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令和4年9月28日
証券取引等監視委員会

 

SMBC日興証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容

  証券取引等監視委員会がSMBC日興証券株式会社(東京都千代田区、法人番号7010001125714、代表取締役社長(CEO) 近藤 雄一郎、資本金100 億円、常勤役職員9,440名、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
 

2.事実関係

 ⑴ 上場株式の相場を安定させる目的をもって、違法に買付け等を行う行為
 SMBC日興証券株式会社(以下「当社」という。)は、その業務に関し、10銘柄の上場株式について、「ブロックオファー」取引(以下「BO」という。)における売買価格の基準となるBO執行日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を一定程度に維持しようと企て、金融商品取引法施行令第20条に定めるところに違反し、各株式の相場を安定させる目的をもって、一連の指値による買付け及び買付けの申込み(以下「本件行為」という。)を行った。
 
 本件行為は、金融商品取引法第159条第3項に違反するものと認められる。
 なお、本件行為は、当社において、不公正取引を牽制・防止するための売買審査態勢や、法令遵守の徹底や適切な業務運営を確保するための経営管理態勢が不十分であることに起因し、行われたものであると認められる。

 ⑵ 売買審査態勢の不備
 当社は、当社の売買動向監視システム(以下「システム」という。)において抽出された取引については、一定の基準に従って売買審査を行い、その結果、法令等の違反につながるおそれがあると認められた場合、当該取引を行った顧客等(自己売買を含む)に対して、当該取引の内容や当該顧客等の過去の取引状況等に応じ、ヒアリングや注意喚起などの対応(以下「措置」という。)を行うこととしている。こうした中、本件行為が行われた10銘柄のうち、8銘柄については、システムにおいては、不公正取引の疑いがある取引として抽出されているが、当社が措置を行う基準は、複数日にわたって行われる取引を対象として設定されており、本件行為のように、銘柄ごとに1立会日のみで行われるような取引は、システムにより抽出されても措置の対象とならない。
 また、当社においては、ブロックトレード等の特定のイベントに係る自己売買に対しては、システムによる抽出の有無にかかわらず、売買審査(以下「イベント審査」という。)を行っている。しかしながら、BOについては、自己売買で終値に関与するインセンティブが働くなど、ブロックトレード等と同様のリスクがあるにもかかわらず、イベント審査の対象としていない。
 こうしたことから、本件行為については、いずれの取引についても措置は行われなかった。
 
 上記の状況から、当社の売買審査態勢には不備があるものと認められ、これは、金融商品取引法第40条第2号の規定に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第12号に該当するものと認められる。
 なお、上記の状況は、当社において自己売買のリスク等に対する認識が不十分だったことに加え、当社経営陣が、売買審査の件数が増大しているにもかかわらず、それに見合ったシステムの高度化や売買審査体制の整備を行ってこなかったことに起因するものと認められる。

 ⑶ BOに係る業務運営態勢の不備
 当社は、BOの執行に際し、買い手顧客に対して、事前に購入の意思の確認等を行っているが、その際、当社営業員の相当数は、BOの執行日について、買い手顧客が推知可能な内容の説明を行っている。このような状況は、BO執行日に空売りを企図する顧客に対し、その機会を与え、空売りを誘発する一因となっているものと認められる。
 当社は、BO導入(平成24年)の検討段階から、買い手顧客におけるBO銘柄の空売りが当該銘柄の価格形成を歪めるものとの懸念を有していたが、BO執行日に係る買い手顧客への情報提供のあり方等について、当社内で適切に議論されることがないまま、BO業務を開始していた。
 また、その後、当社においては、実際にBO執行日における対象銘柄の株価下落に直面し、価格形成に関する懸念など問題提起が行われているが、これに対する有効な対策が講じられてこなかった。
 
 上記のような当社のBOに係る業務運営状況は、市場の公正性を損なうおそれがあり、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であるとき」に該当するものと認められる。
 なお、上記の状況は、当社において、自己のビジネスの業務推進を優先させ、当社のBOの問題点を改善する意識が希薄であるなど、市場のゲートキーパーとしての自覚に欠けていたことや、ビジネスのリスクや課題を適切に把握し、商品性の見直し等の実効的な対策を行うための態勢が不十分であったことに起因するものであり、当社においては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢において不備があるものと認められる。

 ⑷ 銀行と連携して行う業務の運営が不適切な状況
 金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。しかしながら、当社は、親法人等である株式会社三井住友銀行(東京都千代田区、法人番号5010001008813、頭取CEO(代表取締役)髙島 誠、以下「三井住友銀行」という。)との間において、法人顧客から情報共有の停止を求められていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を複数回にわたって行い、これを当社内で共有していた。
 
 (事例1)
  三井住友銀行等の複数の法人が保有していた上場会社A社の株式に関し、当該株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、三井住友銀行に対し、当社への情報提供の停止を求めていた。しかしながら、当社役職員は、当該情報提供の停止の求めを認識していたにもかかわらず、当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報を三井住友銀行から複数回受領し、これを当社内関係者に共有した上で、営業戦略を企画していた。さらに、当社の執行役員は、当該売出しにおいて当社が当該ポジションを獲得できるようA社に働きかけて欲しい旨を三井住友銀行に対し要請した。
 
 (事例2)
  当社及び三井住友銀行は、それぞれ上場会社B社に対し、B社によるC社の買収及び当該買収に伴う資金調達(以下「当該買収等」という。)に関して、B社との取引において知り得た情報については、B社による事前承諾を得ることなく、当社と三井住友銀行との間で共有しない旨を書面により誓約していた。しかしながら、当社役職員は、三井住友銀行がB社から事前承諾を得ていないにもかかわらず、複数回にわたって三井住友銀行から当該買収等に関する非公開情報を受領し、これを当社内関係者に共有していた。
 また、当社役職員は、当社がB社から入手した非公開情報を、B社の事前承諾を得ずに、三井住友銀行に対し伝達した。
 
 (事例3)
  上場会社D社は、上場会社E社の株式の過半数を保有し、両社はいわゆる親子上場の関係にあったところ、D社において、E社株式の公開買付け(以下「当該TOB」という。)が検討されていた。このことについて、D社は役員自らが、三井住友銀行に対し、当該TOBに関して、情報管理の徹底や、三井住友銀行内部においても必要最低限のメンバーへの開示とするよう求めていた。しかしながら、当社役職員は、当該情報管理の徹底等の必要性を認識しながら、当該TOBに関する非公開情報を三井住友銀行から複数回受領したうえ、当該情報を当社内関係者に共有していた。
 
  当社における上記行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号に規定する行為に該当するものと認められる。
 なお、上記行為は、当社役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得という当社の利益を優先したものであり、当社執行役員自らが非公開情報の受領や社内関係者への情報共有に関与している状況も認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、当社として法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであると認められる。
 
(参考条文) 
○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄) 
 
  (適合性の原則等)
第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
一 (略)
二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
 
  (親法人等又は子法人等が関与する行為の制限)
第四十四条の三 金融商品取引業者又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、公益又は投資者保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
一~三 (略)
四 前三号に掲げるもののほか、当該金融商品取引業者の親法人等又は子法人等が関与する行為であつて投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのあるものとして内閣府令で定める行為
2 (略)
 
  (金融商品取引業者に対する業務改善命令)
第五十一条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 
  (相場操縦行為等の禁止)
第百五十九条 (略)
2 (略)
3 何人も、政令で定めるところに違反して、取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場をくぎ付けし、固定し、又は安定させる目的をもつて、一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受託等をしてはならない。
 
○ 金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号)(抄)
 
  (安定操作取引をすることができる場合)
第二十条 安定操作取引(法第百五十九条第三項に規定する目的をもつてする一連の有価証券売買等(同条第二項に規定する有価証券売買等をいう。以下この項において同じ。)をいう。以下同じ。)又はその申込み、委託等(法第四十四条第一号に規定する委託等をいう。第三項及び次条において同じ。)若しくは受託等(媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)又は代理の申込みを受けることをいう。次条において同じ。)は、有価証券の募集(五十名以上の者を相手方として行うものに限る。以下この条から第二十二条までにおいて同じ。)若しくは特定投資家向け取得勧誘(五十名以上の者を相手方として行うものに限る。以下この条から第二十二条までにおいて同じ。)又は有価証券の売出し(五十名以上の者を相手方として行うものに限る。以下この条から第二十二条までにおいて同じ。)若しくは特定投資家向け売付け勧誘等(五十名以上の者を相手方として行うものに限る。以下この条から第二十二条までにおいて同じ。)を容易にするために取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場において一連の有価証券売買等を行う場合でなければ、してはならない。
2 前項の場合において、自己の計算において安定操作取引をすることができる金融商品取引業者は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金融商品取引業者に限るものとする。
一 当該募集又は売出しについて法第五条第一項(法第二十七条において準用する場合を含む。)の届出書の提出がある場合 当該募集に係る有価証券の発行者又は当該売出しに係る有価証券の所有者と法第二十一条第四項(法第二十七条において準用する場合を含む。)に規定する元引受契約を締結する金融商品取引業者として当該届出書に記載された金融商品取引業者
二 その他の場合 当該募集若しくは特定投資家向け取得勧誘又は売出し若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る有価証券の発行者が、その発行する有価証券を上場する各金融商品取引所(当該有価証券が店頭売買有価証券である場合にあつては、当該有価証券を登録する各認可金融商品取引業協会。次項第五号並びに第二十二条第三項及び第四項において同じ。)の規則で定めるところにより、第十七条の三第三号に規定する元引受契約を締結する金融商品取引業者としてあらかじめ当該金融商品取引所に通知した金融商品取引業者
3 第一項の場合において、安定操作取引の委託等をすることができる者は、次に掲げる者に限るものとする。
一 当該募集若しくは特定投資家向け取得勧誘又は売出し若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る有価証券の発行者の役員
二 当該売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等に係る有価証券の所有者(その者が当該有価証券を所有している者からその売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等をすることを内容とする契約によりこれを取得した場合には、当該契約の相手方)
三 当該募集若しくは特定投資家向け取得勧誘又は売出し若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る有価証券の発行者と内閣府令で定める密接な関係にある会社の役員
四 前号の会社(内閣府令で定めるものを除く。)
五 当該募集若しくは特定投資家向け取得勧誘又は売出し若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る有価証券の発行者が、その発行する有価証券を上場する各金融商品取引所の規則で定めるところにより、安定操作取引の委託等を行うことがある者としてあらかじめ当該金融商品取引所に通知した者
 
○ 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
 
  (業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)
第百二十三条 法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一~十一 (略)
十二 取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場若しくは相場若しくは取引高に基づいて算出した数値を変動させ、若しくはくぎ付けし、固定し、若しくは安定させ、又は取引高を増加させることにより実勢を反映しない作為的なものを形成させるべき当該上場金融商品等若しくは当該店頭売買有価証券に係る買付け若しくは売付け若しくはデリバティブ取引又はこれらの申込み若しくは委託等若しくは受託等をする行為を防止するための売買管理が十分でないと認められる状況
十三~三十六 (略)
2~16 (略)
 
  (金融商品取引業者の親法人等又は子法人等が関与する行為の制限)
第百五十三条 法第四十四条の三第一項第四号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一~六 (略)
七 有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)が発行者等に関する非公開情報を当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等から受領し、又は当該親法人等若しくは子法人等に提供すること(次に掲げる場合において行うものを除く。)。
イ~ヌ (略)
八~十五 (略)
2~4 (略)

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