イベント

セミナー概要

Market Expansion Webinar Series: New Business Opportunities in Japan for Overseas Asset Managers 2022

2022年6月23日 16時

ゲスト講演者

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リチャード クレアモント氏

エービーエヌ・アムロ・クリアリング証券株式会社 代表取締役社長

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富安 弘毅氏

モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 マネージングディレクター

講演者

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田中 豪氏

金融庁総合政策課 課長補佐

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佐藤 スコット氏

トライコー・ジャパン 代表取締役

モデレーター

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ギャリー・トック氏

トライコー・グループ チーフ コマーシャル オフィサー

ギャリー・トック氏(以下、モデレーター)

日本でビジネスを行っている資産運用会社は、「国際金融センター」に係る日本政府の取組をどの評価していますか。

リチャード・クレアモント氏(以下、クレアモント氏)

金融庁や自治体において実施されている様々な支援は意味のある取組であり、在留資格や金融ライセンスの申請など、海外の金融人材が来日する際の行政手続上の困難に対処しようとしています。こうした取組があるという事実が、海外の高度人材の移住を容易にするために日本が真剣に取り組んでいることを示しています。

モデレーター

これは日本への赴任を検討している海外の金融人材にどのような影響を与えますか?

クレアモント氏

日本で働く外国人として経験に基づき、 職業上の観点と個人的な観点の両方から意見を述べたいと思います。

まず、職業上の観点からは、日本で働く経験は素晴らしいものです。会社を経営する立場からは、仕事の質が高いことを挙げたいと思います。加えて、日本ではインフラが良く機能しています。各企業はIT開発などにベンダーを利用しますが、 納品はスケジュール通りに行われ、品質も期待に沿ったものです。より広いレベルで見ると、自分のいる金融サービスやブローカレッジのエコスステムはプロフェッショナルなものです。これらにより、日本での成功が容易になります。言語についても、金融業界のように高いレベルの教育を受けた人が多いと、日々オフィスで一緒に仕事をする人たちは英語を話すため、感じる言葉の壁はそれほど高くありません。

次に、プライベートの観点から少しお話します。スライド1にあるように、日本では様々なライフスタイルを体験できます。日本の素晴らしいスキー環境は多くの人に知られていますが、それ以外にも、美しいビーチ、サーフィンなどの様々な魅力があります。私の子どもたちも日本でアイスホッケーを練習しています。このように、実に多様です。

トライコーのスライド1のスクリーンショット: Japan offers diversity and a high quality of life:日本の特徴として、impressive public transportation、safety and low crime rates、Delicious and healthy food、Cleanliness and green culture、Convenience and reliabilityがあげられる。日本地図を地域別に分け、主要都市名を記載した画像と、日本各地の写真が載せられている。
(スライド1)日本での様々なライフスタイル

生活費も日本の課題だと一般的には思われていますが、スライド2が示すように、生活費、家賃、食費などは一般に考えられているほどは高くありません。

トライコーのスライド2のスクリーンショット:Cost of Living in Japan graphic:日本、香港、シンガポールの生活費をUSドルで比較した表が載せられている。表では、家賃、光熱費、学費、タクシー代、新車の値段、ジーンズの値段、外食費、コーヒー代を比較している。Rent, 1-bedroom, city centre: Japan 772.91, Hong Kong 2240.60, Singapore 2228.20. Rent (3-bedroom, outside city centre): Japan 891.63, Hong Kong 3,161.03, Singapore 2,753.51. Utilities, basics, for 900 sqft. apartment: Japan 163.87, Hong Kong 207.13, Singapore 124.82. School, for 1, international, primary: Japan 11,969.51, Hong Kong 18,604.28, Singapore 22,092.87. Taxi, flagdown fare: Japan 4.63, Hong Kong 3.06, Singapore 2.82. New car, Volkswagen Golf or similar: Japan 20,920.19, Hong Kong 33,119.96, Singapore 101,065.08. Pair of jeans, Levi's 501 or similar:  Japan 45.89, Hong Kong 80.41, Singapore 67.01. Eating out, meal for two, mid-range restaurant: Japan 36.31, Hong Kong 63.69, Singapore 57.75. Coffee, cappuccino: Japan 3.16, Hong Kong 4.83, Singapore 4.11. Japan is 21.7% cheaper than Hong Kong: 36.3% less for housing, 12.8% more for transportation, 5.4% less for groceries, 12.2% less for restaurants, 47.4% less for childcare, 32.5% less for entertainment. Japan is 18.6% cheaper than Singapore: 29.5% less for housing, 18.0% more for transportation, 13.5% more for groceries, 20.8% less for restaurants, 57.0% less for childcare, 26.6% less for entertainment.
(スライド2)生活費の国際比較

私は東京のABN AMROで働いており、当社は世界中にオフィスを持っています。世界の他の金融センターに住んでいる当社の同僚は、必ずしも家を所有しておらず、持っていても、より小規模なコンドミニアムです。私が東京の中心部にある一軒家に住んでいると話すと、彼らはいつも驚きますが、考えられているほど高くありません。そのため、東京での生活費は本当の懸念事項ではありません。

スライド3では、2つの研究が紹介されています。左は、U.S. Newsとペンシルバニア大学のウォートンビジネススクールによる「Best Countries in the World」という調査です。この調査は、生活の質、労働市場、経済的な安定性、家族への親しみやすさなどの多くの要素を考慮しています。2021年には、日本はカナダに次いで世界第2位となり、いくつかの点で非常に優れています。右側にはボストン・コンサルティング・グループが実施した別の調査があります。「どの国に転勤することに最も関心がありますか」という質問に対し、2020年に日本はカナダ、米国、オーストラリア、ドイツ、英国に次いで世界第6位となりました。

トライコーのスライド3のスクリーンショット:Japan consistently ranks highly for life and work :「Best Countries in the World 2021」と「Top Destinations for Work」のグラフで日本の順位を示している。「Best Countries in the World 2021 - Japan Rankings」では、総合ランク2位、2020年は78か国中3位、総合スコア:100点満点中99.1点。カテゴリー、スコア、ランク:Adventure、41.6、28位、Agility、88.4、7位、Cultural influence、77.7、5位、Entrepreneurship、100.0、1位、Heritage、77.2、10位、Movers、74.8、6位、Open for business、57.1、26位、Power、68.8、6位、Quality of life、69.2、13位、Social purpose、29.7、20位。Top Destinations to Move for Work:2018年のランキング:US、Germany、Canada、Australia、UK、Spain、France、Switzerland、Italy、Japan。2020年ランキング:Canada、US、Australia、Germany、UK、Japan、Switzerland、Singapore、France、New Zealand。
(スライド3)国際的なランキング

外国人は、これらの多くのメリットを必ずしも認識せずに来日しています。2~3年の予定で来日する人が多いですが、私のように、15〜20年後が経って振り返ると、「あれ、よく考えると、ずっと日本で生活していた」ということに気づきます。これは、仕事とプライベートの経験の両方で、その質が非常に高いからです。

モデレーター

外国人が日本社会にどう溶け込んでいるか、言葉の壁をどう考えているか、家族がどう感じているかについて考え方をもっと聞かせてください。

クレアモント氏

私の経験では、歓迎そのものでした。私は、これまでテクノロジーと金融セクターの両方に日本で従事した経験がありますが、いずれも非常に馴染んだものです。大阪で日本のキャリアをスタートさせ、その後、東京では、日本企業にも外資系企業にも勤務しました。米国企業の方が働きやすいと思うのが直感ですが、実際には、大阪の中堅企業での経験も素晴らしく、やりがいのあるものでした。

言葉の壁については、日本語を話せるようになる努力をしました。日本語能力試験1級にも合格しましたが、多くの同僚が英語に堪能であるため、職場では英語を話しています。いずれにしても、少なくとも私の専門分野では、克服できない言葉の障壁はありません。

家族についての質問もありましたが、妻が日本人であり、子供たちはカナダ人と日本人のミックスです。日本の地元の小学校にも通わせましたが、子供たちは、歓迎され、素晴らしい体験をしていました。外国人の方には想像もつかないことでしょうが、運動会の日に娘の小学校に行くと、日本人でもハーフ・ジャパニーズでもない子供たちや、外国から来た子供たちを見かけることが本当に増えています。これは、いかに日本で歓迎されているかを示すものだと思います。

モデレーター

富安さん、別の観点からの見解をお聞かせください。金融の中心地というと、香港やシンガポールが連想されますが、東京も世界有数の都市であり、アジア太平洋地域を代表する金融の中心地の一つです。どのような誤解があると思いますか。

富安 弘毅氏

私はFIA(Futures Industry Association)ジャパンの国際金融センター委員会の議長を務め、グローバルな資産運用会社とのラウンドテーブルを主催してきました。日本で働く人が増えれば増えるほど、日本により多くのイノベーション、競争、新しいアイデア、新しい技術が生まれることから、我々は、日本へのより一層の新規参入を歓迎しています。

一連のラウンドテーブルでは、多くの資産運用会社が、税制、金融ライセンス、家事使用人の雇用、生活費などの様々な問題を提起しましたが、最近の政府の取組は、ほとんどの懸念事項に対処しています。しかしながら、驚くべきことに、これらの取組の多くはあまり広く知られておりません。同じような取組は過去20-30年に何度か議論されてきましたが、今回ほど真剣に外国人誘致が議論されていることはなかったように思います。

とは言え、未だに誤解や理解不足も見られます。最近、日本へ赴任してきた人のサポートをしたのですが、全ての情報が英語で得られるシンガポールや香港と比べると、彼らが必要な情報を得るのは簡単ではなく、手助けをしてあげる必要がありました。

また、日本への赴任を検討する場合、当初は税金の問題が大きいと考える人が多いですが、高い税率を補って余りあるメリットがあることを細かく説明すると、実はそれほど税金の問題は大きくないことに気づいてもらえます。

・例えば、生活する中での一番のコストは家賃です。しかし、日本では、一定の条件の下で家賃が税務上控除可能となることもあり、実効税率はそれほど高くなりません。
通勤費用、社会保険、医療費の一部など、多くの控除項目があります。そのため、名目の税率を単純に比較することはできず、詳細に比較する必要があります。
・日本に移ってから最初の5年間は、(国外での)キャピタルゲインなどの国外源泉所得も課税対象外です。

日本に転勤してきた同僚の中には、当初は2~3年のつもりで赴任してきたものの、日本での生活を気に入ったため、母国に戻ることなく、日本での滞在を継続している人が多数います。子供を安心して公園で遊ばせることができ、危険を感じずに公共交通機関を利用し、医療費が安く済む環境に慣れてしまうと、引き続き日本に住み続けたいと思うようです。彼らはクレアモント氏が言ったように、日本での生活を楽しんでいます。日本で実際に生活してみると、様々なメリットや、日本の本当の良さに気づくようです。これこそが、私たちがもっとアピールすべき点です。

モデレーター

最後に一言をお願いします。

クレアモント氏

富安氏が今日の議論を上手にまとめていたと思うので繰り返します。日本には多くのポジティブな点があるにもかかわらず、日本国外の外国人には十分に知られていません。彼らが来日してそのことに気付き、非常に長く生活している傾向にあります。

田中 豪氏

厳格な検疫措置が緩和されて以来、海外の投資運用業者は我々のオフィスを訪問し、対面の打ち合わせを行うようになりました。日本にお越しの際に「拠点開設サポートオフィス」との面会をご希望の場合は、是非ご連絡ください。常に歓迎します。

リチャード クレアモント氏

エービーエヌ・アムロ・クリアリング証券株式会社 代表取締役社長

1990年代に来日し、日本の多くのグローバル企業で金融とテクノロジーの両分野でキャリアを積んだ後、現職に就任。FIA(フューチャーズ・インダストリー・アソシエーション)ジャパンの会長も務める。

富安 弘毅氏

モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 マネージングディレクター

金融業界で30年以上の経験を有し、現在はFIA(フューチャーズ・インダストリー・アソシエーション)ジャパンにおいて 国際金融センター委員会の委員長も務める。

田中 豪氏

金融庁総合政策課 課長補佐

2013年に財務省入省。現在、金融庁では国際金融センター構想の下、海外の金融事業者向けに金融規制、税制、ビジネス創業、生活支援等の改革をリード。

佐藤 スコット氏

トライコー・ジャパン 代表取締役

Ernst & Young USにて勤務後、Pasona NAの代表取締役社長に就任。2011年には株式会社パソナの代表取締役社長(COO)に就任。2018年よりトライコー・グループに参画、外資資本の日本進出、日本企業の海外進出両面を支援。U.S. Japan Councilの理事としても活動。

ギャリー・トック氏

トライコー・グループ チーフ コマーシャル オフィサー

トライコー・グループのグローバル全地域における営業統括責任者。アジア太平洋地域の人材コンサルティング、保険、デジタルヘルス分野おいて営業、事業開発、マーケティングの分野で20年以上の経験を持つ。