アクセスFSA 第30号 (2005年5月)
ジャパン・ソサエティで講演を行う伊藤大臣(5月2日) 証券分野の情報交換の枠組みを設ける文書に署名した七条副大臣とアンドリュー・シェン香港証券先物委員会(SFC)委員長(5月5日)
(c) Ken Levinson  
ジャパン・ソサエティで講演を行う伊藤大臣(5月2日) 証券分野の情報交換の枠組みを設ける文書に署名した七条副大臣とアンドリュー・シェン香港証券先物委員会(SFC)委員長(5月5日)
目 次
【トピックス】
 ○  金融コングロマリット監督指針(案)について
 ○  企業内容等の開示制度等に関する内閣府令の改正の概要について
 ○  平成15年度政策評価結果の政策への反映状況について
 ○  伊藤大臣及び七条副大臣の海外出張について

【集中連載】
 ○  金融検査に関する基本指針(案)の概要について(第1回 策定に当たってのスタンス及び「I 基本的考え方」の概要について)

【法令解説】
 ○  保険業法等の一部を改正する法律の概要について

【金融ここが聞きたい!】

【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「金融コングロマリット」

【お知らせ】

【4月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
金融コングロマリット監督指針(案)について

 昨年12月に公表された「金融改革プログラム」において盛り込まれた項目のうち、「金融コングロマリット等に対応可能な監督体制の構築」及び「国際的な金融コングロマリットに対する適正な監督の確保」の一環として、「金融コングロマリット監督指針(案)」を策定し、パブリックコメントに付すこととしました。
 本監督指針においては、金融コングロマリットを定義した上で、コングロマリット化の進展に伴い、グループ内の金融機関の財務の健全性や業務の適切性に重大な影響を与える可能性があるリスクを列挙し、それをグループとしてどのように管理しているか、ということについて監督上の着眼点としております。
(参考) 金融コングロマリット化に伴うリスクの例
・組織の複雑化による経営の非効率化
・利益相反行為の発生
・グループ内のリスクの伝播
・グループ内取引の適切性
・グループとしてのリスクの集中
 また、国際的に活躍する金融コングロマリットに対しては、効率的かつ十分な監督態勢を確保するため、海外監督当局との適切な連携の確保を図ることなどを、指針として盛り込んでおります。
 金融庁としては、今後パブリックコメントを受けて、更に、精査をしていきたいと考えております。


 平成17年4月28日に公表した「金融コングロマリット監督指針(案)」の全文をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「金融コングロマリット監督指針(案)に対する意見募集の実施について」(平成17年4月28日)にアクセスしてください(意見募集の〆切=5月27日(金)17時00分)。


 「金融コングロマリット」の解説について、本号の「金融便利帳」に掲載していますので、アクセスしてみてください。

企業内容等の開示制度等に関する内閣府令の改正の概要について

 平成16年10月中旬以降に証券取引法上のディスクロージャーをめぐり、不適正な事例が相次いで判明したことを受け、金融庁では同年11月16日に「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について」を、12月24日に「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応(第二弾)について」を取りまとめました。その中には制度改正に関する事項として「有価証券報告書等の記載上の注意の明確化」、「コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実」及び「親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実」が盛り込まれ、次のとおり、これらの事項の規定整備を行いました。


 有価証券報告書等の記載上の注意の明確化
 
(1)  「(株式等の)所有者別状況」の明確化
 「外国法人等のうち個人」欄は、内数の記載となっていましたが、他の区分と同様、内数によらない記載とするための規定整備を行いました。
 また、他人名義で所有している株式数を含めた実質所有による記載の明確化のための規定整備を行いました。
(2)  「大株主の状況」の明確化
 大量保有報告書等の写しの送付を受けた場合の取扱いが、有価証券届出書及び半期報告書には明記されていましたが、有価証券報告書では明記されていませんでしたので、有価証券報告書の「大株主の状況」の記載上の注意において大量保有報告書等の写しの送付を受けた場合の取扱いを明記しました。
(3)  「役員の状況」の明確化
 他人名義で所有している株式数を含めた実質所有による記載の明確化のための規定整備を行いました。
(4)  「連結財務諸表」、「財務諸表」の明確化
 有価証券届出書等の「連結財務諸表」、「財務諸表」等に、「連結財務諸表等の作成に当たっては、連結財務諸表規則等に従い、適切な科目による適正な金額の計上を行うとともに、連結財務諸表等の作成のための基本となる重要な事項、記載すべき注記、附属明細表等を会社の実態に即して適正に記載」する旨の規定を追加しました。


 コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実
 有価証券届出書様式(有価証券報告書は有価証券届出書を準用)の記載上の注意に次に掲げる事項の追加記載を求めるための規定整備を行いました。
 
(1)  内部監査及び監査役(監査委員会)監査の組織、人員及び手続並びに内部監査、監査役(監査委員会)監査及び会計監査の相互連携について
(2)  社外取締役及び社外監査役と提出会社との人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係について
(3)  業務を執行した公認会計士の氏名、所属する監査法人名及び提出会社の財務書類について連続して監査関連業務を行っている場合における監査年数(当該年数が7年を超える場合に限る。)、監査業務に係る補助者の構成並びに監査証明を個人会計士が行っている場合の審査体制について


 親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実
 有価証券報告書、有価証券届出書様式の「提出会社の参考情報」に「提出会社の親会社等の情報」欄を設けるとともに、「記載上の注意」において次に掲げる規定整備を行いました。
 
(1)  提出会社(上場会社等に限る。)の親会社等が継続開示会社でない場合には次に掲げる事項を記載することとしました。ただし、当該親会社等が外国上場会社であって、外国の法律等で企業情報が開示され、かつその情報が本邦において閲覧できる状態にある場合を除くこととしました。
 
(a)  親会社等の名称、株式の所有者別状況、大株主の状況及び役員の状況
(b)  親会社等の商法上の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書(以下「計算書類等」といいます。)の記載(監査役又は監査委員会の監査報告書及び会計監査人の監査報告書の添付)
(2)  親会社等の株式の所有者別状況、大株主の状況及び役員の状況の記載は、提出会社のこれらの状況の記載方法に準じて記載することとしました。
(3)  親会社等の計算書類等の記載に代え、添付することを可能としました。
(4)  次の区分に応じ、次に掲げる事項を記載することとしました。
 
(a)  親会社等の(1)(a)及び(b)に掲げる事項の全部又は一部について記載できない場合 その理由
(b)  親会社等がない場合 その旨
(c)  親会社等が継続開示会社である場合 その旨、親会社等の名称及び上場している場合の当該上場取引所名
(d)  (1)ただし書に該当する外国上場会社である場合 その旨、親会社等の名称及び上場している場合の当該上場取引所名
(5)  親会社等とは、提出会社の株式の過半数を直接又は間接に保有している会社をいうこととしました。


 その他の改正
 上記のほか、「証券取引法等の一部を改正する法律(平成16年法律第97号)」の施行に伴い、公開買付制度に係る公開買付開始公告等の公告及び有価証券報告書の重要な訂正報告に係る公告の方法に、開示用電子情報処理組織を使用する方法(電子公告)を追加するための規定整備を行いました。


 施行期日等
 
(1)  平成17年4月1日から施行しました。
(2)  有価証券報告書様式の改正については平成17年3月決算期から適用し、有価証券届出書様式の改正については平成17年7月1日以後提出されるものから適用(4月1日以後、有価証券報告書が改正後の新様式で提出された場合には、その後提出される有価証券届出書は、改正後の新様式が適用。)します。なお、早期適用については、それを妨げないものとしました。


 平成17年3月に実施した「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令案」に対するパブリックコメントの結果について、詳しくは、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令案に対するパブリックコメントの結果について」(平成17年4月6日)にアクセスしてください。

平成15年度政策評価結果の政策への反映状況について

 我が国の行政においては、政策評価を実施するとともに、その評価結果を政策に適切に反映させ、政策に不断の見直しや改善を加えることにより、効率的で質の高い行政及び成果重視の行政の実現が求められています。こうしたことから、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」においては、政策評価の結果の政策への反映状況について公表することとしています。

 金融庁においては、15年度実績評価書(評価対象期間:平成15年7月〜16年6月)及び16年度事業評価書(対象事業:17年度概算要求に係る新規・拡充事業)を16年8月に公表したところですが、今般、上記法律を踏まえ、政策評価の結果の政策への反映状況を取りまとめ、公表しました。

 なお、取りまとめに当たっては、評価結果を踏まえて、どのように政策の改善・見直し等を行うこととしたのか、その方針を説明するとともに、当該方針に沿って実施した具体的な措置内容を例示しています。


 平成15年度政策評価結果の本文等についてご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「「平成15年度政策評価結果の政策への反映状況」の公表について」(平成17年4月27日)にアクセスしてください。

伊藤大臣及び七条副大臣の海外出張について

 伊藤大臣は、4月29日(金)から5月4日(水)にかけて米国を訪問し、イェレン・サンフランシスコ連邦準備銀行総裁、ガイトナー・ニューヨーク連邦準備銀行総裁及びドナルドソン・米国証券取引委員会(SEC)委員長と会談しました。
 また、ニューヨークでは、ジャパン・ソサエティーにおいて、わが国の金融セクターの状況や今後の金融行政における取組みについて講演を行いました。

 それぞれの会談では、伊藤大臣から、わが国金融を巡る局面が、これまでの不良債権問題への緊急対応から脱却し、未来志向の新しい局面へと転換しつつあることを説明したところ、先方からは、こうしたわが国の最近の動向を歓迎するとの反応がありました。あわせて、金融分野における国際化の進展に伴い、当局間の協力関係をより一層強化することで意見が一致しました。

 SECとの間では、日米間の協力関係をより一層強化するために、新たに3つの対話のチャンネルを創設することに合意しました。
 第1に、金融庁とSECの間で、グローバルな証券市場の共通課題について、定期的にハイレベル対話を開催することに合意しました(日米ハイレベル証券市場対話)。第1回会合は6月下旬に東京で開催する予定です。
 第2に、必要に応じて取引所及び証券業協会といった自主規制機関も含めた対話を行うことについても合意しました(日米証券関係6者対話)。このために、例えば、金融庁、証券取引所及び日本証券業協会を含む日本の共同ミッションが米国を訪問し、米国SEC、米国の証券取引所及び証券業協会と対話することが考えられます。
 第3に、会計基準の国際的なコンバージェンス(収斂)が進展している状況の下、両国の会計基準設定主体、すなわち我が国の企業会計基準委員会(ASBJ)と米国の財務会計基準審議会(FASB)との間の対話の強化を支持することについても合意をしたところです(日米会計対話)。

 今回の訪米は、米国の金融当局要人等と直接意見交換を行い、相互に理解を深めるとともに、当局間の連携をより一層強化することができ、非常に有意義なものとなりました。



 七条副大臣は、5月5日(木)から9日(月)にかけて香港及びベトナムを訪問し、香港証券先物委員会(SFC)アンドリュー・シェン委員長、香港金融管理局ジョセフ・ヤム総裁及びベトナム中央銀行フンカッケ副総裁等と会談を行いました。会談では、七条副大臣から我が国の金融セクターの状況や今後の金融行政の取組みについて説明し、先方の理解を得るとともに、先方の金融セクターの状況等について聴取することができ、非常に有意義なものとなりました。

 香港では、5月5日にシェンSFC委員長とともに、金融庁とSFCとの間における証券分野の情報交換の枠組みを設ける文書に署名しました。

 証券取引がグローバル化する中で、各国の証券市場を適切に監視・監督するために、主要な証券規制当局の間でクロスボーダーの不正取引活動等に関する情報を共有する必要性が高まっています。

 このような観点から、金融庁は、これまで、中国の証券監督管理委員会(CSRC)(平成9年3月)、シンガポールの通貨監督庁(MAS)(平成13年12月)、米国の証券取引委員会(SEC)及び商品先物取引委員会(CFTC)(平成14年5月)、オーストラリアの証券投資委員会(ASIC)(平成16年9月)との間で、証券分野の情報交換の枠組みを設けてきました。今回七条副大臣が行ったSFCとの間の合意は、5つ目の情報交換枠組みになります。香港の証券市場はアジア・太平洋地域において、東京に次ぐ第2位の市場規模を誇るほか、金融庁とSFCは、IOSCO(証券監督者国際機構)等の国際的な場において密接な協力関係にあります。

 今回の情報交換枠組みの構築によって、インサイダー取引や株価操縦のような不正取引活動等を監視するため、市場における取引に関する情報、特定の取引注文を出した者の属性に関する情報や証券会社に関する情報等を、必要に応じて相互に提供することとなり、我が国及び香港の証券市場の公正性・透明性の確保に寄与することになります。

 七条副大臣は、シェン委員長との間で、一層の協力関係の構築について合意しました。金融庁としては、今後とも、主要な証券市場を有する国・地域との間で、こうした情報交換のネットワークを含め、一層の協力関係を構築するよう、努力する考えです。

 ベトナムにおいては、同国における金融セクター改革の動向等を聴取しました。日本とベトナムの関係はますます深まっており、金融庁としても関係機関と調整を行いながら協力していきたいと考えております。

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