【法令解説】

銀行法施行令等の一部改正〜 銀行代理業制度の創設等に関する政省令の改正の概要 〜

I .はじめに
   預金者等の利便性の向上と銀行経営の効率化を図ることを目的に、銀行代理店制度を見直し銀行代理業制度等を創設するとともに、業務規制等の緩和及び銀行等の適切な業務運営確保のための措置を講じるための「銀行法等の一部を改正する法律」(平成17 年法律第106 号。以下「改正法」と言う。)は、平成17 年11 月2日に公布され、平成18 年4月1日に施行されました。
 銀行代理業制度の基本的な考え方は、利用者の金融サービスに対するアクセスを確保・向上させるとともに、金融機関が多様な販売チャネルを効率的に活用できるよう、より幅広い形態での銀行代理業への参入を認めることにあります。このため、一般の事業者が銀行代理業に参入するにあたって求めていた銀行との出資関係を不要とするとともに他業の兼営についても可能としました。他方、銀行代理業の適正かつ確実な遂行を確保するため、銀行代理業への参入を許可制とし、他業の兼営については個別承認制とするとともに、利用者保護や銀行の健全性を確保するための措置を講ずることとしたものです。
 改正法の概要については、「【法令解説】銀行法等の一部を改正する法律」アクセスFS第36 号(2005 年11 月30 日発行)で解説したところですが、今回は、その施行に伴う政省令等の主な改正の概要について解説します。

II

.銀行代理業制度
  .銀行代理業の許可の基準
     銀行代理業の許可にあたっては、
    (a)  銀行代理業を遂行するために必要と認められる財産的基礎を有する者であること
    (b)  人的構成等に照らして、銀行代理業を的確、公正かつ効率的に遂行するために必要な能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること
    (c)  他に業務を営むことによりその銀行代理業を適正かつ確実に営むことにつき支障を及ぼすおそれがあると認められない者であることを基準として審査することとされています(銀行法第52 条の38 第1項)。
    これを受け、当該許可の審査をするときは、次に掲げる事項に配慮することとしました。
   
(1)

 財産的基礎(銀行法第52 条の38 第1項第1号)
       銀行代理業者が行った行為の効果は所属銀行(委託元の銀行)に属し、銀行代理業者自体は預金債務等を負うことはないため、銀行に求められるような高度な財産的基礎を求める必要はないと考えますが、銀行代理業に係る顧客から交付を受けた金銭等の費消・流用の防止等の適切な業務運営の確保、安定的・継続的サービスの提供を確保する観点から、最低限必要な財産的基礎を求めることとしました。
 具体的な財産的基礎の基準については、他法令の例も参考に、申請者の純資産額(資産−負債)が、法人の場合は500万円以上、個人の場合は300万円以上であること等とし(銀行法施行規則第34条の36)、また、銀行代理業開始後三事業年度を通じて、当該財産的基礎の基準を維持できると見込まれることとしました(銀行法施行規則第34 条の37 第2号)。
   
(2)

 人的構成等に照らして、銀行代理業を的確、公正かつ効率的に遂行するために必要な能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること(銀行法第52条の38 第1項第2号)
     
(a)  業務遂行能力
   銀行代理業を的確、公正かつ効率的に遂行するために必要な能力を有するか否かについては、
  )銀行代理業に関する能力を有する者の確保の状況、
  )銀行代理業の業務運営体制が次に掲げる要件に該当するか審査することとしました。
 

)銀行代理業に関する能力を有する者の確保の状況
    (銀行法施行規則第34 条の37 第3号イ、ロ)
    )銀行代理業の業務に関する十分な知識を有する者1 を、法令等の遵守の責任者として銀行代理業を営む営業所ごとに、かつ、統括責任者として銀行代理業を統括する部署に、それぞれ配置していること。
 なお、複数の営業所又は事務所(以下「営業所等」といいます。)を有する銀行代理業者が主たる営業所等(本店)のみで銀行代理業を行う場合には、当該営業所等に責任者を置けば足りますが、従たる営業所等(支店)のみで銀行代理業を行う場合には、当該従たる営業所等に責任者を、主たる営業所等(本店)の銀行代理業を統括する部署に当該従たる営業所等を指揮する統括責任者を配置することが必要となります。また、一の営業所等しか持たない場合には、統括責任者を置く必要はありません。
    )当座預金又は資金の貸付けを取り扱う場合には、銀行代理業を営む営業所等ごと配置する責任者及び銀行代理業を統括する部署に配置する統括責任者のうちそれぞれ1名以上は、
 次に掲げる実務経験を有する者でなければならない。
      i )当座預金を取り扱う場合
         当座預金を取り扱う場合(資金の貸付けを取り扱わない場合に限ります。)には、当座預金業務又は資金の貸付け業務を通算して3年以上従事した者又はこれと同等以上の能力を有すると 認められる者2 を配置していること。
 この場合、当座預金業務の実務経験のみ3年のほか、事業者向け貸付業務の実務経験3年又は併せて3年のいずれの場合でも要件を満たすものと考えます。
      ii )資金の貸付けを取り扱う場合
         資金の貸付けを取り扱う場合には、貸付業務に3年以上従事した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者を配置していること。
 ただし、資金の貸付けのうち、預金・国債担保貸付、事業以外の用に供する資金に係る定型的な貸付契約3 であって契約の締結に係る審査に関与しない場合4 には、貸付業務に関する十分な知識を有していれば足り、貸付業務の実務経験は求めないこととし、また、規格化された貸付商品5 であって契約の締結に係る審査に関与しない場合には、貸付業務に1年以上従事した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者であればよいこととしました。
 

)業務運営体制(規則34 条の37 第3 号ハ、ニ、ホ)
     業務運営体制については、次に掲げる要件に該当するか審査することとしました。
    )預金・為替業務の代理を行う場合には、オンライン処理など、銀行代理業の内容に応じて必要な事務処理の体制が整備されていること。
 なお、勘定処理が生じない場合のほか、あらかじめ顧客に対し同意を得るなどによりトラブルが生じない体制が整備されていると認められる場合には、オンライン・リアルタイム以外の方法で処理することを妨げるものではありません。
    ) 社内規則等を定め、これに基づく業務の運営が検証されるなど、法令等を遵守した運営が確保されていると認められること。
    )人的、資本的構成又は組織等により、銀行代理業を的確、公正、効率的に遂行すること。
 これは、例えば、申請者自体は銀行代理業を専業で行うこととしていますが、親法人・子法人等が他業を営む場合には、役員の兼職の状況や業務執行体制等によっては、利益相反行為等の弊害が生じ得ることを念頭に置いたものです。
(b)  社会的信用(規則34 条の37 第4号、第5号)
   申請者(法人の場合にはその役員を含む。)が次のいずれかに該当している場合は、社会的信用を有さないものとして明確化しました。なお、暴力団員等については、当然に社会的信用を有さないとして許可を拒否することとなります。
  )成年被後見人又は被保佐人
  )破産者で復権を得ない者
  )禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  )銀行法等、出資法、貸金業規制法に違反し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  )銀行業等の免許、銀行代理業等の許可の取消し等の日から5年を経過していない者
  )銀行法に基づき銀行、銀行代理業者等の役員の解任を命ぜられた者
   
(3)

 兼業基準(銀行法第52 条の38 第1項第3号)
     
 他に業務を営むことによりその銀行代理業を適正かつ確実に営むことにつき支障を及ぼすおそれがあると認められない者であることについては、次に掲げる要件のいずれにも該当していないこととしました(規則第34 条の37 第6号)。
 なお、他業を兼営しながら預金及び為替取引を取り扱うことについては、兼業による利益相反行為等の弊害が生じる蓋然性が低いと考えることから、特段規制を設けないこととしました。
)兼業の内容が法令に抵触するものであること。
)兼業の内容が銀行代理業者としての社会的信用を損なうおそれがあること。
 例えば、銀行代理業者が、善良な風俗や公共の平穏を損なうおそれのある業務、公序良俗に反する業務及び反社会的な業務などを兼業する場合が考えられます。
)資金の貸付けの内容が、次に掲げもの以外であること。
  )預金・国債担保貸付又は消費者向け貸付の代理・媒介、事業の用に供する資金の貸付けについては、規格化された貸付商品(1千万円を上限とする。)であってその契約の締結に係る審査に関与しないものであること。
  )さらに、貸金業、クレジット業、債務保証等の信用の供与を主たる業務とする者の場合には、預金・国債担保貸付の代理・媒介のほか、消費者向けの規格化された貸付商品であってその契約の締結に係る審査に関与するものではないこと(当該貸付資金で購入する物件等を担保とする貸付等に限る。)であること6
)兼業における取引上の優越的地位の濫用により顧客保護に欠ける行為が行われるおそれがあると認められること。
 

.兼業承認の基準(銀行法第52 条の42 第1項)
     兼業の承認の申請があったときは、上記1.(3)兼業基準に基づき審査することとしました(銀行法施行規則第34 条の41 第3項)。
 なお、兼業の承認が必要となるのは、現に営む他業が属する日本標準産業分類に掲げる中分類(大分類K−金融・保険業に属する場合にあっては細分類)と異なる中分類に属する事業を新たに営む場合と考えています。
 また、銀行代理業者が兼業の承認を受けなくとも営むことができる「銀行代理業に付随する業務」(銀行法第52条の42第1項)とは、所属銀行のために行う当該所属銀行が営む付随業務の代理・媒介が該当しますが、当該行為が他の法令において許認可等の開業規制の対象となっている場合は、兼業承認を要する他業として取り扱うこととなります。
 

.分別管理(銀行法第52 条の43)
     分別管理については、兼業業務における銀行代理業に係る金銭等の費消・流用を禁止し、所属銀行との間で確実に受払いが行われることを確保するための措置であるが、具体的には、管理場所を区別することその他の方法により銀行代理行為に関して顧客から交付を受けた金銭その他の財産が自己の固有財産であるか、又はいずれの所属銀行に係るものであるかが直ちに判別できる状態で管理しなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の42)。
 

.顧客に対する説明等
    (1)  顧客に対する明示(銀行法第52 条の44 第1 項)
       銀行代理業者は、銀行代理行為(銀行法第2条第14項各号に掲げる行為をいいます。)を行うときは、あらかじめ、顧客に対し、所属銀行の商号、代理か媒介かの別のほか、次に掲げる事項を明らかにしなければならないこととしました(銀行法施行規則第34 条の43)。
     
(a)  銀行代理行為に関して顧客から金銭その他の財産の交付を受けるときは、当該交付を受けることについての所属銀行からの権限の付与がある旨
(b) 所属銀行が二以上ある場合において、
  )顧客が締結しようとする銀行代理行為に係る契約につき顧客が支払うべき手数料と、当該契約と同種の契約につき他の所属銀行に支払うべき手数料が異なるときは、その旨
  )顧客が締結しようとする銀行代理行為に係る契約と同種の契約7 の締結の代理又は媒介を他の所属銀行のために行っているときは、その旨
  )顧客の取引の相手方となる所属銀行の商号又は名称
   このほか、顧客の求めに応じ、上記(b)ロ)の同種の契約の内容等、顧客の参考となるべき情報の提供を行わなければならないこととしました銀行法施行規則第34条の46)。
    (2)  預金者等に対する情報の提供(銀行法第52 条の44 第2項)
       銀行代理業者は、銀行における預金者等に対する情報提供義務と同様、主な預金、定期積金又は掛金(以下「預金等」といいます。)の金利、手数料、預金保険法の対象等を明示し、商品情報等の説明を行わなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の44)。
    (3)  健全かつ適切な運営の確保措置(銀行法第52条の44第3項)
     
(a) 預金等との誤認防止
   銀行代理行者が預金等以外の金融商品の販売等を行う場合には、預金等との誤認防止のため、書面の交付等により、イ)預金又は定期積金等ではないこと、ロ)預金保険の対象とはならないこと、ハ)元本の返済が保証されていないこと、ニ)契約の主体等の事項の説明を行わなければならないこととしました。また、銀行代理行為を行う営業所等の窓口に、銀行代理行為を行う旨を顧客の目につきやすいように掲示しなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の45)。
(b)  顧客情報の適正な取扱い
   銀行同様、個人顧客情報の安全管理措置等(銀行法施行規則第34条の47)のほか、イ)銀行代理業において取り扱う顧客に関する非公開金融情報8 を、事前に書面等により当該顧客の同意を得ずに銀行代理業以外の業務に利用しないこと、ロ)他業において取扱う顧客の非公開情報を、事前に書面等により当該顧客の同意を得ずに銀行代理業に係る業務に利用しないこと、事前に書面等より当該顧客の同意を得ずに所属銀行に提供しないことを確保するための措置を講じなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の48)。
(c)  社内規則等の整備
   銀行代理業者は、その営む銀行代理業の内容及び方法に応じ、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた重要な事項の顧客に対する説明その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置(書面の交付その他の適切な方法による商品又は取引の内容及びリスクの説明並びに犯罪を防止するための措置を含む。)に関する社内規則等を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備しなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の49)。
    (4)  銀行代理業に係る禁止行為(銀行法第52 条の45)
       銀行代理業に関し、顧客に対し、
     
(a)  虚偽のことを告げる行為
(b)  不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為
(c)  抱合わせ融資
(d)  情実融資
(e)  その営む銀行代理業の内容及び方法に応じ、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた重要な事項について告げず、又は誤解させるおそれのあることを告げる行為
(f)  銀行代理業者としての取引上又は兼業業務における取引上の優越的地位の濫用
(g)  所属銀行に対し、銀行代理行為に係る契約の締結の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げず、又は虚偽のことを告げる行為を顧客の保護に欠け、又は所属銀行の業務の健全かつ適切な遂行に支障を及ぼすおそれがある禁止行為として定めました(銀行法施行規則第34条の53)。
 
    (5)  銀行代理業者の休日及び営業時間(銀行法第52条の46)
       銀行の営業所と同様、決済システムの安定性確保の観点から、当座預金の代理を行う銀行代理業者の営業所等の休日及び営業時間については、銀行法上の法定休日(土日祝日、12 月31日から1月3日まで)及び営業時間(午前9時から午後3時まで)の規制を課すこととした。
 なお、当座預金を取り扱わない営業所等については、当該規制は適用せず、また、法定休日及び営業時間以外の時間に営業することを妨げるものではありませんが、公衆の見やすい場所に、休日及び営業時間を掲示しなければならないこととしました(銀行法施行令第16条の7、銀行法施行規則第34条の54・第34条の55)。
    (6)  銀行代理業に関する帳簿書類(銀行法第52 条の49)
       銀行代理業の処理及び計算を明らかにするため、主たる営業所等には総勘定元帳(5年間)を、従たる営業所等には銀行代理勘定元帳(10年間)を、代理行為を行わない場合には、媒介行為の内容を記載した書面の作成、保存を義務付けることとしました9 (銀行法施行規則第34 条の58)。
    (7)  銀行代理業に関する報告書(銀行法第52 条の50)
       銀行代理業者は、銀行代理業に関する報告書を財産に関する調書及び収支の状況を記載した書面又は貸借対照表及び損益計算書を添えて、銀行代理業者の事業年度経過後3月以内に提出しなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の59)。
    (8)  所属銀行の説明書類等の縦覧(銀行法第52条の51)
       顧客への情報開示の観点から、銀行代理業者は、所属銀行又は当該所属銀行を子会社とする銀行持株会社が銀行法の規定に基づき作成し、公衆の縦覧に供するいわゆるディスクロージャー誌を、所属銀行又は当該所属銀行を子会社とする銀行持株会社の事業年度経過後4月以内に銀行代理業を営む営業所等に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の60)。
 

.所属銀行による銀行代理業者に対する指導等
     所属銀行は、銀行代理業者に対する業務の指導その他銀行代理業の健全かつ適切な運営の確保が義務付けられていますが(銀行法第52条の58)、具体的には、次に掲げる措置を講じなければならないこととしました(銀行法施行規則第34条の63)。
    (a)  業務の指導、銀行代理業に関する法令等を遵守させるための研修の実施等の措置
    (b)  銀行代理業の実施状況の検証、改善等を行うための措置
    (c)  銀行代理業の委託契約、再委託契約の変更・解除を行うための措置
    (d)  銀行代理業者が行う資金の貸付け等の取り扱いについて、自らが必要な審査を行うための措置
    (e)  銀行代理業者に顧客情報を不正に取得させないなど顧客情報の適切な管理を確保するための措置
    (f)  所属銀行の商号、銀行代理業者を示す文字、銀行代理業者の名称を店頭掲示させるための措置
    (g)  銀行代理業者の営業所等における犯罪防止のための措置
    (h)  銀行代理業を営む営業所等の廃止にあたっては、所属銀行の営業所等へ支障なく引き継がれるなど顧客に著しい影響を及ぼさないための措置
    (i)  銀行代理業者の顧客からの苦情を適切・迅速に処理するための措置
 

.適用除外(銀行法第52 条の61)
     銀行代理業の許可を受けなくとも銀行代理業を営むことができる者として、銀行のほか、長期信用銀行、信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、労働金庫、労働金庫連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会及び農林中央金庫を定めることとしました(銀行法施行令第16条の8)。
 

.権限委任(銀行法第59 条)
     銀行代理業の許可等の銀行代理業者に係る権限は、原則、銀行代理業者の主たる営業所等の所在地を管轄する財務(支)局長に委任することとしました(銀行法施行令第17条の4)。

III

.その他の規制緩和
   今回の政省令の整備に際して措置したその他の主な規制緩和の概要は以下のとおりです。
  .銀行の休日及び営業時間
    (1)  銀行の休日
       銀行の営業所の設置場所の特殊事情のほか、例えば、営業所の立地条件(住宅街、オフィス街、商店街等)や顧客層(個人中心、事業者中心)等により、休業しても顧客利便を著しく損なわないなどの事情により、休日にしても業務の健全かつ適切な運営を妨げるおそれがないものとして承認を受けた場合は、法定休日以外の日を休日とすることができることとしました。なお、承認にあたっては、
     
(a)  内国為替取引を通信回線を用いて処理する制度の運営に支障を及ぼすおそれがないこと、
(b)  顧客の利便を著しく損なわないこと10
(c)  当座預金業務を営んでいないことについて審査することとなります(銀行法施行令第5条、銀行法施行規則第15 条)。
    (2)  銀行の営業時間
       上記(1)と同様の事情により、法定の営業時間帯(午前9時から午後3時まで)に窓口を閉めても、顧客の利便を損なわず、当座預金業務を営んでいない銀行の営業所については、法定の営業時間を変更できることとしました。なお、当該変更をする場合は届出制となっています(銀行法施行規則第16条、第35条第1項第7号)。
 

.資金の貸付けの業務に係る金銭の受払事務の委託
     いわゆる異業種(証券会社、ノンバンク等)のATMによる預金業務に係る金銭の受払事務の委託に加え、貸付業務に係る金銭の受払事務の委託を解禁することとしました。なお、貸付業務に係る金銭の受払事務については、主たる業務が信用供与を行うものである者のATMについては、預金・国債担保貸付に係るものに限ることとすることとしました(銀行法施行規則第13条の6の4、平成18 年金融庁告示(銀行法施行規則第十三条の六の四の規定に基づき預金等の受払事務を第三者に委託する場合の委託者等を定める件))。
 

.銀行等の議決権保有制限規制
     銀行又はその子会社に対する国内の会社の議決権の保有制限規制(銀行法第16条の3)において、銀行又はその子会社の取引先である会社との間の合理的な経営改善のための計画に基づき取得した当該会社の発行する議決権のない株式について、当該会社の経営の状況の改善に伴い相当の期間内に処分するための議決権のある株式への転換その他の合理的な理由があることについてあらかじめ承認を受けた場合には、制限を超えて議決権を保有することができることとしました(銀行法施行規則第17条の6第1項第11号)。
   
(注 )上記1.から3.までについては、長期信用銀行、信用金庫、労働金庫及び信用組合についても、同様の措置を講じました。
 

.信用金庫等の員外貸出規制
     信用金庫等の協同組織金融機関は、その組織の特殊性にかんがみ会員以外の者に対する貸付けは、当該信用金庫等の貸付け等の総額の20%を超えてはならないとされていますが、当該規制の枠内において、
    (a)  独立行政法人及び地方独立行政法人に対する資金の貸付け及び手形の割引、
    (b)  民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号)第2条第5項に規定する選定事業者に対する同条第4項に規定する選定事業に係る資金の貸付けを認めることとしました(信用金庫法施行令第8条等)。
   
(注 )労働金庫及び信用組合についても、同様の措置を講じました。
     詳しくは、金融庁ホームページの「パブリックコメント」から「銀行法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(案)、銀行法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(案)及び銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令等(案)の公表について」(18年2月20日)及び「銀行法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(案)、銀行法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(案)及び銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令等(案)に対するパブリックコメントの結果について」(平成18年5月17日)にアクセスしてください。
 

 「知識を有する者」とは、例えば、所属銀行による研修の受講等により営む銀行代理業の業務に関する法令等の知識を習得した者をいい、必ずしも預金、貸付け又は為替取引の実務経験者である必要はないことを意味します。▲戻る
 「同等以上の能力を有すると認められる者」とは、営む銀行代理業の内容に応じて求められる知識及び経験について、資格及び業務経歴に照らして判断することとなる。▲戻る
 「事業以外の用に供する資金に係る定型的な貸付契約」とは、貸付契約締結の可否や契約条件の設定の手続き等が定型化されているため、融資担当者の裁量の余地の乏しい貸付けをいい、住宅ローン、カードローン、教育ローン、カーローンなど消費者向け貸付けが含まれます。 ▲戻る
 「契約の締結に係る審査に関与しない場合」とは、貸付契約の可否の判断や契約条件の設定について関与しないことをいい、単に媒介を指すものではありません。▲戻る
 「規格化された貸付商品」とは、資金需要者に関する財務情報の機械的処理のみにより、貸付けの可否及び貸付条件が設定されることがあらかじめ決められている貸付商品をいい(規則第34条の37第3号イ(1))、財務情報とは、財務諸表の各勘定科目など、資金需要者の財務に関連するデータで、融資担当者の裁量の働く余地のないものをいいます。について支障が生じるおそれがあると認められないこと。▲戻る
 主たる業務が信用の供与を行う業務であっても、「所属銀行と銀行代理業者の利益が相反する取引が行われる可能性があると認められるものでないもの」(銀行法施行規則第34条の37台6号ニ)に該当する場合には、上記b)の要件は求めないこととしました(例えば、リース業については、この要件に該当する場合があり得るものと考えます。)。▲戻る
 「同種の契約」とは、顧客が取引しようとする目的に照らし、預金であれば普通預金、定期預金等の別、貸付けであれば資金使途を同じくする目的別貸付商品(住宅ローン、マイカーローン等)や消費者向けカードローン等の別、為替取引であれば内国為替・外国為替の別により判断します。▲戻る
 「非公開金融情報」とは、その役員又は使用人が職務上知り得た顧客の預金等、為替取引又は資金の借入れに関する情報その他の顧客の金融取引又は資産に関する公表されていない情報をいいます。▲戻る
 銀行代理業者自身が勘定処理を行わない場合には、勘定元帳の作成は不要です。▲戻る
10  「顧客の利便を著しく損なわないこと」とは、例えば、営業所に併設するATM等を休業する法定の時間帯に稼動させることや当該営業所の近隣の営業所で同様のサービスの提供が受けられることなどが考えられます。▲戻る

次の項目へ