市場へのメッセージ(令和6年3月28日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告1件、相場操縦事件の告発1件、情報伝達行為等に対する課徴金納付命令勧告1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. ITbookホールディングス株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
  2. 株式会社ニチリョク株券に係る相場操縦事件の告発について
  3. 株式会社コンテック役員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達及び取引推奨行為並びに当該役員から伝達を受けた者3名による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

1.ITbookホールディングス株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、ITbookホールディングス株式会社(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和6年1月23日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【法令違反の内容】
 当社は、当社及び当社の連結子会社が行った不適正な会計処理により、過大な当期純利益等を計上することによって、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を関東財務局に提出しました。
 
(継続開示書類)
・令和3年3月期有価証券報告書(令和3年6月30日提出)等、合計5通
(発行開示書類)
・有価証券届出書(令和2年12月16日提出)等、合計2通 

【主な不適正な会計処理】
○ 資金循環による売上の過大計上

 当社の連結子会社B社は、E社から発注がなかったにも関わらず、B社とE社との商流の間にC社とD社を介在させることで、E社が最終納品先であるかのような取引の外観を作出しました。また、当該取引に係る成果物の対価については、D社が当社の別の連結子会社F社より資金を借り入れて支払いを行っており、当社連結グループ内で資金が循環していました。
 これにより、当社の連結子会社B社は、本来売上を計上できないにも関わらず、売上の過大計上を行いました。

[参考:不正行為の概要図(イメージ図)]
不正行為の概要図

 証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。

2.株式会社ニチリョク株券に係る相場操縦事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和6年2月13日、金融商品取引法違反(相場操縦)の嫌疑で、嫌疑者1名を大阪地方検察庁に告発しました
 
【事案の概要】
 犯則嫌疑者は、東京証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている株式会社ニチリョクが発行した株券について、その株価の高値形成を図ろうと企て、第1~第3の相場操縦行為を行ったものです。
 

第1 犯則嫌疑者は、同株券の売買を誘引する目的をもって、令和2年10月26日から同月28日までの間、3取引日にわたり、同市場において、Aほか1名義で、証券会社1社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計1万7100株を買い付け、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、同期間中、2取引日にわたり、同市場において、同株券合計2500株について、証券会社2社を介し、Bほか3名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、同株券の株価を1047円から1250円まで上昇させたものです。

第2 犯則嫌疑者は、同株券の売買を誘引する目的をもって、同年11月16日から同年12月7日までの間のうち、15取引日にわたり、同市場において、Cほか3名義で、証券会社3社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計11万2100株を買い付け、さらに、同期間中、3取引日にわたり、Dほか1名義で、証券会社2社を介し、前同様の方法により、同株券合計2300株の買付けの委託を行い、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買及びその委託をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、同期間中、10取引日にわたり、同市場において、同株券合計3万2000株について、証券会社3社を介し、Eほか3名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、同株券の株価を942円から1300円まで上昇させたものです。

第3 犯則嫌疑者は、同株券の売買を誘引する目的をもって、同月22日から同月30日までの間、7取引日にわたり、同市場において、Fほか4名義で、証券会社3社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計4万3800株を買い付け、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、同期間中、5取引日にわたり、同市場において、同株券合計1万1100株について、証券会社3社を介し、Cほか4名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、さらに、同月24日、同市場において、同株券1万株について、証券会社1社を介し、C名義で売り付けると同時期に、これと同価格において、Gが、証券会社1社を介し、G名義で買い付けることをあらかじめ同人と通謀の上、当該売付け(馴合売買)をし、同株券の株価を1200円から1340円まで上昇させたものです。

【本件の意義】
 本件は、犯則嫌疑者が、長期間にわたって犯則行為を実行し、株価を不正に吊り上げた相場操縦事案です。
 犯則嫌疑者は、本件犯則行為において、多数の異名義口座を用いただけでなく、多数回にわたる仮装売買のほか、馴合売買を行い、出来高を急増させたり、多数回にわたる買い上がり買付けなどの手法も用いることで、需給バランスによって形成されるべき市場の株価に大きな影響を与えており、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
 
 なお、本件については、日本取引所自主規制法人より支援がなされています。

3.株式会社コンテック役員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達及び取引推奨行為並びに当該役員から伝達を受けた者3名による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和6年2月16日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました

【事案の概要】
 本件は、株式会社コンテック(以下「コンテック」といいます。)の役員である課徴金納付命令対象者(1)(以下「対象者(1)」といいます。)が、情報伝達規制違反及び取引推奨規制違反を行い、さらに、対象者(1)から伝達を受けた、課徴金納付命令対象者(2)、(3)及び(4)(以下「対象者(2)、(3)及び(4)」といいます。)が、内部者取引規制違反を行ったものです。
 
・ 対象者(1)について
 対象者(1)は、コンテックの役員を務めていましたが、コンテックの役員らがその職務に関し株式会社ダイフクからの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がコンテック株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実(以下「本件事実」といいます。)をその職務に関し知りながら、知人の対象者(2)、(3)及び(4)に対し、本件事実の公表前に、コンテック株式の買付けをさせることにより同人らに利益を得させる目的をもって、本件事実を伝達し、当該伝達を受けた3名が本件事実公表前にコンテック株式を買い付けたものです(情報伝達規制違反:違反行為事実A、違反行為事実B、違反行為事実C)。
 さらに、対象者(1)は、知人の被推奨者甲及び乙に対し、本件事実の公表前に、利益を得させる目的をもって、コンテック株式の買付けをすることを勧め、当該推奨を受けた2名が本件事実の公表前にコンテック株式を買い付けたものです(取引推奨規制違反:違反行為事実D、違反行為事実E)。
 
・ 対象者(2)、(3)及び(4)について
 対象者(2)、(3)及び(4)は、対象者(1)から本件事実の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、コンテック株式を買い付けたものです(内部者取引規制違反)。
 
【事案の特色等】
 情報伝達行為は、被伝達者に利益を得させる等の目的をもって、未公表の重要事実等を伝達すること、取引推奨行為は、重要事実等を知った者が未公表の重要事実等を伝達することなく、被伝達者に利益を得させる目的をもって、取引を勧めることを言いますが、本件は、対象者(1)が情報伝達及び取引推奨の両方を行った事案となっています。
 また、本件は、5名に情報伝達および取引推奨を行っていますが、1人で複数名に情報伝達及び取引推奨に及んだ事案としては過去最多のものとなります。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 本件は、法令等を遵守し、高い規範意識を保つことが求められる上場会社の役員が、多数の知人に対して、情報伝達及び取引推奨に及んだ悪質な事案です。
 上場会社の役員によるこのような情報伝達及び取引推奨行為は、上場会社の役員として当然有しておくべき内部者取引に係る規範意識の欠如から生じたものであり、非常に問題があると考えています。
 本件が広く周知されることにより、重要事実や公開買付等事実を抱えている上場会社の皆様が、一層情報管理の重要性を認識し、役職員に対して、改めて法令遵守や情報管理の徹底のための施策を推進していくことを期待しております。
違反行為事実の概要について
 

 

<発行>

証券取引等監視委員会事務局 総務課
 
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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