助言の実績を記載
・ 過去にお出しした実績も当然2銘柄ともに「2倍達成」の好成績。
④ 甲部長が知人から入手した企業の買収等の情報について、買収等が実現した実績が無いことを認識しながら、買収等が実現した実績があるとする記載
・ 過去、何度も高確度な買収案件を当てた情報筋からの「急報」であり、この絶好の儲け時を逃して頂きたくないのです。
○ 当社が行った誤解表示の例
確度の高い情報を入手したとして、買収等の株価に影響を与える事象が発生すると記載
・ とっておきの情報筋からM&A情報の取得に成功!!本銘柄は「一撃必殺」、「一発逆転」そんな言葉でも説明できるでしょう。(略)もし、想定通りに事が運べば・・・「即座」に「一撃」で「大幅利益」が見込まれる案件となります!(略)しかも、情報の出所に関して業界関係者からの信頼が厚い先であり、弊社分析でも「これなら納得」と結論付けた企業になります。
(参考条文)
〇 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)(禁止行為)
第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
一 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為
二~八 (略)
九 前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
(顧客に対する義務)
第四十一条 金融商品取引業者等は、顧客のため忠実に投資助言業務を行わなければならない。
2 (略)
〇 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
(禁止行為)
第百十七条 法第三十八条第九号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一 (略)
二 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
三 金融商品取引契約につき、顧客若しくはその指定した者に対し、特別の利益の提供を約し、又は顧客若しくは第三者に対し特別の利益を提供する行為(第三者をして特別の利益の提供を約させ、又はこれを提供させる行為を含む。)
四~五十 (略)
2~56 (略)