市場へのメッセージ(令和4年11月24日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、金融商品取引業者に対する検査結果に基づく行政処分勧告1件、金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立て1件、有価証券報告書の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. マーチャントブレインズ投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
  2. 株式会社Thousand Ventures(サウザンドベンチャーズ社)及びその役員1名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てについて
  3. 株式会社アマナにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について

1. マーチャントブレインズ投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年9月30日、金融庁に対して、マーチャントブレインズ投資顧問株式会社(以下「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました

【事案の概要等】

  • (1)当社は、無料で会員登録を行った顧客(以下「見込顧客」といいます。)に対して配信したメールマガジンにおいて、「『政府要人と●●●のある関係筋』から(中略)既に情報を入手しています。」などと特別な情報を入手していないにもかかわらず特別な情報を入手しているとする記載を行うなど、虚偽の内容を告げて投資顧問契約の締結の勧誘を行いました。

  • (2)当社は、見込顧客のみが閲覧できるウェブサイト上の広告において、助言を行っていない銘柄であるにもかかわらず、事実に反し、株式買付の推奨日、売却による利益確定日及び騰落率を掲載するなどの行為を行いました。

 上記(1)の行為は金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して顧客に対し虚偽のことを告げる行為(金融商品取引法第38条第1号違反)、上記(2)の行為は著しく事実に相違する表示のある広告をする行為(同法第37条第2項違反)と認められます。

【証券監視委からのメッセージ】

 本件事案は、当社代表者自らが営業を優先し、法令違反行為を行うなど経営陣の法令等遵守意識が欠如していたこと等に起因して発生したものと認められ、投資者保護上重大な問題が認められたものです。

 証券監視委においては、このような投資者保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処してまいります。なお、当社に対しては、令和4年10月21日に、関東財務局長から業務停止命令(1カ月)及び業務改善命令の行政処分が行われています新しいウィンドウで開きます

2. 株式会社Thousand Ventures(サウザンドベンチャーズ社)及びその役員1名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てについて

 証券取引等監視委員会は、令和4年6月28日、東京地方裁判所に対して、株式会社Thousand Ventures(サウザンドベンチャーズ社。以下本節において「当社」といいます。)及び当社の代表取締役である吉永智徳(以下、当社及び吉永智徳を併せて「当社ら」といいます。)に金融商品取引法違反行為(無登録金商業及び無届募集)の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行いました

【事案の概要】

 当社らは、下記⑴ア~ウのとおり、金融商品取引法第29条所定の登録を受けずに、当社が主催するマネースクールの会員に対し、金融商品の勧誘、媒介等を業として行っていました。また、当社らは、下記⑵のとおり、有価証券届出書を提出することなく社債の取得勧誘(募集)を行い、届出の効力発生前にこれを取得させていました。

⑴ 無登録金商業

ア 集団投資スキーム持分の募集又は私募の取扱い

 当社らは、海外法人であるRL360 Insurance Company Limitedが組成する海外集団投資スキーム持分(金融商品取引法第2条第2項第6号)に該当する投資商品であるQuantumやREGULAR SAVINGS PLANに関し、その商品概要や利点等を解説する動画を会員に視聴させたり、説明資料を用いて商品の特徴や利点等を説明したりするなどの方法により、当該商品への出資の勧誘を行い、出資を希望した会員に対して契約締結やその後の事務手続に関するサポートを行っていました。

 これにより、当社らは、平成28年7月から令和4年2月までの間に、少なくとも延べ707名の一般投資家に対し、合計10億円を超える出資をさせていました。

 当社らの上記行為は、集団投資スキーム持分の募集又は私募の取扱いを業として行うものとして、金融商品取引法第28条第2項第2号に規定する「第二種金融商品取引業」に該当し、無登録でこれを行うことは、同法第29条に違反します。

イ 店頭デリバティブ取引の媒介

 当社らは、海外法人であるとされるMt.light(以下「MTL社」といいます。)が提供するFX取引(金融商品取引法第2条第22項第1号に規定する店頭デリバティブ取引)の自動売買システム(以下「MTLFX」といいます。)に関し、その商品概要や平均月利回りの良さ等を解説する動画を会員に視聴させたり、MTLFXに関心を示した会員に対する質問への回答や投資金額についてのアドバイスを行うなどして、MTLFXに係るMTL社の口座開設等の勧誘を行い、MTLFXを用いた資産運用を希望した会員に対して、MTL社の口座開設のためのURLリンクを案内したり、その手続を円滑に行うためのマニュアルの配布及び個別相談を行ったりしていました。

 これにより、当社らは、令和3年7月から令和4年3月までの間に、少なくとも延べ175名の一般投資家に対し、合計約1億5,000万円の出資をさせていました。

 当社らの上記行為は、店頭デリバティブ取引の媒介を業として行うものとして、金融商品取引法第28条第1項第2号に規定する「第一種金融商品取引業」に該当し、無登録でこれを行うことは、同法第29条に違反します。

ウ 他社の社債の募集又は私募の取扱い

 当社らは、株式会社STEPCAPITALMANAGEMENT(以下「STEP社」といいます。)が発行する社債(以下「STEP社債」といいます。)に関し、LINEの公式アカウントサービスを用いた一斉配信や個別コンサルティングにおける解説動画の視聴、個別相談等の方法により、STEP社債の商品概要のほか、リスクの少ない案件であるといった説明を行うなどして、STEP社債の取得勧誘を行っていました。

 これにより、当社らは、令和3年9月から同年12月までの間に、少なくとも延べ223名の一般投資家に対し、合計5億2,800万円分のSTEP社債を購入させていました。

 当社らの上記行為は、社債の募集又は私募の取扱いを業として行うものとして、金融商品取引法第28条第1項第1号に規定する「第一種金融商品取引業」に該当し、無登録でこれを行うことは、同法第29条に違反します。

⑵ 社債の無届募集

 当社は、毎月のように当社の社債を発行していた中、令和3年4月、同年5月及び同年10月に当社の社債(償還期限や利率等をいずれも同じくするもの)を発行するに際し、申込者数が50名以上となったことから、1回分の申込者数が50名未満になるよう回号を後から振り分けるなどしているものの、取得勧誘行為自体は50名以上の会員に対して同時に行っており、実態は50名以上の者に対し、有価証券届出書の提出をせずに有価証券(当社の社債)の取得勧誘(募集)を行っていました。

 また、当社らは、当社の社債の募集の仕方に関し、社債の募集人数や募集金額の点で、弁護士から金商法に違反している可能性があるとの指摘を受けていたにもかかわらず、令和4年1月に当社の社債を発行するに際し、LINEの公式アカウントサービスを利用した会員への一斉配信の方法により、50名以上の会員に対して同時に当社の社債の取得勧誘(募集)を行っていました。

 当社の上記行為は、有価証券届出書を提出することなく有価証券の募集が行われたものとして金融商品取引法第4条第1項に違反するとともに、同項の規定による届出の効力発生前にこれを取得させたものとして同法第15条第1項に違反します。

 なお、当社の説明によれば、当社は、当社の社債で集めた資金をSTEP社や他の事業者に出資等していました。

 当社らに対しては、令和4年10月6日に、東京地方裁判所から、当該金融商品取引法違反行為の禁止及び停止を命ずる決定が出されています

 証券取引等監視委員会においては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、無登録業者等に対して厳正に対処してまいります。投資者の皆様におかれては、無登録業者等と取引を行うことがないように、注意してください。

【サウザンドベンチャーズ社の顧客の皆様へ】
  • 東京地方裁判所は、証券取引等監視委員会の申立ての内容どおり、当社らが金融商品取引法違反行為(無登録金商業及び無届募集)を行っていたことを認め、当該行為の禁止及び停止を命令しました(令和4年10月6日)。登録を受けずに金融商品取引業を行うことや、届出をすることなく有価証券の募集等を行うことは違法です。
  • 証券取引等監視委員会の調査の結果によれば、当社らは、主催するマネースクールの会員に対し、資産形成に関するコンサルティングを通じて、保険商品、海外積立型投資商品、社債、FX自動売買システム、投資用不動産等の商品の提案、勧誘を行っていました。
  • 具体的には、当社らは、既存会員からの紹介等により集まった一般投資家を対象としたオンライン形式のセミナーやインターネット上の音声プラットフォームへの配信等を通じて、個別の資産形成に係る無料コンサルティングに案内し、そのコンサルティングの機会等を利用して、当該マネースクールに勧誘していました。マネースクール入会後は、会員ごとに認定コンサルタントと呼ばれるコンサルティング業務等を行う従業員等が専任の担当者となり、当該認定コンサルタントから、ライフプラン設計についてのコンサルティングを受け、その後、具体的な保険商品、金融商品、不動産投資商品等に関する説明等を受けるのが一般的な流れとなっていました。
  • 当社らは、当該商品の提案、勧誘を行うに当たり、顧客に対して、過去の運用実績における利回りの良さ等を謳った説明や、当社らとの取引関係が長いことをもって安全なビジネススキーム(ローリスク案件)である等の説明を行っていますが、いずれも当該商品の運用成果等を保証するものではありません。
  • 当社らは、金融商品取引業の登録等を受けた業者ではありません。また、当社らは、当社の社債を発行するに当たり、有価証券届出書の提出を行っていません。
  • 【一般投資家の皆様へ】も、併せてご確認ください。
【一般投資家の皆様へ】
  • 無登録業者が、実際には契約内容のとおりの取引を行っていなかったなどのトラブルが多発しています。無登録業者には、金融庁の監督権限が及ばず、投資者保護規定に基づく処分等が行えませんので、ご注意ください。
  • 仮に、海外当局の登録を受けた業者であったとしても、当該海外当局は、他国民との取引について監督指導等を行わないことや、金融庁と同等の監督権限がないことなどがあります。海外当局の登録を受けたことをもって日本と同等の投資者保護を担保するものではありません。
  • 一般に、無登録業者は、実際には契約内容のとおりの取引を行っていない商品であったとしても、返金等を希望する顧客に対し、他の顧客の投資資金を交付することで、返金等に応じることがあります。これまでに返金等を受けることができていたとしても、そのことをもって、直ちに当該商品が信頼できるとは言えませんので、ご注意ください。
  • 日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です。取引の相手方が登録を受けているか、こちら新しいウィンドウで開きますでご確認ください。
    また、無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告を行った者の名称等は、こちら新しいウィンドウで開きますをご確認ください。
  • 不特定多数の者に有価証券の取得の勧誘を行う場合には、有価証券届出書の提出が必要です。有価証券届出書を提出しているかどうかは、EDINET新しいウィンドウで開きますで確認することができます。
  • 外国為替証拠金取引(FX取引)についての注意点は、こちら新しいウィンドウで開きますをご確認ください。 

3.株式会社アマナにおける有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、株式会社アマナ(以下「当社」といいます。)における金融商品取引法に基づく開示規制の違反について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたことから、令和4年11月1日に内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました

【法令違反の内容】

 当社は、当社及び当社の連結子会社が行った不適正な会計処理により、過大な当期純利益等を計上することによって、「重要な事項につき虚偽の記載」がある下記の開示書類を関東財務局長に提出しました。

  • ・平成30年12月期有価証券報告書(平成31年3月25日提出)等、合計5本

【不適正な会計処理】

(1)海外子会社における売上原価の過少計上

 上海に所在する当社の子会社は、従業員に支払う給与や外注先の個人事業主に支払う役務報酬額について、中国の税法上必要とされる個人所得税の源泉徴収及び納税を行っていませんでした。これにより、当該海外子会社は、個人所得税額に相当する金額の売上原価(給与及び外注費)を過少に計上しました。

(2)当社及び当社の国内子会社における売上の過大計上

 当社の国内子会社は、虚偽の証憑を作成する等によって、実際には受注がなかった案件において、売上を架空計上したほか、当社及び当社の国内子会社は、同様の手口によって、翌四半期以降に納品予定の案件において、売上を前倒し計上しました。

(3)当社及び当社の国内子会社における売上原価の繰延計上

 当社及び当社の国内子会社は、虚偽の証憑を作成する等によって、複数の案件の外注費について、他の案件に付替え、売上原価を繰延計上しました。

 証券監視委は、本事例のような有価証券報告書等における虚偽記載などの開示規制違反に対して、引き続き厳正に対処してまいります。  


 

<発行>

証券取引等監視委員会 事務局 総務課
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