日本への参入業者リスト

フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社 インタビュー(2023年8月)

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高山 裕一 さま フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社
在日代表

聞き手:金融庁 2023年5月

会社概要
会社名:フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社
設立:2022年7月
主要業務:金融商品取引業(投資助言・代理業)
金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第3377号
ホームページ:https://www.frontieradvisors.com.au

フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社のロゴ。「Frontier Advisors」と記載されている。

1. フロンティア・アドバイザーズの日本進出 ~投資助言・代理業登録~

このたびは投資助言・代理業ライセンスの取得、おめでとうございます。あらためてフロンティア・アドバイザーズの事業内容について教えてください。

フロンティア・アドバイザーズは、1994年にオーストラリアの年金基金が出資して設立したオーストラリアを代表する独立系資産運用コンサルタントです。創業以来、約30年にわたり、資産運用コンサルタントとしてオーストラリアの機関投資家にアドバイスを提供してきました。当社が投資助言を提供している投資家の運用資産総額は、2023年3月末現在約6,000億豪ドル(約53.4兆円)になります。投資家には、スーパーアニュエーション(オーストラリアにおける年金基金)、公共・公益団体、保険会社、大学など高等教育機関などが含まれます。フロンティア・アドバイザーズ・ピーティーワイ・リミテッドはオーストラリアで投資助言業者としてAustralian Securities & Investment Commission(ASIC)に登録されている事業者です。

これまで、フロンティア・アドバイザーズは専らオーストラリアの機関投資家に投資助言などの資産運用コンサルテーションサービスを提供してきました。株式や債券といった伝統的資産はもちろんのこと、インフラストラクチャーや不動産といった代替資産への投資助言にも力を入れてきました。特にインフラストラクチャーについてはオーストラリアの年金基金の取り組み姿勢も積極的であったことから、多数の運用会社の運用商品の情報を蓄積することが可能となりました。これらのオーストラリアで培った投資のノウハウをオーストラリア外の機関投資家にも提供してゆきたいと考えています。

いつ頃から日本への進出について検討を始めたのでしょうか?

2014年頃から毎年のように日本や韓国などアジア諸国に出張に行きながらオーストラリアの外での事業機会のリサーチをしていました。2018年頃からは、コンサルチーム、リアル・アセット・チーム、投資戦略チームなど延べ10人近くが日本出張の回数を増やして調査を続けた結果、私たちがターゲットとする新しい市場は日本であると確信しました。その主な理由としては、市場規模が大きいこと、多様な潜在投資家層がいること、実物資産、特にインフラ投資への関心が高まっていることでした。その将来性のある日本市場においては、我々の強みであるインフラを含むリアル・アセットに関するより良い助言へのニーズがあると考えました。そしていよいよ本格的に日本への参入の準備をしようとしていた矢先にパンデミックとなり、計画を延期せざるを得なくなりましたが、その間も日本進出への想いは変わらず、準備を続けていました。

日本参入にあたっていくつかの方法があることは認識していましたが、私たちの日本でのビジネスに対する本気度を示すためにも、日本拠点を設立して業登録をすることは必要不可欠だと考えました。今回、ようやく日本子会社での業登録が完了し、日本でのビジネスをスタートできることをとても嬉しく思います。

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右:アンドリュー・ポルソン(フロンティア・アドバイザーズ・オーストラリア本社 最高執行責任者/フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社 職務執行者)、左:高山 裕一(フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社 在日代表)

2. 拠点開設サポートオフィス(FMEO)での英語登録手続きと「金融創業支援ネットワーク(モデル事業)」のサポートについて

フロンティア・アドバイザーズ・ジャパンは、金融庁・財務局の拠点開設サポートオフィス(FMEO)を利用して金融ライセンスを取得しました。この英語での業登録のプロセスの印象についてお聞かせ下さい。

前述のとおり、フロンティア・アドバイザーズは2014年頃から、日本に拠点を開設することを念頭において、チームで毎年出張もしながらリサーチを続けていました。2018年頃には更に本格的なリサーチを始めましたが、その当時は残念ながらまだ拠点開設サポートオフィス(FMEO)、国際金融センター特設ウェブサイト、投資運用業等登録手続ガイドブック、金融創業支援ネットワーク(モデル事業)などは無かったため、(特に英語の)情報を探すことに苦労しました。

日本参入の機関決定後、拠点開設サポートオフィス(FMEO)を通じて英語での業登録ができることが分かり、言語の障壁が無くなるということで、非常にポジティブに受け止めました。実際にFMEOは、在オーストラリアのスタッフとも投資助言・代理業の業登録に関して英語でオープンなコミュニケーションで支援をしてくれました。また、FMEOには多様なバックグラウンドの方が在籍しており、フロンティア・アドバイザーズが登録しようとしている業務について、ビジネスに即した適切かつ迅速なサポートが頂けました。現在は、2018年頃よりも、英語のガイドブックやウェブサイトなどの公表資料が非常に多くなったと思います。我々は、オーストラリア本社への説明などコミュニケーションは英語で行うため、大変ありがたく思います。

金融庁がトライコー・ジャパンへの業務委託を通じて実施している「金融創業支援ネットワーク(モデル事業)」のサポートを利用した感想をお聞かせ下さい。

FMEOやトライコー・ジャパンと繋がってからは、実際のサポートや補助金はもちろんのこと、何か困ったことがあったら頼れる先があるという安心感がありました。日本での事業はすべてが初めての経験であり、業登録にかかる時間やコストの予想が立てにくいこともあり、補助金の存在は事業の設立コストの観点からも大きな安心につながりました。我々のようなDAY1に収益がない海外からの新規参入事業者にとっては、モデル事業による補助金があったことは設立後の収益見込みを考えても、言うまでもなく非常に大きかったです。

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3. フロンティア・アドバイザーズの将来のビジョン

フロンティア・アドバイザーズのオーストラリア本社と日本拠点は今後どのように連携していくのでしょうか?

ビデオ会議システムのおかげで、時差も比較的少ない日本拠点とオーストラリア本社は頻繁にコミュニケーションを取れています。本社の最高執行責任者であるアンドリューや日本代表の高山を含む部門長7名は、毎週木曜日早朝に約30分のスタンドアップ・ミーティングに加えて、月に一度は数時間に及ぶ長い時間を取ってじっくりと今後の事業計画や戦略などについて話し合います。また、日本拠点はアンドリューがレポーティング・ラインであることから、毎週金曜日にアンドリューと高山は1時間ほど日本事業についてミーティングを行っています。これに加えて、高山は、リアル・アセット・チームなどリサーチ部門と常に情報をアップデートして共有します。

日本投資家の窓口としての日本法人とグローバルな投資関連情報の出し手としてのオーストラリア本社を密接につなげることが今後の事業成功のカギになると考えています。

今後日本で新たにどのようなビジネスを行うのでしょうか?

フロンティア・アドバイザーズ・ジャパンでは日本の機関投資家に投資助言契約に基づき、当社の運用会社・ファンドデータベースを利用した投資助言を提供したいと考えています。今後、直接投資をされない投資家のために、投資一任業を行っている運用会社と協働してファンドを組成することも検討しています。また、投資先のファンドの投資対象が分析できるウエブベースのツールの提供なども随時行って行きたいと考えています。

将来的にはフロンティア・アドバイザーズ・ジャパンにアジアの投資機会の分析機能を持たせ、情報発信の拠点に発展させて行きたいと思います。そのためにも今後は関係者を集めた日本でのイベントなどでも、積極的に当社のビジネスモデルを広めていきたいと考えています。

フロンティア・アドバイザーズがオーストラリアで築いてきたものをそのまま日本へ持ち込むことも可能であるものの、それだけに留まらず、互いの国の人々に他の国で働く機会を提供し、それぞれが異なる市場でのビジネスや顧客のニーズについての理解を深め、刺激し合うことによりチームが成長することを心から望んでいます。

私たちが市場におけるより専門的なスキルの開発に一役買うことによって、日本での人材育成にも貢献できれば嬉しく思います。

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高山 裕一
フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社
在日代表

フロンティア・アドバイザーズの日本法人であるフロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社の在日代表であり、職務執行者。フロンティア・アドバイザーズの日本事業の立案・実践ならびに日本の機関投資家向け投資助言事業の責任者。日本事業に加え、長期的な同社のアジア事業の長期的な戦略の構築も担当。
フロンティア・アドバイザーズ入社以前は日興アセットマネジメント、東京海上アセットマネジメントなどにて海外機関投資家向けに日本株、アジア株のファンドの販売などの海外事業に従事。東京海上アセットマネジメントに入社する以前は旧三井信託銀行(現三井住友信託銀行)やみずほ信託銀行にて外国株の運用を担当。1998年から2013年まで主にロンドンで勤務した経験を有する。1990年慶応義塾大学経済学部卒、2000年に英国City University Cass Business Schoolにて経営学修士(MBA)を取得。2016年にChartered Alternative Investment Analyst(CAIA)協会日本支部を支部長として設立。公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト、GARP協会認定財務リスクマネージャー。

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アンドリュー・ポルソン
フロンティア・アドバイザーズ・ピーティーワイ・リミテッド 最高執行責任者
フロンティア・アドバイザーズ・ジャパン合同会社 職務執行者

フロンティア・アドバイザーズ・ジャパンの職務執行者であり、本社の最高執行責任者である。約30年にわたる金融機関での勤務経験があり、その多くが資産運用関連であり、IOOFやANZ Bankなどの資産運用会社、銀行などの金融機関に加え、機関投資家での勤務経験を有する。2018年にフロンティア・アドバイザーズに最高執行責任者として入社。入社以降、同社のコンサルタントチームを率いて、オーストラリアにおけるスーパーアニュエーション(職域年金基金)との関係構築・関係強化を行い、ESGや基金のガバナンスなどの新しいサービスを導入してきた。
1994年La Trobe大学卒(商学)、1998年Melbourne University Melbourne Business Schoolにて経営学修士取得(マーケティング)。