市場へのメッセージ(令和5年9月21日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、特定関与行為に対する課徴金納付命令勧告1件の紹介を行っています。意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。
 また、「令和5事務年度 証券モニタリング基本方針」の公表について掲載しました。近年の金融商品取引業者等を取り巻く環境等を踏まえ、令和5事務年度における証券モニタリングの業態横断的な検証事項、規模・業態別の主な検証事項等について取りまとめたものですのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. 「令和5事務年度 証券モニタリング基本方針」について
  2. 株式会社ディー・ディー・エスが提出した虚偽開示書類に係る特定関与行為に対する課徴金納付命令勧告について

1. 「令和5事務年度 証券モニタリング基本方針」について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和5年8月1日に、「令和5事務年度 証券モニタリング基本方針」(以下「基本方針」といいます。)を公表しました。

〇金融商品取引業者等(以下「金商業者等」といいます。)を取り巻く環境、金商業者等を取り巻く規制の枠組み等の変更、昨事務年度の証券モニタリングを通じて判明した事項を踏まえつつ、金融庁の「金融行政方針」等も念頭に置きながら、金融庁関連部局等と連携し、証券モニタリングを実施していきます。

〇業態横断的な検証事項
 業態横断的な検証事項として、次の5つを掲げています。
  1.適合性原則を踏まえた適正な投資勧誘等に重点を置いた内部管理態勢の構築や、顧客本位の業務運営を踏まえた販売状況(例えば、仕組債に限らず、複雑又はリスクが高い商品の販売)
  2.デジタル化の進展等を踏まえたビジネスモデルの変化と、それに対応した内部管理態勢の構築
  3.サイバーセキュリティ対策の十分性(インターネット取引における不正アクセス対策を含む)やデジタル化の進展に伴うシステムリスク管理(システム開発・運用管理や外部委託先の管理を含む)の対応状況
  4.マネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策に係る内部管理態勢の定着状況
  5.内部監査の結果及び自主規制機関の監査等で指摘された事項に係る改善策及び再発防止策の取組状況

 上記のほか、「資産所得倍増プラン」や資産運用業等の抜本的な改革等の金商業者等を取り巻く環境を踏まえた具体的な取組やその環境の変化等に応じて、機動的にその他の事項の検証についても取り組みます。

〇規模・業態別の主な検証事項
 規模・業態別の主な検証事項の一部を紹介します。詳細は基本方針を参照してください。
・大手証券会社グループ:国内外の業務展開を支えるガバナンスやリスク管理態勢の整備状況、不公正取引等の検知・防止のための態勢整備を始めとした内部管理態勢の整備状況等。3メガバンクグループの証券会社に対しては、銀証連携ビジネスの推進を踏まえた顧客情報管理態勢等の整備状況
・外国証券会社:バックオフィス業務の海外委託の進展等に対応した内部管理態勢やシステムリスク管理態勢の整備状況等
・ネット系証券会社:金融商品仲介業者を活用した対面営業の拡大等のビジネスモデルを踏まえた外部委託先の管理態勢や、委託手数料無料化等の動きもある中、新規口座開設数の急増や取引量に応じた実効的な売買管理態勢を始めとした内部管理態勢の整備状況等
・準大手証券・地域証券会社等:適合性原則への対応も含めた投資者保護の観点からの不適切な勧誘行為等、主要株主や経営体制が変更された証券会社に対しては、ビジネスモデルやガバナンスの観点から内部管理態勢
・FX業者:広告規制、販売・勧誘規制に対する適正な内部管理態勢の整備状況等
・投資運用業者:運用の実態把握、運用管理態勢(外部委託運用に対するものを含む)、利益相反管理態勢の整備状況等
・投資助言・代理業者:顧客に誤解を生じさせる広告手法、虚偽の説明による勧誘等
・第二種金融商品取引業者、適格機関投資家等特例業務届出者:高利回りを掲げたファンドや出資対象事業の実在性等
・金融商品仲介業者:投資勧誘等の適正性、所属金融商品取引業者による管理態勢の十分性

・無登録業者:裁判所への違反行為の禁止命令等の申立てに係る調査権限の積極的な活用、無登録業者の名称・代表者名・法令違反行為等の公表等を含めた情報発信の強化等

〇証券モニタリングの進め方
 ・証券モニタリングの対象業者について、金融庁関連部局等と連携し、金商業者等におけるリスクの特定・評価を行い、リスクベースで検査対象先を選定、以下のような場合を中心に検査を実施します。
1.個別の法令違反事項の発生や業務運営態勢に懸念があり、早期に深度ある検証が必要な状況
2.リスクの所在が不明確な金融商品を取り扱い、その勧誘実態等の検証が必要な状況
3.モニタリングによる情報分析だけでは業務運営等の実態が必ずしも把握できない状況(検査未実施期間が長期化している場合を含む)
4.分別管理が適切に行われていないなど、投資者保護上、重大な問題が懸念される状況

 ・検査では、実質的に意味のある検証及び問題点の指摘に努めるほか、単に問題点を指摘し行政処分勧告等を行うにとどまらず、問題の全体像を把握し、発生原因を究明することにより、実効性のある再発防止策につなげていきます。さらに、問題が顕在化していないものの、業務運営態勢等について改善が必要であると認められた場合には、証券監視委の問題意識を検査対象先と共有し、実効性ある内部管理態勢の構築等を促していきます。

〇関係機関との連携・検査結果の情報発信
・各財務局等とは、モニタリングや検査の計画策定から緊密に連携し、必要に応じて合同検査も実施します。
・セキュリティトークンについて、金融庁関連部局等と連携しながら、発行・流通の状況も踏まえた情報分析等を行います。
・自主規制機関と引き続き緊密に連携し、タイムリーな情報共有により、証券モニタリングを効果的・効率的に進めます。
・検査を通じて把握した問題点や究明した根本原因等については、必要に応じて、金融庁関連部局等と連携して金商業者等に対してフィードバックを行い、これらの監査関係者及び社外取締役に対しても、検査結果を共有することにより、改善に向けた自主的な取組を促します。
・証券監視委の問題意識等が対外的にも的確に伝わるよう、「証券モニタリング概要・事例集」等により、具体的で分かりやすい情報発信に努めます。なお、令和5年8月1日に公表しました証券モニタリング概要・事例集より、利便性向上のため、検査の結果に基づき勧告を行った業者名について、記載することにいたしました。

2. 株式会社ディー・ディー・エスが提出した虚偽開示書類に係る特定関与行為に対する課徴金納付命令勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)における株式会社ディー・ディー・エス(以下「DDS」といいます。)が提出した虚偽開示書類に係る特定関与行為について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和5年8月4日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました

※特定関与行為とは、重要な虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出を容易にすべき行為又はその提出を唆す行為を言います。(公認会計士又は監査法人が行う監査証明を除きます。)

【法令違反の内容】
 DDSは、外国法人に対する売掛金の過大計上等の発覚を免れるため、過大に算定された同外国法人の株式価値を前提とした引受価額で当該株式を引き受け、前記売掛金の全額を現物出資するなどの取引により同外国法人を子会社化するなどの一連の行為を行った上で、これを基礎としたのれん等の過大計上等の不適正な会計処理を行い、「重要な事項につき虚偽の記載」がある有価証券報告書等を提出しました。

 対象者は、DDSが前記一連の行為を行った際、引受価額が正当な根拠に基づくものであることを装うために利用されることを知りながら、DDSから前記外国法人の株式価値算定業務の依頼を受け、真実は同外国法人株式には引受価額に相当する価値がなかったにもかかわらず、引受価額以上となるように同外国法人株式の1株当たりの株式価値を過大に算定し、これに基づき、同外国法人に係る株式価値算定書を作成してDDSに提出し、DDSによる前記一連の行為に利用させました。
※DDSは令和5年2月8日に金融庁より課徴金納付命令を受けています新しいウィンドウで開きます

 対象者が行ったこれらの行為は、本件虚偽開示書類を提出することを容易にすべき行為であって、本件虚偽開示書類の作成に必要な会計処理の基礎となるべき事実の一部を仮装するための一連の行為の一部であることを知りながら、当該仮装するための一連の行為の一部を行ったものであり、金融商品取引法第172条の12第1項及び第2項に規定する「特定関与行為」に該当すると認められます。

 本事例は、「特定関与行為」に対する課徴金納付命令勧告を行った初めての事例です。
 証券監視委は、本事例のような「特定関与行為」を含め、非定型・新類型の事案等についても積極的に対応をしてまいります。
 
 

<発行>

証券取引等監視委員会 事務局 総務課
            (調査係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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