ディスカッションペーパー等

ディスカッションペーパーとは

金融研究センターにおける「ディスカッションペーパー(DP)」とは、当センター所属の研究官等が、研究成果を取りまとめたものです。随時掲載しますので、ご高覧いただき、幅広くコメントを歓迎します。

なお、DPの内容はすべて執筆者の個人的見解であり、金融庁あるいは金融研究センターの公式見解を示すものではありません。

25年度ディスカッションペーパー

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ファイル 題名 執筆者 年月
DP2013-9
(PDF:2,066KB)
マクロ・プルーデンス政策にかかる最新の考え方や監督規制の動向 井上 哲也 2014年3月
DP2013-8
(PDF:1,482KB)
欧米における金融破綻処理法制の動向 森下 哲朗 2013年9月
DP2013-7
(PDF:1,548KB)
信用リスクのマクロストレステストの研究―ボトムアップ・アプローチを中心に- 菅野 正泰 2013年7月
DP2013-6
(PDF:2,008KB)
シャドーバンキングの発展とそのリスクの蓄積、日本のシャドーバンキング・セクター 小立 敬 2013年7月
DP2013-5
(PDF:1,096KB)
カナダの金融監督制度の概要 グローバル金融危機を乗り切った背景を中心に 岩井 浩一 2013年7月
DP2013-4
(PDF:1,748KB)
欧州における銀行監督を巡る最近の動向 井上 武 2013年7月
DP2013-3
(PDF:932KB)
イスラム金融の法規制等の国際比較 英国とマレーシア 新井 サイマ 2013年6月
DP2013-2
(PDF:878KB)
HFT、PTS、ダークプールの諸外国における動向~欧米での証券市場間の競争や技術革新に関する考察~ 清水 葉子 2013年5月
DP2013-1
報告書へ
金融経済教育研究会報告書 - 2013年4月

ディスカッションペーパー要旨

DP2013-9
「マクロ・プルーデンス政策にかかる最新の考え方や監督規制の動向」

井上 哲也 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村総合研究所金融ITイノベーション研究部長)

金融危機後に監督当局の重要な課題となった「マクロ・プルーデンス」は、依然としてその定義に不確定な面が残るものの、危機の予防の重視やトップダウンのアプローチ、金融システムと実体経済との相互作用への注目といった共通の視点を有する。「マクロ・プルーデンス」の政策目的である「金融システムの安定」に関しては、その定義の曖昧さとともに、既に本政策の実践段階に入りつつある英国で、金融政策の拡張としての「信用強化策」との短期的なコンフリクトという新たな課題に直面していることが注目される。一方、サーベイランスの手法は、「マクロ・プルーデンス」の中でも近年イノベーションが進行している領域であると同時に、活用する指標の面では日米欧の間では収斂がみられるようになっている。この間、加工指標や個別銀行監督を通じて得られる情報、さらにマクロ・ストレステストの成果などを具体的にどう活用するかは、米欧でも意見のばらつきがみられ、今後の課題となっている。政策手段についても、特に欧州では、金融危機後に議論された様々な選択肢が先進国にとっての有用性の観点から絞り込まれてきている。併せて、政策効果の発揮や政策運営に関するガバナンスなどの観点から、透明性や説明責任の強化が意識されている一方、具体的に活用される手段を中心に課題を抱えている。「マクロ・プルーデンス」のための組織運営は、米欧では(英国を除いて)既に一段落してその定着を図る段階にあるが、他のマクロ経済政策との連携の観点での政策当局間の関係が意識されつつある。

本稿では、「マクロ・プルーデンス」の運営に関するこれらの主要なテーマについて、資料や文献による調査に加え、米欧の監督当局との面談の成果を活用しながら検討し、我が国での運営に対するインプリケーションを探る。

キーワード:マクロ・プルーデンス、金融システム安定、信用強化策、サーベイランス、カウンター・シクリカル・キャピタル・バッファー、透明性・説明責任、政策当局の連携

DP2013-8
「欧米における金融破綻処理法制の動向」

森下 哲朗 金融庁金融研究センター特別研究員
(上智大学法科大学院教授)

欧米では金融機関の破綻処理法制の整備に向けた努力が重ねられている。たとえば、米国ではDodd-Frank法Title IIにおいて、新たにOrderly Liquidation Authorityというシステム上重要な影響を与える金融会社の破綻処理のための法制が整備されており、また、欧州でも欧州レベルでの金融機関破綻処理制度の整備のための作業が大詰めを迎えている。これらの法制では、金融機関グループの破綻処理にあたり、納税者負担を回避しつつ、秩序ある破綻処理を実現するために、破綻処理を所管する当局に対して広範な権限を与えている。これらの法制の特色としては、具体的な破綻処理手続の対象となる金融機関等が提供する機能とgoing concernとしての価値を維持しつつ破綻処理を行うために、承継金融機関等への資産・権利等の移転を可能としつつ、破綻金融機関等に生じている損失については、株主の権利を償却し、また、無担保債権者の債権を株式に転換したり元本を削減する、いわゆるベイルイン手続によって吸収することが予定されている点を挙げることができる。

また、これらの法制のもとで、金融機関グループを実際に破綻処理するための代表的な戦略としては、グループ構造の頂点に位置する持株会社・親会社が傘下の子会社の損失を吸収し、持株会社・親会社のみを直接の破綻処理手続の対象とするSingle Point Entry戦略が提案されている。

これらの法制や戦略は、国際的な金融機関グループを秩序あるかたちで破綻処理するうえで、有用なものであると評価でき、今後、我が国において国際的な金融機関グループの破綻処理に関する検討を深めていく際にも参考になる点が少なくない。但し、欧米でも未だ議論が対立している問題もあり、また、実際の破綻処理を円滑に行うための様々な課題も存在する。

キーワード : 破綻処理、ベイルイン、銀行及び投資サービス業者の再生及び破綻処理のための枠組みを創設する指令、Dodd-Frank法Title II

DP2013-7
「信用リスクのマクロストレステストの研究―ボトムアップ・アプローチを中心に-」

菅野 正泰 金融庁金融研究センター特別研究員
(神奈川大学経営学部准教授)

本稿は、信用リスクのボトムアップ・アプローチ型マクロストレステストを研究する。第1部では、わが国に対してIMFが実施した金融セクター評価プログラム(FSAP)の他、アメリカのCCAR、欧州銀行監督機構(EBA)実施のテスト等、主要諸外国・地域におけるテストの実施例を調査した上で、テスト実施に伴う課題を整理し、監督当局が当該テストを今後実施する際のテストのあり方について政策提言を行う。調査の結果、参加銀行がテストに使用する信用ポートフォリオリスク計量モデルには、マクロ経済変数がリスクファクターとして導入されていない場合が多いため、テスト実施に際して、マクロストレスのインパクトが通常業務にはない手続で反映されたり、通常使用する計量モデルとはロジックが全く異なる別のモデルで計量され、計量される信用リスク量に一貫性がない点が課題として挙げられる。第2部では、この課題を踏まえ、監督当局から提示されるマクロストレスシナリオを、参加銀行が信用ポートフォリオリスク計量モデルで使用するリスクパラメーターに変換するための汎用的なベンチマークモデルを提案する。モデルの説明変数として、「個社の財務変数」「マクロ経済変数」「業種変数」の3種類のパネルデータを考慮し、多重積分を含む尤度関数の最尤推定により、自行の信用ポートフォリオに影響のあるマクロ経済変数を選択するアプローチである。

キーワード : マクロストレステスト、ボトムアップ・アプローチ、当局ストレステスト、ベンチマークモデル

DP2013-6
「シャドーバンキングの発展とそのリスクの蓄積、日本のシャドーバンキング・セクター」

小立 敬 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村資本市場研究所主任研究員)

シャドーバンキングとは、銀行システムの外にあるノンバンク信用仲介であると定義されている。米国で発展したシャドーバンキング・システムを整理すると、第一に、米国の金融規制システムの変遷の中で複雑化を伴って発展してきたこと、第二に、銀行外と銀行内のシャドーバンキングが並存していること、第三に、シャドーバンキングの発展の背景には、機関投資家のキャッシュ・プールにおける需要が存在したことが特徴である。そして、大規模な金融コングロマリットとシャドーバンキング・システムの共生関係が成り立っていた。シャドーバンキング・リスクは、満期変換や流動性変換、不完全な信用リスク移転、レバレッジ、規制裁定を原因として発生する。金融危機の際にはこれらの要因に加えて、市場慣行や規制環境を含む様々な要因が複合的に絡み合ってシャドーバンキング・リスクが顕在化した面がある。シャドーバンキング・システムのモニタリングに当たっては、金融コングロマリットや銀行システムと、シャドーバンキングの間の取引の関係性や信用取引チェーンを確認しながら、シャドーバンキング・リスクを識別する必要がある。

キーワード : 銀行外シャドーバンキング、銀行内シャドーバンキング、取付け、機関キャッシュ・プール、プロシクリカリティ、資金循環統計

DP2013-5
「カナダの金融監督制度の概要 グローバル金融危機を乗り切った背景を中心に」

岩井 浩一 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村資本市場研究所主任研究員 ニューヨーク駐在員事務所長)

本稿では、カナダがグローバル金融危機を他の先進諸国に比べて上手く乗り切ったと評価されている点を念頭に置きつつ、同国の金融監督制度や金融システムの特徴とそれらが危機回避に果たした役割について既存研究の議論を整理する。

カナダの金融システムは、歴史的な経緯もあり、(1)金融当局間の協調体制が確立され、各当局のインセンティブが調和されてきた、(2)リスクベース・アプローチの監督行政が重視され、保守的な金融規制が構築されてきたという特徴を持つ。

こうした制度要件の下、監督当局間の情報共有が進み、マクロプルデンシャルな観点から金融機関経営や金融市場の監督行政を進めることができた。また、保守的な金融規制の下で、金融機関のリスク・カルチャーが熟成され、安易なモーゲージ貸出が抑制された。同国がグローバル金融危機を乗り切ることができた理由に関しては、これら制度面での効果に加えて、機動的な財政金融政策を実施できたこと、更には、大手銀行の市場占有率が高いという銀行システムも危機回避に奏功したとされる。

カナダの成功要因として様々な理由が挙げられているものの、既存研究では、いずれの要因がどの程度の効果を発揮したかについては必ずしも明らかにはされていない。そこで、簡便な方法として、Brownlees and Engle (2012)等によって開発されたシステミック・リスク指標(SRISK)を用いて、金融危機前後のカナダと米国の金融システムの比較を行ったところ、(1)両国間には、金融市場の規模と比べた場合のシステミック・リスクの大きさやレバレッジ比率の水準には格差はないものの、(2)カナダでは、システミック・リスクを有する金融機関の数が限定されていたほか、金融機関の財務健全性が金融市場から影響を受けづらいことが確認された。これらの事実は、同国の制度要件と金融機関経営の特性がシステミック・リスクのスピルオーバー効果を抑制したことを示唆するものである。

キーワード : カナダ、監督制度、システミック・リスク

DP2013-4
「欧州における銀行監督を巡る最近の動向」

井上 武 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村資本市場研究所主任研究員 ロンドン駐在員事務所長)

欧州では、銀行危機とソブリン危機の負の連鎖を断ち切るために、銀行に関する政策を幅広く統一することを目的とした銀行同盟(Banking Union)の構築が議論されている。銀行同盟の一つの要素である単一監督制度(Single Supervisory Mechanism)は、ユーロ圏及び制度への参加を希望する国の金融機関の監督を欧州中央銀行(ECB)に移管するもので、2014年中にも導入が予定されている。

ECBによる銀行監督では、金融政策との利益相反の問題を如何に管理していくかも重要であるが、今回の欧州における危機を踏まえると、政治や各国からの独立性を如何に確保するかという点が最も重要な要素となる。また、独立した判断を下すことができるためのバックアップとして、銀行同盟の他の要素である単一破たん処理制度(SRM:Single Resolution Mechanism)、単一預金保険制度(SDGS:Single Deposit Guarantee Scheme)についてもできる限り早期に準備をしていくことが望ましい。

キーワード : 銀行同盟、単一監督制度(SSM)、単一破たん処理制度(SRM)、ソブリン危機

DP2013-3
「イスラム金融の法規制等の国際比較 英国とマレーシア」

新井 サイマ 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村資本市場研究所研究員)

本調査は、コンベンショナルな銀行・金融サービス業が主流であった諸外国において、金融規制上、イスラム金融をどのように位置づけ、監督しているかを、関連文献調査及び専門家とのヒアリングを中心に考察したものである。伝統的な金融法制度の枠組みの中でイスラム銀行を規制する英国と、既存の銀行法とは別途にイスラム銀行法を制定しているマレーシアを調査対象国としてとりあげた。

本調査では、両国におけるイスラム金融の拡大の背景を踏まえ、イスラム銀行とコンベンショナルな銀行の法制度、銀行監督体制、会計、税制、預金者保護等の違いを比較した。また、イスラム銀行取引の法律上の定義や種類、プロダクトや顧客層についても調査した。最後に、日本への示唆として、イスラム銀行を国内で設立する際に必要な法的論点を検討する。

キーワード : イスラム銀行、銀行規制、銀行監督、預金保険、英国、マレーシア

DP2013-2
「HFT、PTS、ダークプールの諸外国における動向~欧米での証券市場間の競争や技術革新に関する考察~」

清水 葉子 金融庁金融研究センター特別研究員
(福井県立大学経済学部准教授)

日本では1998年の取引所集中義務廃止によって、取引所外取引システム(PTS)が現れるなど、証券市場の市場間競争が始まっている。欧米でもATSやMTFと呼ばれる取引所外取引システムが拡大し、既存の証券取引所にならぶ主要な取引の場に成長するとともに、価格の透明性の低いダークプールも多様な形で広がっている。また、2000年半ば頃から、コンピューター・アルゴリズムを利用した人手を介さない発注や、超高速の取引を繰り返す高頻度取引(HFT)が大きく拡大し、執行の高速化・取引の小口化・気配提示頻度の増加・キャンセルの増大など証券市場にさまざまな影響を与えている。市場間競争やテクノロジーの進展は、イノベーション促進や取引コスト低下の面で基本的に望ましいことと考えられる一方、複数に分散した市場に対して、全体的としての効率性・公正性の確保のためにどのような対応が必要なのか、新しいテクノロジーが市場に及ぼしている影響をどう評価すべきかについて、欧米でも議論が途上である。

本報告では、まずアメリカと欧州の市場構造デザインを概観する。アメリカについては、市場間競争というコンセプトが生まれた経緯と、その後の市場間競争の展開を時間的にたどり、近年のダークプールの拡大とそれに対する規制措置とを確認する。続いて、欧州でのMTFの解禁とブローカーディーラーの最良執行義務について概観する。次に、2000年代半ば以降テクノロジーの影響を受けて証券市場がどのような変化を見せているかを見た上で、アメリカでテクノロジーに対応するためにとられた規制措置を概観し、テクノロジーに対する規制に関わるIOSCOでの議論を紹介する。

キーワード : 市場間競争、HFT、PTS、ダークプール、フラッシュ・クラッシュ

DP2013-1
「金融経済教育研究会報告書」

金融経済教育については、先般の金融危機を踏まえ、利用者側の金融リテラシーを向上させ、利用者の金融行動を改善することが重要であるとの認識が、OECDやG20等における国際的な議論において共有されている等、国民の金融リテラシーを向上させていくことがこれまで以上に重要となっており、金融経済教育の一層の推進が求められている。

このため、金融経済教育の現状をあらためて把握するとともに、我が国における金融経済教育の今後のあり方について検討を行うこととし、平成24年(2012年)11月、金融庁金融研究センターに、有識者、関係省庁、関係団体をメンバーとする「金融経済教育研究会」が設置され、平成25年(2013年)4月まで計7回開催された。本報告書は、今後の金融経済教育の進め方について、知識の習得に加え行動面を重視するとともに、最低限習得すべき金融リテラシーを明確化し、関係者で共有を図るべきといった議論を踏まえ、とりまとめられたものである。

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