新たな自己資本充実度の枠組みに関する市中協議ペーパーへの付属文書

 

付属文書1.当合意の適用範囲

 

  1.  1988年の自己資本合意は国際的に活動する銀行に対し、「銀行及び金融業務を営む子会社を含む連結ベース」で適用することを意図していた。自己資本合意を連結ベースで適用することの主要な目的は、あるグループに所属する銀行が発行した資本を同じグループ内の企業が保有することにより生じるダブル・ギアリングを除去することにより、子会社を有する銀行の資本の質の高さ(integrity)を維持することにあった。当委員会は、自己資本合意を連結ベースで適用することが銀行システム内の資本ベースの質の高さ(integrity)を維持するための最善の方法であるとの見解を再確認する。当委員会は、また、「所有構造によって、銀行の自己資本ポジションが弱体化したり、銀行がグループ内の他の組織から発生したリスクに晒されたりすべきでない」と懸念し、こうした観点から動向を検証していくと表明していた。

  2.  年を追って、複雑な所有構造の増加とともに、自己資本合意の適用範囲を決めるうえで、特に適用されるべき連結のレベルに関し、各国で様々な実務が出来上がってきた。さらに、銀行は、他の金融業務、特に証券業と保険業に一段と進出してきた。これらの非銀行企業への投資が連結されていない法域では、自己資本規制上の取扱いは多くの場合区々となっている。

A.連結を行うレベル

  1.  これらの懸念に対処するため、当委員会は、自己資本合意の適用範囲を拡大することによって銀行グループ全体のリスクを捕捉することを提案する。そのために、銀行グループの親会社である持株会社を、完全連結ベースで含むよう、自己資本合意を拡張することが提案されている。銀行グループとは、主として銀行業務を営んでいるグループであり、国によっては、単体の銀行として登録されているかもしれない12。同時に、当委員会は、銀行グループ内の国際的に活動する銀行に対し、全てのレベルで、同じく完全連結ベースで、自己資本合意が適用されることを明確化する(当セクション最後の例示図を参照)。

  2.  自己資本規制を銀行グループ全体に適用することにより、自己資本を過剰にレバレッジする機会が減り、銀行グループ全体にとって十分な自己資本があることが確かなものとなる。しかしながら、当委員会は、損失の吸収に自己資本が即座に利用可能であることを確実にしてグループ内の個々の銀行の預金者を保護する観点からみて、最も高いレベルでの適用だけでは不十分と考えている。グループ内でリスクが存在する部分に適切な自己資本を保有することにより、リスクが伝播する範囲は制限される。銀行グループの最上位レベルより下の全ての国際的な活動を行っている銀行に対して子会社の連結ベース(sub-consolidated basis)で自己資本合意を適用することは、必要な部分に十分な自己資本が存在することを確実にするうえで不可欠である。さらに、監督当局はグループ内のそれぞれの銀行が単独で十分な自己資本を保有していることを確実にすべきである。

  3.  完全な連結への代替として、個別(stand-alone)銀行(すなわち、子会社の資産・負債を連結しないベース)への自己資本合意の適用は、全ての子会社及び重要な少数持分への投資額が当該銀行の自己資本から控除されていれば、同様の効果をもたらす。現時点の規制でこれらが要求されていない国については、子会社の完全な連結(sub-consolidation)ないしは代替策としての全額控除付の個別(stand-alone)ベースの適用には、3年間の移行期間を設けることを提案する。

B.子会社及び他の金融活動

  1.  一般的に、全ての銀行活動──それは国によっては銀行ないしは銀行グループ内で行われている証券業やその他の金融業務(例、リース)を含むよう定義されているかもしれない──が、自己資本規制上は国際的に活動する銀行ないしは銀行グループの連結範囲に含まれるべきである。過半数の資本を所有しているないしは支配力を及ぼしている銀行及び証券会社(証券業務が銀行業務とされている場合)は、一般的には連結の範囲に含まれるべきである13(当付属文書最後の例示図を参照)。過半数の資本を所有している銀行及び証券関連の子会社で、自己資本規制上、連結されないものがある場合には、これらの企業に対する当該グループからの資本投資は控除され、資産と第三者からの資本投資は取除かれる(すなわち、非連結される)べきである14。銀行グループの自己資本充実度を評価する際に、グループの投資の簿価を全額控除することで、資本の二重計上のリスクを避けられる。

  2.  銀行グループに、過半数の資本を所有しているないしは支配力を及ぼしている保険子会社が含まれている場合、自己資本合意の規制が保険リスクに対応することを明確に意図しているわけではないことから、これらは一般的には控除を通じて連結範囲から除外されるべきである。保険会社や証券会社に対する投資を控除する代わりに、銀行監督当局は、金融コングロマリットに関するジョイント・フォーラムにおいて銀行・証券・保険監督当局が開発した原則と手法15に沿って、資本の二重計算を除去する代替的手法を適用してもよい。

  3.  規制対象金融機関に対する重大な少数持分の株式投資で、支配力が及んでいないものは、一定の条件の下で比例連結、ないしは株式投資の控除により自己資本から除外されるべきである。当委員会は、規制対象外の金融機関への同様の投資に関する自己資本規制上の取扱いについて検討中である。少数持分投資が重大と考えられるようになり、したがって比例連結ないしは控除されることとなる比率は、各国の会計上ないしは規制上の実務、またはその両者で決められることとなる。当委員会は、銀行自己資本の持合いによって銀行の資本ポジションを人為的に膨らませることは自己資本充実の目的では認められるべきではない、との1988年合意で示された見解を再確認する。

  4.  国によっては、銀行グループに過半数の資本を所有しているないしは支配力を及ぼしている事業子会社が含まれるが、その他の国では、銀行による非金融子会社への投資は論点とはならない。当委員会は、重大な事業会社への投資に対応する銀行のリスクを、自己資本規制上、どのように健全に取扱えるかを検討中である。

  5.  自己資本合意は銀行のリスクを念頭に置いているが、コングロマリット全体の自己資本充実度の評価を改善するには銀行・証券・保険監督当局の自己資本規制を整合的にする努力の継続が必要なことを、様々な業務を営む多角化した金融グループの展開が示している点を当委員会は認識している。多角化した金融グループのレベルでは、監督当局は金融コングロマリットに関するジョイント・フォーラムにより開発された原則と手法を適用することが推奨される。

  6.  金融・非金融に跨る混合された業務の中で、ないしは主として非銀行業務を行う金融グループで銀行業務が営まれている場合には、監督当局は、例えば銀行(ないしは銀行持株会社)よりも上位のレベルで発行された資本をレバレッジすること等により、バーゼルの規制が迂回されないことを確実にするようにすべきである。監督当局は、また、そのような状況にある場合、子会社の連結(sub-consolidation)レベルでの適用を通じて、銀行業務が適正に自己資本合意に服していることを確実にするべきである。当委員会は、そのような混合グループ内の資本の全体的な水準と配分がリスクに見合うものであり、グループ内の他の部分で発生するリスクが適切に考慮されることを確実にするために、銀行・証券・保険監督当局間の協調が必要であることを強調する。


合意の新適用範囲の例示図

(1)  主として銀行業務を営んでいるグループの境界線。自己資本合意はこのレベルにおける連結ベースで、すなわち、持株会社レベルまで適用される(本文23ページ、パラグラフ3を参照)。

(2)(3)(4)  自己資本合意はまた、より下位レベルでも国際的に活動する銀行全てに対し、連結ベースで適用される。完全な連結への代替として、3つの国際的に活動する銀行全てに対し、子会社への投資を全額控除した上で、個別ベースで合意を適用しても、同じ結果が得られる。


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