アクセスFSA 第99号(2011年9月)

アクセスFSA 第99号(2011年9月)

写真1 写真2
企業会計審議会総会・企画調整部会
合同会議で挨拶をする自見大臣
(8月25日)
子ども見学デー「金融庁へGO!」
大臣室で記念撮影
(8月18日)

目次

【フォトギャラリー】

去る8月17日(水)、18日(木)の2日間、子ども見学デー「金融庁へGO!」を開催し、広報室での厳正な抽選の結果、17日は30名の小学生と23名の保護者・引率者、18日は25名の小学生と15名の保護者・引率者に参加していただきました。

当日はまず、眞下広報室長からオリエンテーションを行い、引き続き「金融ってなぁ~に?」と題して、長嶋総務企画局政策課課長補佐が講師となって、くらしや経済に関わりの深いお金の流れについての勉強や、実際の1億円の札束・金塊等のレプリカを用いての実体験も行いました。

続いて、「大臣室をのぞいてみよう」と題しまして、大臣室や大審判廷を見学したほか、大臣室では、実際に大臣の椅子に座って記念撮影を行うなど、子どもたちや保護者・引率者から大変好評でした。

ご来庁いただきまして、ありがとうございました。

写真3

記者会見室で記念撮影

写真4 写真5
大審判廷(審判手続き室)の見学
(庁内見学)
お金の「重さ」を体験
(「金融ってなぁ~に?」より)

「東日本大震災関連情報」について

東日本大震災の発生から半年が経過しました。

改めて、東日本大震災によりお亡くなりになられた方々に対し衷心よりお悔やみを申し上げますとともに、被害を受けられた被災者の皆様に対して心よりのお見舞いを申し上げます。

金融庁では、引き続き、以下を窓口として「東日本大震災関連情報」を提供しています。

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【震災関連トピックス】

「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」について

  • 1.ガイドライン策定の経緯

    東日本大震災の影響によって、住宅ローンを借りている個人や事業性資金を借りている個人事業主等が、今後、これらの既往債務の負担を抱えたままでは、再スタートに向けて困難に直面する等の問題(いわゆる二重債務問題)が考えられます。

    この二重債務問題は、震災からの着実な復興のために適切な対応がなされなければならない極めて重要な課題であることから、政府として「二重債務問題への対応方針」(平成23年6月17日関係閣僚会合)を取りまとめ、このなかで「『個人向けの私的整理ガイドライン』を策定する」とされました。

    これを受け、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会」(座長:高木新二郎氏)において、金融機関等が、個人である債務者に対して、破産手続等の法的倒産手続によらず、私的な債務整理により債務免除を行うことによって、債務者の自助努力による生活や事業の再建を支援するため、私的整理に関する関係者間の共通認識を醸成し、私的整理を行う場合の指針となる「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(平成23年7月15日策定。以下「ガイドライン」という。)が取りまとめられました。

    このガイドラインの運用にあたり、第三者機関「一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会」(以下「運営委員会」という。)を設置し、平成23年8月22日からガイドラインの適用が開始されました。

  • 2.ガイドラインの概要

    このガイドラインの主な特徴は以下のとおりです。

    • (1)被災された債務者が、法的倒産手続による不利益、例えば信用情報機関への登録などを回避しつつ、債権者との間の私的な合意により、債務免除等を受けることができる。

    • (2)対象となる債務者は、東日本大震災の影響により、既往債務を弁済することができない又は近い将来に弁済できないことが確実と見込まれる個人。

    • (3)対象となる債権者は、主として民間の銀行、協同組織金融機関に加え、政府系金融機関、貸金業者、リース会社などの金融機関等。

    • (4)主債務者が通常想定される範囲を超えた災害の影響により主債務を弁済できないことを踏まえ、保証人に対しては、その責任の度合いや生活実態等を考慮して、保証履行を求めることが相当と認められる場合を除き、保証履行を求めない。

    • (5)同ガイドラインに基づく債権放棄については、原則として債権者及び債務者に課税関係が生じない。(研究会が国税庁に確認)

※詳しくは、「一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会」のウェブサイトにアクセスしてください。

(関連情報)

※詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から個人債務者の私的整理の手続き費用に係る東日本大震災復旧・復興予備費の使用について(平成23年8月19日)にアクセスして下さい。

  • ○「『平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての金融検査マニュアル・監督指針の特例措置及び運用の明確化について』に関するよくあるご質問(FAQ)」の追加について

    平成23年5月24日付で「『平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての金融検査マニュアル・監督指針の特例措置及び運用の明確化について』に関するよくあるご質問(FAQ)」を公表したところですが、個人債務者の私的整理ガイドラインに基づく弁済計画に関する取扱いに関して、新たな質問・回答を追加し公表しました。

  • ○個人債務者の私的整理の手続き費用に係る東日本大震災復旧・復興予備費の使用について

    ガイドラインの適用にあたっては、政府として、「東日本大震災からの復興の基本方針(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定)において、「『個人債務者の私的整理に関するガイドライン』の運用支援などの各施策を政府全体として総合的に推進していく。」としたところです。

    これを踏まえ、被災された債務者が運営委員会を利用する際の弁護士費用等を補助するため、平成23年度東日本大震災復旧・復興予備費を使用することとしました。(8月19日閣議決定)

    運営委員会の実施する支援業務のうち、仮に一般の手続きと同様の処理をした場合に被災された債務者自身が負担することとなる以下の手続きに要する経費について、運営委員会に対して補助を行います。

    (1)個人債務者による申出の支援

    (2)個人債務者の弁済計画案の作成の支援

    (3)弁済計画案についての報告書の作成(弁済計画案のチェック)

    (4)弁済計画案の説明等の支援


【その他のトピックス】

「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」による「預保納付金の具体的使途について」等の公表について

振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺等の預貯金口座への振込みを利用した犯罪の被害者に対して、振り込んだ先の口座(犯罪利用口座)に一定の残高が残っている場合に、当該残高を原資として返金を行うことにより被害の回復を図ること等を目的とした法律であり、平成20年6月に施行されています。

金融庁では、昨年9月に「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」を設置し、被害者に返金しきれなかった残金である預保納付金の具体的使途、及び被害者に対する返金率の向上に向けた施策について、外部の方々からのヒアリングを行いつつ、検討を行ってきました。検討にあたり、特に、預保納付金の具体的使途については、被害者自身も含めて広く意見を伺うことが適当であるとの観点から、本年7月14日に「預保納付金の具体的使途に関するプロジェクトチーム案」を公表、同月28日まで意見を募集したところであり、8月26日には、寄せられた意見も参考としつつ、プロジェクトチームとしての最終的な結論を取りまとめた「預保納付金の具体的使途について」を公表しました。

具体的な使途としては、1.犯罪被害者等の子供に対する奨学金、2.犯罪被害者等支援団体に対する助成の2つを柱とし、今後は、これらの両事業の担い手となる団体を選定する作業を進めていくことを予定しています。

また、被害者に対する返金率の向上に向けた施策に関しては、その取組みの一環として、実際に被害に遭われた方が返金の申請を迅速に行うことができるようリーフレットを作成しました。今後は、リーフレットを財務局、金融機関、警察をはじめとする関係機関へ配布する予定です。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道関係資料」から「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」にアクセスして下さい。


「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府(案)」に対するパブリックコメントの結果等について

金融庁では、平成28年(2016年)3月31日までの間に限り、本邦企業が米国会計基準に基づく連結財務諸表を金融商品取引法上の開示書類として提出することを認めていましたが、今般、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」)等を改正(内閣府令第44号。平成23年8月31日公布)し、前述の使用期限を撤廃しました。

本改正は、平成23年(2011年)6月21日に公表した大臣談話「IFRS適用に関する検討について」において、「2016年3月期で使用終了とされている米国基準での開示は使用期限を撤廃し、引き続き使用可能とすることとする」ことを受けたものです。

米国会計基準の使用に係る規定については、平成21年12月11日付で公布した改正連結財務諸表規則(内閣府令第73号)において、本邦企業にIFRS(国際会計基準)の任意適用を認める規定を導入した際に、削除し、米国基準の使用期限を平成28年(2016年)3月31日までとするとともに、平成22年(2010年)3月31日後における新たな米国基準の使用を禁止しました。

本改正は、米国会計基準の使用に係る規定について、平成21年12月11日付改正の前の状況に戻すものです。

具体的には、

  • (1)米国証券取引委員会に米国式連結財務諸表(米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法により作成した連結財務諸表)を登録している連結財務諸表提出会社は、金融商品取引法上の連結財務諸表について、引き続き米国基準を使用することが可能。

  • (2)米国証券取引委員会に米国式連結財務諸表を登録している連結財務諸表提出会社は、金融商品取引法上の連結財務諸表について、改正府令の施行の日(平成23年8月31日)以後、新たに米国基準を使用することが可能。

  • (3)本邦に連結財務諸表制度が導入された昭和52年(1977年)前から米国式連結財務諸表を作成している連結財務諸表提出会社は、「当分の間」米国基準を使用することが可能。

となります。


「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について

金融庁では、「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」等につきまして、平成23年6月24日(金)から平成23年7月25日(月)にかけて公表し、広く意見の募集を行い、その結果等を平成23年8月26日(金)に公表しました。

本件の政令は、平成23年8月26日(金)に閣議決定され、内閣府令と併せて、平成23年8月30日(火)に公布されました。本件の政令・内閣府令は、平成23年12月1日(木)から施行されることとなります。

本件の政令・内閣府令の概要は、以下のとおりです。

  • 「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」(平成22年12月24日公表)に盛り込まれた方針( II -1-15)「公募増資に関連した不公正取引への対応」に基づき、以下の措置を講ずることとしました。

    • 1.何人も、増資公表後、新株等の発行価格決定までの間に空売りを行った場合には、当該増資に応じて取得した新株等により空売りに係る借入れのポジションの解消を行ってはならないこととしました。

    • 2.証券会社に対し、新株等の割当て前に、上記1.の規制の内容等を周知するための書面交付を義務付けることとしました。


平成23事務年度監督方針及び検査基本方針等について

  • 1.はじめに

    金融庁においては、毎年事務年度(検査事務年度)当初に、

    • (1)金融機関の監督上の重点事項を明確化するため、業態別に監督方針を、

    • (2)金融機関に対する検査運営の基本的枠組みや重点検証項目を明確にするため、検査基本方針を、

    それぞれ策定・公表しており、本年8月26日に公表しました。そこで、本日はその内容について御紹介します。

  • 2.監督方針について

    • (1)策定の背景と基本的取組姿勢

      今回の監督方針の策定に当たっては、金融システムを取り巻く環境を俯瞰し、1.東日本大震災の影響により、我が国経済が厳しい状況にあること、2.サプライチェーンの回復等により景気の持ち直し傾向が続くと見られる一方で、電力供給の制約や原子力災害の影響、海外景気の下振れ懸念、為替レート・株価の変動等によって景気が下振れするリスクが存在していること等に着目しました。

      特に、今日のようにグローバル化が進展する中では、世界経済に関するリスクが発現し、危機がおきた場合でも、自国への影響を軽微なものに留めるよう、経済・金融システムの強靱性を高めておくことが重要です。そこで、金融機関が、被災地の復旧・復興をはじめ、我が国の再生・発展に貢献していくためにも、海外経済・金融資本市場の動向等に注視しながら、リスク管理をはじめとした財務の健全性を確保することが必要と考えました。

      これを踏まえ、監督当局としては、引き続きベター・レギュレーションの一層の定着・深化を基本に、リスク感応度の高い行政、国民の目線・利用者の立場に立った行政、将来を見据えた行政、金融機関の自主的な経営改善・経営判断に資する行政に努めることとしました。以下では、各業態別に、監督上の重点分野を御紹介いたします。

    • (2)主要行等向け監督方針の特徴

      主要行等向けの監督方針は、監督上の重点分野に、1.円滑な金融仲介機能の発揮、2.リスク管理と金融システムの安定、3.顧客保護と利用者利便の向上を位置付けました。具体的に、本事務年度の主な特徴は次の3点に集約されます。

      第一に、東日本大震災の発生等を受けて、本事務年度は、「金融機関による金融仲介機能の真価が問われる一年」との認識の下、震災に対する金融面の対応など、金融仲介機能に係る記述を充実させたほか、金融機関によるシステムの自主点検や業務継続体制の再検証等について強調しました。

      第二に、リスク管理について、各行において収益力強化の取組みが見られる中で、震災の影響や、海外経済・金融の動向、市場リスク・流動性リスク等の各種リスクに注視していくことが必要である旨を強調しました。さらに、収益力の強化の取組みを支える上で、グループ全体でのリスク・ガバナンスの強化が必要であることも明記しました。

      第三に、金融機関における顧客保護のあり方について、基本的考え方を示しました。公共性が高く信頼のある金融機関として、顧客の期待に応えていくことが重要です。そこで、金融商品等の開発段階から顧客の属性に配慮するなど、経営陣が主導性を発揮して顧客保護に関する各種取組みを進めることが必要である旨を強調しました。

    • (3)中小・地域金融機関向け監督方針の特徴

      今事務年度の中小・地域金融機関向け監督方針においては、主要行等向け監督方針との共通事項のほか、主に次のような点を明記しています。

      第一に、各財務局等と、これまで以上に各金融機関の経営課題等に関する認識を共有し合い、一体となった監督行政に努めます。その際、検査部局とも連携し、データ分析や着眼材料の提供等の充実を図るとともに、各財務局等によるヒアリング結果等を活用して更に深度ある経営分析を行うなど、監督力の強化に努めます。

      第二に、円滑な金融仲介機能の発揮の観点からは、本年7月に金融機能強化法の改正法が施行されたことを踏まえ、地域金融機関が震災からの復旧・復興に積極的な役割を果たしていくためにも、同法の活用の積極的な検討を促していきます。特に、協同組織金融機関については、中央機関による傘下金融機関に対する業務補完・支援機能の発揮状況を注視するとともに、中央機関との一層の連携に努めます。

      また、地域密着型金融については、顧客企業に対するコンサルティング機能の発揮等の取組みを、中長期的な視点に立って組織全体として継続的に推進することで、顧客基盤の維持・拡大、収益力や財務の健全性の向上に繋げていくことが重要です。

      こうした考え方の下、本年5月に改正された監督指針を踏まえつつ、トップヒアリング等の機会を通じ、地域密着型金融に関する取組み状況をフォローアップするとともに、当該取組みが利用者と地域金融機関の双方にとってより実効的なものとなるよう、踏み込んだ意見交換を行っていきます。

      第三に、リスク管理と地域における金融システムの安定の観点からは、政策保有株式の固有のリスク(ロスカットが困難等)を踏まえたリスク管理態勢や、大口与信先の信用リスク管理態勢(抜本的な事業再生等の積極的な支援を含む)について検証するとともに、収益がリスクの顕在化に対する備えとしても重要な役割を有していることを念頭に、アジア進出支援を含む地域密着型金融の実践等、中長期的な視点に立って収益基盤の充実を図るための取組み等について把握します。

      また、協同組織金融機関については、その基本的性格等を踏まえた金融仲介機能の最大限の発揮に向けた取組みを注視していきます。

    • (4)金融商品取引業者等向け監督方針の特徴

      金融商品取引業者等向けの監督方針は、監督上の重点分野に、1.市場仲介機能の適切な発揮、2.リスク管理と金融システムの安定、3.顧客保護と利用者利便の向上を位置付けました。具体的に、本事務年度の主な特徴は次の3点に集約されます。

      第一に、金融商品取引業者等が、市場の担い手として市場仲介機能を適切に発揮することにより、我が国市場に対する信認を高め、金融商品の公正な価格形成につなげていくことが重要です。こうした観点から、公開引受けに係る審査体制等の内部管理態勢の検証、反社会的勢力排除に係る取組みを行っていくことを明記しました。

      第二に、足元の市況が低迷しているなど、金融商品取引業者等の収益環境が厳しい状況にある中で、金融商品取引業者等が質の高いリスク管理を徹底することがますます重要となっています。そこで、証券会社グループ全体の統合的なリスク管理の促進や、ヘッジファンドを含む各種ファンドの実態把握に取組むことを強調しました。

      第三に、金融商品取引業者等における顧客保護・利用者利便については、主要行等の監督方針と共通の考え方のもと、具体的には、顧客目的に立った勧誘・説明・アフターケアの促進等に重点的に取組みます。

    • (5)保険会社等向け監督方針の特徴

      保険会社等向け監督方針では、東日本大震災への対応を踏まえ、保険業が保障・補償機能の提供を通じて国民生活や経済活動の安定に果たす役割の重要性に言及した上で、以下の事項を新たに記載しました。

      第一に、経営戦略と一体で統合的なリスク管理態勢の整備を促すため、ALMやリスク管理態勢をヒアリングにより検証します。保険グループについてはグループ全体での統合的なリスク管理態勢等を重点的に検証します。また、リスク計測を厳格化したソルベンシー・マージン比率等の円滑な導入を準備しつつ、専門組織と連携しながら経済価値ベースのソルベンシー規制を検討していきます。

      第二に、保険金支払管理態勢に関し、改善後の機能発揮状況を重点的に検証します。また、震災対応について積極的に評価した上で平時においても契約者の立場に立った能動的取組みの姿勢を継続するよう促します。保険募集態勢に関し、顧客のニーズ及び知識・経験等に留意した説明の実施状況、保険募集代理店に対する指導・管理の状況を新たに検証対象としました。

      第三に、認可特定保険業者に関し、認可申請を円滑に処理し、認可した業者には丁寧な監督を行うこと、商品審査に関し、監督指針を踏まえ、審査の実効性を確保しつつ迅速に行われるよう配慮することを明記しました。

  • 3.検査基本方針について

    検査基本方針では、各金融機関において、東日本大震災の被災者の方を含めた資金需要者への適切・円滑な資金供給や、利用者への良質な金融商品・サービス提供という役割を果たす態勢が整備されているか検証するとともに、そうした役割を果たすことができるだけの十分な財務基盤と強固で包括的なリスク管理態勢が整備されているかについて検証することを基本としています。

    以下では、今回の検査基本方針のうち、「検査重点事項」の概要について御紹介します。

    • (1)経営管理態勢の整備

      金融仲介機能の発揮、法令等遵守、顧客保護等の徹底及び各種リスクの的確な管理を行うためには、適切な経営管理のもとでの、経営陣の主導性とコミットメントが決定的に重要です。したがって、経営方針に基づく戦略目標について、足下の経営状況や中期的な展望も踏まえ、十分な分析と検討が行われているか、等について、重点的に検証することとしています。

      また、金融持株会社のグループ経営管理の重要性が高まってきていることを踏まえ、経営陣の責任において、金融持株会社の子会社等に対するグループ経営管理機能が十分発揮されているか、等について、重点的に検証することとしています。

      さらに、東日本大震災や大規模なシステム障害等、従来の想定の範囲に必ずしも収まらない事象が発生していることを踏まえ、経営陣の責任において、主要なリスクを十分に想定した業務継続体制が整備されているか、等についても、重点的に検証することとしています。

    • (2)金融円滑化の一層の推進

      中小企業金融円滑化法の期限が平成24年3月末まで1年間延長されたことも踏まえ、昨事務年度に引き続き、金融機関がコンサルティング機能等を十分に果たしながら、適切なリスク管理をベースとして、円滑かつ積極的な金融仲介機能を発揮できる態勢が整備されているか、重点的に検証することとしています。

    • (3)法令等遵守態勢の整備

      反社会的勢力との取引を未然に防止する態勢や、反社会的勢力によってテロ資金供与やマネー・ローンダリングなどに利用されることを防止するため、本人確認や疑わしい取引に関する態勢が整備されているか、等について重点的に検証することとしています。

      また、シンジケート・ローンや資産流動化のアレンジャー業務等、金融機関のホールセール業務に広がりが見られることを踏まえ、新規業務や複雑なスキームの取引の適法性等について、事前に検討を行う態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

    • (4)顧客保護・利用者利便の向上

      金融機関における顧客保護・利用者利便の向上は、国民経済の健全な発展に資するだけでなく、金融機関に対する国民の信頼性向上を通じて、我が国金融システムの安定に資する重要な取組みです。特に、顧客保護に関しては、単に法令を遵守するだけでなく、公共性が高く信頼性のある金融機関として、顧客の求める水準を認識し、その期待に応えていくことが求められています。

      このため、顧客等に関する情報管理の徹底、適正かつ安全な金融取引の確保、金融ADR制度への対応を含めた相談・苦情等への積極的な対応、顧客に対する適切な説明、に関する態勢が整備されているか等について、重点的に検証することとしています。

      また、利用者利便の向上に向けた優れた事例があれば、当局として積極的に評価することとしています。

    • (5)リスク管理態勢の整備

      • ○統合的リスク管理

        金融技術の進展により、金融機関間の取引が高度に複雑化しているため、従来のリスクカテゴリーの観点だけでは捉えられないリスクが発生することや、市場のストレス事象に伴ってリスクが連鎖的に増幅・伝播することを念頭に置いて、リスク管理態勢の整備を図る必要があります。

        このため、金融機関の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じた統合的リスク管理態勢が整備されているか、バンキング勘定の金利リスク等のバーゼルII・第2の柱で考慮すべき主要なリスクについて適切に管理する態勢が整備されているか、統合的なリスク計測手法の前提条件・計算手法等に起因する限界・弱点が存在することを認識した上で、多様なリスクを統合的に管理する態勢が整備されているか、厳格なストレス・テスト(例えば、金利上昇、円高、株安等の複数事象が同時に発生するケース)等を実施して経営判断に活用しているか、等について、重点的に検証することとしています。

      • ○信用リスク管理

        金融機関における信用リスク管理の重要性に鑑み、大口与信先等について、十分な債務者の実態把握に基づく適切な審査・与信管理態勢が整備されているか、特定の企業グループや業種等に対する信用集中リスクについて適切な管理態勢が整備されているか、債務者の的確な予兆管理に努めてリスク情報を適時適切に信用格付に反映する態勢が整備されているか、等について重点的に検証することとしています。

        また、住宅ローンについて、金融機関間の競争が高まっていることを踏まえ、いわゆる与信時から一定期間経過後にデフォルト発生がピークに達する特性等を勘案しつつ、リスク管理を行う態勢が整備されているか、等について、検証することとしています。

      • ○市場リスク管理

        昨今の金融・資本市場の動向等に鑑み、リスク枠や損失限度枠等の管理を実効的に行う態勢が整備されているか、多様なリスクを内包する金融商品・債券・株式等についてリスクを総合的に勘案した管理態勢が整備されているか、市場の変動が与えるリスク等を的確に把握する態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

      • ○流動性リスク管理

        先般の世界的な金融危機において、外貨流動性の確保が問題となる事例が見受けられたことを踏まえ、海外に拠点を持つ我が国金融機関や在日拠点を有する外国銀行等について、流動性リスクをグローバルベースで適切に管理する態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

      • ○システムリスク管理

        金融機関のシステムは、決済システムの中核をなしており、社会インフラとして公共性が極めて高く、仮に障害等が発生した場合には、利用者利便を損ねるだけでなく、社会にも大きな影響を与え、金融機関としての信用を失墜する事態も招きかねないものとなっています。これらを踏まえ、安定稼働しているシステムを含めたシステムリスク管理に対する経営陣の認識は十分か、等について、重点的に検証することとしています。

      • ○大手金融グループ全体としてのリスク管理

        海外の経済状況や金融・資本市場の動きが注目を集める中、大手金融グループについては、収益基盤の拡大を目指し、アジアを中心に海外拠点の増強が見られるほか、グループ内の銀行・証券会社等の連携が進んでいるため、グローバルベースでグループ全体として総合的なリスク管理態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

      • ○保険会社におけるリスク管理

        改定保険検査マニュアルに基づき、統合的リスク管理態勢の整備・確立に向けた取組みが進められているか、経営陣の確固たる主導性やコミットメントの下で負債特性に応じた資産・負債の総合的な管理(ALM)の態勢整備が進められているか、国内外の金融・資本市場の動向等に応じたストレス・テストを実施し、経営判断に活用しているか、等について、重点的に検証することとしています。

  • 4.最後に

    以上が本事務年度の監督方針及び検査基本方針の主な内容です。当局としては、本事務年度も、この監督方針、監督指針や検査基本方針等に基づきながら、金融機関の皆様との対話に努め、利用者や国民の視点に立った適切かつ実効性ある検査・監督に努めていきたいと考えています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道関係資料」から「平成23事務年度監督方針及び検査基本方針等について」(平成23年8月26日)にアクセスして下さい。


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