アクセスFSA 第68号(2008年7月)

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多重債務者対策本部有識者会議において挨拶する渡辺大臣(7月15日) 全国財務局長会議において挨拶する渡辺大臣(7月31日)
多重債務者対策本部有識者会議において挨拶する渡辺大臣(7月15日) 全国財務局長会議において挨拶する渡辺大臣(7月31日)

目次


【特集】

市場強化プラン(金融・資本市場競争力強化プラン)の進捗について

金融庁は、内外から資金・情報・人材が幅広く集積する、魅力ある質の高い金融・資本市場の構築に向け、「市場強化プラン」(金融・資本市場競争力強化プラン、平成19年12月21日公表)を強力に推進しているところです。

「市場強化プラン」については、本年6月の「金融商品取引法等の一部を改正する法律」の成立・公布をはじめ、これまで相当の前進が見られており、金融庁として、平成20年6月27日、「市場強化プラン(Better Market Initiative)の進捗」を公表しました。

「市場強化プラン(Better Market Initiative)の進捗」の概要を4つの分野に沿って紹介します。

  • I. 信頼と活力のある市場の構築

    • (1) 外国株式の取引機会拡大(JDR(日本版預託証券)の流通制度の整備)(20年2月)

    • (2) XBRLを導入した新EDINET稼働(20年3月)

    • (3) J-REIT(不動産投資信託)への海外不動産の組入れ解禁(20年5月)

    • (4) 現物拠出型ETF(上場投資信託)の多様化(株式以外の有価証券を投資対象とするものの容認、対象株価指数の個別列挙方式を廃止)(20年6月27日施行)

    • (5) 英文開示の対象有価証券の拡大(外国会社が発行するすべての有価証券へ拡大)(20年6月1日施行)

    • (6) 金融商品取引法等の一部を改正する法律案の成立(20年6月13日公布)

      • ETFの更なる多様化(商品先物等を投資対象とするETFの解禁)

      • プロ向け市場の創設

      • 課徴金の金額水準の引上げ、対象範囲の拡大

        • 遅くとも20年12月12日までに施行

  • II. 金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備

    • (1) 海外のファンドマネジャー誘致のためのPE(恒久的施設)リスクの排除(代理人PEから独立代理人を除外(20年4月)。参考事例集等を公表(20年6月27日))

    • (2) 金融商品取引法等の一部を改正する法律案の成立(20年6月13日公布)

      • 銀行・証券・保険間のファイアーウォール規制の見直しと利益相反管理体制の整備

        • 遅くとも21年6月12日までに施行

      • 銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大

        • リスク管理等に優れた銀行の兄弟会社に対する商品現物取引等の解禁
        • 銀行・保険会社本体に対する排出量取引の解禁
        • 銀行・保険会社の子会社・兄弟会社に対するイスラム金融の解禁
        • 銀行・保険会社グループに対する議決権保有制限の例外措置の拡充
        • 銀行本体による外国銀行の業務の代理・媒介制度の導入

        • 遅くとも20年12月12日までに施行

  • III. より良い規制環境(ベター・レギュレーション)の実現

    • (1) 関係者との対話を重ね、金融サービス業におけるプリンシプルを公表(20年4月)

    • (2) 統一の基準によって集計した我が国預金取扱金融機関のサブプライム関連商品や証券化商品等の保有状況を世界に先駆けて公表し、我が国金融システムへの影響についての情報を提供(19年11月、20年2月、6月6日)

    • (3) 本年1月からの英文メールサービスの開始等、英語を含む情報発信を強化

    • (4) 内外の市場が連動して大きく変化する中で、金融システムの安定に向けた国際的な議論への参画、金融機関のリスク管理の強化のため、海外当局との連携を強化

    • (5) 金融機関等に対しアンケートの実施(20年3月)

      • 透明性・予見可能性については、回答結果の8割近くが「改善」「やや改善」と評価
      • 金融機関等との対話については、6割近くが評価(さらなる改善点として、実務者レベルでの対話の充実等)
      • 情報発信の強化について、8割近くが評価(さらなる改善点として、ウェブサイトの充実等)
  • IV. 市場をめぐる周辺環境の整備

    • (1) 金融専門人材の育成・確保に向けた基本的なコンセプトの公表(20年4月)

      • パブリックコメント等を踏まえ、論点をとりまとめ(20年夏頃)。その後、制度設計を開始(20年夏以降)

    • (2) 地域活性化統合本部会合において、国際金融拠点機能強化プランを策定(20年4月)

      • 国際金融拠点フォーラムを設置し、プランの着実な実施とフォローアップ

    金融庁は、我が国金融・資本市場の魅力の向上に向けて、引き続き、以下のような施策についてスピード感をもって取り組んでいきます。

    • (1) 金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ(20年中を目途に検討を進め、その後、すみやかな実現を図る)

    • (2) 会計基準の国際的収斂に向けた取組みを推進

    • (3) XBRLの互換性確保に向けた海外当局等との連携

    • (4) 上場企業等のコーポレート・ガバナンス強化への取組み

    • (5) ベター・レギュレーションの実現に不断に取り組むとともに、その進捗状況を半年毎に公表

市場強化プラン(Better Market Initiative)の進捗

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「市場強化プラン(Better Market Initiative)の進捗について」(平成20年6月27日)にアクセスしてください。


恒久的施設(PE)に係る「参考事例集」・「Q&A」の公表について

金融庁は、「市場強化プラン」に盛り込まれている「PEリスクの排除」に関して、関係当局と協議を重ね、平成20年6月27日に、「参考事例集」及び「Q&A」を取りまとめ公表しました。

  • 1. 背景

    従来、海外投資家が日本国内のファンドマネジャーを通じて投資を行う場合、当該日本国内のファンドマネジャ-が海外投資家のPE(Permanent Establishment:恒久的施設)とみなされ、海外投資家自身が日本で申告・納税義務を負うことになる、との懸念(PEリスク)があり、このことが、国内ファンドマネジャーの海外流出の要因のひとつになっているとの指摘がありました。

    金融庁は、まず、平成20年度税制改正要望において、当該「PEリスクの排除」に関する要望を行い、その結果、恒久的施設(PE)とされる代理人等の範囲から、独立の地位を有する代理人(以下「独立代理人」といいます。)が除かれることとなりました(新所得税法施行令第290条及び新法人税法施行令第186 条)。

    さらに、当該「独立代理人」について、要件等の明確化を図るため、関係当局と協議を重ね、国外ファンドと投資一任契約を締結し特定の投資活動を行う国内の投資運用業者が独立代理人に該当するかどうかの判定について、「参考事例集」及び「Q&A」を取りまとめ、公表しました。

  • 2. 参考事例集の概要

    「参考事例集」は、

    • I「独立代理人」規定適用時の原則的考え方

    • II特定の投資活動への「独立代理人」規定適用時の基本的考え方

    • III上記IIの基本的考え方のケーススタディ

    により構成されており、以下の点が明確化されました。

    • I国内法上の「独立代理人」規定の適用は、基本的に租税条約上の「独立代理人」規定の解釈指針であるOECDモデル租税条約のコンメンタリーの考え方に沿ったものとなり、具体的には、「独立代理人」と認められるためには、以下の要件を満たす必要があること。

      • 「法的独立性」

        代理人が本人から詳細な指示(detailed instructions)や包括的支配(comprehensive control)を受けていないこと

      • 「経済的独立性」

        代理人が企業家としてのリスク(entrepreneurial risk)を負担していること

      • 「通常業務性」

        代理人が、自己の事業の領域というよりむしろ本人の事業の領域に属する活動を行っていないこと

    • II金融商品取引法の登録を受けた国内の投資運用業者が、国外ファンド(組合型)と投資一任契約を締結し、特定の投資活動を行う場合には、以下のいずれの事情もない限り、当該投資運用業者は「独立代理人」に該当すること。

      • 国内の投資運用業者が投資一任契約において投資判断を一任されている部分が少なく、実質的に国外ファンドの組合員が直接投資活動を行っていると認められる

      • 国内の投資運用業者の役員の2分の1以上が、国外業務執行組合員の役員又は使用人を兼任している

      • 国内の投資運用業者が、国外ファンドから投資一任を受けた運用資産の総額又は運用利益に連動した(当事者の貢献を反映した適切な)報酬を収受していない

      • 国内の投資運用業者がその事業活動の全部又は相当部分を国外ファンドとの取引に依存している場合において、当該国内の投資運用業者が事業活動の態様を根本的に変更することなく、また、事業の経済的合理性を損なうことなしに、事業を多角化する能力若しくは他の顧客を獲得する能力を有していない(ただし、当該国内の投資運用業者が業務を開始した当初の期間を除く。)

  • 3. 「Q&A」の概要

    「Q&A」は、「参考事例集」における法的独立性(国内の投資運用業者が十分な裁量権を有しているかどうか)に関する実務上の疑問点を以下の項目ごとに、詳細に解説したものです。

    • リスク管理

    • 資産配分(アセット・アロケーション)

    • 投資制限(ネガティブ・リスト等)

    • 投資方針

    • 投資承認

    • 情報交換

    • 代理人としての監督(オーバーサイト)

「参考事例集」及び「Q&A」は、国外ファンドと投資一任契約を締結し特定の投資活動を行う国内の投資運用業者が独立代理人と認められる場合を明確化するものであり、PEリスクの排除に資し、我が国金融・資本市場の競争力強化につながるものと期待しています。

特定の投資活動に係る恒久的施設(Permament Establishment)について

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「恒久的施設(PE)に係る「参考事例集」・「Q&A」の公表について」(平成20年6月27日)にアクセスしてください。


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