日本への参入業者リスト

コロンビア・スレッドニードル インタビュー(2021年11月)

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小嶋 義久 さま コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ株式会社
代表取締役社長
聞き手:金融庁 2021年10月

小嶋 義久 さま
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ株式会社
代表取締役社長

日本の資産運用業界において20年以上の経験を有する。2011年にコロンビア・スレッドニードル・インベストメンツに入社し、日本におけるビジネス開発や顧客サービスを担当。2021年10月の業務開始に伴い日本法人の代表取締役社長に就任し、機関投資家およびリテール向けサブアドバイザリービジネスや、顧客サービスなどを統括する。以前は、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの東京オフィスでバイス・プレジデントとして、ファンドの営業とマーケティングを担当。この職務では、日本の個人投資家向け市場における債券商品やクオンツ商品を担当。こうした営業活動に加え、同社のファンド・マーケティング・チームを指揮した。

会社概要
会社名:コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ株式会社
設立:2021年2月
主要業務:金融商品取引業(投資助言・代理業)
金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第3281号
加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ株式会社のロゴ。「Columbia Threadneedle Investments」と記載されている。

1.イントロダクション

このたびは金融事業者ライセンスの取得および業務開始、おめでとうございます。あらためてコロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの事業内容について教えてください。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ(以下、「コロンビア・スレッドニードル」)は、米国を本拠地とする大手金融サービス・プロバイダーであるアメリプライズ・ファイナンシャル・インク(NYSE:AMP)のグローバル資産運用部門です。コロンビア・スレッドニードルは世界有数の資産運用会社であり、世界中の個人投資家、機関投資家、法人などのお客様向けに幅広いアクティブ運用戦略やソリューションを提供しています。 当社は、北米、欧州、およびアジア全体にわたり2,000名以上(450名以上の投資プロフェッショナルを含む)の従業員を有しており、先進国市場やエマージング市場の株式、債券、資産配分ソリューション、およびオルタナティブ投資において約66兆円(5,930億米ドル)1の資産を運用しています。

日本法人であるコロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ株式会社(以下、「コロンビア・スレッドニードルの日本法人」)は、日本における既存の機関投資家のお客様やパートナーへのサービスを拡充して行くとともに、新規顧客を開拓することで日本におけるビジネスの拡大を目指します。このたびの日本法人の設立は、コロンビア・スレッドニードルの日本を含むアジア太平洋地域におけるお客様の需要に応えグローバルに事業を拡大する取り組みのひとつとなります。

東京にオフィスを開設し、日本に恒久的な拠点を築けたことを大変光栄に思います。また、日本の資産運用業界を発展させ、国際金融センターの発展に貢献して行きたいと考えております。

出所:コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツ、2021年6月30日現在
1 出所:アメリプライズ・ファイナンシャルの2021年第2四半期業績発表

今回なぜ、日本で新たに金融ライセンスを取得し、投資助言・代理業を始めることにしたのですか?

コロンビア・スレッドニードルはもともとヨーロッパとアメリカにルーツがあり、アジアは複雑な市場であるため事業拡大を慎重に進めてきましたが、特に日本のマーケットは非常に大きくて魅力的であることから、私が2011年にコロンビア・スレッドニードルのシンガポールに入社した当時から、日本進出は視野に入っていました。しかし日本に進出するならば、自分たちの強みが生かせることに確信を持ち、長期でコミットメントを持つべきだという考えのもと、きちんと事業基盤を築いた上で進出するタイミングを見計らっていました。そのため、日本オフィス開設まで10年ほどかかりました。

本格的な日本進出の検討に移ったきっかけはありましたか?

金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表した2017年あたりから、リターンもリスクも大きいプロダクトから、長期のトラックレコードを重視する運用へのシフトが見えてきて、かつ、今回のシフトは今までとは波の大きさが随分違うなと感じました。それであれば、コロンビア・スレッドニードルの強みは、長期重視のトラディショナルな商品や拡大しているオルタナティブ商品にありますので、日本市場で自分たちの付加価値をしっかり出せるのではないかと感じました。そこでAPACのヘッドを日本に連れて行き、日本に既に進出していた資産運用会社のCEOなどに話を聞くなどして、本格的なリサーチを開始しました。

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2.金融創業支援ネットワーク(モデル事業)について

コロンビア・スレッドニードルの日本法人は、金融庁が新しく実施している「金融創業支援ネットワーク(以下、「モデル事業」※)の第一号案件となりました。このサポートを利用した感想を聞かせて下さい。

日本進出を決めた際には、まだ日本のスタッフは採用しておらず、コロンビア・スレッドニードルのシンガポールのスタッフが準備を進めました。しかしながら業登録については法律事務所などに相談ができるものの、銀行口座の開設手続や、代表印や銀行印の作成などは、言語の問題に加えて手続の複雑さなどもあり、海外のスタッフだけではなかなか進めることができませんでした。

残念ながらこのモデル事業がスタートしたタイミングは我々が準備を進めていた時期よりも少し遅かったため、今回はフルにサポートを受けることはできませんでしたが、それでもモデル事業に採択されてからは、金融庁からモデル事業の業務委託を受けているトライコー・ジャパン社に様々な相談をすることができました。

日本が国際金融センターを目指すにあたって、海外の金融機関が英語で業登録ができる仕組みに加えて、日本でビジネスを始めるにあたって直面する様々な障壁に関して相談できる先があることは、金銭的なサポート以上にとても重要だと思います。

※「金融創業支援ネットワーク(モデル事業)」について
政府は「世界に開かれた国際金融センターの実現」に一体となって取り組んでいます。その一環として、日本拠点開設を検討する外国人・海外金融事業者に、創業面や生活面も含めて、無料かつワンストップで支援するモデル事業を実施しています。
(詳しくは下記をご覧ください)
https://www.fsa.go.jp/internationalfinancialcenter/our-support/start-up-support/

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左から、トライコー・ジャパン 代表取締役 CEO 佐藤スコット氏、コロンビア・スレッドニードル社 代表取締役社長 小嶋義久氏、金融庁総合政策課 課長補佐 田中豪氏

3.金融ライセンス取得について

コロンビア・スレッドニードルの日本法人は、金融庁・財務局のワンストップサービス(拠点開設サポートオフィス)を利用しての金融ライセンス取得第三号(投資助言・代理業)となりました。この英語での業登録のプロセスについてお聞かせ下さい。

日本進出を決めた際には、英語での登録プロセスも拠点開設サポートオフィスも無かったため、日本語で業登録をする準備を進めていました。

2020年11月に新聞記事にて、金融庁・財務局が新規に日本に参入する海外の資産運用会社等の登録に関する事前相談、登録手続及び登録後の監督を英語で行うとともに、これらの業務をワンストップで行う「拠点開設サポートオフィス」を開設すること、英語での登録申請等を可能とする内閣府令の改正等を行うことを知りました。

しかしその時点では前例が無いことから、英語手続の方が審査に時間がかかるのではないかなど、正直不安で、日本語登録の方が良いのではないかと思っていました。

その後、実際に拠点開設サポートオフィスへの相談によりこれらの心配は解消され、そうであれば海外関係者との情報共有が必要な中、通訳・翻訳が不要であることは大変助かるので、英語での登録を目指すことに決めました。

実際に拠点開設サポートオフィスを通じた英語登録手続は思った以上にスムーズで、デメリットは特にありませんでした。今後我々のような英語登録の事例が増えれば、これから日本拠点を検討する海外の金融事業者の、日本での業登録は複雑で時間がかかるという認識を変えられると思います。今後、英語登録の対象業種が広がっていくことを期待します。

また、金融庁が1月に公表した「投資運用業等 登録手続ガイドブック」が本当に参考になりました。フローチャートなどで細かく説明が載っているので、自分たちのビジネスモデルがどこに当てはまるのか、確認することができました。日本語と英語の両方があったため、社内の外国人と話をする時にもとても便利でした。(インタビュー当日、プリントアウトしてポストイットを沢山貼って愛読されていたガイドブックを見せていただきました!)

拠点開設サポートオフィスとの質問のやり取りも英語で行うことができ、圧倒的にプロセスが早くなりました。メールでの確認・質問事項は日本語と英語で併記されていたので、解釈は日本語で、海外関係者との情報共有は英語のままできたこと、また回答は英語のみで対応いただけたことは、日本人担当者としては大変助かりました。もし日本語のプロセスを選択していれば、逐次、協議の内容を日本人のスタッフで日本語から英語に翻訳してシンガポールに共有する必要がありましたが、法令に鑑みニュアンス等が適切に伝わるよう翻訳するには時間がかかるため、少なくとも登録まで1カ月は遅れていたと思います。

貴社が投資助言・代理業ライセンスを取得するにあたって、課題や困ったことはありましたか?

日本投資顧問業協会(JIAA)への加入のタイミングが業務開始に間に合うかという心配がありましたが、拠点開設サポートオフィスからも早めにJIAAへ相談をするようにアドバイスを受けていたため、特に問題はありませんでした。拠点開設サポートオフィスへ英語で提出した書類は全て英語のまま受け付けていただいたので、別途翻訳資料を準備する必要はありませんでした。

コラム

小嶋社長とともに業登録に向けてご尽力された、日本のコンプライアンス責任者やシンガポールの担当者にも話を聞きました!

  • もちろん言語や日本ならではの手続など大変なことは色々ありましたが、拠点開設サポートオフィスという、英語で気軽に相談ができる窓口ができたこと自体が、(日本が国際金融センターを目指すことにおいて)大きなステップだと思う。
  • トライコーによるモデル事業のワンストップでのサポートは、私たちのようなポジションで働く人にとってとても頼りになる存在だと思う。
  • 「投資運用業等 登録手続ガイドブック」が日本語と英語で公表されたことによって、日本人も外国人も法律事務所ともスムーズに議論ができて大変助かりました!
  • 国際金融センターの特設ページはガイドブックを含めて日本語と英語で有用な情報が掲載されていた。当該ページへのアクセスが改善されるとより良いと思う。