市場へのメッセージ(令和4年8月31日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、相場操縦事件に対する告発2件、内部者取引事件に対する告発1件、有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告1件、金融商品取引業者に対する検査結果に基づく行政処分勧告2件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. SMBC日興証券株式会社による相場操縦事件の告発について
  2.  ソフトブレーン株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について
  3. アジア開発キャピタル株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について
  4. あい証券株式会社及びARBITRAGE SYSTEM FUND COMPANY LIMITEDに対する検査結果に基づく勧告について
  5. 株式会社エスコンアセットマネジメントに対する検査結果に基づく勧告について

1. SMBC日興証券株式会社による相場操縦事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年3月23日、金融商品取引法違反(安定操作)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者7名を東京地方検察庁に告発しました
   また、証券監視委は、令和4年4月12日、金融商品取引法違反(安定操作)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者4名を東京地方検察庁に告発しました

【事案の概要】
3月23日告発分
 犯則嫌疑法人SMBC日興証券株式会社(以下「犯則嫌疑法人」という。)は、有価証券の売買等を目的とする会社、犯則嫌疑者Aは、犯則嫌疑法人のエクイティ本部本部長として、犯則嫌疑法人の自己勘定での株式取引等の同本部の業務全般を担当していたもの、犯則嫌疑者Bは、同本部副本部長として、Aの業務を補佐していたもの、犯則嫌疑者Cは、同本部副本部長として、Aの業務を補佐していたもの、犯則嫌疑者Dは、同本部エクイティ部部長として、犯則嫌疑法人の自己勘定での株式取引等を担当していたもの、犯則嫌疑者Eは、同本部エクイティ・プロダクト・ソリューション部部長として、犯則嫌疑法人の金融商品に係る情報提供、取引提案及び執行に関する業務等を担当していたもの、犯則嫌疑者Fは、同部副部長兼ソリューション課課長として、Eの業務を補佐するとともに犯則嫌疑法人の大口株式の売却需要案件に関する営業支援及びこれら売却に係る社内調整等を担当していたもの、犯則嫌疑者Gは、同本部エクイティ部エクイティ・トレーディング課において犯則嫌疑法人の自己勘定での株式取引等に従事していたものですが、犯則嫌疑法人の業務に関し
 

 第1 B、D、E、F及びGらは、共謀の上、東京証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている株式会社小糸製作所が発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を5070円程度に維持しようと企て、金融商品取引法施行令で定めるところに違反して、同株券の相場を安定させる目的をもって、令和元年12月25日午後2時13分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値5200円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計32万株の買付けの申込みを行って、そのうち合計31万4800株を買い付け

 第2 D、E及びGは、共謀の上、前記市場に上場されている株式会社モスフードサービスが発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を2600円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、令和2年2月27日午前11時9分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値2600円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計15万8400株の買付けの申込みを行って、そのうち合計6万5800株を買い付け

 第3 D、E及びGらは、共謀の上、前記市場に上場されているアズワン株式会社が発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を1万1000円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同年8月6日午後2時43分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値1万1000円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計6万800株の買付けの申込みを行って、そのうち合計3万7700株を買い付け

 第4 A、C、D、E及びGは、共謀の上、前記市場に上場されている株式会社ファイバーゲートが発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を1960円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同月19日午後2時47分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値1960円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計9万8500株の買付けの申込みを行って、そのうち合計7万1300株を買い付け

 第5 A及びDらは、共謀の上、前記市場に上場されている株式会社京葉銀行が発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を475円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同年11月19日午後2時1分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値475円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計27万4000株の買付けの申込みを行って、そのうち合計16万8100株を買い付け

もって、それぞれ、前記市場における各株券の相場を安定させる目的をもって、一連の有価証券売買及びその申込みをしたものです。
 
4月12日告発分
 犯則嫌疑法人SMBC日興証券株式会社(以下「犯則嫌疑法人」という。)は、有価証券の売買等を目的とする会社、犯則嫌疑者Aは、犯則嫌疑法人の副社長執行役員グローバル・マーケッツ統括として、犯則嫌疑法人のエクイティ本部、金融市場本部等の業務全般を統括していたもの、犯則嫌疑者Bは、犯則嫌疑法人のエクイティ本部エクイティ部部長として、犯則嫌疑法人の自己勘定での株式取引等を担当していたもの、犯則嫌疑者Cは、犯則嫌疑法人のグローバル金融ソリューション部副部長兼エクイティ・ソリューション課課長として、犯則嫌疑法人の大口株式の売却需要案件に関する営業支援及びこれら売却に係る社内調整等を担当していたもの、犯則嫌疑者Dは、犯則嫌疑法人のエクイティ本部エクイティ部エクイティ・トレーディング課において犯則嫌疑法人の自己勘定での株式取引等に従事していたものですが、犯則嫌疑法人の業務に関し
 

 第1 B及びCらは、共謀の上、東京証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている株式会社ジンズホールディングスが発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を7800円程度に維持しようと企て、金融商品取引法施行令で定めるところに違反して、同株券の相場を安定させる目的をもって、令和2年10月22日午前10時39分頃から同日午前11時30分頃までの間、前記市場において、指値7790円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計2万7700株の買付けの申込みを行って、そのうち合計1万3300株を買い付け

 第2 Bらは、共謀の上、前記市場に上場されているトヨタ紡織株式会社が発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を1425円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同年11月17日午後2時45分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値1430円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計50万株の買付けの申込みを行って、同株券合計50万株を買い付け

 第3 Bらは、共謀の上、前記市場に上場されている日本ペイントホールディングス株式会社が発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を1万1220円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同年12月15日午後零時12分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値1万1300円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計4万2000株の買付けの申込みを行って、そのうち合計4万株を買い付け

 第4 B、C及びDらは、共謀の上、前記市場に上場されている株式会社ゴールドウインが発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を6900円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、同月22日午前8時54分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値6950円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計9万2100株の買付けの申込みを行って、そのうち合計7万1000株を買い付け

 第5 A、B、C及びDは、共謀の上、前記市場に上場されている大正製薬ホールディングス株式会社が発行した株券について、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、売買価格の基準となる同取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を6600円程度に維持しようと企て、前記施行令で定めるところに違反して、前同様の目的をもって、令和3年4月8日午後2時57分頃から同日午後3時頃までの間、前記市場において、指値6600円の買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株券合計10万株の買付けの申込みを行って、そのうち合計4万200株を買い付け

もって、それぞれ、前記市場における各株券の相場を安定させる目的をもって、一連の有価証券売買及びその申込みをしたものです。
 
【本件の意義】
   本件は、犯則嫌疑法人が扱う「ブロックオファー」取引において、前記市場に上場している計10銘柄につき、売買価格の基準となる取引当日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避するため、相場操縦の一種である違法な安定操作に該当する株式の売買等を複数回にわたり行ったものであり、犯則嫌疑法人及び犯則嫌疑者らの立場や、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、重大性・悪質性が認められます。
   証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。 

2. ソフトブレーン株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について

   証券監視委は、令和4年6月3日、金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、嫌疑者4名を東京地方検察庁に告発しました

【事案の概要】
(1)犯則嫌疑者Aについて
 
 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーン株式会社(以下「ソフトブレーン」という。)の内部監査室長を務めていたものであり、令和2年7月中旬頃、その職務に関し、同社取締役らがその職務に関しアント・キャピタル・パートナーズ株式会社(以下「アント社」という。)からの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知ったものですが
 

 第1 前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月中旬頃、東京都内において、知人であるBに対し、あらかじめソフトブレーンの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた同人が、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月下旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、ソフトブレーンの株券合計2万株を代金合計約670万円で買い付け

 第2 知人であるCと共謀の上、法定の除外事由がないのに、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月下旬頃から同年8月中旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所等において、同人名義で、ソフトブレーンの株券合計約1万株を代金合計約400万円で買い付け

 第3 前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である同年7月下旬頃、東京都内において、知人であるDに対し、あらかじめソフトブレーンの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた同人が、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同年8月上旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、同人名義で、ソフトブレーンの株券合計2万7000株の買い注文のうち約1000万円相当分を同人の分として発注し、同月上旬頃、約定した合計2万7000株のうち2万4545株を代金約980万円で買い付け

 第4 前記Dと共謀の上、法定の除外事由がないのに、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月上旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、同人名義で、ソフトブレーンの株券合計2万7000株の買い注文のうち約100万円相当分を犯則嫌疑者Aの分として発注し、即日、約定した株のうち2455株を代金合計約90万円で買い付け

たものです。

(2)犯則嫌疑者Bについて
 
 犯則嫌疑者Bは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーンの内部監査室長を務めていたAから、令和2年7月中旬頃、同人がその職務に関し知った、同社取締役らがその職務に関しアント社からの伝達により知った同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月下旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、ソフトブレーンの株券合計2万株を代金合計約670万円で買い付けたものです。
 
 (3)犯則嫌疑者Cについて
 
 犯則嫌疑者Cは、Aの知人であるもの、前記Aは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーンの内部監査室長を務めていたものであり、令和2年7月中旬頃、その職務に関し、同社取締役らがその職務に関しアント社からの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知ったものであるが、犯則嫌疑者Cは、前記Aと共謀の上、法定の除外事由がないのに、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月下旬頃から同年8月中旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所等において、犯則嫌疑者C名義で、ソフトブレーンの株券合計約1万株を代金合計約400万円で買い付けたものです。
 
 (4)犯則嫌疑者Dについて
 
 犯則嫌疑者Dは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーンの内部監査室長を務めていたAから、令和2年7月下旬頃、同人がその職務に関し知った、同社取締役らがその職務に関しアント社からの伝達により知った同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同年8月上旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、犯則嫌疑者D名義で、ソフトブレーンの株券2万7000株の買い注文のうち約100万円相当分は前記Aと共謀の上、約1000万円相当分は犯則嫌疑者D単独で発注し、同月上旬頃、約定した合計2万7000株のうち前記Aと共謀して2455株を代金約90万円で、犯則嫌疑者D単独で2万4545株を代金約980万円で買い付けたものです。
 
 【本件の意義】
 本件は、ソフトブレーンの株券に係る公開買付けの実施に関する事実を職務に関し知った犯則嫌疑者Aが、同社の内部監査室長という立場にありながら、その公表前に、知人である犯則嫌疑者B及びDに同事実を伝達するとともに、知人である犯則嫌疑者C及びDとそれぞれ共謀して同社の株券を買い付けたほか、前記情報伝達を受けたB及びDが、その公表前に、同社の株券を買い付けたという内部者取引等の事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。

3. アジア開発キャピタル株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命 令勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、アジア開発キャピタル株式会社(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和4年6月17日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【法令違反の内容】
 当社は、当社が行った不適正な会計処理により、過大な売上高等を計上することによって、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を関東財務局長に提出しました。
・平成30年3月期有価証券報告書(平成30年6月28日提出)等、合計6本
 
【不適正な会計処理】
 当社の子会社は、蓄電池の製造会社から数社を経て最終販売先に蓄電池を順次販売する商流に参加するという理解のもと、複数の商流に参加しました。ただし、これらの商流は、取引対象とされていた蓄電池は存在しない架空取引であり、これらの商流における売上や仕入等に係る資金は関係者の間で循環していたものでありました。
 これにより、当社は、売上高及び売上原価を過大に計上しました。
 
 証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。

4. あい証券株式会社及びARBITRAGE SYSTEM FUND COMPANY LIMITEDに対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年6月17日、金融庁に対して、あい証券株式会社(以下本節において「当社」といいます。)及びARBITRAGE SYSTEM FUND COMPANY LIMITED(以下本節において「AS社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。
 
【事案の概要等】
①当社における「無登録で投資運用業を行っている状況」及びAS社における「名義貸し」
  • 当社は、適格機関投資家等特例業務届出者であるAS社からの委託を受け、匿名組合型ファンドの私募の取扱い等を行っているとしており、当該ファンドは、営業者であるAS社の投資判断に基づき運用されるとしておりました。
  • しかしながら、AS社は、当該ファンドの運営に何ら関与していないなど、名目上の営業者に過ぎず、当社が実質的な営業者となって投資判断を行っていたなど、当社が無登録で当該ファンドの運用を行っていた状況が認められました。
  • また、当該状況は、AS社が当社に対し、AS社の名義を使用させた上で、当該ファンドの運用業務を行わせていたものと認められます。
  • 当社における上記行為は、投資運用業に該当し、金融商品取引法第31条第4項に基づく変更登録を受けることなく投資運用業を行うことは、同法第29条に違反するものと認められます。
  • AS社における上記行為は、自己の名義をもって、当社に投資運用業を行わせたものであり、金融商品取引法第36条の3に違反するものと認められます。
 
②当社における「投資者保護上問題のある業務運営」
  • 当社は、前述のとおり、無登録で匿名組合型ファンドの運用を行っていたにもかかわらず、AS社が運用を行う旨の資料を用いて、当該ファンドの私募の取扱い等を行っておりました。
  • また、当社は、新たな公募投資信託などの金融商品の販売に際し、商品審査の基準等を定めた社内規程を設けておらず、十分な商品審査を実施していなかったほか、顧客に対し、投資判断を行う上で重要となる情報を適時・適切に説明していないなど、極めて杜撰な経営管理態勢・内部管理態勢となっておりました。
  • 当社における上記業務運営の状況は、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であるとき」に該当するものと認められます。
 
【証券監視委からのメッセージ】
  • 本件事案は、上記のとおり、当社において「無登録で投資運用業を行っている状況」及び「投資者保護上問題のある業務運営」が認められ、AS社において「名義貸し」が認められました。
  • これらの行為は、特例業務の制度及び金融商品取引業の登録制度を蔑ろにする極めて悪質な行為であり、投資者保護上重大な問題が認められたものです。
  • 証券監視委においては、このような投資者保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処してまいります。なお、当社及びAS社に対しては、令和4年6月27日に、金融庁長官から業務改善命令の行政処分が行われています。

5. 株式会社エスコンアセットマネジメントに対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年6月17日、金融庁に対して、株式会社エスコンアセットマネジメント(以下本節において「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました
 
【事案の概要等】
  • 当社は、エスコンジャパンリート投資法人(以下「本投資法人」といいます。)の資産運用を行っているところ、当社の親会社である株式会社日本エスコン(以下「親会社」といいます。)が保有する不動産を本投資法人に取得させる際、次のような問題が認められました。
 
  • 当社は、親会社等の利害関係者が保有する不動産を本投資法人に取得させる際には、第三者である不動産鑑定業者に対して、取得させようとする不動産の鑑定評価を依頼し、算定された鑑定評価額を上限として当該不動産の取得価格を決定しています。
  • しかしながら、当社は、不動産鑑定業者から提示された鑑定評価額に係る中間報告又は概算額が親会社の売却希望価格に満たなかった3物件の不動産について、算定を依頼した不動産鑑定業者に対し、親会社の売却希望価格を伝達するなどしたうえで、鑑定評価額が当該売却希望価格を上回るものとなるよう、鑑定評価額を引き上げるための働きかけを行っていました。こうした行為は、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけであると認められます。
 
  • また、当社は、親会社からの取得となる物件の不動産鑑定評価を依頼する際、親会社の売却希望価格を上回る鑑定評価額を得ることを企図して、複数の不動産鑑定業者から不動産鑑定評価に係る概算額を聴取し、そのうち最も高い概算額を提示した不動産鑑定業者(以下「当該不動産鑑定業者」といいます。)の鑑定報酬額が、概算額を聴取した不動産鑑定業者の中で最も廉価になるよう、当該不動産鑑定業者と交渉していました。
  • さらに、当社は、当該不動産鑑定業者による概算額が最も高かったことを伏せたうえで、当該不動産鑑定業者の鑑定報酬額が最も廉価であることを理由に、当該不動産鑑定業者を鑑定評価の依頼先として選定していました。これは、親会社の売却希望価格で本投資法人に取得させることを最優先とした不適切な不動産鑑定業者選定プロセスであると認められます。
 
  • このように、当社の利益相反管理態勢は著しく不十分であり、当社は本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていないことから、金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められます。
 
【証券監視委からのメッセージ】
  • 本件事案は、上記のとおり、当社が親会社の不動産売却希望価格を優先し、適切な利益相反管理の観点から問題となる、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけや、不適切な不動産鑑定業者選定プロセスを行っていたものです。
  • これは、当社がグループの利益のために、意図的に不動産鑑定評価額を親会社の売却価格以上に引き上げたうえで、親会社の売却希望価格で本投資法人に物件取得させていたものであり、金融商品取引業者として、投資者保護上重大な問題が認められたものです。
  • 証券監視委においては、このような投資者保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処してまいります。なお、当社に対しては、令和4年7月15日に、金融庁長官から業務停止命令(3カ月)及び業務改善命令の行政処分が行われています
  
 

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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