市場へのメッセージ(令和4年10月26日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、内部者取引に対する課徴金納付命令勧告2件、相場操縦に対する課徴金納付命令勧告1件、金融商品取引業者に対する検査結果に基づく行政処分勧告1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。
 また、「令和4事務年度 証券モニタリング基本方針」の公表について掲載しました。近年の金融商品取引業者等を取り巻く環境等を踏まえ、令和4事務年度における証券モニタリングの業態横断的な検証事項、規模・業態別の主な検証事項等について取りまとめたものですのでぜひご覧ください。
 加えて、「開示検査事例集(令和3事務年度)」の公表について掲載しました。本事例集が活用されることにより、開示規制違反の手法、背景、原因等や証券監視委の取組みについて理解を深めていただくとともに、市場関係者の皆様のコミュニケーションや対話が活発化され、開示規制違反の未然防止・再発防止につながることを強く期待しています。

<目次>

  1. 「令和4事務年度 証券モニタリング基本方針」について
  2. 「開示検査事例集(令和3事務年度)」の公表について
  3. 株式会社関西みらいフィナンシャルグループ社員による内部者取引及び取引推奨行為並びに当該社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
  4. 日本板硝子株式ほか1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
  5. 大成株式会社社員による公開買付けの実施に関する事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について
  6. SMBC日興証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1. 「令和4事務年度 証券モニタリング基本方針」について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年8月2日、「令和4事務年度 証券モニタリング基本方針」(以下「基本方針」といいます。)を公表しました
 
〇金融商品取引業者等(以下「金商業者等」といいます。)を取り巻く環境、金商業者等を取り巻く規制の枠組み等の変更、昨事務年度の証券モニタリング等を通じて判明した事項を踏まえつつ、金融庁の「金融行政方針」等も念頭に置きながら、金融庁関連部局等と連携し、証券モニタリングを実施していきます。
 
〇業態横断的な検証事項
 業態横断的な検証事項として、次の5つを掲げています。
 1.適合性原則を踏まえた適正な投資勧誘等に重点を置いた内部管理態勢の構築や、顧客本位の業務運営を踏まえた販売状況(特に、仕組債のような複雑なリスク構造を持つ商品の販売)
 2.デジタライゼーションの進展等を踏まえたビジネスモデルの変化と、それに対応した内部管理態勢の構築
 3.サイバーセキュリティ対策の十分性やデジタライゼーションの進展に伴うシステムリスク管理(外部委託先の管理を含む)の対応状況
 4.マネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策に係る内部管理態勢の定着状況
 5.内部監査の結果及び自主規制機関の監査等で指摘された事項に係る改善策及び再発防止策の取組状況
 上記のほか、金商業者等を取り巻く環境の変化等に応じて、機動的にその他の事項の検証についても取り組みます。

〇規模・業態別の主な検証事項
 規模・業態別の主な検証事項の一部を紹介します。詳細は PDF ファイルを開きます基本方針を参照してください。
・大手証券会社グループ:国内外の業務展開を支えるガバナンスやリスク管理態勢の整備状況等、3メガバンクグループの証券会社に対しては、銀証ファイアーウォール規制の見直しも踏まえた顧客情報管理態勢及び利益相反管理態勢の整備状況
・外国証券会社:バックオフィス業務の海外委託の進展等に対応した内部管理態勢やシステムリスク管理態勢の整備状況等
・ネット系証券会社:委託手数料無料化の動き、取扱金融商品の増大、金融商品仲介業者を活用した対面営業への進出・拡大等のビジネスモデルの変化を踏まえた内部管理態勢の整備状況等
・準大手証券・地域証券会社等:適合性原則への対応も含めた投資者保護の観点からの不適切な勧誘行為等、地域銀行系証券会社を始め同一金融グループ内の登録金融機関から顧客紹介等を受けて仕組債を販売している証券会社に対しては、銀証連携による販売管理態勢
・FX業者:広告規制、販売・勧誘規制に対する適正な内部管理態勢の整備状況等
・投資運用業者:運用の実態把握、運用管理態勢(外部委託運用に対するものを含む)、利益相反管理態勢の整備状況等
・投資助言・代理業者:顧客に誤解を生じさせる広告手法、虚偽の説明による勧誘等
・第二種金融商品取引業者、適格機関投資家等特例業務届出者:高利回りを掲げたファンドや出資対象事業の実在性等、貸付型ファンドの取得勧誘に関しては、貸付先の情報開示やファンドの審査状況等
・金融商品仲介業者:投資勧誘等の適正性、所属金融商品取引業者による管理態勢の十分性
・無登録業者:裁判所への違反行為の禁止命令等の申立てに係る調査権限の積極的な活用、無登録業者の名称・代表者名・法令違反行為等の公表等を含めた情報発信の強化等
 
〇証券モニタリングの進め方
・証券モニタリングの対象業者について、金融庁関連部局等と連携し、ビジネスモデル等を含めた多角的な観点でリスクアセスメントを行い、リスクベースで検査対象先を選定、以下のような場合を中心に検査を実施します。
 
 1.個別の法令違反事項の発生や業務運営態勢に懸念があり、早期に深度ある検証が必要な状況
 2.リスクの所在が不明確な金融商品を取り扱い、その勧誘実態等の検証が必要な状況
 3.モニタリングによる情報分析だけでは業務運営等の実態が必ずしも把握できない状況(検査未実施期間が長期化している場合を含む)
 4.分別管理が適切に行われていないなど、投資者保護上、重大な問題が懸念される状況
 
・検査では、実質的に意味のある検証及び問題点の指摘に努めるほか、単に問題点を指摘し行政処分勧告等を行うにとどまらず、問題の全体像を把握し、発生原因を究明することにより、実効性のある再発防止策につなげていきます。さらに、問題が顕在化していないものの、業務運営態勢等について改善が必要であると認められた場合には、証券監視委の問題意識を検査対象先と共有し、実効性ある内部管理態勢の構築等を促していきます。

〇関係機関との連携・検査結果の情報発信
・各財務局等とは、モニタリングや検査の計画策定から緊密に連携し、必要に応じて合同検査も実施します。
・自主規制機関と引き続き緊密に連携し、タイムリーな情報共有により、証券モニタリングを効果的・効率的に進めます。
・検査を通じて把握した問題点や究明した根本原因等については、必要に応じて、金融庁関連部局等と連携して金商業者等に対してフィードバックを行い、これらの監査関係者及び社外取締役に対しても、検査結果を共有することにより、改善に向けた自主的な取組を促します。
・証券監視委の問題意識等が対外的にも的確に伝わるよう、「証券モニタリング概要・事例集」等により、具体的で分かりやすい情報発信に努めます。

2. 「開示検査事例集(令和3事務年度)」の公表について

 証券監視委は、令和4年8月31日、「開示検査事例集(令和3事務年度)」を公表しました
 
 「開示検査事例集」は、市場関係者の皆様に適正な情報開示に向けた取組みを積極的に行っていただけるよう、毎年、証券監視委による開示検査の最近の取組みや、開示検査によって新たに判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を中心にご紹介しています。
 
 今般公表しました「開示検査事例集(令和3事務年度)」では、新たに昨事務年度(令和3年7月~令和4年6月)に実施した開示検査の概要・事例等を追加し、ご紹介しています。
 昨事務年度において実施した開示検査の概要・事例等は、次のとおりです。
・ 開示検査を実施したのは20件であり、そのうち11件が終了しました。
・ 開示検査を終了した11件のうち、開示書類における重要な事項についての虚偽記載等が認められた8件について課徴金納付命令勧告を行いました。そのうち1件については、訂正報告書の提出命令勧告も併せて行いました。また、金融商品取引法違反行為が認められた1件について、裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てを行いました。
・代表者等が関与した売上の過大計上、海外売上及びソフトウェア仮勘定の架空計上、関連当事者取引に係る注記の不記載等の事例が追加されています。

 また、昨事務年度前に開示検査を実施した事例で、開示規制違反について課徴金納付命令勧告を行った事例、課徴金納付命令勧告は行わなかったものの、開示規制違反の背景・原因について上場会社と共有した上で、適正な情報開示に向けた体制の整備等を促した事例等、さまざまな事例を積極的にご紹介しています。
 さらに、「監視委コラム」において、最近の検査事例を通じてクローズアップされた開示制度や会計基準のほか、内部統制等について解説しています。
 
 証券監視委としては、「開示検査事例集」を通じて、市場関係者の皆様に、開示規制違反の手法、背景・原因等や証券監視委の取組みについて理解を深めていただくことで、上場会社とその会計監査人である公認会計士・監査法人とのコミュニケーションや投資家の皆様と投資先である上場会社との対話がますます活発に行われることを強く期待しています。そして、その活発なコミュニケーションや対話は、開示規制違反の未然防止・再発防止につながるものと確信しています。

3.株式会社関西みらいフィナンシャルグループ社員による内部者取引及び取引推奨行為並びに当該社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、令和4年9月2日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【事案の概要】
 本件は、株式会社関西みらいフィナンシャルグループ(以下「関西みらいFG」といいます。)の社員である課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)(1)が、インサイダー取引規制違反及び取引推奨規制違反を行い、さらに、対象者(1)から伝達を受けた、対象者(1)の親族である対象者(2)が、インサイダー取引規制違反を行ったものです。
 
・ 対象者(1)について
 対象者(1)は、関西みらいFGの社員ですが、その職務に関し、①関西みらいFGの社員甲がその職務に関し、株式会社りそなホールディングス(以下「りそなHD」といいます。)からの伝達により知った、りそなHDが関西みらいFG株式の公開買付けを行うことに関する事実及び②りそなHDを完全親会社とし、関西みらいFGを完全子会社とする株式交換を行うことに関する事実(以下併せて「本件事実」といいます。)を知りながら、本件事実の公表前に、第三者名義の証券口座で、自己の計算において、関西みらいFG株式を買い付けたものです(インサイダー取引規制違反)。
 さらに、対象者(1)は、親族である被推奨者乙に対し、本件事実の公表前に、利益を得させる目的をもって、関西みらいFG株式の買付けを勧め、被推奨者は、本件事実の公表前に、関西みらいFG株式を買い付けたものです(取引推奨規制違反)。
 
・ 対象者(2)について
 対象者(2)は、対象者(1)の親族であり、対象者(1)から本件事実の伝達をうけながら、本件事実の公表前に、第三者名義の証券口座で、自己の計算において、関西みらいFG株式を買い付けたものです(インサイダー取引規制違反)。
 
【事案の特色】
 本件は、公開買付けの被買付企業であり、かつ株式交換に係る株式の発行体企業でもある関西みらいFGの職員によるインサイダー取引規制違反及び取引推奨規制違反並びにその親族によるインサイダー取引規制違反の事案です。
 対象者(1)、対象者(2)とも、第三者名義の証券口座を利用して買い付けています。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 社会的・公共的な役割を担い、ゆるぎない信頼を第一とすべき金融機関の職員による今回の事案は極めて悪質です。特に公共的性格を有する私企業等の会社関係者の方たちには、改めて法令遵守の徹底を促すとともに、その親族の方に対しても、同様に法令遵守の徹底を図るなど万全の対応が必要です。
 さらに、本件ではいずれの対象者も借名で取引を行っています。借名取引を行う者には、第三者名義の証券口座を利用すれば不公正取引が発覚しないだろうと考える方もおりますが、証券監視委は、幅広い調査・分析により、真の取引者を容易に把握することが可能であり、不自然な取引は見逃されることはありません。
 改めて、「他人名義であれば発覚しないだろう」といった甘い考えは通用しないことを、引き続き伝えていきたいと思います。

○ 違反行為事実の概要について
違反行為事実の概要について

4. 日本板硝子株式ほか1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、令和4年9月6日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました

【事案の概要及び特色等】
 対象者は、自己名義の証券口座2口座を用い、インターネット取引で、日本板硝子株式及びツカダ・グローバルホールディング株式につき、各株式の売買を誘引する目的をもって、各株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、各株式の相場を変動させるべき一連の売買及び委託をしたものです。
 
 対象者が行っていた相場操縦行為の主な流れは、
① 仕込みの買付け
② 売り注文発注(売抜け準備)
③ 最良買い気配近辺に大口の買い注文を買い見せ玉として複数発注
④ 最小売買単位の買い注文による連続した株価引上げ
⑤ 売抜け
⑥ 買い見せ玉取消し
となります。
 
 証券監視委では、今後とも、証券市場の公正性・健全性を損なう不公正取引に対しては、厳正な調査を実施していきます。

○  違反行為事実の概要について
違反行為事実の概要について

5. 大成株式会社社員による公開買付けの実施に関する事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について

  証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、令和4年9月9日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【事案の概要】
 本件は、株式会社アイ・ケイ・ケイが大成株式会社(以下「大成」といいます。)に対する公開買付けを行うにあたり、大成の社員である課徴金納付命令対象者が、その職務に関し、当該公開買付けの実施に関する事実を知り、その公表前に、知人に対し、利益を得させる目的をもって、大成株式の買付けを勧めたものです(取引推奨規制違反)。
 
【事案の特色】
 本件は、平成26年4月から導入されている「情報伝達・取引推奨規制」(金融商品取引法第167条の2)に関して、取引推奨行為を行った者を対象とした9件目の課徴金納付命令勧告事案です。
 「情報伝達」と「取引推奨」の違いは、重要事実を伝えたか否かであり、「情報伝達」は重要事実を伝えたことが要件とされている一方、「取引推奨」は重要事実を伝えたことが要件とされていません。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 「友人等にお世話になっているからお礼や恩返しをしよう」、「重要事実等を伝えなければ大丈夫だろう」と、安易に株取引を勧めることは、結果的に、友人等が証券監視委の調査の対象になり、大きな負担をかけることになります。
 また、自らも利益を得たわけでもないのに、課徴金という大きな代償を払うことになり、さらに課徴金の負担以上に会社から懲戒処分等による社会的制裁や将来的な経済損失が生じることも考えられます。
 情報伝達・取引推奨規制違反行為については、市場関係者にも十分な理解や認識はされているものと思いますが、インサイダー情報やその可能性のある情報に接した際には、まずは立ち止まり、思慮深く行動していただきたいと思います。

○  違反行為事実の概要について
違反行為事実の概要について

6. SMBC日興証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券監視委は、令和4年9月28日、金融庁に対して、SMBC日興証券株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました
 
【事案の概要等】
⑴ 上場株式の相場を安定させる目的をもって、違法に買付け等を行う行為
  • 当社は、10銘柄の上場株式について、「ブロックオファー」取引(以下「BO」といいます。)における売買価格の基準となるBO執行日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を一定程度に維持しようと企て、各株式の相場を安定させる目的をもって、違法に一連の指値による買付け及び買付けの申込み(以下「本件行為」といいます。)を行いました。
  • 本件行為は、金融商品取引法第159条第3項に違反するものと認められます。
  • 本件行為は、当社において、不公正取引を牽制・防止するための売買審査態勢や、法令遵守の徹底や適切な業務運営を確保するための経営管理態勢が不十分であることに起因し、行われたものであると認められます。
 
⑵ 売買審査態勢の不備
  • 当社は、当社の売買動向監視システム(以下「システム」といいます。)において抽出された取引について売買審査を行い、法令等の違反につながるおそれがあると認められた場合、当該取引を行った顧客等に対して、ヒアリングや注意喚起などの対応(以下「措置」といいます。)を行うこととしています。
  • こうした中、本件行為が行われた10銘柄のうち、8銘柄については、システムにおいては、不公正取引の疑いがある取引として抽出されていましたが、当社が措置を行う基準は、複数日にわたって行われる取引を対象として設定されており、本件行為のように、銘柄ごとに1立会日のみで行われるような取引は、システムにより抽出されても措置の対象となっていませんでした。
  • また、当社においては、ブロックトレード等の特定のイベントに係る自己売買に対しては、システムによる抽出の有無にかかわらず、売買審査(以下「イベント審査」といいます。)を行っています。しかしながら、BOについては、自己売買で終値に関与するインセンティブが働くなど、ブロックトレード等と同様のリスクがあるにもかかわらず、イベント審査の対象としていませんでした。
  • こうしたことから、本件行為については、いずれの取引についても措置は行われませんでした。
  • 上記の状況から、当社の売買審査態勢には不備があるものと認められ、これは、金融商品取引法第40条第2号の規定に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第12号に該当するものと認められます。
  • なお、上記の状況は、当社において自己売買のリスク等に対する認識が不十分だったことに加え、当社経営陣が、売買審査の件数が増大しているにもかかわらず、それに見合ったシステムの高度化や売買審査体制の整備を行ってこなかったことに起因するものと認められます。
 
⑶ BOに係る業務運営態勢の不備
  • 当社は、BOの執行に際し、買い手顧客に対して、事前に購入の意思の確認等を行っていましたが、その際、当社営業員の相当数は、BOの執行日について、買い手顧客が推知可能な内容の説明を行っていました。
  • このような状況は、BO執行日に空売りを企図する顧客に対し、その機会を与え、空売りを誘発する一因となっているものと認められます。
  • 当社は、BO導入(平成24年)の検討段階から、買い手顧客におけるBO銘柄の空売りが当該銘柄の価格形成を歪めるものとの懸念を有していましたが、BO執行日に係る買い手顧客への情報提供のあり方等について、当社内で適切に議論されることがないまま、BO業務を開始していました。
  • また、その後、当社においては、実際にBO執行日における対象銘柄の株価下落に直面し、価格形成に関する懸念など問題提起が行われていますが、これに対する有効な対策が講じられてきませんでした。
  • 上記のような当社のBOに係る業務運営状況は、市場の公正性を損なうおそれがあり、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であるとき」に該当するものと認められます。
  • なお、上記の状況は、当社において、自己のビジネスの業務推進を優先させ、当社のBOの問題点を改善する意識が希薄であるなど、市場のゲートキーパーとしての自覚に欠けていたことや、ビジネスのリスクや課題を適切に把握し、商品性の見直し等の実効的な対策を行うための態勢が不十分であったことに起因するものであり、当社においては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢において不備があるものと認められます。
 
⑷ 銀行と連携して行う業務の運営が不適切な状況
  • 法令上、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面等による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされています。
  • しかしながら、当社は、親法人等である株式会社三井住友銀行との間において、法人顧客から情報共有の停止を求められていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を複数回にわたって行い、これを当社内で共有していました。
  • 当社における上記行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号に規定する行為に該当するものと認められます。
  • なお、上記行為は、当社役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得という当社の利益を優先したものであり、当社執行役員自らが非公開情報の受領や社内関係者への情報共有に関与している状況も認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、当社として法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであると認められます。
 
【証券監視委からのメッセージ】
  • 本件事案は、上記のとおり、当社が相場操縦の一種である違法な安定操作に該当する売買等や、銀証間で行ってはならない、法人顧客の同意を得ていない情報の授受を行っていたものです。
  • これは、自己のビジネスの業務推進を優先させ、法令遵守の徹底や適切な業務運営を確保するための経営管理態勢が不十分であったことに起因したものであり、金融商品取引業者として、市場の公正性を損なうとともに、投資者保護上重大な問題が認められたものです。
  • 証券監視委は、このような投資者保護上問題のある行為に対して、今後も厳正に対処してまいります。
※ 当社に対しては、令和4年10月7日に、金融庁長官から業務停止命令(一部の業務について3カ月)及び業務改善命令の行政処分が行われています
 
 

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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