市場へのメッセージ(令和元年12月26日)

<目次>

1.株式会社パルマ株券に係る内部者取引事件の告発について
2.最近の取引調査に基づく勧告について
 ・石垣食品株式外1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
 ・シーズメンとの契約締結交渉者2名からそれぞれ伝達を受けた者2名による内部者取引違反及び当該契約締結交渉者2名による重要事実に係る伝達行為違反に対する課徴金納付命令の勧告について

1. 株式会社パルマ株券に係る内部者取引事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和元年11月1日、金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、嫌疑者2名を東京地方検察庁に告発しました。

【事案の概要】
 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所マザーズ市場に株券を上場していた株式会社パルマ(以下「パルマ」といいます。)の管理部次長を務めていたもので、犯則嫌疑者Bは、Aの知人であり、
 
第1 Aは、平成29年12月中旬頃、その職務に関し、パルマにおいてその発行する株式を引き受ける者の募集を行うことについての決定をした旨の重要事実を知り、あらかじめパルマの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同重要事実の公表前である同月下旬頃、Bに対し、同重要事実を伝達したものであり、これにより同人が、同重要事実の公表前である平成30年1月上旬から同年4月中旬までの間、証券会社を介し、東京証券取引所において、自己名義及び他人名義で、パルマの株券合計3,000株を代金合計約1,100万円で買い付けました。
 
第2 Bは、平成29年12月下旬頃、Aから、前記重要事実の伝達を受け、同重要事実の公表前である平成30年1月上旬から同年4月中旬までの間、証券会社を介し、前記東京証券取引所において、自己名義及び他人名義で、パルマの株券合計3,000株を代金合計約1,100万円で買い付けました。
 
【本件の意義】
 本件は、パルマのいわゆる第三者割当増資、発行する新株式を引き受ける者の募集に関し、同社の管理部次長であった犯則嫌疑者Aが、本件重要事実を職務に関し知り、知人である犯則嫌疑者Bに対し、本件重要事実を伝達し、Bが同重要事実の公表前に、本人名義・他人名義の証券口座を利用してパルマ株券を買い付け、多額の利益を得た事案であり、悪質性が認められます。
 
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違反行為に対し、厳正に対応していきます。 

2.最近の取引調査に基づく勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・R1.11.8   石垣食品株式外1銘柄に係る相場操縦
・R1.11.19 株式会社シーズメンとの契約締結交渉者2名からそれぞれ伝達を受けた者2名による内部者取引違反及び当該契約締結交渉者2名による重要事実に係る伝達行為違反

石垣食品株式外1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

【事案の概要】
 本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、石垣食品株式、グローバルダイニング株式、の売買を誘引する目的をもって、相場操縦行為を行った事案です。両株式の売買状況は次のとおりです。
 下値に買い注文を大量に発注したうえで、直前の約定値より高い指値の買い注文を発注して買い付けることにより株価を引き上げるなどの方法により、
(1)石垣食品株式については、平成29年8月30日から同月31日にわたり、合計105,100株の買付けの委託を行うとともに、合計93,300株を買い付ける一方、合計101,700株を売り付け、
(2)グローバルダイニング株式については、平成29年10月23日、合計37,900株の買付けの委託を行うとともに、合計94,600株を買い付ける一方、合計70,200株を売り付け、
取引合計で約338万円の売買差益を得たという事案です。
 
【事案の特色等】
 課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)による相場操縦の手法は、概ね次の(1)から(4)のとおりです。違反行為開始前に当該各株式を買い付け(仕込みの買付け)、その後
(1)買い見せ玉の発注
他の投資家からの最良買い気配付近の高値の買い注文を誘い込む目的で、買い付ける意思のない複数の買い注文を、買い見せ玉として発注
(2)株価引上げ(3つの手法を利用)
手法1 最小売買単位の買付けによる株価引上げ
手法2 最小コストの買い上がりに買付けによる株価引上げ
手法3 その他の株価引上げ
(3)売抜け
上記(1)の見せ玉や(2)の株価引上げに誘引された他の投資家が発注した高値の買い注文に対して、仕込みや(2)で買い付けた株式を高値で売抜け
(4)買い見せ玉の解消
上記(1)で発注していた買い見せ玉を取消し等を行うことにより解消
 
 証券監視委は、これまでに相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。
・インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑
・市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解
 相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。
 
 本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。

シーズメンとの契約締結交渉者2名からそれぞれ伝達を受けた者2名による内部者取引違反及び当該契約締結交渉者2名による重要事実に係る伝達行為違反に対する課徴金納付命令の勧告について

【事案の概要】
 本件は、株式会社シーズメン(以下「シーズメン」といいます。)が平成30年8月15日に公表した、シーズメンが発行する株式を引き受ける者の募集を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)に関するインサイダー取引及び本件事実に係る伝達行為違反です。
 本件は、課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)が4名の事案です。
・対象者(2)及び対象者(4)について
対象者(2)及び対象者(4)は、シーズメンが新たに株式を発行するに際し、その総数引受契約の締結交渉に関し知った、シーズメンの業務執行を決定する機関が、同社の発行する株式を引き受ける者の募集を行うことについての決定をした旨の本件事実を、対象者(2)は対象者(1)に対し、対象者(4)は対象者(3)に対して本件事実の公表がされる前に、シーズメン株式の買付けをさせることにより、同人に利益を得させる目的をもって、伝達したものです(伝達行為違反)。
・対象者(1)について
対象者(1)は、対象者(2)から本件事実の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、知人名義の口座を用いてシーズメン株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反)。
・対象者(3)について
対象者(3)は、対象者(4)から本件事実の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、自己名義の口座でシーズメン株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反)。
【事案の特色等】
 本件は、上場会社による第三者割当増資に関する事実の伝達を受けながら、当該事実が公表される前に当該上場会社の株式を買い付けたインサイダー取引違反であるとともに第三者割当増資に関する契約の締結交渉をしていた者による情報伝達規制違反についての勧告事案でもあります。情報伝達規制違反については、市場へのメッセージでもたびたび取り上げさせていただきましたが、改めて説明させていただきます。
 情報伝達規制違反は平成26年4月に導入されましたが、他人に対して利益を得させる等の目的をもって重要事実等を伝達し、当該伝達を受けた者が重要事実等の公表前に取引を行っていた場合、重要事実等を伝達した者は情報伝達規制違反となります。情報伝達規制違反とともに同じく平成26年4月に導入された取引推奨規制違反についても簡単に説明します。取引推奨規制違反は重要事実等の伝達はしていないものの、他人に対して利益を得させる等の目的をもって取引を推奨し、当該推奨を受けた者が重要事実等の公表前に取引を行っていた場合、取引推奨を行った者は取引推奨規制違反となります。
 未公表の重要事実を知りながら売買してはいけない「インサイダー取引規制」については、周知が相当程度されていると思いますが、「情報伝達規制」「取引推奨規制」については周知が十分でないケースも少なくありません。「情報伝達規制」「取引推奨規制」については、証券監視委により毎年公表しています課徴金事例集にも記載されていますので是非一読いただきご理解を深めていただければと思います(令和元年6月20日公表、「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」の6ページ、13ページ及び61ページ「監視委コラム5」をご覧ください)。
 
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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