加古企業会計審議会会長より竹中大臣に対し、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」の手交 中小企業金融に関するシンポジウムを関東(10/14)・近畿(10/21)・東海(10/23)の各財務局で開催
(10月31日)  
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目 次
【トピックス】
 ○ 「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」の公表について
 ○ 学校における金融教育の一層の推進に資する副教材の公表について
 ○ 「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について
 ○ 繰延税金資産の情報開示の拡充について
 ○ 金融活動作業部会(FATF)特別勧告VII(電信送金)の実施に関するお知らせ
【金融フロンティア】 吉野直行金融研究研修センター長インタビュー
【ピックアップ:中小企業金融】
 ☆ 「中小企業金融特集」のホームページ掲載について
 ☆ 「地域経済再生シンポジウム」の開催について(関東財務局)
 ☆ 「中小企業金融に関するシンポジウム イン 大阪」の開催について(近畿財務局)
 ☆ 「中小企業金融に関するシンポジウム イン 名古屋」の開催について(東海財務局)
【法令解説】
 ○ ヤミ金融対策法施行に伴う貸金業規制法施行令、施行規則の一部改正について
【海外最新金融事情】
 ○ 最終段階に入ったバーゼル委員会のBIS規制見直し協議
【金融ここが聞きたい!】
【金融便利帳】
 ○ 今月のキーワード:ソルベンシー・マージン比率
【お知らせ】
【10月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」の公表について

 企業会計審議会(会長 加古宜士 早稲田大学教授)は、去る10月31日、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下、「意見書」といいます。)をとりまとめ、公表しました。以下、意見書及びそれに含まれる「企業結合に係る会計基準」(以下、「基準」といいます。)の内容について簡単に説明します。


審議会における審議状況
 企業会計審議会第一部会(部会長 斎藤静樹 明治学院大学教授)における企業結合会計の審議は、平成12年9月に開始されました。第一部会は、まず、論点の整理に着手し、平成13年7月に「企業結合に係る会計処理基準に関する論点整理」を公表しました。
 その後、第一部会では、論点整理に対して寄せられた意見を参考にしながら審議を継続しました。この間、海外で行われていたパーチェス法(※1)と持分プーリング法(※2)の取扱いを巡る議論を睨みながら、国際的調和の観点も踏まえ、パーチェス法と持分プーリング法の取扱いを検討の主軸に置いて審議が進められ、その成果が本年8月1日に公開草案として取りまとめられ公表されました。さらに、本年9月以降、公開草案に寄せられた意見を踏まえ、第一部会において審議が進められ、公開草案を一部修正の上、総会に意見書案として提出されました。その案が、今回の総会において意見書として確定され、公表に至った次第です。
 
 (※1) パーチェス法
 被結合企業から受入れる資産・負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法
 (※2) 持分プーリング法
 すべての結合当事企業の資産、負債及び資本を、それぞれの適切な帳簿価額で引継ぐ方法


「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」の内容
 


.基準整備の必要性

 意見書では、基準整備の必要性について、現状では、企業結合に適用すべき会計処理基準が明確ではなく、企業組織再編成を支援するための近年の法制度の整備に比べ、会計基準の整備がやや立ち遅れており、企業結合の経済的実態を正しく認識できる会計処理方法を確立する観点から、首尾一貫した会計基準を整備する必要がある、との基本認識が示されています。


.「企業結合に係る会計基準」の対象取引

 基準では、合併、株式交換・移転といった法的形式の違いによって適用範囲を分けるという考え方はとられておらず、実態面から、企業結合に該当すると考えられる取引はすべて対象となるように規定されています。すなわち、「ある企業(会社及び会社に準ずる事業体をいう。以下同じ。)又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが一つの報告単位に統合されること」という企業結合の定義を充たす取引は、すべて適用対象となります。
 この対象取引に関しては、企業集団内の結合取引(共通支配下の取引)も適用対象となる点に注意が必要です。なぜならば、従来、企業結合会計の対象は、企業集団とその外部の取引(いわゆる独立企業間の結合)だけに限られるという考え方が一般的であったためです。基準では、対象取引として、連結財務諸表原則にいう他の会社の支配の獲得、「共同支配企業」とよばれる企業体を形成する取引と並んで、「共通支配下の取引」があげられています。


.取得と持分の結合の識別
 

(1

) 意見書の基本的な考え方
 意見書では、企業結合には「取得」と「持分の結合」という異なる経済的実態を有するものが存在する以上、それぞれの実態に対応する適切な会計処理方法を適用する必要があると考えられています。すなわち、持分の継続の観点から、取得の場合は、取得企業の持分は継続するものの、被取得企業の持分は継続を断たれたと考えて、パーチェス法を適用することとされています。他方、持分の結合の場合は、すべての結合当事企業の持分は継続しているとみなされ、持分プーリング法を適用するものとされています。
 このように持分の継続・非継続により違いが生じる理由について、意見書では、企業の損益計算の観点から詳細な説明がなされていますが、ここで要約して対比してみると次のようになります。
 


 持分の継続が断たれてしまえば、そこで投資家はいったん投資を清算し、改めて当該資産・負債に対して投資を行い、それを取得企業に現物で出資したと考えられる。したがって、再投資額が結合後企業にとっての新たな投資原価となるが、それは企業結合時点での資産・負債の公正価値に他ならない。
 持分が継続しているならば、そこでは投資の清算と再投資は行われていないのであるから、結合後企業にとっては結合前の帳簿価額がそのまま投資原価となる。

 この持分の継続・非継続それ自体は相対的な概念であり、具体的に明確な事実として観察困難な場合が多いため、持分の継続・非継続は、「対価の種類」と「支配・被支配関係」という操作可能な二つの観点から判断するものとされています。
 具体的には、意見書では、以下の三要件を充たしている場合には、持分の結合と判定され、いずれかの要件を充たさない場合は、取得と判定されます。
 
   
(a)  企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること
(b)  結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと
(c)  議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと
<基準三1(1)>
   
 
 ここで、意見書における会計処理の概要を具体例で示すと、図表1のようになります。

PDF図表1 企業結合の会計処理

 A社とB社の結合が、要件(a)から(c)までの全てを充たしている場合には、持分の結合と判定され、持分プーリング法が適用されます。すなわち、A社・B社それぞれの資産、負債及び資本が帳簿価額で合算されます。
 他方、一つでも要件を充たしていなければ取得と判定され、パーチェス法が適用されます。A社(ここでは取得企業)の資産、負債及び資本は帳簿価額で、B社(ここでは被取得企業)の資産・負債(及び資本)は時価で合算されることになります。このとき生じたのれんは20年以内に規則償却されることになります。

(2

) 具体的な判定方法
 意見書では、(1)の考え方に沿って、取得と持分の結合の判定方法が具体的に定められています。共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合(独立企業間の結合)については、(1)で紹介した要件を(a)から順番に判定していくものとされているので、以下では、要件(a)から(c)の内容を順番にみていくこととします。
 

i

 持分の継続と対価の種類

「要件(a) 対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること」


 要件(a)は、対価の種類の判定に関わるものです。現金等の財産を対価として被結合企業の株式を取得した場合には、被結合企業の持分が継続していないことは明らかであると考えられるので、基準では、まず、対価が原則として議決権のある株式か否かを判定することとされています。
 具体的には、要件(a)の判定に際しては、基準注解の(注2)に定められている6個の補足的要件も充たす必要があり、その一つでも充たしてないと判定された場合には、判定対象の企業結合は、「取得」と判定されます。
   
 
   
.企業結合は、単一の取引で行われるか、又は、原則として、1事業年度内に取引が完了する。
.交付株式の議決権の行使が制限されない。
.企業結合日において対価が確定している。
.交付株式の償還又は再取得の取決めがない。
.株式の交換を事実上無効にするような結合当時企業の株主の利益となる財務契約がない。
.企業結合の合意成立日前1年以内に当該結合目的で自己株式を取得していない。
<基準注解(注2)>
   
   
ii  持分の継続と支配

 支配・被支配関係の判定は、要件(b)及び要件(c)により行われます。基準では、議決権比率が等しいという要件は、持分が継続しているための必要条件とされ、要件(b)を充たしたものについてのみ、要件(c)の判定を行うものとされています。この関係については、過半数の議決権を取得すれば、結合後企業の最高意思決定機関である株主総会を支配することができ、要件(c)の判定規準として掲げられている事項を左右する権限を有することになるから、要件(b)はいわば最大の実質規準であり、本要件を充たさないものはその段階で「取得」として判定されると説明されています。

「要件(b) 議決権比率が等しいこと」

 要件(b)の「等しいこと」の具体的内容については、基準注解の(注3)では、結合当事企業が2社の場合には、議決権比率が50対50から上下概ね5パーセントポイントの範囲内にあることをいうものとされています。この上下概ね5パーセントポイントという許容範囲の設定については、実務上の不都合を減らすためには、議決権の数値基準に多少の幅を持たせて、議決権比率以外の要件の判断を加味した方が合理的であると説明されます。また、「総体として」との文言が付されていることから、ここでは結合当事企業の個々の株主についての分析は求められていないと解されます。
   
 
 
 結合後企業に対して各結合当事企業の株主が相対として有することになった議決権比率が等しいとは、当該比率が50対50から上下概ね5パーセントポイントの範囲内にあることをいう。結合当事企業が3社以上の場合には、議決権比率が最上位の結合当事企業を基準とし、他の各結合当事企業との議決権比率を結合当事企業が2社の場合の比率に還元した上で判定する。この場合において、最上位の結合当事企業と議決権比率が等しいと判定された結合当時企業が1社以上あるときは、議決権比率が等しいと判定されなかった結合当事企業も含め当該企業結合は本要件を充たしたものとする。
<基準注解(注3)>
   
 ここで、図表1のA社とB社について考えれば、結合後企業(右側)の議決権総数のうち、旧A社株主が保有する議決権数(の総数)と旧B社株主が保有する議決権数(の総数)の比率が、(概ね)55対45から45対55の範囲内にあれば、要件(b)を充たすことになると考えられます。
 結合当事企業が3社以上の結合の場合は、本要件の適用について複数の考え方があり得るので、その取扱いが特に示されています。すなわち、議決権比率が最上位の結合当事企業とそれ以外の企業を1社ずつ順番に、2社の結合と同様に比較し、最上位の結合当事企業と議決権比率が等しいと判定された結合当事企業が1社でもあれば、その企業結合全体が要件(b)を充たしたものとして取扱われます。

「要件(c)議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと」

 次の要件(c)は、結合後企業の意思決定機関を通じて、又は財務上若しくは営業上の重要な契約等を通じて、結合後企業を支配しているか否かを判定するものです。具体的には、次のいずれにも該当しない場合には、一定の事実が存在しないものとされます。
   
 
   
.いずれかの結合当事企業の役員若しくは従業員である者又はこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関(重要な経営事項の意思決定機関)の構成員の過半数を占めている。
.重要な財務及び営業の方針決定を支配する契約等により、いずれかの結合当事企業の株主が他の結合当事企業の株主より有利な立場にたっている。
.企業結合日後2年以内にいずれかの結合当事企業の大部分の事業を処分する予定がある。
.企業結合の対価として交付する株式の交換比率が当該株式の時価に基づいて算定した交換比率と一定以上乖離し、多額のプレミアムが発生している。
<基準注解(注4)>

 上記のうち、特に項目4.についてみておきますと、ここでは、株式の交換比率が時価に基づいて算定した交換比率と「一定以上乖離し」とされているので、交換比率が時価に基づいて算定されていない限り、要件(c)を充たさないものと判定する趣旨で設けられたものではないと考えらます。
 結合当事企業が3社以上の企業結合について要件(c)の判定を行う場合は、要件(b)の判定において最上位の企業と議決権比率が等しいと判定されたすべての結合当事企業について、判定手続きを実施されます。その結果、いずれの結合当事企業についても上記の事実が存在しない場合には、判定対象とならなかった結合当事企業も含め、その企業結合全体が要件(c)を充たしたものとして取扱われます。
 要件(c)まで判定して、結合当事企業のいずれもが支配を獲得していないと判定されれば、判定対象の企業結合は持分の結合であり、持分プーリング法が適用されることになります。他方、結合当事企業のいずれかが支配を獲得していると判定されれば、判定対象は取得であり、支配を獲得していると判定された企業が取得企業と判定され、パーチェス法が適用されることになります。

iii

 共同支配企業の形成

 基準では、「共同支配企業」とは、「複数の独立した企業により共同支配される企業」であると定義されています。本基準においては、共同支配企業の形成は、企業結合であり、共同支配企業の形成に該当するか否かの判定手順が基準に含められています。その判定においては、判定対象が共同支配されているか否かは、当事者間の契約等から明らかにされることから、要件(b)については判定を行わず、要件(a)と(c)についてのみ判定を行うものとされています。その結果、共同支配企業の形成と判定された企業結合は「持分の結合」とされます。

 以上の「取得」と「持分の結合」の判定手順をフローチャートで示すとすると、図表2のようになると考えられます。フローチャートの途中で「取得」と判定された場合には、その時点で判定手続きは終了します。

PDF図表2 取得と持分の結合の判定手順


.取得の会計処理

 取得と判定された企業結合にはパーチェス法が適用されます。パーチェス法の具体的な処理は次のように定められています。
 

(1

) 取得企業の決定方法
 取得企業は、取得と持分の結合の識別と整合した形で、以下にしたがって決定されます。
 
 
 対価の種類が議決権のある株式以外である企業結合の場合は、対価を支出した企業を取得企業とする。
 対価の種類が議決権のある株式である企業結合が取得と判定された場合には、議決権比率が大きいと判定された結合当事企業を取得企業とする。
 議決権比率が等しいと判定された場合には、それ以外の支配関係の存在を示す一定の事実から支配を獲得したと判定された結合当事企業を取得企業とする。
<基準三2(1)>
 
 
 上記は、それぞれ要件(a)から(c)に対応しており、ある企業結合が取得と判定されるときは、同時に取得企業も決定されるように定められています。

(2

) 取得原価の算定
 被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、取引時点の取得の対価となる財の時価を算定し、それらを合算したものとされます。
 市場価格のある取得企業等の株式が取得の対価として交付される場合には、取得の対価となる財の時価は、原則として、その結合の主要条件が合意されて公表された日前の合理的な期間における株価を基礎にして算定します。このとき使用する株価については、実際の株式交付時点の株価も考えられます。基準では、結合の主要条件が公表された後の株価変動には、被取得企業の本来の事業価値とは必ずしも関係しない影響が混在している可能性があるため、株式交付日の株価が、当該主要条件が合意されて公表された日前の合理的な期間における株価と大きく異ならない場合には、当該株式交付日の株価を基礎として算定することが認められています。
 なお、企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等以外は、発生時の事業年度の費用として処理します。

(3

) 取得原価の配分方法
 取得原価は、取得した資産及び引受けた負債のうち結合日時点において識別可能なものの結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して結合日以後1年以内に配分します。
 このとき、取得後短期間で発生することが予測される費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、負債として認識することが認められています。この負債は、認識の対象となった事象が発生した事業年度又は当該事象が発生しないことが明らかになった事業年度に取崩さなければなりません。また、5年以内に全額を取崩さなければなりません。

(4

) のれんの会計処理
 基準では、のれんは、「被取得企業又は取得した事業の取得原価が、取得した資産及び引受けた負債に配分された純額を超過する額」と定義されています。そのため、連結調整勘定及び営業権のうちのれんに相当するものは、のれんとして表示することが求められています。
 のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。このような処理方法が採用された理由として、結合後の収益と、結合の対価の一部を構成する投資消去差額(のれん)の償却という費用の対応が可能になることがあげられています。また、のれんの「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う方法」との比較の観点から、取得したのれんが時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わる可能性があるため、規則的な償却により、のれんの非償却による自己創設のれんの実質的な資産計上を防ぐことができるとの説明もなされています。

(5

) 負ののれんの会計処理
 負ののれんは、被取得企業又は取得した事業の取得原価が、取得した資産及び引受けた負債に配分された純額を不足する額ですが、基準では、のれんの定義のうち、「超過する額」を「不足する額」に置き換えるような形で定義されています。
 負ののれんは、負債に計上し、20年以内の取得の実態に基づいた適切な期間で規則的に償却します。この処理については、上記(3)により取得後短期間で発生することが予測される費用又は損失を負債計上した残額(すなわち負ののれん)については、承継した資産の取得原価総額を調整する要素とみて、のれんと対称的に、規則的に償却することにしたとの説明がなされています。
 なお、負ののれんとパーチェス法適用時の土地等の評価との関係については、時価が一義的には定まりにくい土地等が識別可能資産に含まれている場合において、負ののれんが多額に生ずるときには、その金額を当該土地等に合理的に配分した評価額も、本基準上の合理的に算定された時価に該当するとの考え方が示されています。


.持分の結合の会計処理

 持分の結合と判定された企業結合には、持分プーリング法が適用されます。
 持分プーリング法の具体的な処理は次のように定められています。
 

(1

) 資産、負債及び資本の引継ぎ
 企業結合に際して会計処理方法の統一伴う修正を行う場合を除き、すべての結合当事企業の資産、負債及び資本の適正な帳簿価額を引継がなければなりません。この「適正な帳簿価額」とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠した帳簿価額を意味しており、過去の会計処理等に誤りがあった場合には、企業結合前に修正されるものと考えられています。

(2

) 企業結合年度の連結財務諸表
 諸外国の会計基準(APB16等)では、過年度の業績との比較の観点から、持分プーリング法の適用に際して、過年度においても結合されていたかのように過年度の財務諸表を合算して修正再表示する処理が採用されてきました。
 この点に関して、我が国では、過年度の財務諸表の修正再表示の慣行がないこと等が考慮され、基準では、結合年度(結合日の属する事業年度)の連結財務諸表については、期首に企業結合が行われたとみなして、損益を合算する処理が採用されています。他方、個別財務諸表については、このような処理は求められていないため、合併等が行われた場合、個別財務諸表上は、企業結合日以降の損益を合算することも認められます。

(3

) 共同支配企業の形成
 共同支配企業の形成には、持分プーリング法に準じた処理方法が適用されます。持分プーリング法に準じた処理方法とは、資本の内訳の引継方法等一部の取扱いを除き、持分プーリング法と同一の処理方法とされています。


.共通支配下の取引等の会計処理

 基準では、共通支配下の取引及び少数株主との取引について、次のような取扱いが定められています。
 

(1

) 共通支配下の取引
 共通支配下の取引は、「結合当事企業(又は事業)のすべてが、結合の前後で同一の企業により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合」と定義されています。
 共通支配下の取引については、連結財務諸表上は、内部取引としてすべて消去し、個別財務諸表上は、原則として、資産及び負債の移転前の帳簿価額を引継ぐ処理を行います。これは、企業集団内における合併等は、基本的に連結財務諸表には影響しない取引であり、個別財務諸表への影響も独立企業間の結合とは区別すべきであると考えられているためです。

(2

) 少数株主との取引
 少数株主との取引に関しては、現金を対価として子会社株式を追加取得する場合の取扱いが連結財務諸表原則に定められていることから、意見書では、連結財務諸表上は、当該取扱いに準じて処理するものとされている。個別財務諸表上の取扱いに関しては、追加取得時の子会社株式の取得原価の算定方法が定められています。


.開示

 基準では、パーチェス法を適用した企業結合、持分プーリング法を適用した企業結合、共通支配下の取引等及び重要な後発事象のそれぞれについて注記事項が定められています。


.実施時期等

 意見書では、本基準を平成18年4月1日以後開始する事業年度(2006年度)から実施するものとされています。したがって、例えば、3月決算の会社の場合、2006年4月1日以降に行われた企業結合に本基準を適用して会計処理することになると考えられます。
 商法との関係については、商法施行規則では、合併等により取得したのれんについて5年内の償却を求められているが、基準では最長20年での償却が認められていることから、本基準の実施にあわせて、商法施行規則の改正が行われる等調整が行われることが適当であるとされています。
 最後に、本基準を実務に適用する場合の具体的な指針等を、企業会計基準委員会が作成することが適当であるとされています。


 「意見書」の本文等をご欄になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「企業会計審議会の意見書の公表について」(平成15年10月31日)にアクセスしてください。

学校における金融教育の一層の推進に資する副教材の公表について

 金融庁は、去る10月7日、学校における金融教育の一層の推進を図るために開発してきた副教材「インターネットで学ぼう わたしたちの生活と金融の働き」をホームページに掲載しました。


副教材開発のねらい】

 近年、金融を取り巻く環境は大きく変化し、多様な金融商品や取引形態が登場するとともに、金融はより身近な存在になりつつあります。このような状況の下、消費者として将来を見据えた賢明な生活設計を行うためには、金融に関する幅広い知識や判断力を養う必要があります。このため、金融庁では、金融の仕組みや働きなどについて基礎的な知識が得られるようにするとともに、自分たちの身近な生活と金融との結びつきを理解し、金融についての関心を高めることをねらいとして、中学生及び高校生を主な対象とする副教材を開発したものです。


副教材は学習指導要領に対応】

 副教材は、平成10年改訂の中学校学習指導要領(社会科、技術・家庭科)及び平成11年改訂の高等学校学習指導要領(公民科[現代社会、政治・経済]、家庭科[家庭基礎、家庭総合、生活技術])に対応した内容になっています。


副教材の内容】

 副教材の構成は、「生徒用ページ」、「教師用ページ」及び「資料集」などからなっています。
 このうち、生徒用ページの「入門編」は、中学・高校生に向けての「金融」への入門的な内容としており、日常生活は「金融」を通じてお金(資金)が移動して取引が結了すること、あるいは「金融」は企業等の生産活動の根幹であり、資金の借り手(企業等)と資金の貸し手(家計)との間をお金を介してつなぐものであることなど、経済社会の中で「金融」の果たす役割や働きが国民生活にとって重要な部分を占めていることを分かり易く解説しています。
 更に「基礎編」は、主に高校生を対象に「金融」を通じて現代社会についての関心を高めてもらい、経済社会の発展の基礎である金融・資本市場に対する正しい認識を持つとともに、将来、社会に出た場合に金融機関や金融商品・サービスの仕組みや内容を理解し、選択をする際の手助けになるよう意図した構成・内容にしております。
 「教師用」については、副教材の学習指導に当たっての取り扱い上の留意点等、指導・手引書的な内容としています。

 金融庁では、今後、副教材が、学校教育現場などにおいて、より一層の利用が図られるようPRを行うとともに、変化の激しい金融分野の動きに対応するため、年1回程度見直しを行っていくこととしています。更に、投資教育の必要性・重要性をアピールするため、「金融経済教育」をテーマとしたシンポジウムを開催することも考えています。これらを通じて、金融についての理解をより深めてもらうよう努めていきたいと考えています。


 副教材をご欄になりたい方は、金融庁ホームページの「インターネットで学ぼうわたしたちの生活と金融の働き」にアクセスしてください。

「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について


.「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」とは
 金融庁では、中小企業等への金融の円滑化に向けた取組みの一環として、中小企業など借り手の声を幅広く聞くため、「貸し渋り・貸し剥がしに関する情報の電子メール・ファックスによる受付制度」(通称「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」)を開設しています。これは、中小企業が、金融検査マニュアルなどを理由に金融機関から不当な扱いを受けた場合等に、金融庁等に直接通報できるよう、ファックスや電子メールの受付窓口を設けたものです。


.ホットラインに寄せられた情報の受付と活用の状況(平成15年9月末現在)
 
(1)  受付状況
 「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の受付・活用状況については、四半期毎に公表することとしており、平成15年10月24日に第3回目の公表を行いました。平成14年10月の開設以降本年9月30日までに受け付けた情報の累積件数は1,107件となっています。受付状況の詳細は別表を参照してください。

(2)

 活用状況
 
(a)  これまでの活用については、寄せられた情報を参考として、「与信取引に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する事務ガイドライン」を本年7月29日に制定しています。さらに、8月18日に策定した「平成15検査事務年度検査基本方針及び基本計画」の中で、借り手企業に対する説明責任の履行状況や苦情等処理態勢等の検証を含め、「中小企業等の経営実態等に即した的確な検査の確保」等を検査の重点事項としています。

(b)

 個別金融機関に関する活用としては、情報提供者等が金融機関側への企業名等の提示に同意している情報について、事実確認等のヒアリングを実施しています。それ以外の情報についても、四半期毎にとりまとめ、金融機関の対応方針、態勢面等のヒアリングを実施しています。その際、監督上必要と認められる場合には、銀行法第24条等に基づく報告徴求を行うこととしています。検査においても、検査時までに受け付けた情報や金融機関から徴求した報告の内容を活用しています。
 具体的には、本年4月1日から6月30日までに受け付けた情報を基に、上記のヒアリングを77金融機関に対して行い、そのうち監督上必要と認められた4金融機関に対して、報告徴求を行いました。また、本年4月1日から6月30日までに着手した検査のうち12金融機関において、検査時までに寄せられた情報を活用しました。
 本年7月1日から9月30日までに受け付けた情報については、指摘を受けた金融機関に対してヒアリングを行い、検査においても、活用を図っています。これらの情報の活用状況については、次回公表することとしています。

(c)

 なお、「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」に寄せられた情報をより有効に活用し、政府全体として対応を図るため、中小企業庁と連携して関係省庁間の連絡会議を随時開催しています。


 平成15年9月末のホットライン受付・活用状況等について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年10月24日)にアクセスしてください。
 平成15年3月末まで及び平成15年6月末までの受付・活用状況については、それぞれ金融庁ホームページの「報道発表など」から「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年4月21日)「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年7月29日)にアクセスしてください。

繰延税金資産の情報開示の拡充について

 平成15年7月28日に発表された金融審議会金融分科会第二部会・自己資本比率規制に関するワーキンググループの「経過報告」においては、「繰延税金資産の算入根拠と計算手続きに関して、繰延税金資産の計上額に対する信頼性を高めるための情報開示の拡充等について、(中略)有効な方策を実施することを求めたい」とされているところです。
 これを受けて、10月31日(金)に、主要行に対し、15年9月期の中間決算短信の公表時から、繰延税金資産の情報開示の拡充を行うよう要請しました。なお、今般の措置は、繰延税金資産の計上額に対する信頼性を高めることを目的としていることから、開示する計数等をもとに計算手続き等に即した分かり易い説明を行うことを併せて要請したところです。

 (

参 考)開示項目
 
.繰延税金資産の算入根拠(過去の業績等の状況を主たる判断基準とした場合には実務指針(注)の例示区分(4号但書の場合には非経常的な特別な原因を含む))及び将来の課税所得の見積り期間(X年間)。
.過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)。
.見積りの前提とした実質業務純益の見込み額(X年間の合計値)。
.見積りの前提とした税引前当期純利益の見込み額(X年間の合計値)。
.調整前課税所得の見積り額(X年間の合計値)。
.繰延税金資産・負債の主な発生原因について、共通に開示すべき項目。
 
(1)  繰延税金資産:貸倒引当金、有価証券有税償却、その他有価証券評価差額金、退職給付引当金、繰越欠損金、その他。
(2)  繰延税金負債:退職給付信託設定益、その他有価証券評価差額金、リース取引に係る未実現利益、その他。
(注) 「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」
(平成11年11月9日、日本公認会計士協会)


 本文や自己資本比率規制に関するワーキンググループの「経過報告」をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「繰延税金資産の情報開示の拡充について」(平成15年10月31日)にアクセスしてください。

金融活動作業部会(FATF)特別勧告VII(電信送金)の実施に関するお知らせ


.金融活動作業部会(FATF)とは何か
 金融活動作業部会(FATF)とは、マネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するために組織された政府間機関で、現在、日本を含む31の国と地域及び2つの国際機関(欧州委員会及び湾岸協力理事会)から構成されています(「FATF」は、通常「ファトフ」と呼ばれます)。
 FATFでは、主な活動として、マネー・ローンダリングに関する「40の勧告」及びテロ資金供与に関するFATF特別勧告を策定し、これら勧告の実施状況を把握したうえで、マネー・ローンダリング対策あるいはテロ資金対策が十分でない国や地域に対して改善を促しています。


 FATF及び「40の勧告」について、詳しくは金融庁ホームページの「マネー・ローンダリング」から「国際会議」にアクセスしてください。


.テロ資金供与に関するFATF特別勧告とは何か
 2001年9月11日の米国における同時多発テロの翌月、FATFは8つの勧告からなる「テロ資金供与に関する特別勧告」を採択しました。これが、テロ資金供与に関するFATF特別勧告と言われるものです。
 テロ資金供与に関するFATF特別勧告の主な内容は、テロ資金供与防止条約等の国際連合諸文書の批准及び履行、テロリストの資産の凍結及び没収、テロに関する疑わしい取引の届出、代替的送金システム(いわゆる「地下銀行」)に対する規制、非営利団体に対する監視強化などで、これらのひとつに今回のお知らせの対象であるFATF特別勧告VII、つまり「電信送金における送金人情報の付記」があります。


 「テロ資金供与に関する特別勧告」について、本文をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「マネー・ローンダリング」から「国際会議」に入り、FATFの活動状況「3.テロ資金対策」にアクセスしてください。


.FATF特別勧告VII(電信送金)の実施について
 FATF特別勧告VIIにおいては、金融機関がその顧客のために電信送金を行う場合に送金人の情報(氏名、口座番号、住所)を付記することとしています。本年2月、この勧告についての実施の細則となる「解釈ノート」が作成されました。この解釈ノートには、送金人情報に不備があるときの取引の取扱いについて、被仕向金融機関は当該仕向金融機関に対する取引の縮小又は終了を考慮すべき旨の記述があり、また、遅くとも平成17年2月までに同勧告及び解釈ノートに従った措置を実施することとされています。
 これら勧告及び解釈ノートについては、既に実施している金融機関も海外に散見されるところ、こうした海外の金融機関においては、同解釈ノートに従い、本邦から国外への送金の際に付記が求められている送金人の情報に不備が認められる場合、当該送金を行った本邦の金融機関が特別勧告VIIを遵守しない金融機関として、取引を縮小又は終了されるか、あるいは送金そのものの受領を拒否されるおそれがあります。
 また、今後、同勧告及び解釈ノートに従った措置を実施する金融機関が増加してくる可能性があります。
 したがって、海外への金融機関へ電信送金を行う場合は、個々の金融機関において同勧告及び解釈ノートの内容にあらかじめご留意いただき、円滑な金融取引を行う際のご参考となるように、10月31日、お知らせを発出しました。


 金融活動作業部会(FATF)特別勧告VII(電信送金)の実施に関するお知らせをご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「金融活動作業部会(FATF)特別勧告VII(電信送金)の実施に関するお知らせ」の発出について」(平成15年10月31日)にアクセスしてください。

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