市場へのメッセージ(令和2年11月24日)

<目次>

  1. 「開示検査事例集」の公表について
  2. 石垣食品株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
  3. ソフトマックス株式会社の役員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

1. 「開示検査事例集」の公表について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和2年8月7日、令和2事務年度版の「開示検査事例集」を公表いたしました
 
 「開示検査事例集」は、市場関係者の皆さんに適正な情報開示に向けた取組みを積極的に行っていただけるよう、毎年、証券監視委による開示検査の最近の取組みや、開示検査によって新たに判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を中心にご紹介しています。
 
 今般公表しました「開示検査事例集」では、新たに昨事務年度(令和元年7月~令和2年6月)に実施した開示検査の概要・事例等を追加し、ご紹介しています。
 昨事務年度において実施した開示検査の概要は、次のとおりです。
・ 開示検査を実施したのは33件であり、そのうち14件が終了しました。
・ 開示検査を終了した14件のうち、開示書類における重要な事項についての虚偽記載等が認められた8件について課徴金納付命令勧告を行いました。
・ 初めて、有価証券報告書における非財務情報(「コーポレート・ガバナンスの状況」)の虚偽記載に対し、課徴金納付命令勧告を行いました。
・ 公認会計士・監査審査会と連携して検査を実施し、不正会計による有価証券報告書における連結財務諸表の虚偽記載等に対して課徴金納付命令勧告を行った事案もありました。この事案では、証券監視委が課徴金納付命令勧告を行った同じ日に、この課徴金納付命令勧告の対象である上場会社の監査を行っていた監査法人について、公認会計士・監査審査会が行政処分勧告を行いました。
 
 また、「開示検査事例集」では、昨事務年度前に開示検査を実施した事例で、開示規制違反について課徴金納付命令勧告を行った事例、課徴金納付命令勧告は行わなかったものの、開示規制違反の背景・原因について上場会社と共有した上で、適正な情報開示に向けた体制の整備等を促した事例等、さまざまな事例を積極的にご紹介しています。
 さらに、今事務年度版の「開示検査事例集」では、「監視委コラム」を増設し、最近の検査事例を通じてクローズアップされた不正会計の実態の他、開示検査、開示制度等に関する様々な話題について解説しています。
 
 証券監視委としては、「開示検査事例集」を通じて、市場関係者の皆様に、開示規制違反の手法、背景・原因等や証券監視委の取組みについて理解を深めていただくことで、上場会社とその会計監査人である公認会計士・監査法人とのコミュニケーションや投資家の皆様と投資先である上場会社との対話がますます活発に行われることを期待しています。そして、その活発なコミュニケーションや対話は、開示規制違反の未然防止・再発防止につながるものと確信しています。

2. 石垣食品株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について

 証券監視委は、石垣商品株式会社(以下本節において「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和2年10月20日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【法令違反の事実関係】
 当社の連結子会社(以下、「A社」といいます。)が、適切な期間に費用を認識しない等の不適正な会計処理を行った結果、当社は、過大な営業利益等を計上した連結財務諸表を記載することによって、「重要な事項につき虚偽の記載」のある有価証券報告書及び四半期報告書を関東財務局長に提出しました。これらの有価証券報告書及び四半期報告書は、次のとおりです。
・平成29年12月第3四半期四半期報告書(平成30年2月14日提出)
・平成30年3月期有価証券報告書(平成30年6月28日提出)
 
【不適正な会計処理】
 A社が行った不適正な会計処理の概要は、次のとおりです。
(1)仕入の前倒し及び繰延計上
① 仕入の前倒し計上
 A社は、A社の取引先であるB社及びC社からの平成29年11月納品分の仕入について、同年11月に費用として計上すべきであったにもかかわらず、A社が当社の連結子会社となる同年10月末日前の同月に計上する一方で、当該仕入の月末在庫の認識を同年11月末に行いました。
 A社が上記の処理をすることで、本来同年11月に連結子会社の費用として計上されるべき費用は計上されず、その結果、当社は、平成30年3月期の連結財務諸表において過少な費用を計上しました。
② 仕入の繰延計上
 A社は、A社の取引先であるD社からの平成30年3月納品分の仕入について、同年4月に前渡金として処理したうえで、これを同年5月に仕入に振替える一方で、当該仕入の月末在庫の認識は同年3月末に行っていました。
 A社は、当該仕入の納品月が平成30年3月であるにもかかわらず、上記の処理をすることで、本来同年3月に計上されるべき費用を同年5月に計上したことにより、当該費用は当社の平成30年3月期の連結財務諸表において費用として計上されず、当社は過少な費用を計上しました。
 
(2)販売促進費の繰延計上
 A社の複数の販売子会社によるインターネットの販売サイトを介した健康食品、日用品等の小売販売に際し、販売額からその販売額に応じて通販サイトに支払うべき販売促進費を控除した金額が、販売代金として通販サイトから各販売子会社に2週間に一度入金され、各販売子会社はその入金された金額をA社に入金していました。このような販売促進費の会計処理に関して、下記の問題点が認められました。
➣ A社は、販売額を販売月に期間按分して売上計上する一方で、対応する販売促進費は販売代金が各販売子会社から入金される月に計上しており(現金主義)、収益と費用が期間対応していませんでした。
 しかしながら、「企業会計原則」の「第二 損益計算書原則」の「損益計算書の本質」で定められているとおり、すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければならないため(発生主義)、販売促進費は、発生主義に基づき期間配分して計上すべきでした。
➣ また、A社による販売促進費の会計処理の中には、平成30年3月末に販売サイトから各販売子会社に3月分の販売代金が入金されていたにもかかわらず、すべての販売子会社の代表取締役社長を兼務するA社代表取締役社長が意図的に当該代金のA社への入金を翌4月に実行することで、販売促進費の計上を意図的に翌期に繰延べていた取引が存在していました。
 これらの結果、当社の平成30年3月期の連結財務諸表において計上されるべき費用が計上されず、当社は過少な費用を計上しました。
 
【不適正な会計処理が行われた原因・背景】
 本件は、当社からA社に対する利益計上についてのプレッシャーがあったことから、A社は、少しでも利益を高く見せかけるために、上記のとおり不適正な会計処理を行ったものと考えられます。
 このような不適正な会計処理が行われたことについて、A社の会計処理に関するチェック体制が不備であったため、A社自身において適切にチェックすることができませんでした。また、当社の子会社の業務活動、会計処理等の実態把握や管理・指導は不十分・不適切なものであったために、当社においても不適正な会計処理をチェックすることができませんでした。
 
 証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。
 

3.ソフトマックス株式会社の役員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、令和2年10月20日、課徴金納付命令勧告を行いました
 
【事案の概要】
 本件は、令和元年6月7日に公表された、ソフトマックス株式会社(以下本節において「当社」といいます。)による株式分割の実施に関するインサイダー取引規制違反です。
 
 課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、当社の役員から、同人がその職務に関し知った、当社の業務執行を決定する機関が、株式の分割を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受けながら、その重要事実が公表された令和元年6月7日午後3時頃より前の、同日午前11時8分頃、自己の計算において、当社株式合計175株を買付価額合計47万6675円で買い付けたものです(インサイダー取引規制違反)。
 
【事案の特色等】
 本件は、職務に関して本件事実を知った上場会社の役員から伝達を受けた者が、当該事実が公表される前に当該上場会社の株式を買い付けたインサイダー取引規制違反についての勧告事案です。
 会社関係者から未公表の重要事実の伝達を受けて取引を行えば、インサイダー取引規制違反となり、課徴金納付命令の対象となります。他方、上場会社の役員は、重要事実等を適切に管理し、率先してインサイダー取引防止に取り組むべき立場であるにもかかわらず、自らが職務上の必要がない者に情報を伝達し、インサイダー取引を招いてしまったものといえます。
 本件を含め、インサイダー取引を未然に防止するため、上場会社の皆様におかれては、改めて、役員自らが情報管理の重要性について再認識するとともに、職員に対する法令順守に関する研修等の必要性を認識していただきたいと思います。
 
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引行為の抑止効果が発揮されることを期待しています。 

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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