市場へのメッセージ(令和2年1月15日)

<目次>

1.ニュース証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
2.堀田勝己(トレードマスターラボ)に対する検査結果に基づく勧告について
3.最近の取引調査に基づく勧告について
 ・株式会社日本ハウスホールディングス社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
 ・公開買付者の役員からの情報受領者が所属する会社の他の役員による朝日工業株式会社株式に係る内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

1. ニュース証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和元年11月26日、金融庁に対して、ニュース証券株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。

【事案の概要】
 当社営業員らは、金融商品取引業等の登録がない社外の複数の知人らに有価証券の取得勧誘を依頼し、この結果、依頼を受けた知人が取得勧誘を行い、顧客に有価証券を購入させました。さらに、これらの状況を隠蔽するため、かねて取得勧誘を依頼していた知人に対し、当局の質問には詳しい商品説明はしていない旨答えるよう依頼するなど、正常な検査の進行を妨げる検査忌避を行いました。
 当社は、同営業員らによる営業活動を同人ら任せにしており、経営管理態勢及び内部管理態勢が杜撰なものと認められました。
 このように、投資家保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処していきます。
 
 なお、当社に対しては、令和元年12月4日に、関東財務局長から3か月の業務停止命令及び業務改善命令の行政処分が行われています。

2. 堀田勝己(トレードマスターラボ)に対する検査結果に基づく勧告について

 証券監視委は、令和元年12月6日、金融庁に対して、堀田勝己(トレードマスターラボ)(以下「当者」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。

【事案の概要等】
○無登録業者に対する名義貸し
 当者は、以下のとおり、当者の名義をもって、金融商品取引業の登録のない者に投資助言・代理業を行わせました。
 ・当者は、株式会社サン(以下「サン社」といいます。)との間で投資助言の提供に係る契約を締結し、少なくとも69名の顧客に対し、サン社から提供された投資助言の内容をそのまま貼り付けて、当者名義にて電子メールで配信するなど、当者の名義をもって、サン社に投資助言・代理業を行わせました。
    なお、サン社は、デルタインベストメント株式会社に対する行政処分勧告において、同社の名義を使用して投資助言行為を行ったと認定されている者です。
 ・当者は、少なくとも7者(以下「プログラム提供者」といいます。)との間で投資判断に係るプログラム等の提供を受けるための契約を締結し、プログラム提供者が、少なくとも169名の顧客に対し、当者を介さずに、投資助言を当者名義にて電子メールで配信するなど、当者の名義をもって、プログラム提供者に投資助言・代理業を行わせました。
 
 このように、投資家保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処していきます。
 
 なお、当者に対しては、令和元年12月13日に、近畿財務局長から1か月の業務停止命令及び業務改善命令の行政処分が行われています。

3.最近の取引調査に基づく勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・R1.12.6   株式会社日本ハウスホールディングス社員による内部者取引違反行為
・R1.12.10 公開買付者の役員からの情報受領者が所属する会社の他の役員による朝日工業株式会社株式に係る内部者取引違反

株式会社日本ハウスホールディングス社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

【事案の概要】
 本件は、株式会社日本ハウスホールディングス(以下「日本ハウス」といいます。)の社員2名(課徴金納付命令対象者)が、その職務に関し、日本ハウスのマンション事業部が値引き販売を隠蔽し、売上高を過大に計上していたことが判明した旨の同社の運営、業務または財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実(以下「本件事実」といいます。)を知りながら、本件事実が公表される前に同社株式を売り付けたものです(インサイダー取引違反)。
 
【事案の特色等】
 本件は、いわゆるバスケット条項(金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第166条第2項第4号)を適用した課徴金勧告事案ですが、同条項を適用した事案はこれまで12件あります(本件が13件目です)。
 また、決算等の財務に関する数値等を原因とするバスケット条項を適用した課徴金勧告事案としては、本件が3件目となります。
 (注)13件以外に、上場会社等の子会社のバスケット条項(金商法第166条第2項第8号)を適用した勧告事案も1件あります。
 
 上場会社等の重要事実については、金商法第166条第2項第1号から第3号において個別具体的に定められていますが、複雑多岐にわたる経済活動を遂行している企業のインサイダー情報を予め網羅的に規定することは困難であることから、それ以外の「上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」を重要事実として同項4号(いわゆるバスケット条項)に規定したものです。 
 上場会社において、日々の経営や業務遂行において生じる様々な事象が、金商法における重要事実として、こうしたバスケット条項に直ちに該当するか否かを、適時、的確に判断することは、必ずしも容易ではないと思われますが、例えば、バスケット条項を適用した過去の勧告事案については、令和元年6月20日公表の「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」104頁に掲載されていますので、参考にしてください。

 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

公開買付者の役員からの情報受領者が所属する会社の他の役員による朝日工業株式会社株式に係る内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

【事案の概要】
 本件は、合同製鐵株式会社(以下「合同製鐵」といいます。)が平成30年8月6日に公表した、朝日工業株式会社(以下「朝日工業」といいます。)の株式に対する公開買付けの実施に関するインサイダー取引です。
 本件の課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、合同製鐵の取引先会社の役員です。対象者は、対象者と同じ会社の役員が職務上、合同製鐵の役員から伝達された合同製鐵の業務執行を決定する機関が、朝日工業株式の公開買付けを行うことの決定をした旨の本件事実(重要事実)を、その職務に関して知りながら、その公表前に朝日工業株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反)。
 
【事案の特色等】
 本件は、これまでも数多く勧告事例のある「公開買付け等事実」に基づくインサイダー取引です。
公開買付け等事実によるインサイダー取引件数の推移については、令和元年6月20日公表の「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」10頁、16頁に掲載されていますので、ご覧下さい。
 公開買付けについては、再三お伝えしているように、当事者である買付企業や買付対象会社のみならず、コンサルティング会社や金融機関など多くの関係者が関与すること、また、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要することから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。繰り返しになりますが、公開買付けに関わる全ての関係者において厳正な情報管理に努めることが強く求められていると言えます。
 
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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