【集中連載】
 
「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づく取組み実績と総括的な評価について(第2回:「金融機関の取組みに対する総括的な評価」)

 去る6月29日、「『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』に基づく取組み実績と総括的な評価について」(以下「取組み実績と総括的な評価」という。)を取りまとめ、公表いたしました。
 そこで、アクセスFSAでは、「取組み実績と総括的な評価」の内容についてより多くの方に知っていただくため、前号より2回にわたってその内容を紹介いたします。
 今回(第2回:最終回)は、前回の「金融機関の取組み実績」に引き続き、「金融機関の取組みに対する総括的な評価」を紹介します。
 
金融機関の取組みに対する総括的な評価

.金融庁においては、全国の財務局を通じ各地域の利用者等(商工関係者、消費者、経営相談員等)を対象に「地域密着型金融の機能強化に関する各施策に対する評価等」について聴き取り調査(中小・地域金融機関に対する利用者等の評価に関するアンケート調査(以下「利用者アンケート」という。))を実施しています。その結果や金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」における議論を踏まえた金融機関の地域密着型金融の取組みに対する評価等は以下のとおりです。
 

(1)

 利用者アンケート結果
利用者アンケート結果

 地域密着型金融の機能強化に関する取組み全体に対する評価をみると、積極的評価が消極的評価を上回っており、利用者から一定の評価を受けていることを示しています。他方、「わからない」との回答も多いものとなっています。

(2)

 総括的な評価
 
(1)  取組みに対する評価
 地域密着型金融の機能強化に向けた取組みについては、
 

)経営改善支援のための体制整備など地域密着型金融を推進するための基本的な態勢の整備等については、既に相当数の金融機関において取組みが進められ、定着が図られており、今はこれを活用・実践する段階に入っている、

)担保・保証に過度に依存しない融資の推進等、中小企業金融の円滑化に向けた取組み等の強化・拡充が図られてきている、

)事業再生に向けた取組み等については、ノウハウの取得や案件の発掘等、実行に移すまでに一定の期間を要することもあり、必ずしも成果に結びついていないものの、件数や融資額等は着実に増えている、

等、総じて着実に進捗していると考えられます。

 また、「中小企業に対する金融機関の貸出態度判断D.I.」(日銀短観)は改善傾向にあるほか、利用者アンケート結果をみても積極的評価が消極的評価を上回っており、金融機関の取組みに対する借り手の受止め方は従前と比べ改善しています。

(参考)日銀短観:中小企業に対する金融機関の貸出態度判断D.I.

14/12 15/3 15/6 15/9 15/12 16/3 16/6 16/9 16/12 17/3
▲10 ▲9 ▲8 ▲5 ▲4 ▲2 +2 +3 +5 +7

 このように、各中小・地域金融機関の中小企業金融の円滑化に向けた取組みについては、一定の評価ができると考えられます。

 他方、こうした事業再生に向けた取組みをはじめとする地域密着型金融の機能強化に向けた取組みが着実に進捗しているなかで、中小・地域金融機関の財務状況をみると、全体として改善傾向にあり、不良債権比率についても、全体として低下のトレンドに入っています。こうした点については、マクロ経済情勢等の影響も大きいため、金融機関による地域密着型金融の取組みの成果のみによるものと考えることは必ずしも適当ではありませんが、例えば、取引先企業の経営相談・支援機能の強化を通じた要注意先債権等の健全債権化等が進捗していることをも踏まえると、一定の効果はあったものと考えられます。

(参考)不良債権比率の推移(金融再生法開示債権ベース)

14年3月期 15年3月期 16年3月期 17年3月期
地域銀行  8.0%  7.8%  6.9%  5.5%
信用金庫 11.5% 11.4% 10.2%
信用組合 15.7% 16.0% 13.8%

(2)

 今後の課題
 中小・地域金融機関は、地域密着型金融の中心的な担い手として、今後とも地域経済の活性化や中小企業金融の円滑化のために、その機能強化に向けた取組みを推進していくことが求められます。
 金融機関の取組み姿勢・実績にバラツキがみられ、地域密着型金融の推進について対応が遅れている金融機関もあります。
 また、不良債権比率をみると、全体として低下のトレンドに入ってはいるものの、不良債権問題の解決に向けた取組みは未だ道半ばと考えられます。この点については、地域密着型金融の取組みが、事業再生等の分野をはじめとして、具体的成果が顕在化するまでに時間を要するものが少なくないなど、取組みの成果がまだ十分に現れていないものが多いことにも留意する必要があります。
 このため、地域密着型金融の機能強化に向けた各種取組みについて、情報開示等の推進を通じて利用者の評価を受けつつ、引き続き、その推進を図り、具体的成果を実現させていく必要があります。


.地域密着型金融の推進は、個々の金融機関の自主的努力を通じて実現される面が大きいものと考えられます。そうした中、「金融システムの安定」を重視した金融行政から「金融システムの活力」を重視した金融行政へというフェーズの転換を踏まえつつ、金融機関は、自己責任と健全な競争の下で、地域密着型金融の一層の機能強化を図っていく必要があると考えられます。
 こうした観点から、「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」においては、各金融機関は、地域の特性等を踏まえた個性的な計画を策定した上で、その実施に当たっても、地域の特性や利用者ニーズ等を踏まえた「選択と集中」によりビジネスモデルを鮮明にし、情報開示等の推進とこれによる規律付けを通じて、自己責任と健全な競争の下、これを推進することを要請しています。
 各金融機関においては、同アクションプログラムに基づき、自己責任と健全な競争の下で、地域密着型金融の一層の推進を図り、地域の中小企業等の金融ニーズに一層適切に対応するとともに、経営の健全性を確保し、地域の利用者から十分な信認を得ていくことが期待されます。


 なお、ここでは「金融機関の取組みに対する総括的な評価」についてご紹介しましたが、「金融機関の取組みに対する項目別の評価」については、「『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』に基づく取組み実績と総括的な評価について」(平成17年6月29日)をご覧ください。


【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q:昨日(平成17年7月28日)、TOBのあり方を考えるワーキンググループが初会合を開きました。改めて今TOB制度を見直すことの必要性、狙いを伺いたいのと、今後のスケジュール感を現状どのように考えているかをお聞かせください。


:今、御質問がございましたように、ワーキンググループの会合が昨日(平成17年7月28日)開催されて、そして公開買付制度等について各委員の間で活発に御議論があったと報告を受けております。今回の公開買付規制についての議論にあたっては、企業価値、ひいては株主の利益の最大化といった観点から再点検を行っておく必要はないか、また証券取引の透明性、公正性について一層の向上を図っていく必要がないか、といった論点を提起しており、またその際には、企業の事業再編の円滑を損なうことがないよう留意することが必要であると考えられます。私共といたしましては、これらの観点から公開買付規制のあり方について、幅広く検討を行っていくべきであると考えておりまして、公開買付制度等ワーキンググループにおいて精力的かつ迅速に御審議をいただきたいと考えておりますが、検討すべき論点が多岐に渡っておりますので、後段の方の御質問になりますけれども、今後のスケジュールについて現段階で確たることを申し上げられる状況にはないと考えております。
平成17年7月29日(金) 閣議後記者会見

 
Q:東京三菱銀行とUFJ銀行の統合延期が正式に発表されましたが、それについて大臣の御所見をお伺いしたいのですが。


:両行が合併を来年1月1日に実施する計画に変更したと、こうしたことを公表を行ったことは承知いたしております。これは銀行間の合併にあたって新しい銀行の規模、業務量に鑑み、大規模システム障害を絶対に回避し、顧客に迷惑をかけないよう円滑な統合を実現するため、リスクの徹底した軽減による安定性、そして安全性の確保等、PDCAサイクルを十分に認識し、適切なプロジェクトマネージメントの下、十分な準備を整えていくとの観点から判断されたものと受け止めております。監督当局として顧客重視、利用者保護の観点から、合併認可申請に対する審査を行ってまいりますが、合併後の銀行の業務が的確、公正かつ効率的に遂行される見込みがあるかについては、引続ききちんと検証してまいりたいと思っております。
平成17年8月15日(月) 閣議後記者会見

 
Q:IMFの報告書で日本の不良債権処理についてかなり高く評価されておりました。大臣から見て今後の構造改革路線の必要性であるとか、或いはそれに関して金融庁としてはどのように取り組んでいくべきかというような方針について、改めて御説明をお願いします。


:御質問がございましたIMFの4条協議における日本の金融セクターについての評価は、「PDF金融再生プログラム」に代表される金融庁のこれまでの施策、及び金融セクターの現状を肯定的に捉えている一方、収益力強化等、金融セクターの活性化を今後の課題に掲げつつ、「金融改革プログラム」の具体的な施策を早期に実現することを期待したものとなっております。このように不良債権処理の進展や、或いはペイオフ解禁等を受けて、IMFにおいて我が国の金融セクターに対する認識が大きく改善してきており、当庁の施策につきましても、理解が示されたものと考えております。いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、引続き「金融改革プログラム」の諸施策の実施を通じまして、金融商品・サービスの利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られ、そして地域経済にも貢献できるような金融システムを、官の主導ではなく、民の力によって実現することを目指していきたいと考えております。

平成17年8月10日(水) 閣議後記者会見

 

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