【法令解説】

公認会計士法等の一部を改正する法律の施行に伴う
関係政令及び関係府令の改正について

先の第166回国会において、「公認会計士法等の一部を改正する法律」が可決・成立しました(平成19年6月20日成立、同年6月27日公布)。この法律は、企業活動の多様化・複雑化・国際化、監査業務の複雑化・高度化、公認会計士監査をめぐる不適正な事例を踏まえ、組織的監査の重要性が高まっている状況に対応する観点から、 I .監査法人の品質管理・ガバナンス・ディスクロージャーの強化、 II .監査人の独立性と地位の強化、 III .監査法人等に対する監督・監査法人等の責任のあり方の見直しを行ったものです。

今般、同法の施行に伴い、公認会計士法施行令等の関係政令及び公認会計士法施行規則等の関係内閣府令の改正及び新設が行われました。主な内容は次のとおりです。

I . 監査法人の品質管理・ガバナンス・ディスクロージャーの強化

  • 1. 業務管理体制の整備

    • (1)監査法人が整備しなければならない業務管理体制が満たすべき要件として、以下のものを規定しました。

      • 業務の執行の適正を確保するための措置(経営の基本方針及び経営管理に関する措置、法令遵守に関する措置を含む。)がとられていること

      • 業務の品質の管理の方針の策定及びその実施に関する措置がとられていること

      • 公認会計士である社員以外の者が公認会計士である社員の監査証明業務の執行に不当な影響を及ぼすことを排除するための措置がとられていること

      • 特定社員が日本公認会計士協会の会員となり、協会の会則を遵守するための措置がとられていること

      • 社員の総数の過半数が、公認会計士の登録を受けた後、3年以上監査証明業務に従事している者であること

      • 監査証明業務を適切に行うために必要な施設及び財産的基礎を有すること

      • 従たる事務所を設ける場合には、当該事務所に社員が常駐していること

    • (2)業務の品質の管理の定義について、それぞれの性質に応じて業務の妥当性、適正性又は信頼性を損なう事態の発生を防止するために必要な措置を講ずることが求められる業務の遂行に関する事項として、以下のものを規定しました。

      • 業務に関する職業倫理の遵守及び独立性の確保

      • 業務に係る契約の締結及び更新

      • 業務を担当する社員その他の者の採用、教育、訓練、評価及び選任

      • 業務の実施及びその審査

  • 2. 監査法人の社員資格の非公認会計士への拡大

    社員及び業務運営に関する意思決定機関の参加者に占める特定社員の割合の上限を25%と規定しました。

  • 3. 監査法人による情報開示の義務付け

    • (1)公認会計士の説明書類に記載する業務の状況に関する事項として、以下の事項を規定しました。

      • 業務の概況

        • 業務の概要及び業務の内容
        • 業務の運営の状況
        • 他の公認会計士(大会社等の財務書類について監査証明業務を行ったものに限る。)又は監査法人との業務上の提携に関する事項
      • 事務所の概況

        • 名称、所在地及び事務所に勤務する公認会計士の数
      • 被監査会社等(大会社等に限る。)の名称

    • (2)監査法人の説明書類に記載する業務及び財産の状況に関する事項として、以下の事項を規定しました。

      • 業務の概況

        • 監査法人の目的及び沿革
        • 無限責任監査法人又は有限責任監査法人のいずれであるかの別
        • 業務の概要及び業務の内容
        • 業務管理体制の整備及び業務の運営の状況
        • 他の公認会計士(大会社等の財務書類について監査証明業務を行ったものに限る。)又は監査法人との業務上の提携に関する事項
        • 外国監査事務所等との業務上の提携に関する事項
      • 社員の概況

        • 社員の数
        • 監査法人の活動に係る重要な事項に関する意思決定を社員の一部をもって構成される合議体で行う場合には、当該合議体の構成
      • 事務所の概況

        • 名称、所在地、事務所に勤務する社員の数及び公認会計士である使用人の数
      • 監査法人の組織の概要

      • 財産の概況

        • 直近2会計年度に係る売上高の総額(有限責任監査法人の場合には、直近の2会計年度の計算書類、計算書類について監査証明を受けている場合には当該監査証明に係る監査報告書、供託金等の額、有限責任監査法人責任保険契約をもって供託に代える場合には、その旨及び当該契約の内容も記載)
      • 被監査会社等(大会社等に限る。)の名称

II . 監査人の独立性と地位の強化

  • 1. 就職制限の範囲を被監査会社の親会社や連結子会社等へ拡大

    新たに公認会計士又は関与社員の就職の制限及び監査法人の業務の制限の範囲となる被監査会社等の連結会社等として、従来の被監査会社等に加えて、

    • 被監査会社等の連結子会社等又は被監査会社等をその連結子会社等とする会社等

    • 被監査会社等をその連結子会社等とする会社等の連結子会社等(被監査会社等を除く。)を規定しました。

  • 2. いわゆるローテーション・ルールの整備

    • (1)連続する会計期間に準ずるものとして連続会計期間とされる会計期間として、連続する会計期間において、監査関連業務を行わない連続する会計期間が2会計期間未満である場合に、当該監査関連業務を行わない会計期間においても監査関連業務を行ったものとみなして計算した会計期間が7会計期間となる場合における当該7会計期間を規定しました。

      なお、上場有価証券発行者等の監査関連業務を行う大規模監査法人の筆頭業務執行社員等については、継続監査期間5年、監査禁止期間5年のローテーション・ルールを規定しました。

    • (2)新規公開前の監査関連業務を行っている期間のうち継続監査期間に算入する期間として、2会計期間を規定しました(監査関連業務を行った期間が1会計期間である場合は1会計期間)。

    • (3)筆頭業務執行社員等として、○監査証明業務を執行する社員のうちその事務を統括する者として監査報告書の筆頭に自署し、自己の印を押す社員一名、及び○監査証明業務に係る審査に関与し、当該審査に最も重要な責任を有する者一名を規定しました。

    • (4)大規模監査法人として、監査関連業務を行う上場有価証券発行者等の総数が百以上の監査法人を規定しました。

    • (5)監査法人が、ローテーション・ルール、一定の非監査証明業務と監査証明業務の同時提供の禁止、単独監査の禁止等の規制を受けることとなる被監査会社の範囲(「大会社等」)から、非上場の金融商品取引法監査対象会社であって、一定の規模未満(最終事業年度に係る資本金5億円未満又は売上高(最終事業年度に係る売上高又は直近3年間における売上高の年間平均のいずれか高い額)10億円未満、かつ、負債総額200億円未満)のものを除外しています。

  • 3. 不正・違法行為発見時の対応

    公認会計士又は監査法人が当局への申出の要否を判断すべき期間として、通知日(公認会計士又は監査法人が特定発行者の監査証明において法令違反等事実を発見し、当該特定発行者に通知した日)から通知日後最初に到来する次のいずれかに掲げる日までの間を規定しました。

    • 有価証券報告書の提出期限の6週間前の日又は通知日から起算して2週間を経過した日のいずれか遅い日(当該日が当該提出期限以後の日である場合は、当該提出期限の前日)までの間

    • 四半期報告書又は半期報告書の提出期限の前日までの間

III . 監査法人等に対する監督・監査法人等の責任のあり方の見直し

  • 1. 課徴金納付命令

    • (1)課徴金の額の算定基礎となる「監査報酬相当額」を、監査証明業務の対価として支払われ、又は支払われるべきものとされた金銭その他の財産の価額の総額と規定しました。

    • (2)課徴金の納付を命じないことができる場合について、○故意の場合にあっては、財務書類に係る虚偽等により当該財務書類に記載される数値その他の内容の変化が軽微である場合を課徴金の納付を命じないことができる場合として規定し、○相当な注意を怠った場合にあっては、公認会計士等が実施した監査・証明が一般に公正妥当と認められる監査に関する基準・慣行に照らして著しく不十分であった場合を課徴金の納付を命じないことができる場合から除かれる場合として規定しました。

  • 2. 有限責任監査法人制度

    • (1)有限責任監査法人の最低資本金として、社員の総数に100万円を乗じて得た額を、登録有限責任監査法人の供託すべき額として、社員の総数に200万円を乗じて得た額を規定しました。

      また、登録有限責任監査法人の供託金の全部又は一部に代わる責任保険契約の内容及びその代替の限度額(供託金の額から社員の総数に100万円を乗じて得た額を控除した額)を規定しました。

    • (2)監査報告書の添付が義務付けられる有限責任監査法人の規模の基準として、収益の額が10億円以上であることを規定しました。

IV . その他

公認会計士法等の一部を改正する法律、関係政令及び関係府令は、平成20年4月1日から施行されます。

※ 平成19年9月に実施したパブリックコメントの結果については、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「公認会計士法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令・関係府令(案)に対するパブリックコメントの結果について」(平成19年12月7日)にアクセスしてください。


【金融ここが聞きたい!】

  • このコーナーは、大臣の記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。

    もっとたくさんご覧になりたい方は、是非、金融庁ウェブサイトの「記者会見」のコーナーにアクセスしてください。

〔金融・資本市場競争力強化プラン〕

Q: 競争力強化プランですけれども、これも今回の年末にまとまりましたが、改めて当初の大臣のお考えと今回の金融審一部会、二部会を通じてまとまった今回のプランの評価をお聞かせ下さい。

A: これも古くて新しい課題ではあるかもしれませんが、世界経済が一体化して久しいわけです。まさにその頃、橋本内閣においてビッグバン構想が出てきたわけでございます。残念ながら、日本がその直後、金融危機に見舞われデフレ経済に陥ってしまいました。メガバンクの不良債権問題は片付いたとはいえ、地域経済には大変な過剰債務が未だ残っているという状況でございます。デフレ経済からの脱却宣言は未だにできていない、国民の金融資産がいわば塩漬け状態になってしまっている中で、おそらくこの橋本内閣当時の構想が相当遅れ遅れになってきたと思います。しかし、官から民へという流れを確実なものにする一方で、国民の富について「貯蓄から投資へ」という流れを作っていくということが確実になっていくならば、日本の市場の国際競争力が強化されていく仕掛けを必ず同時に作っていかなければならないわけでございます。そういった意味で今回の「金融・資本市場競争力強化プラン」というのは、まさに時宜にかなったプランでありまして、戦略的にも今の実情を踏まえたよいプランになっているのではないかと思います。

平成19年12月24日(月)繰上げ閣議後記者会見より抜粋

Q: 国民からみてわかりやすく一言お答えいただければと思いますが、今回の強化プランに即して考えると、日本の金融機関、銀行、そして取引所が、何年後にどのような姿になっているのが望ましい、今回の強化プランを上手く活用すれば、国際的に考えるとどのような姿になっているというものなのでしょうか。

A: 何年後とは申しませんけれども、国民の金融サービスを享受する利便性は格段に向上していくものと思います。全部の垣根が一律に取り払われるわけではありませんけれども、今後、相当使い勝手は良くなっていくだろうと思います。一方、銀行の優越的地位の濫用や利益相反などの心配については、きちんと歯止めをかける仕掛けもございますし、塩漬けになった国民の富というものに、さらにいろいろなチャンスが生まれ、投資の機会が増え、そして国民がいろいろな選択肢を手にする、その中で自分の選択はこれだということが判断しやすくなるものと思います。同時に、日本という市場に入ってくる世界中の投資家の活動は、さらに活発になることを期待いたしております。既に日本の株式市場においては、シェアの6割以上が外国人であるという現実がございます。ぜひ、日本人が日本の力の見直しをしていただければ、大変ありがたいと私は思うわけであります。そのような観点からも、今回のプランが、そう長い年月がかからずに、10年もかからずに次の未来が切り開かれていくという時代になるのではないでしょうか。

平成19年12月24日(月)繰上げ閣議後記者会見より抜粋

Q: 競争力強化プランですが、これによって、本当に日本の金融機関が欧米や中国・シンガポールの新興市場に勝っていけるのかどうか、日本の金融市場、金融機関の現状の実力の評価と、このプランの効果への期待をお聞かせください。

A: 日本の金融機関は、相当長い間、大変苦しんでおったと思います。しかし、不良債権問題からもメガバンクは脱却をしております。また、バーゼル II の先行適用といったことも功を奏して、サブプライム・ローンの被害は比較的少なくて済んでいる状況にございます。こうした状況というのは、まさに今の世界的な金融資本市場でのマネーの偏重を考えると、ピンチはチャンスという言葉がピッタリ当てはまるのが日本のおかれた環境ではなかろうかと思います。したがって、いかにこの日本市場の競争力を強化するかということを考えてきたわけでございまして、この競争力強化プランは、まさにそういった要請に答える内容になっているかと思います。これを具体化し、それをできるだけ早く実現をすることによって、日本市場の競争力が見違えるように蘇ってくる、そういうことを我々は念願をし、かつ、その目標に向かって邁進をするつもりでございます。

平成19年12月21日(金)閣議後記者会見より抜粋

〔今年1年間を振り返って〕

Q: 1年間お疲れさまでした。1年の最後の会見ということで、今年1年を振り返られまして、金融担当大臣としてこの1年間の総括をお願いします。

A:(中略)
 金融大臣としてはサブプライム・ローン問題を、やはり相当大きな問題として考えていかなければならないことを身を持って感じてまいりました。これも去年の今頃は、ほとんど問題にされなかったのだろうと思います。しかし、今年この問題が相当深刻であるということに気づき、我々日本人はこうした金融危機を幾度となく経験してきたわけでありますから、是非日本の歴史の教訓というものを紐解くことによって、問題解決への糸口が見つかるのではないかと考えたところでございます。とにかく、あっという間に過ぎてしまった一年間だったという思いであります。

平成19年12月28日(金)閣議後記者会見より抜粋

Q: 今年1年間、例えば金融の話でいいますと、明るいニュースは何だと思われますか。

A: こういうピンチの時にはチャンスが来るのだろうと思います。世界中で結構大変な状況が目の当たりに起きているということから振り返って日本を見ておりますと、株価はパッとしませんでしたが、やはりこの国には相当の潜在力があるなということを感じました。この潜在力を掘り起こすことが、もっと簡単に出来るようになれば、日本の未来は明るいということも同時に感じたところであります。おそらく、来年にはそういった潜在力の掘り起こしが最大の課題になっていくのではないでしょうか。

平成19年12月28日(金)閣議後記者会見より抜粋


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