アクセスFSA 第36号 (2005年11月)
伊藤前大臣と引継ぎを行う与謝野大臣(11月2日) 金融審議会第一部会において挨拶する後藤田政務官(11月22日)
伊藤前大臣と引継ぎを行う与謝野大臣 金融審議会第一部会において挨拶する後藤田政務官
(11月2日) (11月22日)
目 次
【トピックス】
 ○  公的資金(優先株式等)の処分の考え方について
 ○  「中小企業金融モニタリング(平成17年8月実施)」の取りまとめ結果について
 ○  広島大学との連携講座「金融検査・監督の制度と理論」の講義開始について
 ○  偽造キャッシュカード問題に関する実態調査について
 ○  「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等に関する公表について
 ○  事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正について
−貸金業者の取引履歴開示義務の明確化−
 ○  ノーアクションレター制度がより使いやすくなりました
 ○  適正なディスクロージャーと厳正な会計監査の確保に向けた対応策について
 ○  保険金等支払管理態勢の再点検及び不払事案に係る再検証の結果について
 ○  貸出条件緩和債権の規定の見直し及びQ&Aの公表について
 ○  平成17事務年度証券会社向け監督方針の公表について
 ○  地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17年〜18年)に基づく地域密着型金融推進計画の概要について
【法令解説】
 ○  銀行法等の一部を改正する法律
【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「会計士監査の品質管理」
【金融ここが聞きたい!】
【お知らせ】
 ○  「お金の使い方と地域社会について考えるシンポジウム」の開催について
 ○  「金融庁 電子申請・届出システム」ご利用のお願いについて
 ○  キャッシュカードの管理等に関する注意喚起について
 ○  インターネットバンキングにおける不正振込について
 ○  大臣・副大臣・政務官への質問募集中、新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内
【10月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
公的資金(優先株式等)の処分の考え方について

 10月28日(金)、金融庁は、金融改革プログラムに則り、公的資本増強により取得した優先株式等の処分について、考え方の整理を行い、「公的資金(優先株式等)の処分の考え方について」(以下「考え方」という)を公表しました。
 「考え方」では、「資本増強行の資本政策を今後とも尊重しつつ、資本増強行を巡る局面の変化に応じ、『納税者の利益』の立場により重きを置いて、金融システム安定化の果実として公的資金から生じる利益を確実に回収することを基本とすることが適当」との考え方に基づき、
 (1)  資本増強行の申出による処分を今後とも基本としつつ、
 (2)  併せて、優先株式の商品性やその時点での株価の状況等を踏まえ、転換権などの優先株式の商品性を裏付けとした適切かつ柔軟な対応を行いうるようにしておくことが必要、
 (3)  なお、従来と同様、資本増強行の経営の健全性の維持及び市場への悪影響の回避に十分留意するとともに、処分を円滑に進めるためにも、引き続き資本増強行の資本政策等をできる限り尊重し、具体的な対応の検討に際しては当該行と十分協議を行うことが必要、
としたところです。

 また、これを受け、同日、優先株式等の処分を所管する預金保険機構において、処分にあたっての基本的方針として「資本増強のために引受け等を行った優先株式等の処分に係る当面の対応について」(以下、「当面の対応」という)を公表しました。これは、「資本増強のために引受け等を行った優先株式等の第三者への売却処分又は公的資金の返済等の申出に対する当面の対応について」(平成16年7月8日)を改定したものです。
(注)預金保険機構「当面の対応」ポイント
資本増強行の申出が基本
加えて、優先株式の商品性や株価の状況等からみて、処分を行うことが極めて有利な状況にある場合(株価が優先株の転換価格の150%程度以上で概ね30連続取引日推移している、などの要件を満たした場合)は、資本増強行と十分協議した上で、資本増強行による申出が見込まれないときは、預金保険機構の判断で転換・売却
従来と同様、資本増強行の健全性維持、市場への悪影響の回避に十分留意

 金融庁としては、以上のような考え方に沿って、今後とも適切に対応していきたいと考えています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「公的資金(優先株式等)の処分の考え方について」(平成17年10月28日)にアクセスしてください。

「中小企業金融モニタリング(平成17年8月実施)」の取りまとめ結果について

 「中小企業金融モニタリング」は、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの一環として、財務局・財務事務所職員が、商工会議所等の協力を得て、各地域における中小企業から見た中小企業金融の実情等について的確に把握するために四半期毎に実施しているものです。
 今般、17年8月に実施した中小企業金融モニタリングの結果を当庁において以下のとおり取りまとめ、公表しました。
 金融庁としては、今後とも本モニタリングを通じて中小企業金融の現場の声を積極的に把握するとともに、得られた情報について、金融機関の検査・監督の実施に当たり重要な情報として活用するなど、中小企業金融の円滑化に向けて引き続き努力していきます。




.モニタリング聴取先について

 全国47都道府県の商工会議所、商工会連合会、商工会、中小企業団体中央会、商工会議所連合会、中小企業家同友会等の経営相談に携わる者453人(176団体)からヒアリングを行いました。
  モニタリング聴取先について
 

(注

)当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではないため、ヒアリング対象数、対象先が調査実施毎に異なる場合があります。





.ヒアリング結果概要
 

(1)

 「中小企業金融に関する最近3ヶ月間の貸出動向について」のヒアリング結果概要
 各地域毎にばらつきは見られるものの、東北、東海、北陸、近畿、中国、四国において、積極的になった、やや積極的になったとの意見が過半数を超えています。また、消極的になった、やや消極的になったとの意見は11地域中10地域で1割未満となっています。
 
 「中小企業金融に関する最近3ヶ月間の貸出動向について」の ヒアリング結果概要

(参考)
最近3ヶ月の動向 主要行 地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用組合
政府系金融機関 全体
1 積極的になった 22 13.2% 35 10.4% 36 11.2% 54 16.4% 147 12.7%
2 やや積極的になった 36 21.6% 102 30.4% 111 34.5% 100 30.4% 349 30.3%
3 変わらない 99 59.3% 179 53.4% 166 51.6% 155 47.1% 599 52.0%
4 やや消極的になった 9 5.4% 17 5.1% 8 2.5% 14 4.3% 48 4.2%
5 消極的になった 1 0.6% 2 0.6% 1 0.3% 6 1.8% 10 0.9%
合計 167 100.0% 335 100.0% 322 100.0% 329 100.0% 1153 100.0%
 

(注1

)当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではありません。また、訪問先の事情等により、各財務局のヒアリング件数等に統一性がない(ばらつきがある)ことから「参考」として掲載しました。

(注2

)上記表は、有効回答の内訳を表したものです。無回答及び不明は含まれておりません。

(注3

)上記注1、2により、聴取人数と意見の合計数は一致しません。

 
・上記表の「4 やや消極的になった」・「5 消極的になった」を選択したものの理由
上記4・5の内容 主要行 地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用組合
政府系金融機関 全体
新規融資拒否関連 6 35.3% 11 40.7% 4 40.0% 7 43.8% 28 40.0%
担保・保証関連 4 23.5% 8 29.6% 2 20.0% 5 31.3% 19 27.1%
金利関連 0 0.0% 2 7.4% 3 30.0% 1 6.3% 6 8.6%
融資条件関連 3 17.6% 2 7.4% 0 0.0% 0 0.0% 5 7.1%
審査手続関連 1 5.9% 4 14.8% 0 0.0% 2 12.5% 7 10.0%
その他 3 17.6% 0 0.0% 1 10.0% 1 6.3% 5 7.1%
合計 17 100.0% 27 100.0% 10 100.0% 16 100.0% 70 100.0%
 

(注

)一つのヒアリング先から複数の意見が寄せられることもあるため、上記4・5の合計回答件数(58件)と上記表の全体の合計回答件数(70件)は一致しません。

 

(2)

 「中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について」のヒアリング結果概要
 
  中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について以下の8項目を聴取しました。
 
聴取項目の内容】
ア.融資姿勢に関するもの
イ.担保・保証に関するもの
ウ.経営指導・創業再生支援に関するもの
エ.融資の際の説明態勢に関するもの
オ.金融機関の資質・能力に関するもの
カ.融資の際の審査期間に関するもの
キ.金利に関するもの
ク.その他


  各項目に寄せられた主な意見は以下のとおりです。
 
.融資姿勢の実情について寄せられた意見
 
金融機関の融資姿勢は積極的で、貸し渋りや貸し剥がしの声はほとんど聞かれない。(北海道、東北、近畿、四国、九州)
融資姿勢が積極的になってきた。(北陸、東海、近畿、中国、沖縄)
決算状況だけでなく、将来展望や事業計画の内容にも目を向けるようになってきている。(沖縄)
貸し渋り、貸し剥がし等の話は聞かないが、金融機関は、以前と同様に、とにかく協会保証を要求しており、プロパー融資には積極的とは思えない。(四国)
借り手企業の財務内容によって融資姿勢に格差があり、二極化している。(北海道、東北、関東、近畿、四国、九州、福岡、沖縄)


.担保・保証の実情について寄せられた意見
 
担保重視の姿勢が弱まってきている。(北海道、北陸、四国)
担保重視からキャッシュフロー重視へ転換している。(関東)
担保・保証に依存しない商品の品揃えが良くなり、利用もされている。(関東、東海、近畿)
県の制度融資や金融機関における無担保・無保証等の商品が増え、選択の幅が広がっている。(関東、中国)
依然として担保・保証に依存した融資姿勢が見られる。(北海道、東海、関東、近畿、四国、九州、沖縄)
依然として担保保全重視の融資姿勢であり、技術力、ノウハウ、経営資源を加味した融資への取組姿勢が乏しい。(中国)
無担保・無保証の融資商品が拡充されてきているが、まだ条件及び審査が厳しい。(東北)
無担保・無保証人制度の利用を希望する事業者が多いが、メニューが少ないため苦慮している。(沖縄)


.経営指導・創業再生支援の実情について寄せられた意見
 
北海道において産学官と金融機関が連携した取組みが10月にスタートする目処が立つなど、創業・新規事業支援の取組みが動き始めている。(北海道)
各金融機関とも企業の経営指導・創業再生支援等に積極的に取り組んでおり、リレーションシップバンキングの成果があがってきている。(東北)
リレーションシップバンキングの取組みの結果、金融機関がコンサルティング業務やマッチング業務を行うなど、金融機関の意識改革や企業へのサービスが向上してきていると感じる。(東海)
経営指導・創業再生支援の分野での積極性は感じられない。(福岡)
地銀、第二地銀は、企業への訪問指導が減少しており、小規模事業者への支援体制が希薄である。(中国)
業績不振の理由を他に転嫁するなど、債務者側の認識が甘い。(近畿)


.融資の際の説明態勢について寄せられた意見
 
金融機関は説明態勢の強化に努めており、全体としては顧客に十分な説明が行われるようになっている。(北海道、東北、東海、近畿、四国、沖縄)
丁寧な説明を心がけており、説明態勢の充実が図られていると思われる。(九州)
説明不足と認められる事案もある。(東海、近畿)
支店長、担当者によって説明の深度等が違う。(四国、福岡)


.金融機関の資質・能力の実情について寄せられた意見
 
金融機関は資質・能力の向上に一生懸命努めており、従前よりも向上した。(北海道)
一部の金融機関では専門性を備えた人材が増えている。また、金融機関の目利き能力はこのところ良くなってきている。(九州)
安易に保証協会付融資に頼ることや、現場での経験不足など担当者の目利き能力等が欠如している。(近畿)
転勤等で担当者が代わると融資姿勢が変わるため、担当者の引継ぎには、細心の注意を払って欲しい。(中国)
担当者によって資質・能力の差が激しい。(中国)
中小企業の技術力等を見極め、評価する能力が不足している。また、研修自体も一過性のもので、組織的・体系的プログラムがない。(北海道)
過去の実績(決算書)が重視されており、経営者の資質や企業の将来性をみていない。(九州)


.融資の際の審査期間について寄せられた意見
 
 全般的に審査期間は短縮しており、素早く結論を出すようになった。(北海道、沖縄、四国)
 即決融資的な商品の取扱い及び審査のシステム化により審査期間は短縮傾向にある。(東北、関東、近畿)
 本部審査案件や審査部門を有しない支店を経由する案件は審査に時間がかかっている。(北海道、東北)


.金利の実情について寄せられた意見
 
 一方的な金利引き上げを要求されたとの声は、最近は聞かなくなった。(四国)
 格付けによる金利設定により、結果的に金利が上昇している。(北陸)
 企業の業況や財務内容により、優良先とそれ以外の先との金利格差が広がっている。(北海道、東北、九州)


.その他の寄せられた意見
 
 地方の中小・零細企業は、売上減少、経営者、後継者の老齢化、後継者不足により、将来の返済に不安があり、借入に消極的。(北海道)
 中小企業の資金需要は先細り傾向が続いている。(中国)
 地域経済の低迷等の影響から業況不振先が多く、融資資金の返済長期化、税金等滞納資金返済に対する融資申込等、後ろ向きな資金需要が目立っている。(関東)

(3)

 「中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例について」のヒアリング結果概要
 
 中小企業金融モニタリングでは、中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例として、毎回、検査・監督に関する特定のテーマを設定し調査を行っています。
 今回の質問調査事項は、以下のとおりです。
金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編](改訂版)の中小企業への浸透状況について


寄せられた主な意見】
 
金融検査マニュアル別冊の存在は知っているものの、その中身まで知っている中小企業は少ない。
説明会等を通じて経営指導員へ周知を図っており、徐々にではあるが、中小企業にも浸透してきている。
金融機関の融資姿勢が積極的になった事情もあり、中小企業側も切迫感がなくなってきており、金融検査マニュアル別冊の浸透度合いは薄れつつある。
リーフレットには専門用語が多く使われているので、中小企業者向けとしては解りづらい。
数多くのリーフレットよりも、新聞への一面掲載が有効である。




.「中小企業金融モニタリング」の活用状況について
 

(1)

 ヒアリングの実施
 中小企業金融モニタリングで得られた個別金融機関に関する情報を活用し、当該金融機関の対応方針、態勢面等についてヒアリングを行いました。

(2)

 意見交換会における要請(金融庁での活用)
 金融庁幹部と業界団体代表者の意見交換会(毎月開催)等において、中小企業金融モニタリングで得られた事例について紹介しています。具体的には、事業からのキャッシュフローを重視し、過度に担保・保証に依存しない融資を含む健全な中小企業に対する資金供給の一層の円滑化や、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた、顧客の理解と納得を得るような十分な説明の実施、金融検査マニュアル別冊の周知等について要請を行っています。

(3)

 地域金融円滑化会議の活用等(財務局等での活用)
 都道府県毎に設置し、半期毎に開催している「地域金融円滑化会議」(金融当局、中小・地域金融機関及び関係業界団体から構成)や、財務局幹部等と金融機関代表者との面談など諸々の機会を通じて、顧客への説明態勢の整備や相談・苦情処理機能の強化について注意喚起を行うとともに、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの要請を行っています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から『17年8月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について(平成17年10月26日)』にアクセスしてください。

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