アクセスFSA 第90号(2010年12月)

アクセスFSA 第90号(2010年12月)

写真1

「第1回開示制度ワーキング・グループ」にて
挨拶する東副大臣(11月2日)

写真2

「第2回総合的な取引所検討チーム」に出席する
東副大臣(写真左)と和田大臣政務官(写真右)
(経済産業省にて)(11月9日)

目次


【特集】

保険会社による海外不動産投資の障壁となる規制の見直しに係る関連告示の改正について

平成22年12月24日に『金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン~新成長戦略の実現に向けて~』が公表され、その中で保険会社による海外不動産投資の障壁となる規制の見直しを行うこととされました。本件は、これに対応して、同月28日に関連する告示の改正を行ったものです(同日から適用)。

1.背景

保険会社の従属業務子会社(※)のうち、不動産投資をはじめとする「保険会社のために投資を行う業務」を行う会社については、当該保険会社及びその100%子会社により、その議決権の総数を保有されている必要がありました。

このため、他の投資家の共同出資を得にくいなど、保険会社の収益機会の拡大に支障となっているとの指摘がされていたところです。

※ 保険会社の従属業務子会社とは、保険会社が保険業を行う際に併せ行う一般事業(福利厚生、教育・研修等)をアウトソースするために設立される子会社のことをいいます。

2.改正の内容

「議決権の総数保有」という基準を満たさない場合であっても、「(1)保険会社及びその子会社により議決権の過半数が保有され、(2)資金調達の総額の50%以上が保険会社及びその100%子会社により供給されている」場合には、保険会社の従属業務子会社として認められることとしました。

なお、今回の告示改正案に関しては、平成22 年11月25日(木)から平成22 年12月14日(火)にかけて意見公募を行いました。

また、この結果等については、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「保険業法第百六条第七項等の規定に基づき、従属業務を営む会社が主として保険会社若しくは保険持株会社又はそれらの子会社のために従属業務を営んでいるかどうかの基準を定める件」の一部を改正する件(案)に対するパブリックコメントの結果等について(平成22年12月28日)にアクセスしてください。


【トピックス】

視覚障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について

金融庁では、金融機関に対し視覚障がい者等に配慮した取組みを要請しているところですが、その取組み状況を把握するため、各金融機関に対し、平成22年9月末時点での視覚障がい者等に配慮した取組み状況についてのアンケート調査を行い、その結果を11月30日(火)に公表しました。

主なアンケート調査結果については、以下のとおりです。

1.視覚障がい者対応ATMの設置率について

ハンドセット方式等の視覚障がい者が自ら操作できる機能がある視覚障がい者対応ATMの設置台数の割合は、全金融機関で約57%です。

【業態ごとの内訳】

主要行等 約83%(うち都市銀行等約81%)、信託銀行 約70%、

地方銀行等 約39%、第二地方銀行 約29% 、信用金庫 約36%、

信用組合 約36%、労働金庫 約42%

2.預金取引に係る目や手が不自由な方への代筆に関する内部規定の整備状況について

預金取引に係る代筆規定を「策定済み」又は「11月末までに策定する。」と回答のあった金融機関の業態ごとの割合は、次のとおりです。また、代筆規定を策定したすべての金融機関が、規定の内容を職員に周知していると回答しています。

【業態ごとの内訳】

主要行等 ~ 約73%(約70%)(都市銀行等 ~ 100%(100%))

信託銀行 ~ 約83%(100%)

地方銀行等 ~ 100%(100%)

第二地方銀行 ~ 約95%(約86%)

信用金庫 ~ 約95%(約92%)

信用組合 ~ 約87%(約94%)

労働金庫 ~ 100%(約66%)

注:( )内の数値は、規定を策定済みの先のうち、職員による代筆規定の整備率

3.視覚障がい者等に対する預金取引に係る代筆規定を策定済み又は11月末までに策定予定と回答のあった金融機関名についても、合わせて公表しました。

【参考】アンケート対象金融機関数

◎主要行等 15行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、りそな銀行、ゆうちょ銀行(以上5行をもって「都市銀行等」という。)、あおぞら銀行、新生銀行、セブン銀行、楽天銀行、ジャパンネット銀行、ソニー銀行、シティバンク銀行、住信SBIネット銀行、イオン銀行、じぶん銀行)

◎信託銀行 6行(オリックス信託銀行、住友信託銀行、中央三井信託銀行、野村信託銀行、みずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行)

◎地方銀行等 64行(地方銀行協会加盟行、埼玉りそな銀行)

◎第二地方銀行 42行(第二地方銀行協会加盟行)

◎信用金庫 272金庫

◎信用組合 158組合

◎労働金庫 13金庫

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から「視覚障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について」(11月30日)にアクセスしてください。


『「金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告」~ 英文開示の範囲拡大について ~ 』の公表について

平成22年6月18日に閣議決定された「新成長戦略 ~『元気な日本』復活のシナリオ~」において「金融戦略」が7つの戦略分野の1つとして位置づけられ、その中で「外国企業等による我が国での資金調達を促進するための英文開示の範囲拡大」が掲げられています。

こうした動きを背景に、金融庁においては、「英文開示の範囲拡大」をはじめとする金融商品取引法に基づく開示制度の整備について、専門的・技術的な見地から検討を行うことを目的として、平成22年11月2日に開示制度ワーキング・グループを設置しました。その後、同ワーキング・グループによる検討の結果、12月17日に、「金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告 ~英文開示の範囲拡大 ~」(以下、「開示制度ワーキング・グループ報告」といいます。)がとりまとめられました。

(参考)金融庁から12月24日に公表された「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン ~新成長戦略の実現に向けて~」の中でも、「アジアの主たる市場(メイン・マーケット)たる日本市場の実現」のため、「外国企業等による英文開示の範囲拡大等の制度整備」を行うとされ、「今後、関連法案の早急な国会提出を図るほか、関連政府令の改正を平成23年度中を目途に行う」とされています。

金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告の主な内容については以下のとおりです、

1.現行の英文開示制度

現行の英文開示制度は、平成17年の証券取引法(現行の金融商品取引法)の改正により設けられたところであり、外国会社等が提出すべき継続開示書類(有価証券報告書、半期報告書等)に代えて、その発行者の本国において英語で開示されているこれらの継続開示書類に類する書類の提出を容認している。

2.英文開示制度の見直しの必要性

現行英文開示制度の利用が極めてわずかなものにとどまる中、同制度を適確に見直していくことが必要であり、投資家保護に十分配意しつつ、英文開示の対象とする開示書類の範囲を拡大するとともに、英文開示を行うための要件等の見直しを行うことが適当である。

3.英文開示の範囲拡大の内容

(1)発行開示書類の英文開示について

現在、英文開示の対象となっている有価証券報告書等の継続開示書類とともに、有価証券届出書等の発行開示書類を一体として対象とすることにより、英文開示全体として利便性を向上させることが適当である。

投資者保護の観点との調和を図るため、「発行者情報」及び「証券情報」がそれぞれ以下の要件に該当する場合について、英文による発行開示書類の提出を可能とすることが適当である。

i .「発行者情報」

外国会社等の発行する有価証券が外国の金融商品取引所に上場されている場合、または外国会社等が外国市場において有価証券の募集・売出しを行っている場合で、それらの外国会社等の「発行者情報」が英文により市場で晒され(開示され)ている場合、英文開示を認めることが適当である。

(注) 市場で晒されている場合には、国内外金融商品取引所への同時上場、グローバル・オファリンを行う場合を含む。

ii .「証券情報」

「証券情報」については、投資者の投資判断に重要な情報であり、また、金融商品の販売に当たり金融商品取引業者が説明責任を果たす上で重要な素材であることを踏まえ、企業内容等の開示に関する内閣府令等に定められている有価証券届出書等の様式に従い、日本語による作成を義務付けることが適当である。

iii .外国投資信託等の取扱い

外国投資信託など特定有価証券に該当する有価証券の「ファンド情報」や「管理資産情報」などが「外国の市場」において英語で適切に開示されている場合は、英文開示の対象とすることが考えられる。

(2)補足書類について

i .「補足情報」

発行開示書類に係る英文開示についても、我が国の様式による発行開示書類に記載すべき事項であって、外国で開示されている会社報告書等に記載のない事項を記載した書類(「補足情報」)の作成を求めることが適当である。これについては、英語による作成を可能とすることが適当である。

ii .「日本語による要約」

発行開示書類に係る英文開示について、重要な事項(「補足情報」に含まれる重要な事項を含む。)の「日本語による要約」を求めることが適当である。

「日本語による要約」についてのガイドライン作成を求める多くの意見を踏まえ、金融庁その他市場関係者により早急に検討の場が設けられ、具体化が進められることが期待される。

(注) 株券の場合の重要な事項は、「事業等のリスク」、「財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」及び「財務諸表」。

(3)臨時報告書について

外国会社等は、内閣府令に規定されている提出事由に該当する場合には、遅滞なく、英語による臨時報告書の提出することが適当である。ただし、臨時報告書の提出理由については日本語で、記載内容については英語で記載することが適当である。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から『「開示制度ワーキング・グループ」の設置について』(11月2日)にアクセスしてください。


平成23年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目について

平成22年12月16日、平成23年度税制改正大綱が閣議決定されました。金融庁関係の主要項目としては、

  • (1)上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率については、景気回復に万全を期すため、2年延長する(平成25年末まで)。

    ※これに伴い、少額投資非課税制度(日本版ISA)の導入時期については、平成26年1月からとする。

  • (2)平成26年に上場株式等の配当・譲渡所得等に係る税率が20%本則税率になることを踏まえ、公社債等に対する課税方式の変更及び損益通算範囲の拡大を検討する。

  • (3)イスラム債として活用可能な社債的受益権の税制上の取扱いについて、

    • i .海外投資家が受ける社債的受益権の収益の分配に係る源泉所得税を非課税とし、

    • ii .社債的受益権の発行スキームにおいて、資金調達者による信託財産の買戻しに

    係る登録免許税及び不動産取得税を非課税とする等の所要の改正を行う。

  • (4)外国金融機関等が証券貸借取引で支払を受ける利子及び貸借料を非課税とする。

  • (5)国際課税原則については、今般のOECDモデル租税条約の改定等を踏まえ、様々な産業における実態等を把握しつつ、「総合主義」に基づく従来の国内法上の規定を「帰属主義」に沿った規定に見直すとともに、これに応じた適正な課税を確保するために必要な法整備に向け、具体的な検討を行う。

  • (6)特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲を拡大する。

  • (7)店頭デリバティブ取引等に係る所得(現状、総合課税)については、市場デリバティブ取引等に係る所得と同様に、20%申告分離課税とした上で、両者の損益通算及び損失額の3年間の繰越控除を可能とする。

などの内容が盛り込まれています。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から「平成23年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目について」(平成22年12月17日)にアクセスしてください。


無登録業者・無届募集等に対する裁判所への禁止命令等の申立て

従来、金融商品取引法(「金商法」)上の登録を受けた業者については金融庁・証券監視委が監督・検査を行い、登録を受けずに詐欺的な商法等を行う無登録業者については、通常の行政対応が困難であることから、警察等の捜査当局により対応がなされてきました。

しかしながら、近年、無登録業者による未公開株やファンドの販売による被害が拡大し、社会問題化しています。こうした金商法違反行為を行う者に対しては、捜査当局による対応のみならず、金融庁・証券監視委としても、金商法192条に基づく裁判所への禁止・停止命令の申立て(「192条申立て」)の活用が課題となっていました。

この制度は、内閣総理大臣からの申立てを受け、裁判所が、緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、金商法に違反する行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができるものです。

これは、アメリカの法制を参考にして1948年に制定された証券取引法の時代から存在した条文ですが、長い間活用されていませんでした。しかし、平成20年の金商法改正によって、調査、検査等により金商法違反行為に目を光らせることのできる証券監視委にも192条申立ての権限が委任され、また、平成22年の金商法改正によって、裁判所の命令の実効性を担保するため、法人に対し3億円以下の罰金という重い罰則が導入されました。(図参照)

こうした制度整備を受け、証券監視委は、平成22年11月17日、無登録で後述の(株)生物化学研究所などの未公開株等の勧誘を業として行っていた(株)大経とその役員について、初めて、192条申立てを行いました。そして、同月26日、東京地方裁判所から、申立ての内容どおり、無登録営業を禁止・停止する命令が下されました。

http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2010/2010/20101118-1.htm新しいウィンドウで開きます(192条申立て)

http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2010/2010/20101129-1.htm新しいウィンドウで開きます(裁判所の命令)

また、同日、無届けで株式等の募集を行っていた(株)生物化学研究所についても、192条申立てを行いました。そして、12月15日、甲府地方裁判所から、申立ての内容どおり、無届募集を禁止・停止する命令が下されました。

http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2010/2010/20101126-2.htm新しいウィンドウで開きます(192条申立て)

http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2010/2010/20101216-1.htm新しいウィンドウで開きます(裁判所の命令)

仮にこれらの者が裁判所の命令に違反した場合は、罰則の対象になります。

証券監視委としては、引き続き、金融庁・財務局や消費者庁、捜査当局等の関係機関と緊密に連携し、公益及び投資者保護の観点から、無登録営業や無届募集等の金商法違反行為に対して厳正に対処していく考えです。

投資者の皆様におかれても、無登録業者等との取引は一切なさらないよう御注意ください。

(参考)

http://www.fsa.go.jp/sesc/support/fund.htm新しいウィンドウで開きます(悪質なファンド販売業者に関する注意)

※詳しくは、証券取引等監視委員会のウェブサイト新しいウィンドウで開きますにアクセスしてください

金商法違反行為の禁止・停止の申し立て

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