日本への参入業者リスト

PINECONE株式会社 インタビュー(2023年7月)

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(左)服部周作 さま (右)アンドリュー・チョウ さま PINECONE株式会社
共同創業者

聞き手:金融庁 2023年4月

会社概要
会社名:PINECONE株式会社
設立:2022年11月
主要業務:海外投資家等特例業務(届出者)
ホームページ:https://pinecone.co.jp/

PINECONE株式会社のロゴ。「PINECONE ASSETS BRIDGE TO THE FUTURE」と記載されている。

1. Pineconeは新たに創設された「海外投資家等特例業務」の第一号届出者となりました。

※本届出制度は、主に海外のプロ投資家を顧客とする組合型ファンドの資産運用業者であれば届出制とするなど、日本への参入手続の簡素化を目的に2021年11月22日に新たに施行されたものです。

あらためて貴社の事業内容について教えてください。

Pineconeは、日本の中小企業への新たな投資スタイルを導入するために設立されました。

従来のプライベート・エクイティ投資のスタイルは、一般的に3年から5年という短い投資スパンで収益を得るために会社を再売却する必要があり、過激で短期集中型だと感じていました。

そこで私たちは、日本のビジネス慣習や文化的価値観に適合するビジネスモデルを世界中で模索した結果、北欧スウェーデンでSerial Acquirersと呼ばれる、長期継続投資を目的とする投資モデルに辿りつきました。

Pineconeは、このモデルを日本で最初に導入したいと考えています。

Pineconeを設立することになった経緯を教えてください。

共同創業者の服部周作(以下、シュウ)とアンドリュー・チョウ(以下、アンドリュー)は数年前に知り合い、職業や経歴は全く異なるものの、投資やビジネスへの同じ情熱を共有することで意気投合しました。

そして2022年末にかけて、日本の中小企業、特に家族経営の企業に向けた事業承継ソリューションの需要が急増していることを認識し、両者はタグを組むことを決めました。

シュウは、静岡の実家の中古自動車ディーラーで予期せぬ世代交代に直面し、日本における事業承継の難しさを肌で感じたことがあります。この経験をきっかけに、彼は事業戦略やオペレーション改善における専門的な経歴を生かして、日本の中小企業セクターの再生を支援したいと考えるようになりました。

アンドリューは、日本国内およびグローバルに、プライベート・エクイティと上場株式の両方の分野で資産運用に携わってきました。アンドリュー自身がプロの投資家であり、ここ数年、質の高い日本企業を見つけることに注力してきたことを考えると、中小企業投資における彼の経験を、日本の中小企業の状況の中でより大規模に適用する機会を求めたことは自然なことであり、これがPinecone設立の起源となりました。

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2. 拠点開設サポートオフィス(FMEO)での英語登録手続について

Pineconeは、金融庁・財務局の拠点開設サポートオフィス(FMEO)を利用しての届出完了となりました。この英語でのプロセスの印象についてお聞かせ下さい。

当社は、海外投資家等特例業務という新たな届出制度を利用し、事業を開始した最初の企業であることを大変嬉しく思っています。この届出制度は、当社のような規模の小さな会社が新しくビジネスを始める際に、より簡素に参入手続きが行える点で優れていると感じています。

当社は言うまでもなくFMEOによる指導とサポートに非常に感謝しています。本届出制度のプロセスにおいて、FMEOは当社に対して着地点を明確にしていただき、随時協力的にコミュニケーションをとっていただいたと感じています。また書類のドラフトを提出後、通常1~2日以内には詳細なフィードバックを受けることが叶い、その回答スピードには良い意味で大変驚かされました。

Pineconeは、金融庁とトライコー・ジャパンが実施している「金融創業支援ネットワーク(モデル事業)」の採択先となりました。このサポートを利用した感想を聞かせて下さい。

当社は金融創業支援ネットワーク(モデル事業)に採択されたことを光栄に思っています。

金融庁とトライコー・ジャパンの建設的なサポートにより、創業にかかる時間や労力を最小限に抑えることができました。FMEOチームとトライコー・ジャパンのサポートが適切だったため、常に安心して準備を進めることができました。

結果的に、当社は貴重なリソースを本来のビジネスの目的達成のために集約させることが叶い、あらかじめ設定していたスケジュールを何カ月も前倒しで完了することができました。また、新規参入係る経費の補助についても、私たちのような新興の運用業者には助かるところです。

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3. Pineconeの将来のビジョンについて

当社のビジョンは、長期継続投資を目的とする投資モデルを日本に誕生させることで、日本の投資業界におけるパイオニアとして認知されるようになることです。私たちは、この新たな投資スタイルが日本でも有効であることを証明したいと思っています。

そしていずれ日本にこの投資モデルが定着し、日本の中小企業セクターの成長と繁栄に貢献できることを願っています。

最後に、社名の由来を教えて下さい。

Pineconeの名称は、長期的な価値創造を重視する当社の投資哲学に由来しています。松の木は、日本では古くから常緑樹(エバーグリーン)として長寿の証と神木の象徴とされてきました。

松ぼっくり(Pinecone)の役割は、松の木の種子を悪天候や北風、動物から守ることです。松ぼっくりは、その性質上、周りの環境が整いてから、種子を世に放出して成長させることができます。

Pineconeという社名は、当社の投資先企業と投資主の資金を安全に預かるという、そんな意思を受け継いでいます。

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服部 周作 さま
Pinecone KK
共同創業者

経営コンサルティング、企業再生、ベンチャー企業で15年以上の経験を持つ。金融ジャーナリストとしてキャリアをスタートさせ、東京と上海のマッキンゼー・アンド・カンパニーに在籍。アジア欧米7ヵ国における先端技術分野のプロジェクトで戦略とハンズオンの実行支援に従事。また、グルーポン(アジアで最も急速に成長したユニコーンの1つ)のVPを務め、直近では、米再生ファーム、アリックス・パートナーズのディレクターに就く。別途、米出版大手McGraw Hill社から「The Mckinsey Edge」【邦訳:「47原則」(ダイヤモンド社)】など多数上梓、他言語へ翻訳される。日中英のマルチリンガル。北米McGill大学卒、国立台湾大学企業研究所MBA、特待生。

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アンドリュー・チョウ さま
Pinecone KK
共同創業者

オーストラリア出身の日本永住者。企業戦略、投資銀行業務、未公開株・公開株ファンドの運用など、20年にわたる経験を持つ。直近では、VGIパートナーズ(AUM20億ドル規模のグローバル株式ファンド)の東京オフィスを設立し、主に日本上場企業への投資を行う。それ以前は、オーストラリアのマイクロキャッププライベートエクイティファンドの代表として投資を成功させ、グロスIRR32%を達成した。通信最大手Telstra社でエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、その後投資銀行Greenhill & Co.(現みずほフィナンシャルグループFG)でアナリストを務める。ニューサウスウェールズ大学でコンピュータとバイオメディカル工学を専攻し、最優等で卒業。