アクセスFSA 第142号(2015年4月)

アクセスFSA 第142号 (2015年4月)

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財務局長会議にて挨拶する赤澤副大臣
(4月23日)
財務局長会議にて挨拶する越智大臣政務官
(4月23日)

トピックス

(1)コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~の確定について

政府の成長戦略である「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月24日閣議決定)では、施策の一つとして「コーポレートガバナンスの強化」が取り上げられ、そのために、上場会社に適用される「コーポレートガバナンス・コード」を策定することとされました。これを受けて、昨年8月、金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(座長:池尾和人・慶應義塾大学経済学部教授)が設置されました。同有識者会議は計9回にわたり議論を重ねた上で、本年3月5日、「コーポレートガバナンス・コード(原案)」(以下、「本コード(原案)」という。)を最終確定しました。(※1)

※1本コード(原案)の取りまとめに当たっては、和英両文によるパブリックコメントを実施し、合計121の個人及び団体(和文が80、英文が41)からご意見をいただきました。その約3分の2が、本コード(原案)の策定に賛成・歓迎の意を明らかにしている意見でした。

今後、東京証券取引所において、本コード(原案)をその内容とする「コーポレートガバナンス・コード」が制定される予定であり、併せて、これに関連する上場規則等の改正がなされる予定です。なお、本コード(原案)の適用開始時期については、本年6月1日を予定しています。

本コード(原案)の概要は、以下のとおりです。

○本コード(原案)の目的

本コード(原案)における「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。

コーポレートガバナンスというと、これまで国内では会社における不祥事の再発防止といった側面に議論が集中しがちでした。しかし、本コード(原案)においては、成長戦略の一環として、健全な企業家精神の発揮を促し、収益力・資本効率等の改善につながるような「攻めのガバナンス」の確保を目指すことが基本的な考え方として示されています。

○本コード(原案)の枠組み

本コード(原案)は、それぞれの上場会社が、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、自らのガバナンス上の課題を検討し、その改善のために自律的な取組みを進めていくことが重要であるとの考え方に立脚し、そうした自律的な取組みが可能となるよう「プリンシプルベース・アプローチ」(※2)及び「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)という枠組みを採用しています。これらの枠組みの下、本コード(原案)の適用を受ける各会社は、マル1本コード(原案)の各原則(プリンシプル)について、その形式的な記載・文言ではなく、その趣旨・精神に照らして、自らの活動が当該原則に則しているか否かを判断することが求められる一方、マル2自らの個別事情に照らして実施(コンプライ)することが適当でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明(エクスプレイン)することにより、一部の原則を実施(コンプライ)しないことも許容されることとなります。

※2「プリンシプルベース・アプローチ」の意義は、「一見、抽象的で大掴みな原則(プリンシプル)について、関係者がその趣旨・精神を確認し、互いに共有した上で、各自、自らの活動が、形式的な文言・記載ではなく、その趣旨・精神に照らして真に適切か否かを判断すること」にあります。

○本コード(原案)の原則の構成

本コード(原案)では、「OECDコーポレートガバナンス原則」も踏まえ、コーポレートガバナンスを巡る5つの分野にわたる諸原則が体系的に整理されており、それらは全体で5つの基本原則、30の原則、38の補充原則から成っています。

5つの分野は、以下のとおりです。

  • マル1株主の権利・平等性の確保

  • マル2株主以外のステークホルダーとの適切な協働

  • マル3適切な情報開示と透明性の確保

  • マル4取締役会等の責務

  • マル5株主との対話

5つめに、「株主との対話」についての独立の章が設けられ、その重要性が強調されています。この点が、OECD原則にはない本コード(原案)独自の取組みといえる点です。これは、本コード(原案)と昨年2月に策定された「日本版スチュワードシップ・コード」が「車の両輪」であるとの考え方を踏まえ、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資するよう、株主との対話に向けた会社の取組みの促進を期待するものです。金融庁としては、両者が適切に相まって、「会社の持続的な成長」と「投資者のリターン拡大」という好循環が実現することを期待しています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から、「コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~の確定について」(平成27年3月5日)、及び「公表物」の中の「審議会・研究会等」から「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」にアクセスしてください。


(2)ADBI・OECD・日本 ハイレベル・グローバル・シンポジウム「金融教育を通じたより良いライフプランニングの促進」について

金融庁は、平成27年1月22、23日に、経済開発協力機構(OECD)、アジア開発銀行研究所(ADBI)及び日本銀行との共催により、ADBI・OECD・日本 ハイレベル・グローバル・シンポジウム「金融教育を通じたより良いライフプランニングの促進」を開催しました。本シンポジウムには、国内外の金融教育に携わる研究者、政府関係者、金融関係団体、教育関係者などを招待し、140名強の方に参加していただきました。

各セッションの概要は、以下のとおりです。

  • セッション1:金融教育で成し遂げられること─金融教育に関する研究、よい慣行と事例から

    セッション1では、OECDから国際的な良い慣行と効果的な金融教育のアプローチの概要について、ADBIからアジアにおける金融教育の必要性について報告が行われたほか、ニュージーランドの金融教育に係る国家戦略について発表がありました。

  • セッション2:効果的な年金計画のための金融教育─課題と解決策─

    セッション2では、OECDから退職貯蓄に関する金融教育調査について紹介されたほか、ロシア、米国、オーストラリアにおける年金制度と金融教育について発表がありました。

  • セッション3:ターゲット層を定めた効果的な金融教育

    セッション3では、日本における各年齢層(中等・高等教育、大学生、若手社会人、高齢者)への金融経済教育及びオーストラリアにおける女性に対する金融教育の取組みについて発表がありました。

  • 特別講演

    少子・高齢化の視点から見た我が国の金融教育について、岩田規久男日本銀行副総裁による講演が行われました。

    (講演の詳細は、日本銀行のウェブサイトをご参照ください。)

  • セッション4:アジアにおける金融包摂、金融規制と金融教育

    セッション4では、インドネシア、パキスタン、フィリピン、ベトナム及びタイにおける金融包摂を促すための金融教育や金融規制について報告が行われました。

  • セッション5:パネル・ディスカッション

    セッション5では、これまでのセッションでの議論を踏まえたパネル・ディスカッションが行われ、金融教育に関心のない人々への働きかけや、教育現場における金融教育の枠組み整備の必要性に関する指摘がありました。また、効果的な金融教育を行うためには、データに基づき金融教育のニーズを捉え、各国の実情にあった国家戦略を定め、金融教育の結果を評価することが重要であるとまとめられました。

※ 詳しくは、金融研究センターウェブサイトの「国際コンファレンス・シンポジウム等」の中の「2015年1月22日、23日開催 ADBI・OECD・日本 ハイレベル・グローバル・シンポジウム『金融教育を通じたより良いライフプランニングの促進』」新しいウィンドウで開きますに掲載の発表資料及び近日掲載予定の「コンファレンス結果概要」等をご参照ください。


(3)レバレッジ比率に関する告示案等に対するパブリックコメントの結果等について

金融庁では、バーゼル3に係るレバレッジ比率に関する告示案等につきまして、平成26年12月17日(水)~平成27年1月16日(金)にかけて広く意見の募集を行い、その結果及び関連告示を平成27年3月12日に公表・公布しました。

この告示は、国際的に活動する銀行等を対象として、リスクベースの自己資本比率に対する、簡素なノンリスクベースの補完的指標としてレバレッジ比率の開示を求めるもので、平成27年3月31日より適用となりました。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「レバレッジ比率に関する告示案等に対するパブリックコメントの結果等について」(平成27年3月12日)にアクセスしてください。


(4)有価証券報告書レビューの実施について(平成27年3月期以降)

金融庁では、有価証券報告書の記載内容の適切性を確保するため、各財務局及び福岡財務支局並びに沖縄総合事務局(「財務局等」)と連携し、「法令改正関係審査」、「重点テーマ審査」及び「情報等活用審査」を柱とした有価証券報告書レビューを実施しています。平成27年3月期以降の有価証券報告書については、以下の内容でレビューを実施することとしています。

  • 1.法令改正関係審査

    本審査は、法令改正等により有価証券報告書の記載内容が変更又は追加された重要な事項について審査するものです。

    今回は、「退職給付に関する会計基準」の段階的な適用に伴う注記の記載の適切性等が審査対象として考えられますが、以下のとおり重点テーマ審査として「退職給付」にかかる審査を実施することとしたため、法令改正関係審査は実施いたしません。

  • 2.重点テーマ審査

    本審査は、特定の重点テーマに着目して審査対象となる企業を抽出し、当該企業に対して所管の財務局等が個別の質問事項を送付し、回答を受けることで(ヒアリングを行うこともあります)、より深度ある審査を実施するものです。

    今回(平成27年3月期以降)の重点テーマは、以下のとおりです。審査対象となる企業には、所管の財務局等より別途ご連絡しますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

    • 退職給付

    • セグメント情報

  • 3.情報等活用審査

    上記の重点テーマに該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して、所管の財務局等より、個別の質問事項を送付させていただくことがありますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「有価証券報告書レビューの実施について(平成27年3月期以降)」(平成27年3月31日)にアクセスしてください。


(5)有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成27年3月期版)

平成27年3月期以降の有価証券報告書の作成に当たって、留意が必要な事項を、以下のとおり取りまとめました。各提出者におかれては、これらの点に留意して有価証券報告書を作成し、各財務局若しくは福岡財務支局又は沖縄総合事務局へ提出願います。

  • 1.新たに適用となる開示制度・会計基準に係る留意すべき事項

    平成27年3月期に新たに適用となる開示制度・会計基準は、以下のとおりです。

    • 「退職給付に関する会計基準」等の公表を踏まえた連結財務諸表規則等の改正

    • 有価証券報告書等において、各会社の役員の男女別人数及び女性比率の記載を義務付ける企業内容等の開示に関する内閣府令の改正

  • 2.平成26年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査)を踏まえた留意すべき事項

    現在、実施中である平成26年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査)に関して、現在までに以下のような事象が把握されています。

    • 退職給付制度に関する注記が正確・明瞭に記載されていない事例

    • 退職給付信託として設定した株式が、みなし保有株式に該当するにもかかわらず、みなし保有株式として開示していない事例 など

    (参考)平成27年2月10日に公表した以下の有価証券報告書レビューの審査結果も併せてご参照ください。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成27年3月期版)」(平成27年3月31日)にアクセスしてください。


(6)中小企業の業況等に関するアンケート調査結果の概要

中小企業金融の実態把握の一環として、平成27年2月に、全国の財務局等を通じて、各都道府県の商工会議所47先を対象に、会員企業の業況や資金繰りの現状と先行き等について聴き取り調査を実施したところ、その調査結果の概要は、以下のとおりとなりました。

  • 1.中小企業の業況について、現状D.I.は前回調査に比べ3ポイント上昇しています。なお、先行きD.I.は、前回調査に比べ3ポイント上昇しています。

    悪いと判断した場合の要因としては、「売上げの低迷」の割合が最も大きく、次いで「仕入れ原価の上昇、販売価格への転嫁の遅れ」となっています。

    中小企業の業況について
    (クリックすると拡大されます)

  • 2.中小企業の資金繰りについて、現状D.I.は前回調査に比べ2ポイント上昇しています。なお、先行きD.I.は、前回調査に比べ5ポイント上昇しています。

    悪いと判断した場合の要因のほとんどが、「販売不振・在庫の長期化等、中小企業の営業要因」となっています。

    中小企業の資金繰りについて
    (クリックすると拡大されます)

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「中小企業の業況等に関するアンケート調査結果の概要」(平成27年3月27日)にアクセスしてください。


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