市場へのメッセージ(令和4年12月20日)
~当委員会では、活動状況や問題意識等を簡潔かつ分かりやすくまとめて「市場へのメッセージ」として配信しています~

<概要>

 今回は、内部者取引に対する課徴金納付命令勧告1件、内部者取引事件の告発2件、相場操縦に対する課徴金納付命令勧告1件の紹介を行っています。事案に応じて、その意義・特徴や発生原因、市場関係者や投資家の皆様へのメッセージ等を盛り込んでおりますのでぜひご覧ください。

<目次>

  1. 名古屋電機工業株式会社社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
  2. 東都水産株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について
  3. YE DIGITAL株式ほか1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
  4. 株式会社Aiming株券に係る内部者取引事件の告発について

1. 名古屋電機工業株式会社社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和4年11月29日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【事案の概要】
 本件は、課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)が、名古屋電機工業株式会社(以下「名古屋電機工業」といいます。)の社員(以下「伝達者」といいます。)から、伝達者がその職務に関し知った、重要事実(業績予想の修正)の伝達を受けながら、重要事実の公表がされた令和3年2月2日より前の同月1日に、自己の計算において、名古屋電機工業株式を買い付けたものです。
 
【事案の特色】
 本件は、親族間の日常会話の中で重要事実の伝達がなされ、インサイダー取引が行われた事案です。また、本件では、伝達者がインサイダー取引規制への抵触を懸念し、対象者に対して取引をしないように伝えていたにも関わらず、対象者はインサイダー取引に及んでいます。
 
【証券監視委からのメッセージ】
 親族に限らず、取引先や友人等との会話の中でも、勤務先の話やその仕事の内容の話等をする機会はあると思いますが、近況報告のつもりでも、その内容によってはインサイダー取引規制の対象になることを改めて周知したいと思います。
 たとえ取引をしないように伝えたとしても、安易に会社の内部情報を話すことは、インサイダー取引を行うきっかけを与えることにもなりかねません。発行会社等の役員の方だけではなく、会社の重要情報に接する方は、会社を離れた場面においても、常に情報管理の重要性を認識していただきたいと思います。

○  違反行為事実の概要について
違反行為事実の概要について
 

2. 東都水産株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年12月1日、金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者1名を函館地方検察庁に告発しました
 
【事案の概要】
 犯則嫌疑法人三印三浦水産株式会社(以下「犯則嫌疑法人」という。)は、水産物の販売、貿易業等を目的とする株式会社であり、犯則嫌疑者Aは、同社の代表取締役専務として同社の業務全般を実質的に統括するとともに、東京証券取引所に株券を上場している東都水産株式会社(以下「東都水産」という。)の社外取締役を務めていたものですが、Aは、令和2年9月上旬頃から同月中旬頃までの間、その職務に関し、東都水産の役員らがその職務に関し合同会社ASTSホールディングスからの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関が東都水産の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り
 
第1 法定の除外事由がないのに、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である令和2年9月中旬頃から同年10月中旬頃までの間、犯則嫌疑法人の業務及び財産に関し、証券会社を介し、東京証券取引所において、犯則嫌疑法人名義で東都水産の株券合計8000株を代金合計約2900万円で買い付け
 
第2 あらかじめ東都水産の株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前である令和2年11月上旬頃、東京都内において、知人に対し、前記公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた同人が、法定の除外事由がないのに、同公開買付けの実施に関する事実の公表前である同月上旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、東都水産の株券合計500株を代金合計約200万円で買い付け
 
たものです。
 
【本件の意義】
 本件は、東都水産の株券に係る公開買付けの実施に関する事実を職務に関し知った犯則嫌疑者Aが、同社の社外取締役という立場にありながら、その公表前に、自らが代表取締役専務として業務全般を実質的に統括する犯則嫌疑法人名義で東都水産の株券を買い付けたほか、知人に同事実を伝達し、情報伝達を受けた当該知人が、その公表前に、東都水産の株券を買い付けたという内部者取引等の事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。

3.YE DIGITAL株式ほか1銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、令和4年12月6日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行いました
 
【事案の概要及び特色等】
 対象者は、自己名義の証券口座2口座を用い、インターネット取引で、YE DIGITAL株式及びデータセクション株式につき、各株式の売買を誘引する目的をもって、各株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、各株式の相場を変動させるべき一連の売買をしたものです。
 
 対象者が行っていた相場操縦行為の主な流れは、
① あらかじめ上値に複数の売り注文を発注(売抜け準備)
② 小口の買い注文による
   ・株価引上げ
   ・対当売買(株価引上げを伴うものを含む)
③ 売抜け
となります。
 
 証券監視委では、今後とも、証券市場の公正性・透明性を損なう不公正取引に対して、厳正な調査を実施していきます。

○ 違反行為事実の概要について
違反行為事実の概要について

4. 株式会社Aiming株券に係る内部者取引事件の告発について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、令和4年12月6日、金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、嫌疑者2名を東京地方検察庁に告発しました
 また、証券監視委は、同日、金融商品取引法違反(内部者取引)の嫌疑で、嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発しました
 
【事案の概要】
(事案1:内部者取引、情報伝達)
(1)犯則嫌疑者Aについて
  犯則嫌疑者Aは、株式会社スクウェア・エニックス(以下「スクエニ」という。)に勤務していた従業員であり、令和元年11月下旬頃、その職務に関し、東京証券取引所に株券を上場している株式会社Aiming(以下「Aiming」という。)とスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのAimingの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びAimingの業務執行を決定する機関が同ゲームの配信等を共同して運営していく旨の業務上の提携を行うことについての決定をした旨のAimingの業務等に関する重要事実をそれぞれ知り
 
第1 法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である同年12月上旬頃から令和2年2月上旬頃までの間、証券会社を介し、犯則嫌疑者A名義で、Aimingの株券合計約7万2000株を代金合計約2080万円で買い付け
 
第2 知人であるBにあらかじめAimingの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、前記各重要事実の公表前である令和元年12月下旬頃、Bに対し、前記各重要事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けたBが、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である同月下旬頃から令和2年2月上旬頃までの間、証券会社を介し、B名義で、Aimingの株券合計約9万株を代金合計約2640万円で買い付け
 
たものです。
 
(2)犯則嫌疑者Bについて
  犯則嫌疑者Bは、スクエニに勤務していた従業員である知人のAから、令和元年12月下旬頃、東京証券取引所に株券を上場しているAimingとスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのAimingの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びAimingの業務執行を決定する機関が同ゲームの配信等を共同して運営していく旨の業務上の提携を行うことについての決定をした旨のAimingの業務等に関する重要事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である同月下旬頃から令和2年2月上旬頃までの間、証券会社を介し、犯則嫌疑者B名義で、Aimingの株券合計約9万株を代金合計約2640万円で買い付けたものです。
 
(事案2:内部者取引)
 犯則嫌疑者Cは、スクエニに勤務していた従業員であり、令和2年1月下旬頃、その職務に関し、東京証券取引所に株券を上場しているAimingとスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのAimingの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びAimingの業務執行を決定する機関が同ゲームの配信等を共同して運営していく旨の業務上の提携を行うことについての決定をした旨のAimingの業務等に関する重要事実をそれぞれ知り、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である同月下旬頃、証券会社を介し、犯則嫌疑者C名義で、Aimingの株券合計1万株を代金合計約280万円で買い付けたものです。
 
【本件の意義】
 本件は、スクエニの従業員であった犯則嫌疑者A及びCが、Aimingとスクエニが共同で進めていた携帯電話機向け新作ゲームの開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどの投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実等を職務に関し知り、その公表前に、Aimingの株券をそれぞれ買い付けたほか、犯則嫌疑者Aは知人である犯則嫌疑者Bに上記の重要事実等を伝達し、情報伝達を受けた犯則嫌疑者Bが、その公表前に、Aimingの株券を買い付けたという内部者取引等の事案であり、市場の公正性に与えた影響等諸般の事情に照らし、悪質性が認められます。
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違法行為に対し、厳正に対応していきます。
 

 

<発行>
証券取引等監視委員会 事務局 総務課
    (情報公開・個人情報保護係)
〒100-8922 
東京都千代田区霞が関3-2-1
中央合同庁舎第7号館
電話番号:03-3506-6000(代表)

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