【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 


:銀行の監督・検査行政に対する全体的な考え方を再度少し整理させていただきたいと思っております。
 以前「3つのS」のことを申し上げました。「strategic」か、「sound」か、「sincere」かと、金融再生プログラムを受けて、様々な形でのご努力を銀行にはしていただいておりますけれども、そうした点を「strategic」か、戦略的かと、「sound」か、健全かと、「sincere」か、誠実かという観点からチェックして行きたいということを申し上げました。4月4日に普通株の転換のガイドラインを出して、今回、特別検査の結果を出して、更には増資に関するコンプライアンスの検査等々も行いましたので、少しまとめて整理をさせていただきたいという趣旨でございます。
 まず「strategic」かどうかということに関しては、収益性にポイントを置いたレビューを進めているつもりであります。具体的には、先程も申し上げた、特にこの分野では2点強調したいと思いますが、普通株転換ガイドラインを作成し、これを厳格に適用して行くということをぜひ行っていきたいというふうに思います。3割ルールに該当するような場合は、厳正にこれに対応して行くということであります。
 「strategic」かどうかということの第2点は、早期警戒制度によるモニタリングの強化というものをこれまでも行って参りましたけれども、ぜひしっかりと行っていきたいというふうに思っているところであります。
 第2の「sound」かということに関しては、これは特に資産の健全性という観点から、繰延税金資産の正確性等をしっかりとレビューして行くということが重要だと考えております。繰延税金資産に関する検査の実施、これが第1。それと自己資本比率に関する外部監査の実施・導入等、こうした点が重要な点になって来るというふうに思っております。
 第3の「sincere」かどうかに関しては、増資の手続きの適法性等のレビューを行うということであります。持株会社集中検査を実施しておりますが、この中で第三者割当増資に関する法令などの遵守状況、コンプライアンスのチェックを厳正に行うと、コンプライアンス検査を行うと。これは昨日、立入りの調査も始めたところでございます。更には、この点で言うならば財務諸表の正確性に関する経営者による宣言等も、主要行については今の決算から適用を要請しているわけでありますけれども、そのような点を改めて、我々としてはしっかりやって行くということを確認させていただきたいと思います。
 厳格な資産査定の関連での特別検査でございますけれども、昨年の金融再生プログラムに基づいて、特別検査の再実施を行いました。特別検査は非常に厳格に行えたと思っております。昨年の特別検査で相当の洗い出しを行ったところでありますけれども、昨年の洗い出しを行ったその上で、今回の特別検査で更に27の取引先が下方遷移したということでありますから、昨年、一旦深堀りしているわけでありますけれども、そこを更に掘り下げたというふうに思っております。とりわけ厳格に行ったということでして、ディスカウントキャッシュフローの適用によりまして、相当、大口要管理先に関する引当率が高まったと。
 一方で厳しく行ったということと同時に、その結果を受ける形で不良債権の処理は進んでいるという点もぜひ申し上げたいと思っております。不良債権処分損を今回も、これらの対象先に関しては非常にしっかりと各行が計上するということ、これと見合う形で、実は下方遷移の例を申し上げましたが、上方遷移も相当の程度出て来ていると。上方遷移するということは企業の再生が進んでいるという一つの証左であろうかと思います
平成15年4月25日(金)2 竹中大臣記者会見抜粋)
 
 特別検査について、詳しくは、アクセスFSA本号の【トピックス】「特別検査等の実施結果について」にアクセスしてください。また、金融再生プログラムについて、詳しくは、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてみてください。

 


:私は特別検査は昨年も厳しく行ったと、今回も更に厳しく行ったと、その結果今のような数字が出てきているというふうに思っております。これはある意味で昨年厳しく行ったわけですから今回は下方遷移の数は前回よりは少なくなって、これは当然なわけでありますけれども、その意味ではその中で27社と、我々が厳しく行った結果としてこういう姿が出てきたのだというふうに思っています。
平成15年4月25日(金)2 竹中大臣記者会見抜粋)

 


:自己査定が大事だということ、そこはしっかりとやっていただきたい。これは決算期に我々がその時期に一緒に資産査定に加わることによって、我々なりの査定の結果を示して、前回もそうでありましたように自己査定と我々の査定についてギャップがあればそれを出していく。その中で自己査定が非常にしっかりしたものになってくるという、そういう性格のものだと思います。現実にいろんな査定を一巡目二順目我々の検査を重ねる中でそのギャップは縮まる傾向にありますので、我々が資産の厳格化を求めて検査をしっかりとやっていくと、その中で自己査定そのものが大変しっかりしたものになりつつあると、そのように理解すべきなのではないでしょうか。
 理想的には特別検査をしなくて良い状況が出現するというのが理想であろうかとは思います。ただ、今の時点ですぐにこれを止めるのが良いことかどうかというのは、直ちには判断できないと思っております。我々としては2年後にこの問題の終結を図りたいと、その目標に向かって資産査定の厳格化、自己資本の充実、コーポレートガバナンスの強化、これをしっかりとやって行っていただきたい。そのための検査・監督を続けたいと思います。
平成15年4月25日(金)2 竹中大臣記者会見抜粋)

 


:証券市場の構造改革と活性化に対する対応についてということで、関係閣僚が集まりまして、その会議の結果を取りまとめておりますので、ご報告いたします。
 まず表書きのところですけれども、これは基本的な考え方としては、経済活性化を進めることが証券市場の活性化のためにも基本であって、構造改革による経済活性化が基本なのだというスタンスであります。しかしながら、需給の不均衡、バランス等々も現実には影響をしている。更に重要な問題としては、個人投資家がこの日本ではなかなか拡大しないと。個人の資金をこのリスクマネーに呼び込むような、そういった対応も必要であるという観点から、まさに証券市場の構造改革と活性化という観点から、関係省庁、関係大臣が担当として出来ることを持ち寄ったものでございます。2回にわたる関係閣僚等の会議で取りまとめをいたしました。
 今日は、早急に対応するもの、更には今年度中に検討するもの、引き続き検討するもの、大きく3つぐらいに分かれておりますけれども、もちろん速やかに出来ることは速やかに実行に移して、更に今後の問題については進捗状況を出来るだけ早く速やかに検討をしていきたいということであります。大きく13の項目に分かれておりまして、この項目は経済財政諮問会議で民間議員が提案した問題、さらには与党のプロジェクトチームで提案された問題と概ね重複しているというふうに思います。
 まず、郵貯・簡保による対応ですけれども、早急な対応としては、保有株式買取機構が政府保証債を発行して調達をすることになった場合、この債券に郵貯・簡保資金を活用するということについて検討を行う、これは早急な対応であります。
 本年度中に検討するものとして、郵便局ネットワークを活用した民間投資信託の窓口販売について、民間との役割分担を含め総合的に検討する。さらに郵政公社は、自己資本の充実に努めつつ、郵貯資金・簡保資金の性格に応じて、それぞれの資金の国内株式による運用の拡大について検討する。これは本年度中の検討事項でございます。
 公的年金による株式運用については、早急に検討するものとしては、年金資金の運用の原則、これは今年3月に目標値を5%から6%に引き上げていますけれども、これを着実に達成をすることを目指すということです。本年度中の更なる検討項目としては、来年予定されています次期年金財政再計算と歩調を合わせて、株式の割合を含めた基本ポートフォリオの内容について検討を行うということであります。
 3の厚生年金基金の代行返上の問題でありますが、これは早急に検討する問題として2点。この施行時期について、当初予定した本年10月1日を出来る限り前倒しをする。それと、物納要件について、可能な限り要件を緩和した政省令を急いで制定するということであります。
 4の企業による自社株取得でありますけれども、自社株取得の手続きについて、定時株主総会の決議がなくても、取締役会等々で対応できるように、議員立法によりこれが検討されておりますので、こうした状況を注視しながら適切に対応していくということです。更に、インサイダー取引等については、企業による自己株取得を過度に萎縮させることのないように、一層の周知徹底を図るということを行います。
 5の確定拠出年金の普及でありますけれども、これは制度ができていますが、普及が進んでいないことということで、その普及に努めるということ、本年度中の検討する項目としては、この確定拠出年金の拠出限度額の引き上げ等について検討を行うということです。
 6のESOP(従業員持株所有プラン)につきましては、関係省庁で引き続き検討を行う、これは引き続き検討するという項目です。
 7の銀行等保有株式に関する措置でありますけれども、これは早急な対応としまして、新しいBIS規制に合わせて、この保有制限の適用時期を16年末から18年末に2年程度延長する方向で議員立法を行うという検討が行われている。また、銀行等保有株式取得機構についても、その機能を強化するために、売却時の拠出金の廃止について議員立法をするという検討が行われている。こうした状況を注視しながら、我々も適切に対応していきたいということです。
 8の政府保有株式の売却でありますけれども、これは政府保有のNTT株、JT株については、15年度中は市況が好転するまでの間、売却は行わないということです。
 9の個人投資家による証券投資を促す税制等については、早急に対応するものとしましては、15年度の税制改正。これは金融・証券税制、これは思い切った簡素化と軽減が行われている。相続税・贈与税の一体的措置も行われている。こうしたことについては、関係団体とも連携しながら周知徹底を図って、新たな個人投資家層による証券投資を促進する。これについては、金融庁としてアクション・プランの中にも織り込まれております。引き続き検討する項目としては、金融・証券税制、法人税制などにつき、全体のあり方との関連を踏まえながら検討を行うということです。
 10の証券市場の信頼性の向上。これは証券取引法と公認会計士法の改正案について、今国会に提出しておりますので、これの早期成立を図るとともに、早期施行を目指すということです。その中で証券仲介業の制度が新たに創設されますが、この周知徹底を行ってその活用を図るということ、これらが早急に対応する項目であります。
 11の証券業界の対応に関する要請。これは個人株主育成の観点から、証券の関係団体に関してアクション・プランを策定することを要請するものであります。
 12の日本銀行による銀行保有株式の買入れ措置については、そこに書いてありますように、銀行保有株の買入れについて、必要ならば適切な対応について検討を行うということを引き続きの検討項目にするということです。
 13の証券市場活性化に資する民間企業の取組に対する期待でありますが、これは諮問会議で民間議員等々が言われましたように、例えば収益性を高めて配当政策を適正に行って、インベスター・リレーションズの充実に取り組む。やはり株価の基本は企業の収益であり配当であるという点を踏まえて、こうしたことを民間企業にも様々な機会で求めていく、そういう内容であります。
 最後に、その金融庁の紙でありますけれども、個人株主の育成・拡大に向けて、アクション・プランを関係団体、つまり取引所や日本証券業協会や投資信託協会、全銀協等に対して、総合的なアクション・プランを策定するよう要請するわけでありますけれども、具体的には証券市場活性化戦略会議のようなものを、関係者と有識者の間で作っていただいて、そこで以下に掲げるような問題について色々と検討をしていただきたいと思っております。
 例えば、15年度証券減税を行っておりますが、これがなかなか周知徹底していないということで、その証券減税のPRの特別チームを編成して、政府としても、証券減税のPRの強化特別月間のようなものを作って積極的に盛り上げていきたいということ、ホームページの充実等々であります。さらには、証券仲介業制度の積極的な活用を図るということ、ラップ口座の積極的な活用等。あと、投資クラブといいますか、これは個人の投資家を呼び込むためには、欧米の例などを見ても、投資クラブのようなものが非常に大きな役割を果たしてきた。日本でも、投資知識普及のNPOが幾つかできておりますが、そういったNPOの横の連絡協議会のようなものをつくるということもここでは提唱されております。さらに、銀行等による積極的な取組みを、これは銀行のETF窓販が昨年4月に解禁された。さらには、証券と銀行の共同店舗が昨年9月に解禁されている。銀行による書面取次ぎが、昨年9月に要件明確化されているというような制度変更が行われておりますので、それについて積極的な活用を図るというようなことを内容にしていただきたいと思っております。
 基本的には、これはいわゆる株価対策ということではなくて、証券市場の構造改革、それを通した活性化と、これは基本的な姿勢であるというふうに思っています。この中で、幾つかのものについては比較的早く効果をあらわすものもあるだろうし、長年、例えば個人投資家を呼び込むなどという問題はもう20年来議論して、なかなか実現していない問題でありますけれども、そういった問題についても、それなりの効果が出てくる、ないしはしっかりと出てくるようにしたいと思っています。
平成15年5月14日(水) 竹中大臣記者会見抜粋)
 
 「証券市場の構造改革と活性化に関する対応について」の本文をご覧になりたい方は、首相官邸ホームページの「主な報告書・答申等」から「証券市場の構造改革と活性化に関する対応について(平成15年5月14日)」)にアクセスしてみてください。また、「個人株主の育成・拡大に向けたアクション・プラン策定の要請」の本文をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「個人株主の育成・拡大に向けたアクション・プラン策定の要請」(平成15年5月14日)にアクセスしてください。

 


:りそな銀行については、平成15年3月期決算における同行の自己資本比率が健全行の基準である4%を下回る2%程度になるとの報告を受け、金融危機対応会議が開催されまして、預金保険法第102条第1項第1号に基づく資本増強を講ずる必要についての審議が行われました。
 手元に金融危機対応会議の答申と内閣総理大臣の談話をお配りしております。私から内閣総理大臣の談話を読み上げさせていただきます。
 内閣総理大臣の談話。平成15年5月17日。
 本日、金融危機対応会議を開催し、同会議での議を経て、りそな銀行について預金保険法第102条第1項の第1号措置として資本増強の措置を講ずる必要がある旨の認定を行うとともに、同行が資本増強の申込みを行うことができる期限を平成15年5月30日と定めました。
 同行については平成15年3月期決算における自己資本比率が健全行の国内基準である4%を下回ることとなりましたが、現時点で預金流出や市場性資金の調達困難といった問題はありません。今回の措置は、同法第102条第1項の第2号措置、破綻処理に伴う預金全額保護や、第3号措置、特別危機管理のような破綻金融機関に対する措置とは異なり、破綻状態にない金融機関に資本増強を行い健全性の回復を図るものです。これにより、我が国及び同行が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じることを未然に防ぎます。
 今回の認定後、同行からの申込みを待って、資本増強についての具体的な決定を行うこととなりますが、経営の安定を図り預金者等の不安を招かぬよう10%を十分上回る自己資本比率を確保したいと考えております。
 今回の資本増強及び徹底的な経営改革により、同行の健全性の確保、収益性の向上が図られるものと期待をしております。当然のこととして、同行においては、引き続き通常の営業が行われ預金等についても種類を問わず全く問題は生じませんので、預金者、取引先企業の皆様におかれましてはご安心いただきたいと考えております。
 なお、現状においては、金融システム全体に影響が及ぶ状況にはありません。政府としては今後とも金融システムの安定を確保して行くとともに、日本銀行とも緊密な連携をとりつつ、預金者の保護、信用秩序の維持に万全を期すこととしております。
 これが総理の談話でありますけれども、総理の談話にもありますように本件に関しましては、所謂金融機関の破綻ではなく、りそな銀行に十分な水準の資本増強を行うことにより、同行の健全性の回復等を目的とするものであります。同行においては今後もこれまで通り通常の営業が行われることとなりますので、預金者、取引先企業等の皆様に置かれましてはご安心をいただきたいと考えております。なお、りそな銀行のコンプライアンスの維持に万全を期するため、本日金融庁において経営監視チームを設置したところであります。今後、同行に対しては徹底した監督検査による経営監視を行ってまいりたいというふうに思います。
 りそな銀行については、銀行の規模、その活動の基盤等々を考えまして我々の総合的な判断として、金融から経済の底割れを起こさせないと、そういった強い決意の下に金融危機対応会議を開催して今回の資本の注入を決定したということです。
 基本的に要件としては、銀行がそういった資本の基準を下回る場合に我々としては早期是正措置を発出するわけでありますけれども、早期に自己で調達をするということが困難である。銀行の活動基盤等々に鑑みて、これは公的な資金を活用して、そこにりそな自身の経営改革努力を当然のことながら前提として我々の公的な資金のサポートの下に銀行を再生に向かわせると、そのような観点から決定をしているわけです。
 他行の状況に関しては、これまた決算の今手続き中でありますけれども、そういった問題があるというふうには現在のところ我々は承知をしておりません。そういう状況はないというふうに現在のところ我々は承知をしております。
平成15年5月17日(土)2 竹中大臣記者会見抜粋)
 
 金融庁ホームページの「報道発表など」から「りそな銀行に対する「経営監視チーム」の設置について」(平成15年5月17日)にもアクセスしてみてください。

 


:長銀の時に行ったように、国が全部その株を取得してしまって、その他の株主の価格がゼロになるというような措置、そういう措置とは全く違うわけです。そのような意味では、いわゆる国有化ではなくて、これは公的な支援として公的資金を入れるわけです。繰り返しますが、株式の数を減らすとかですね、長銀の時に行ったように株主の権利がゼロになるとか、そういう意味での減資というのは全くあり得ないことだと思っております。
平成15年5月17日(土)2 竹中大臣記者会見抜粋)

 

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