市場へのメッセージ(令和5年11月2日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、内部者取引に対する課徴金納付命令勧告1件、金融商品取引業者に対する検査結果に基づく行政処分勧告1件、相場操縦に対する課徴金納付命令勧告1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。
 また、「令和4事務年度 開示検査事例集」の公表について掲載しました。本事例集が活用されることにより、開示規制違反の手法、背景、原因等や証券監視委の取組みについて理解を深めていただくとともに、市場関係者の皆様のコミュニケーションや対話が活発化され、開示規制違反の未然防止・再発防止につながることを強く期待しています。

<目次>

  1. 「令和4事務年度 開示検査事例集」の公表について
  2. 株式会社ZOZO社員から伝達を受けた海外居住者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
  3. 三木証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
  4. ファルテック株式ほか1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

1. 「令和4事務年度 開示検査事例集」の公表について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和5年8月31日、「令和4事務年度 開示検査事例集」を公表いたしました。

 「開示検査事例集」は、市場関係者の皆さんに適正な情報開示に向けた取組みを積極的に行っていただけるよう、毎年、証券監視委による開示検査の最近の取組みや、開示検査によって新たに判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を中心に紹介しています。

 今般公表しました「開示検査事例集」では、開示検査によって開示規制違反が認められ課徴金納付命令勧告を行った事例や、課徴金納付命令勧告は行わなかったものの、開示規制違反の背景・原因を上場会社と共有し適正な情報開示に向けた体制の整備を促した事例等、さまざまな事例を積極的に紹介しているほか、令和4事務年度(令和4年7月~令和5年6月)に実施した開示検査の概要・事例等を新たに追加しています。
 令和4事務年度において実施した開示検査の概要・事例等は、次のとおりです。
・開示検査を実施したのは18件であり、そのうち9件が終了しました。
・開示検査を終了した9件のうち、開示書類における重要な事項についての虚偽記載等が認められた4件について課徴金納付命令勧告を行いました。また、金融商品取引法違反行為(無届募集)が認められた1件について、裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てを行いました。
・課徴金納付命令勧告の事例として、商品売買を仮装した売上の架空計上、代理人取引による売上の過大計上、非財務情報である重要事象等の不記載等の事例を追加しています。
 さらに、「監視委コラム」においては、開示実務の参考となるよう、最近の開示検査を通じてクローズアップされた開示制度や内部統制等について、最近の制度改正等を踏まえて解説しています。
 

 証券監視委としては、「開示検査事例集」を通じて、市場関係者の皆様に、開示規制違反の手法、背景・原因等や証券監視委の取組みについて理解を深めていただくことで、上場会社とその会計監査人である公認会計士・監査法人とのコミュニケーションや投資者の皆様と投資先である上場会社との対話がますます活発に行われることを期待しています。そして、その活発なコミュニケーションや対話は、開示規制違反の未然防止・再発防止につながるものと確信しています。

2. 株式会社ZOZO社員から伝達を受けた海外居住者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和5年9月8日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【事案の概要】
 中国居住の課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、株式会社ZOZO(以下「ゾゾ」といいます。)の中国子会社の役職員でしたが、ゾゾ社員であった甲から、ヤフー株式会社(現Zホールディングス株式会社)によるゾゾ株式の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けながら、当該事実の公表前に、知人名義の証券口座でゾゾ株式を買い付けていました。
 
【事案の特色】
 本件は、中国証券監督管理委員会(China Securities Regulatory Commission)から支援を受けて調査を進めたほか、日本取引所自主規制法人から提供された情報も参考として、実態解明を行った事案です。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 本件は、中国に居住する対象者による知人名義の証券口座を利用したインサイダー取引事案であり、海外居住者であって、他人名義の証券口座を利用しても摘発から逃れることは出来ないことを社会に示すことができたと考えています。
 我が国証券市場における海外投資家の取引が増加している中、証券監視委では、海外居住者による不公正取引について、今後とも、海外金融当局や国内の自主規制機関等との連携により調査を実施し、違反行為が認められた場合には、引き続き厳正に対処していきます。

○違反行為事実の概要について
違反行為事実の概要について

3.三木証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和5年9月15日、金融庁に対して、三木証券株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました

【事案の概要等】
(1) 適合性原則に抵触する勧誘が行われている状況
 当社は、少なくとも顧客18名に対し、会話がかみ合わない、数分前の会話を覚えていないなどといった顧客の様子から、顧客が少なくとも外国株式取引を行えるほどの認知判断能力を持ち合わせていないと認識していたにもかかわらず、外国株式のリスク等について、顧客属性に照らして顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明を行うことなく金融商品取引契約を締結する行為を行っていたことが認められました。
また、当社は新興国のテクノロジー関連企業へ投資する投資信託の勧誘に際し、少なくとも顧客1名に対し、当該商品の概要やリスク等について、顧客属性に照らして顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明を行うことなく金融商品取引契約を締結する行為を行っている状況が認められました。

(2) 適合性原則を遵守するための態勢が不十分な状況
 当社には顧客の適合性を軽視した極端な営業優先の企業風土が形成され、営業推進態勢が不適切な状況となっておりました。また、コンプライアンス上の問題点を声に出しづらい社風になっていた上、コンプライアンス部門の適切な人員の確保すら行われていない状況にあったことから、当社のモニタリング及び内部監査は形骸化し、実効性のある検証は行われておらず、当社の法令等遵守態勢は不適切な状況でした。さらに、経営陣は極端な営業推進を行う中で、法令等遵守及び内部管理態勢の確立・整備が後回しとなり、脆弱な内部管理態勢を看過しているなど経営管理態勢が不適切な状況でした。

 上記(1)の行為は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第1号の「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為」に該当すると認められます。

 また、上記(1)(2)の状況は、適合性原則に抵触する不適切な業務運営を継続的に行っていたものと認められ、当社における勧誘販売状況は、金融商品取引法第40条第1号の「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること」に該当すると認められます。

【証券監視委からのメッセージ】
 本件事案は、顧客層の高齢化などにより営業赤字が続く中、経営陣が極端な営業推進を行ったことにより、適合性原則に抵触する勧誘が長期的・継続的に行われたものです。
 証券監視委は、このような投資者保護上問題のある行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
※ 当社に対しては、令和5年10月6日に、関東財務局長から業務停止命令(一部の業務について1か月)及び業務改善命令の処分が行われています新しいウィンドウで開きます

4.ファルテック株式ほか1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和5年9月22日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました

【事案の概要】
 課徴金納付命令対象者は、ファルテック株式及びGMB株式について、自己名義(5口座)及び親族名義(1口座)を利用し、インターネット注文による信用取引及び現物取引で、各株式の売買を誘引する目的をもって、各株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、各株式の相場を変動させるべき一連の売買及び委託を行ったものです。
 
 主な取引手法は、
ア 売り優勢の相場形成による買付け
 ➀ 売り見せ玉発注(最良売り気配付近に売り注文を重層的に発注)
 ➁ 仕込みの買付け
イ 買い優勢の相場形成による売り付け
 ➂ 売り見せ玉取消し
 ➃ 買い見せ玉発注(最良買い気配付近に買い注文を重層的に発注)
 ➄ 売抜け
ウ 取消し
 ➅ 買い見せ玉取消し
となります。

【事案の特色】
 本件は、日本取引所自主規制法人から提供された情報等を参考として実態解明を行うなど、各機関との連携により勧告に至ったものです。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 本件のように、自己名義口座でなくても不公正取引は発覚するということや、証券監視委では取引金額や課徴金額の多寡にかかわらず不公正取引に対して厳正に対処していることを改めて周知することにより、違反行為を未然に防止する効果を期待したいと思います。
違反行為事実の概要について
 

 

<発行>

証券取引等監視委員会 事務局 総務課
            (調査係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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