市場へのメッセージ(令和5年1月19日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、有価証券報告書等の虚偽記載等に係る課徴金納付命令勧告1件、内部者取引事件の告発1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. 株式会社ディー・ディー・エスにおける有価証券報告書等の虚偽記載等に係る課徴金納付命令勧告について

1. 株式会社ディー・ディー・エスにおける有価証券報告書等の虚偽記載等に係る課徴金納付命令勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、株式会社ディー・ディー・エス(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和4年12月9日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【法令違反の内容】
 当社は、不適正な会計処理を行ったことにより、過大な親会社株主に帰属する当期純利益等を計上した連結財務諸表等を作成し、これらの連結財務諸表等を記載し、又は当社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況等(以下「重要事象等」という。)が存在する旨及びその具体的な内容を記載していない下記の開示書類を東海財務局長に提出しました。
 これらの開示書類は、それぞれ、重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている開示書類に該当します。
 
(継続開示書類)
・平成29年12月期有価証券報告書(平成30年3月30日提出)等、合計17本
(発行開示書類)
・有価証券届出書(平成30年8月17日提出)等、合計2本
 
 さらに、上記不適正な会計処理及び重要事象等の不記載を訂正等するにあたり、多くの虚偽記載のある連結財務諸表等を作成することによって、重要な事項につき虚偽の記載がある下記の開示書類を東海財務局長に提出しました。
 
・平成29年12月期有価証券報告書の訂正報告書(令和4年8月12日提出)等、合計13本
 
【不適正な会計処理等の概要】
 当社が行った主な不適正な会計処理、重要な事項の不記載及び訂正報告書等における多くの虚偽記載の概要は、下記のとおりです。
 
1.不適正な会計処理
(1)連結範囲に含めるべき海外子会社に対する売上の過大計上

   当社は、シンガポール所在法人との間のライセンス契約に基づくソフトウェアライセンス等販売に関し売上を計上しているが、当該売上は、
・当該シンガポール法人の株主が、当社元役員が全額出資する法人であること
・当該シンガポール法人が事業を運営するには、当社のソフトウェアライセンス提供が必須であり、当社との契約が、同法人の事業等の方針の決定を支配すると認められること
から、当該シンガポール法人は当社の子会社に該当するものとして、連結内部取引と認められる。
 したがって、本来は消去すべき売上を計上することにより、売上を過大に計上した。

(2)役員貸付金に対する貸倒引当金繰入額の過少計上

   当社から当社元役員に対して行った貸付金については、
・担保とされた元役員所有の非上場株式は、貸付金の回収に足る資産ではなかったこと
・元役員の預金残高等の資産状況からは、返済能力が認められないこと
から、貸倒引当金を計上すべきであったにもかかわらず、貸倒引当金を計上しないことにより、貸倒引当金繰入額を過少に計上した。

2.重要な事項の不記載の概要
 重要事象等が存在する場合には、有価証券報告書及び四半期報告書の第一部【企業情報】第2【事業の状況】の【事業等のリスク】において、重要事象等が存在する旨及びその内容を開示する必要がある。
 当社は、本来は、継続して営業損失が発生するなど、重要事象等が存在しているにもかかわらず、上記1.の不適正な会計処理を行うことにより、営業利益が発生したとして、重要事象等が存在する旨及びその内容を開示しなかった。
 
3.訂正報告書等における多くの虚偽記載の概要
 当社は上記1.の不適正な会計処理及び上記2.の重要事象等の不記載を訂正等するにあたり、
①貸借対照表の当事業年度の繰越利益剰余金から前事業年度の繰越利益剰余金を差し引いた金額と損益計算書の当期純損失が整合していなかった
②貸借対照表の各流動資産科目に記載された金額の合計と流動資産合計に記載された金額に差異が生じていた
③貸借対照表の各流動負債科目に記載された金額の合計と流動負債合計に記載された金額に差異が生じていた
④負債合計に記載された金額と純資産合計に記載された金額の合計と負債純資産合計に記載された金額に差異が生じていた
など、多くの虚偽記載のある連結財務諸表等を作成した。

  証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。

2. 株式会社エイチーム株券に係る内部者取引事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、12月26日、金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発しました
 また、証券監視委は、同日、金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発しました
 
【事案の概要】
(事案1:内部者取引、情報伝達)
(1)犯則嫌疑者Aについて
 
 犯則嫌疑者Aは、株式会社スクウェア・エニックス(以下「スクエニ」という。)に勤務していた従業員であり、令和2年9月下旬頃、その職務に関し、東京証券取引所に株券を上場している株式会社エイチーム(以下「エイチーム」という。)とスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのエイチームの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びエイチームの業務執行を決定する機関が同ゲームの配信等を共同して運営していく旨の業務上の提携を行うことについての決定をした旨のエイチームの業務等に関する重要事実をそれぞれ知り
 

第1 法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である同月下旬頃から令和3年2月下旬頃までの間、証券会社を介し、犯則嫌疑者A名義で、エイチームの株券合計約9万1000株を代金合計約1億500万円で買い付け

第2 知人にあらかじめエイチームの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、前記各重要事実の公表前である令和2年12月下旬頃、前記知人に対し、前記各重要事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた前記知人が、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である令和3年1月中旬頃から同年2月中旬頃までの間、証券会社を介し、前記知人名義で、エイチームの株券合計1万株を代金合計約1180万円で買い付け

たものです。
 
(事案2:内部者取引)
 犯則嫌疑者Bは、スクエニに勤務していた従業員であり、令和2年12月中旬頃、その職務に関し、東京証券取引所に株券を上場しているエイチームとスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのエイチームの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びエイチームの業務執行を決定する機関が同ゲームの配信等を共同して運営していく旨の業務上の提携を行うことについての決定をした旨のエイチームの業務等に関する重要事実をそれぞれ知り、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である令和3年1月下旬頃から同年2月下旬頃までの間、証券会社を介し、犯則嫌疑者B名義で、エイチームの株券合計12万株を代金合計約1億4470万円で買い付けたものです。
 
【本件の意義】
 本件は、スクエニの従業員であった犯則嫌疑者A及びBが、エイチームとスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどの投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実等を職務に関し知り、その公表前に、エイチームの株券をそれぞれ買い付けたほか、犯則嫌疑者Aは知人に上記の重要事実等を伝達し、情報伝達を受けた当該知人が、その公表前に、エイチームの株券を買い付けたというという内部者取引等の事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
 

 

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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