市場へのメッセージ(令和5年3月27日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、内部者取引に対する課徴金納付命令勧告1件、金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立て1件、内部者取引事件の告発1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. 株式会社N・フィールド社員から伝達を受けた者による内部者取引及び当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達行為に対する課徴金納付命令の勧告について
  2. Mt.light(MTL)の代表者1名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てについて
  3. 総合メディカルホールディングス株式会社株券及び株式会社スペースバリューホールディングス株券に係る内部者取引事件の告発について

1. 株式会社N・フィールド社員から伝達を受けた者による内部者取引及び当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達行為に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和5年2月28日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました

  • 【事案の概要】
     本件は、ユニゾン・キャピタル株式会社が株式会社N・フィールド(以下「N社」といいます。)株式の公開買付けを行うにあたり、N社の社員であった課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)(2)が、職務上知り得た当該公開買付け実施に関する事実(以下「本件事実」といいます。)を、知人である対象者(1)に伝達し、対象者(1)が本件事実の公表前にN社株式を買い付けたものです(インサイダー取引規制違反)。
     
     対象者(2)は、知人である対象者(1)に対し、本件事実の公表前にN社株式の買付けをさせることにより対象者(1)に利益を得させる目的をもって、本件事実を伝達していました(情報伝達規制違反)。
     
    【事案の特色】
     本件は、規範意識を強く持って行動すべき上場会社の社員が、職務上知り得た内部情報を悪用し、知人に儲けさせてあげようと情報を伝達し、その知人がインサイダー取引を行った事案です。
     
    【証券監視委からのメッセージ】
     本件の課徴金額は、情報を伝達した社員が17万円、インサイダー取引を行った知人が34万円と比較的少額ですが、証券監視委は、取引規模や利得額の多寡にかかわらず幅広く不公正取引を監視しています。たとえ少額の取引であったとしても、課徴金調査の対象となることを改めて周知することにより、違反行為を抑止する効果に期待したいと思います。

    ○  違反行為事実の概要について
    違反行為事実の概要について

2. Mt.light(MTL)の代表者1名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てについて

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年12月9日、東京地方裁判所に対して、Mt.light(以下「MTL」といいます。)(法人の実在としてはマレーシアのラブアン島に所在するOS-Laugh Marketing Ltd.(以下「OS社」といいます。))のPresident(代表者)として活動している山本紘士(やまもとこうじ、以下「山本」といいます。)に金融商品取引法違反行為(無登録で、店頭デリバティブ取引を業として行うこと)の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行いました
 
【事案の概要】
 MTLと称してOS社が提供しているFX取引の概要は、以下のとおりです。

  • 顧客が、口座開設フォームからMTL証券口座の開設を行い、証拠金の預入先として指定された合同会社イーコレペイメント(業務執行社員は山本のみ。以下「イーコレ社」といいます。)名義の銀行口座に証拠金を入金すると、その証拠金額がMTL証券口座に反映され、その後は、MTLFXという自動売買システムに基づき、自動的にFX取引が行われます。
  • 顧客は、この自動売買システムに基づき、売買注文の発注先(取引の相手方)であるOS社と相対で取引を行います。
  • OS社は、為替変動リスク回避のため、顧客から受けた注文と同じ数量の注文をカバー取引先に発注します(いわゆるカバー取引を行います)。

 OS社及び山本は、複数の勧誘代理店を利用して、顧客を獲得しており、MTLとしてFX事業を開始した令和2年8月から令和4年7月末日までの間に、少なくとも延べ1,950名の一般投資家に対し、85億円を超える証拠金をイーコレ社の銀行口座に入金させています。
 なお、イーコレ社名義の銀行口座に入金された証拠金のうち、40億円を超える額が、山本の個人口座ないしは山本の関係会社口座に送金されています。
 
 OS社及び山本の上記行為は、金融商品取引法第2条第22項に規定する店頭デリバティブ取引に該当し、同法第28条第1項第2号に規定する「第一種金融商品取引業」に該当するものであることから、無登録でこれを行うことは、同法第29条に違反します。

 山本に対しては、令和5年2月28日に、東京地方裁判所から、当該違反行為の禁止及び停止を命ずる決定が出されています

 証券監視委においては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、無登録業者に対して厳正に対処してまいります。投資者の皆様におかれては、無登録業者と取引を行うことがないように、注意してください。

【MTLの顧客の皆様へ】
  • 東京地方裁判所は、MTLのPresident(代表者)として活動している山本が金融商品取引法違反行為(無登録で、店頭デリバティブ取引を業として行うこと)を行っていたことを認め、当該違反行為の禁止及び停止を命令しました(令和5年2月28日)。
  • 山本及びOS社(MTL)は、金融商品取引業の登録等を受けた業者ではありません。
  • OS社(MTL)がFX取引を行う顧客を獲得するに当たっては、複数の勧誘代理店が勧誘行為を行っていることが確認されています。
  • OS社(MTL)や勧誘代理店は、顧客にMTLのウェブサイト上の口座開設フォームからMTL証券口座を開設させ、イーコレ社名義の銀行口座に証拠金を入金するだけで、MTLFXという自動売買システムに基づき自動的に運用が行われ、安定的な利益を上げられるなどとして勧誘を行っていました。
  • MTLFXのことを、アポロンないしはアポロンライトと称して勧誘している代理店がありますが、いずれも、MTLFXと同じものです。
  • 顧客の証拠金の預入先であるイーコレ社の銀行口座には、FX取引の証拠金名目以外の入金はないとされていますが、同銀行口座から40億円を超える額が山本の個人口座又は山本の関係会社口座に送金されていることが確認されています。
  • 【一般投資家の皆様へ】も、併せてご確認ください。

【一般投資家の皆様へ】
  • 無登録業者が、実際には契約内容のとおりの取引を行っていなかったなどのトラブルが多発しています。無登録業者には、金融庁の監督権限が及ばず、投資者保護規定に基づく処分等が行えませんので、ご注意ください。
  • 仮に、海外当局の登録を受けた業者であったとしても、当該海外当局は、他国民との取引について監督指導等を行わないことや、金融庁と同等の監督権限がないことなどがあります。海外当局の登録を受けたことをもって日本と同等の投資者保護を担保するものではありません。
  • 一般に、無登録業者は、実際には契約内容のとおりの取引を行っていない商品であったとしても、返金等を希望する顧客に対し、他の顧客の投資資金を交付することで、返金等に応じることがあります。これまでに返金等を受けることができていたとしても、そのことをもって、直ちに当該商品が信頼できるとは言えませんので、ご注意ください。
  • 日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です。取引の相手方が登録を受けているか、こちら新しいウィンドウで開きますでご確認ください。
    また、無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告を行った者の名称等は、こちら新しいウィンドウで開きますをご確認ください。
  • 外国為替証拠金取引(FX取引)についての注意点は、こちら新しいウィンドウで開きますをご確認ください。 

3.総合メディカルホールディングス株式会社株券及び株式会社スペースバリューホールディングス株券に係る内部者取引事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和5年3月3日、金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発しました

【事案の概要】
 犯則嫌疑者Aは、ポラリス・キャピタル・グループ株式会社(以下「ポラリス」という。)に勤務していた従業員であったものですが、
 

第1 令和元年12月上旬頃、その職務に関し、ポラリスの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所に株券を上場していた総合メディカルホールディングス株式会社(以下「総合メディカル」という。)株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同事実の公表前である令和2年1月中旬頃から同年2月上旬頃までの間、証券会社を介し、東京証券取引所において、自己名義で、総合メディカルの株券合計2000株を代金合計約420万円で買い付け  

第2 令和3年9月下旬頃、その職務に関し、ポラリスの業務執行を決定する機関が、東京証券取引所に株券を上場していた株式会社スペースバリューホールディングス(以下「スペースバリュー」という。)株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り、法定の除外事由がないのに、同事実の公表前である同年11月上旬頃から同月中旬頃までの間、証券会社を介し、東京証券取引所等において、自己名義で、スペースバリューの株券合計2万7000株を代金合計約2390万円で買い付け

 たものです。
 
【本件の意義】
  本件は、ポラリスの従業員であった犯則嫌疑者Aが、総合メディカル及びスペースバリューの株券に係る公開買付けの実施に関する事実を職務に関し知り、その公表前に、自己名義でこれらの株券を買い付けたという内部者取引の事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
 
 

<発行>

証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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